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リビアで勢力を拡大させているハフタルの武装勢力は背後に米、仏、サウジなど
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2019.04.22 櫻井ジャーナル
ファイズ・サラージを首相とし、国連に承認されたGNA(国民合意政府)はトリポリを拠点にしている。そのトリポリにハリファ・ハフタルのLNA(リビア民族軍)が迫っているようだ。 ハフタルは過去に何度かロシアを訪問、政府高官と会っているが、ロシア政府が後ろ盾とは言いがたい。サウジアラビアが戦費として数千万ドルを提供していると報道されている一方、サラージ政権はフランスがLNAを支援していると批判している。 そもそもハフタルは1960年からCIAに保護され、アフタルに従う武装グループはアメリカで軍事訓練を受けてきた人物。この関係は切れていないだろう。このグループは2011年春に始まったリビアに対する侵攻作戦へも参加している。 この侵攻作戦にはアメリカ、フランス、サウジアラビアのほか、イギリス、カタール、イスラエル、トルコなどが参加していた。自国の部隊だけでなく、サラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)とムスリム同胞団を主力とする傭兵部隊を送り込んでいた。途中からNATOが空爆しているが、地上では傭兵が戦闘の中心的な存在だった。 この傭兵はアル・カイダ系。1997年から2001年にかけてイギリスの外務大臣を務めたロビン・クックによると、アル・カイダとはCIAの訓練を受けたムジャヒディンの登録リスト。その歴史は1970年代終盤にズビグネフ・ブレジンスキーがアフガニスタンで始めた秘密工作から始まる。 リビアでは2011年10月にムアンマル・アル・カダフィ体制が倒され、カダフィ本人はその際に惨殺された。その直後、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられている。その光景はユーチューブにアップロードされ、イギリスのデイリー・メイル紙も伝えていた。 その直後にCIAは戦闘員と武器/兵器をシリアへ輸送する。その拠点になったのベンガジのアメリカ領事館。その領事館が2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使が殺されている。 大使はその前日に領事館でCIAの工作責任者と会談、その翌日には海運会社の代表と会っている。その当時、CIA長官だったのがデイビッド・ペトレイアスで、国務長官がヒラリー・クリントンだ。 こうした戦闘員や軍事物資の輸送、そしてシリアでの反政府(侵略)軍への支援を正当化するため、バラク・オバマ政権は「穏健派」というタグを使い始めていたが、そうした「穏健派」が存在しないことをアメリカ軍の情報機関DIAが2012年8月にホワイトハウスへ報告していた。 これは本ブログで繰り返し書いてきたことだが、シリア政府軍と戦っている戦闘集団の主力はサラフ主義者やムスリム同胞団を中心に編成されたアル・カイダ系戦闘集団だとDIAは指摘している。 また、報告書は東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。この警告は2014年、ダーイッシュという形で現実になる。 このダーイッシュは急速に勢力を拡大し、ダマスカスに迫るのだが、2015年9月30日にロシアがシリア政府の要請を受けて軍事介入して戦況は一変した。その1年前からシリア政府の承諾を得ずに空爆を始めていたアメリカ軍と違い、ロシア軍は本当にダーイッシュなどジハード傭兵軍を攻撃、その支配地域を縮小させていった。ダーイッシュが支配していた地域の中心部分はアメリカ軍が占領している。 その一方、リビアではカダフィ体制が倒された後も破壊と殺戮が続き、暴力が支配する破綻国家。かつてはヨーロッパ諸国より生活水準の高く、教育、医療、電力料金は無料、農業は元手なしで始めることができる国だった。今は見る影もない。 リビアが破壊された大きな理由はふたつ存在する。ひとつは石油資源であり、もうひとつは独自の通貨としてディナールという金貨を導入しようとしていた。しかもアフリカ大陸全体で流通させようとしたのだ。ちなみに、アメリカがリビアを攻撃した理由は保有する金143トンと石油利権だったことを暗示するヒラリー・クリントン宛ての電子メールが公表されている。 アフリカの資源なしに権力基盤を維持できない欧米の支配層はリビアを破壊した。資源を奪い続けるためだ。今のところ、ハフタルもその手先にしか見えない。 |
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