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戦車と対戦車兵器の100年 人はいかに戦車装甲へ挑み、またこれを跳ね返してきたのか
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181026-00010000-norimono-bus_all
乗りものニュース 10/26(金) 6:20配信
増加装甲や赤外線遮断用偽装網、ミサイルや遠隔操作式IED(即席爆弾)に対するジャミングアンテナを付けた「チャレンジャー2」戦車(月刊PAZNZER編集部撮影)。
戦車と対戦車兵器の、シーソーゲームの歴史
戦車が戦場に登場したのは、今から約100年前の1916(大正5)年。第一次世界大戦の「ソンムの戦い」でのことです。塹壕戦に業を煮やしたイギリス軍が、兵士を乗せて塹壕を超えることができる「陸の戦艦」をつくろうと思ったことがその始まりでした。塹壕のなかから撃ち合いをするのが戦争だった時代、突然現れた鉄の塊に、兵士たちは驚いたことでしょう。しかし、すぐさまそれに対抗する術を考えだしていきます。こうして、「戦車」対「対戦車兵器(砲)」の歴史は始まりました。
「バズーカ」の愛称で有名なアメリカ製のM20対戦車ロケット弾発射器。自衛隊でも最近まで現役だった(画像:月刊PANZER編集部)。
ぶつけて燃やせ! 火炎瓶と溶接装甲
最初に考え出されたのが、ガラス瓶のなかにガソリンや灯油を入れて投げつける、いわゆる火炎瓶です。これを戦車の扉の隙間や、エンジンなどに投げつけて戦車を燃やすというものでした。もっとも原始的な手段ですが、巨大なエンジンを搭載した戦車はうまく当たれば、ものすごい勢いで炎上しました。同様にカバンにダイナマイトを詰め込んで投げつけるカバン爆弾も使用されました。
当時の戦車は装甲板をリベットやボルトで留めただけのものでしたから、攻撃で緩んだり外れたりすることも多くありました。また、衝撃ではじけ飛んだボルト自身が戦車内で暴れまわり、車内の人間を傷つけることも多かったといいます。こうした問題を解決するために採用されたのが溶接接合でした。溶接により戦車の強度は格段に上がり、数多くの国で採用されるようになりました。
大型化した対戦車砲と鋳造砲塔
イギリス連邦軍(ニュージーランド軍)兵士が鹵獲したドイツの「マウザー1918対戦車ライフル」(画像:帝国戦争博物館)。
第一次世界大戦末期になると、対戦車ライフルが開発されました。「マウザー1918対戦車ライフル」は、口径13mm、重量は15.8kgと個人装備の銃としては大きめですが、射程は500m、厚さ25mmの装甲を撃ち抜くほどの威力がありました。当時の戦車の装甲は12〜15mmほどでしたから、装甲を撃ち抜くだけなら十分だったといえます。
しかし、第二次世界大戦に入ると、戦車の装甲はどんどん厚くなっていきました。そして、それに呼応するように対戦車砲も大口径、大型化が進み、大戦後期になるとその口径は80mm以上が当たり前になっていました。
対する戦車のほうはといえば、重量の関係から、無尽蔵に装甲を厚くするわけにもいきません。そこで考え出されたのが鋳造装甲による「避弾経始」という方法です。これは、砲塔を鋳型でお椀のような形に成形し、戦車をつくるものです。お椀のような形の砲塔は、弾が当たっても、横や上にそらす力が働きます。鋳造砲塔であれば大型の対戦車砲でも、その力を殺して、そらすということができるようになりました。
また、大型化が進んでいた対戦車砲が大きくなりすぎたため、個人で使用することが難しくなってきました。そこで生み出されたのが、無反動砲や対戦車ロケットでした。
無反動砲というのは、反動を抑える機構を取り付けた対戦車砲のことです。一方対戦車ロケットというのは、弾そのものに推進剤の入ったロケットを発射するもので、ロケットランチャーとも呼ばれています。両方とも第二次世界大戦の後半に登場し、瞬く間に世界中で採用されて個人携行による対戦車兵器のスタンダードとなりました。
最新の装甲と対戦車ロケット
台湾陸軍のCM-11戦車。奥の車両は増加装甲無しなのに対して、手前の車両は爆発反応装甲を増設している(画像:月刊PANZER編集部)
東西冷戦たけなわの時代になると、戦車の装甲にも変化が起こってきました。技術の発展により生まれたのが複合装甲や爆発反応装甲です。
「複合装甲」とは、装甲鋼板の間にチタンやセラミックなどさまざまな素材を挟み込んで強化したもの、「爆発反応装甲」は、敵の弾が当たった瞬間に外側に向けて爆発する装甲を外壁に張り付けることで、敵の砲弾の威力を殺してしまうというものです。また10式戦車などにも採用されている「モジュール装甲」は、内部を空洞にして敵砲弾の威力を殺すほか、破損部分だけを取り換えられる整備効率の良さなども考えられた最新の装甲です。
こうした装甲の発展により対戦車兵器は歯が立たず廃れていくかと思われました。しかし、そちらも独自の発展を続けていきます。
無反動砲やロケットランチャーに続き、開発されたのが対戦車ミサイルです。ミサイルとは、日本語では「誘導弾」と呼ばれ、目標に向かって自ら飛翔していく兵器の総称です。高い命中精度と安全性を誇る対戦車ミサイルは、そのまま対戦車砲の主役になっていくかと思われました。しかし、そうはなりませんでした。
1991(平成3)年の湾岸戦争ごろまでの大戦車戦は、現在ではほとんど行われることはなく、市街戦を中心としたゲリラ戦が数多く行われるようになっています。こうした場合、遭遇戦が多く、また距離は至近で速射性が求められるようになります。このような戦いでは、敵の位置を正確に入力してからでないと撃つことのできない対戦車ミサイルは不利で、目視で構えてすぐに発射できる対戦車ロケットなどが有利に働きます。また、ミサイルはどうしてもコストが高く、通常の無反動砲や対戦車ロケットのほうが、使いやすいという面もあります。
現在、対戦車兵器として主力になっている無反動砲や対戦車ロケット、対戦車ミサイルという3つの兵器。今後もそのシチュエーションに合わせて、さまざまに使い分けられていくことになるのでしょう。
月刊PANZER編集部
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