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STAP細胞事件から10年
1.小保方さんは、不正を働いたか?
STAP細胞事件から10年が経ちました。あの事件は、一体何だったのでしょうか?事件から10年の時が流れた今、医師として、日本科学史上の大事件であったこの事件が忘却されて行く状況に、私は、異を唱えたいと思います。
まず、この事件には、2つの異なる問題が絡み合っていました。その2つの問題とは、
(1)STAP細胞は存在するのか?
(2)小保方晴子さんは研究不正を行なったのか?
です。ここで強調しなければならない事は、上の2つの問題は、全く別の問題だと言う事です。上の2つの問題は、挙証責任の所在が全く異なります。(1)の挙証責任は、言うまでも無く、小保方さんと横山教授を始めとした、STAP細胞の存在を主張した研究者の側に有りました。一方、(2)は、小保方晴子さんが不正を行なったと主張する人々の側に京商責任が有ったのです。それにも関わらず、10年前の事件当時、この2つの問題は混同されました。その混同の結果、特に(2)について、挙証責任を負う側であったマスコミは、全く挙証責任を果たさなかったと、私は考えます。
当時のマスコミも、そして、理由はこれから述べますが、事件を「調査」した理研も、小保方晴子さんが不正を行なった証拠を何ら示さなかったと言うのが、事件についての私の総括です。正確に言うなら、(2)は、
(2)’ 小保方晴子さんは、ES細胞を用いて、有りもしないSTAP細胞を捏造したのか?
と言う問題です。しかし、マスコミも理研も、実は、この(2)’を全く証明していなかったのです。
2.STAP細胞の謎
先ず、(1)のSTAP細胞は存在するのか?は、純粋に自然科学上の問題です。従って、これについて私は答える事は出来ません。私のみならず、現状では、誰もこの科学上の問題に答える事は出来ません。誰かがこの実験を再現して、或いは別の方法で実験を行ない、STAP細部の存在を証明すれば「STAP細胞は存在する」と言えます。しかし、現時点では、類似した細胞の報告は有りますが、それに確実に成功した研究者は居ない様です。
一方、「STAPは存在しない」と断言する事は、「悪魔の証明」です。「存在しない」と言える人は居ません。従って、2024年現在、(1)のSTAP細胞は存在するか?と言う問いに答える事の出来る人は居ないのです。
そこで、(2)’の問題ーー小保方晴子さんは、ES細胞を用いて、有りもしないSTAP細胞を捏造したのか?を論じる事にします。これは、検証可能だからです。しかし、結論から言えば、10年前、この証明は、為されていなかったのです。
3.STAP細胞は、本当にES細胞だったのか?
もう一度言いましょう。問題は、
ーー小保方晴子さんは、ES細胞を使って、有りもしないSTAP細胞を捏造したのか?ーー
と言う問題です。言い換えるなら、
−−STAP細胞とは、ES細胞だったのか?−−
と言う問題です。他の事柄は今と成っては、どうでも良いのです。これだけが問題です。
確かに、小保方さんの側には、電気泳動のゲルの問題や、テラトーマの写真の問題など、論文執筆の上で、複数の問題が有りました。その中には、確かに「不正」と呼ばれても仕方の無い点であった可能性も残されています。しかし、これらの問題−−ゲルの問題やテラトーマの写真の問題−−は、全くもって、事件の核心ではありません。事件の核心は、あくまでも、STAP細胞は、ES細胞であったのかどうかです。そして、もし「STAP細胞は、ES細胞であった」と主張するのであれば、そう主張する人は、それを証明するべきなのです。しかし、「STAP細胞は、ES細胞であった」事は証明されたのでしょうか?
繰り返しますが、私個人の判断は、10年前の事件、騒動の中で、「STAP細胞は、ES細胞であった」事は証明されていなかった、と言う物です。
しかし、医療関係者、科学研究者を含めて、多くの人々は、マスコミ報道を鵜呑みにし、今も、「小保方さんは、ES細胞を使って、有りもしないSTAP細胞なる細胞を捏造した」と信じています。では、そうした人々にお尋ねします。ならば、STAP細胞がES細胞であったとする主張には、一体いかなる科学的証拠が有ったのでしょうか?
4.「STAP細胞=ES細胞」仮説の不合理
「小保方さんは、ES細胞を使って、有りもしないSTAP細胞なる細胞を捏造した」と言う主張は、不合理に満ちています。もし、この主張をするのであれば、その人は、以下の疑問に答えなければなりません。
(1)小保方さんは、いかにしてES細胞を入手したのか?
(2)仮に、小保方さんが、ES細胞を入手出来たとして、それを「STAP細胞」として若山教授に渡した時、若山教授は、それがES細胞だと気が付かなかったのか?
(3)若山教授は、小保方さんから「STAP細胞」として手渡された細胞を使って、キメラマウスを作成し、その胎盤が光っている事を自ら認めている。これは、その細胞が胎児のみならず、胎盤の形成にも加わった事を意味している。しかし、ES細胞は、胎盤形成には加わらないと言うのが、細胞生物学の常識である。従って、細胞生物学の常識に従うなら、小保方さんが横山教授に渡した細胞はES細胞とは考えられない。これをどう説明するのか?
(4)理研が行なった「STAP細胞」の遺伝子解析は、「STAP細胞」がES細胞であった事を証明したのか?
等です。(他にも有りますが、とりあえず、これだけにしましょう。)これら4つの問いに対する私自身の答えはこれから書きますが、もし、「小保方さんは、ES細胞を使って、有りもしないSTAP細胞を捏造した」と主張するのであれば、その挙証責任は、そう主張する人々に有ります。ですから、そう主張する人々には、上の4つの疑問に答えて頂きたいのですが、先に、この4つの疑問に対する私自身の答えを申し上げましょう。
5.胎盤は、偶然光ったのか?
上の4つの疑問に対する私自身の答えは、以下の通りです。
(1)小保方さんが「STAP細胞の捏造」に利用したとされるES細胞は、小保方さんが理研での研究を開始する前に、理研から他の研究施設に移動した研究者が、理研に「置き忘れて行った」細胞だとされています。しかし、その研究者自身は、置き忘れを否定しています。又、若山教授も、置き忘れを否定する証言をしています。更に、ここが重要ですが、そのES細胞が入っていた試験管には、「ES細胞」と書かれてあった訳ではないのです。ただ、そのES細胞作製に当たって使われたマウスの系統が書かれてあっただけなのです。小保方さんが、そのマウスの系統だけを見て試験管の中身がES細胞であったと認識できたとは考えられません。従って、仮に移動した研究者が、理研を去る際に、ES細胞が入ったその試験管を理研に置き忘れて行ったと仮定しても、小保方さんが、その「置き忘れて」行かれた試験管を見てその中身がES細胞である事を知って、「捏造」に利用出来た筈が無いのです。従って、小保方さんが、ES細胞を入手出来たとは考えられません。
(2)小保方さんが作製した「STAP細胞」は、培養液の中で浮遊する細胞でした。一方、ES細胞は、培養器の壁に付着します。従って、仮に、若山教授が、小保方さんから「STAP細胞」と偽って、ES細胞を手渡されたと仮定した場合、この分野の第一人者である若山教授が、その細胞がES細胞である事に気付かず、騙されるとは、到底考えられません。
(3)ES細胞は、胎盤形成には加わらない、と言うのが、細胞生物学の常識です。しかし、もし、この常識を破って、ES細胞が胎盤形成に加わったのだとしたら、それはそれで大変な発見です。小保方さんは、「ES細胞を使って横山教授を騙そうとした」のに、偶然(!)ES細胞が胎盤形成に加わると言う大発見をしたのでしょうか?これについては、そもそも胎盤は本当に光っていたか?と言う反論が予想されます。しかし、これは科学上の議論です。従って、大いに論じられてしかるべきなのですが、何故、その後、議論されなくなったのでしょうか?そして、ここが決定的に重要なのですが、そもそも、胎盤が光ったと最初に言ったのは、小保方さんではなく、若山教授だったのです。(この事は強調しておきます。)それなのに、何故、「胎盤が光った」という報告を「小保方さんの嘘」ででもあったかの様に語るのでしょうか?
(4)理研は、「STAP細胞」(とされた細胞)とES細胞のDNAを比較し、両者の塩基配列が高度に一致すると発表しました。しかし、理研は、両細胞の元であったマウス同士の遺伝子の比較はしていません。これでは、「STAP細胞」は、ES細胞であったとは言えません。理研のこの「遺伝子解析」は、「STAP細胞」はES細胞であったとする主張を全く証明していないのです。
この様に、「小保方さんはES細胞を使って、有りもしないSTAP細胞を捏造した」とする仮説は、全く証明されていないのです。それどころか、そもそも小保方さんは、ES細胞を入手出来たとは考えられないのです。
6.小保方さんは、自分の実験を再現している。
そもそも、小保方さんは、マウスの細胞を弱酸で処理し、GFPの活性化させて、緑色に発光する細胞を作製しましたが、キメラ作製は若山教授がやった実験です。しかし、その若山教授は、理研がSTAP細胞の検証を行なった際、何故か、そのキメラ作製の再現実験を行ないませんでした。その為、理研は、他の研究者にキメラ作製の再現実験を行なわせたのですが、キメラ作製の再現実験は成功しませんでした。だからこそ、「STAP細胞」の存在は確認されない、と言う事に成ったのですが、もう一度言います。そのキメラ作製を担当したのは、若山教授です。ですから、当たり前の事ですが、キメラ作製が再現されなかった事は、小保方さんが「捏造」を行なった証拠には成り得ません。当然、小保方さんには、何の責任も有りません。もし、小保方さんが実験上、「捏造」をしたと言うのであれば、それは、小保方さんが担当した実験についてでなければならない事は言うまでも有りません。
そして、決定的に重要な事実が有ります。それは、小保方さんは、自分が担当した実験を理研の監視下で45回行ない、40回成功させていたと言う事実です。皆さんは、この事を御存知でしょうか?小保方さんは、あの緑色に光る細胞の作製を理研の監視下で45回行ない、40回成功させているのです。これは、理研が認定した事実です。しかし、しかし、驚くべき事に、新聞やテレビは、理研自身が認めたこの事実を殆ど報道しませんでした。その事は、事件当時、小保方さん攻撃の急先鋒であった毎日新聞科学部の須田桃子記者が、自身の著書『捏造の科学者』の中で書いているので、以下に引用したいと思います。
−−質疑応答で相澤氏は、小保方氏の「200回以上成功」発言について、検証実験でも45回ほどの実験のうち40回以上で緑色蛍光を発する細胞塊がわずかながら出てきていることを挙げ、「緑色発光を持った細胞塊が出た、ということをもって成功というなら、『200回以上再現している』という言い方は成り立つんだろう」という解釈を示した。「ただ、その細胞塊が本当にリプログラミング(初期化)されたものなのかというなら話は別だ」。報告にあったように、できた細胞塊の数は一桁少ないうえに、緑色発光のほとんどは自家発光と区別できず、多能性も証明できない、というのが現実の結果だった。小保方氏が述べていた「コツ」の詳細も結局、わからずじないだったという。−−
(須田桃子(著)「捏造の科学者/STAP細胞事件」(文春事件・2018年)390ページ)
もう一度言いますが、須田桃子記者は、小保方さん攻撃の急先鋒だった記者です。ですから、当然ながら、理研の記者会見で、理研の相澤氏が述べた言葉も、この様に、否定的な文脈の中で引用しています。しかし、それでも、その須田桃子記者が、理研の相澤氏が「検証実験でも45回ほどの実験のうち40回以上で緑色蛍光を発する細胞塊がわずかながら出てきていることを挙げ、」と書いているのです。その須田記者が、理研側が、小保方さんの再現実験において「45回ほどの実験のうち40回以上で緑色蛍光を発する細胞塊が出た」事を認めたと伝えているのです。須田記者がそれをどう評価するかは、問題ではありません。須田記者がそう考えようと、理研の側は、「45回ほどの実験のうち40回以上で緑色蛍光を発する細胞塊が出た」と認定していたのです。
ですから、あの緑色蛍光を発する細胞が何であったのか?と言う科学的な解釈の問題とは別に、小保方さんは、あの緑色蛍光を発する細胞の作製において、「捏造」などしていなかったと見て良いのです。STAP細胞が存在するかどうかはわかりません。ーーわからないままです。ーーしかし、小保方さんが「ES細胞を使って有りもしないSTAP細胞を捏造した」とする主張は、虚構であったと私は判断します。
(この記事の見解は、西岡の個人的見解であり、いかなる組織、団体とも無関係な物です。)
(終わり)
西岡昌紀(にしおかまさのり)
昭和31年(1956年)東京生まれ。内科医(脳神経内科)。近著は小説『三つのチーク県の民謡』(文芸社・2020年)、『オッペンハイマーはなぜ死んだか/長崎に原爆が落とされた謎を解く』(飛鳥新社・2021年)。音楽誌『ショパン』に連載を寄稿中。趣味は、ストリート・ピアノ。
STAP細胞事件から10年ーーSTAP細胞は、本当にES細胞だったのか? : 徒然なるままに
[mixi] STAP細胞事件から10年ーーES細胞でSTAP細胞を捏造する事は出来たか?
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