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2022年12月18日 07時48分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/220678?rct=editorial
福島第一原発事故の避難者に対し、応急住宅から退去するよう迫る訴訟が、東京や福島で起こされています。退去を求めているのは福島県です。県民の生活を支えるはずの自治体が住居の明け渡しを求めて法的手段に訴えるなんて、穏やかではありません。
◆事故の避難者が被告に
被告となっているのは、原発事故後、福島県から逃れて東京都や埼玉県の国家公務員住宅などに入居した人たちです。国からの避難指示はありませんでしたが、被ばくの影響を避けるために故郷を離れた「自主避難者」です。
この人たちには当初、災害救助法に基づいて、全国の避難先で応急住宅が無償で提供されました。その費用は福島県に請求後、最終的には国が負担します。
避難指示がないため、東京電力から賠償をほとんど受けられず、自己負担で暮らしてきた人々にとって、住宅の無償提供は避難生活の頼みの綱でもありました。
その住宅提供を福島県は二〇一五年、国の復興政策の見直しに従って一七年三月に終了することを決定。民間賃貸住宅への転居は経済的負担が重く、避難者の多くは避難先で公営住宅を探すか、福島に帰るかの選択を迫られます。
事故後に心身を病んだ人、非正規の職しかなく困窮する人、都営住宅に何度応募しても競争率が高く当たらなかった人もいます。
県は一七年四月から二年間、家賃を負担すれば住み続けられる特例措置を講じましたが、それでも事情を抱えて転居できない人が残りました。
県は特例措置が切れる一九年以降、残った人に住宅からの退去や家賃二倍の損害金の支払いを求める裁判や調停申し立てを始めました。県によると現在退去を求めているのは二十四世帯。うち十七世帯に法的措置が取られています。
そもそも災害救助法は一九九五年の阪神淡路大震災の教訓を踏まえて充実が図られた法律です。法律に基づく住宅の提供を終える際には、被災者の要望をくみ取ることが求められているにもかかわらず、原発事故の避難者にはなぜ強硬手段が取られるのでしょう。
東京都世田谷区は民間賃貸などへの転居が難しい避難世帯には区営住宅に入居してもらうなど、避難者の事情に寄り添いました。
こうした支援方法もあったのに入居期限が切れたらあたかも「不法占拠者」のように扱い、実家にまで県職員が訪ねて未納家賃の支払いを求める福島県の手法に、強い違和感を覚えます。
県の姿勢に避難者から異議申し立てが上がっています。東京や埼玉の国家公務員住宅に住む十一世帯が今春、福島県と内堀雅雄知事を相手に、精神的苦痛に対する損害賠償を求める裁判を東京地裁に起こしたのです。
原発避難者を「国内避難民」とみなし、国際人権法が保障する居住権があるとの主張を前面に掲げた例のない裁判です。原告側弁護団長の井戸謙一弁護士は二〇〇六年、住民の訴えを認め、志賀原発2号機の運転を差し止める判決を出した裁判官として知られます。弁護団は裁判をこう考えます。
原発事故が起きるまで安全神話に縛られていた日本では、過酷な被害に巻き込まれた人を救済する法律はないに等しかった。
井戸氏はこう言います。
「つまり『法に穴』がある危機的な状態が続いていた。避難民の居住権は国際人権法に照らしても最重要の権利。強制移動を迫るような福島県の手法は誤りだが、ではどんな対応ならよかったのか。裁判で明らかになれば法の穴を埋める新しい法理も見えてくる」
住宅の提供を打ち切ったのは福島県ですが、住民避難の原因をつくった責任は事故を起こした東電と、原発政策を進め、適切な監督を怠った政府にあります。
◆傍観する政府の無責任
にもかかわらず「福島県の判断を尊重する」としか言わず、避難者の苦難を見過ごす、自助を押しつけるかのように傍観を決め込む政府は無責任ではないか。
住まいは人々が暮らしを営む土台です。それを取り上げることは人生の破壊です。家を追い出される不安を抱えて年の瀬を過ごす避難者を思うと胸が痛みます。
「福島に帰ればいい」と思う人もいるかもしれませんが、原発事故で壊された生活の再建には、長い時間と支えが必要なのです。
避難者を切り捨てることは、やがて私たち自身にもはね返ってきます。法の穴を埋める法理とは、人間らしい支え合いに裏打ちされたものであるはずです。
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