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自治体が見た「引きこもり家族」の窮状、全国初の専門支援でできること
http://www.asyura2.com/18/social10/msg/140.html
投稿者 うまき 日時 2019 年 3 月 08 日 23:12:32: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

2019年3月7日 池上正樹 :ジャーナリスト
自治体が見た「引きこもり家族」の窮状、全国初の専門支援でできること

引きこもり長期高齢化に伴う「8050問題」に対応する先進自治体の1つが岡山県総社市。この度、新たに立ち上げた「ひきこもり家族会」で明らかになった、関係者の窮状とは(写真はイメージです)

引きこもりの「8050問題」に
立ち向かう自治体初の試み

 引きこもり長期高齢化に伴う「8050問題」が、ホットな話題になっている。

 8050問題とは、「はち・まる・ごーまる」と読む。80代の親が50代の収入のない子の生活を支えて行き詰まることで、8050問題に近づく「7040世帯」も含めて指すことが多い。特に最近増えているのが、制度の谷間に埋もれた「8050問題支援の先進自治体はどこですか?」というメディアや現場の行政関係者からの問い合わせだ。
 
 そんな“8050問題先進自治体”の1つと言えるのが、2017年4月にいち早く基礎自治体では全国初となる「ひきこもり支援センター」(愛称“ワンタッチ”)を開設した、岡山県総社市だろう。

http://www.sojasyakyo.or.jp/since2018/09hikikomori/hikikomori.html

 この“総社モデル”と呼ばれる取り組みは、市の後押しを受けて、社会福祉協議会の中に「ひきこもり支援センター」の専門相談員2人を配置。相談員が、電話やメール、来所、訪問で無料の相談に応じてきたほか、民生委員らを通じた実態調査や、引きこもる人たちやその家族などが気軽に立ち寄れて安心できる「居場所」づくり、相談員と一緒に本人や家族をサポートする「ひきこもりサポーター養成講座」を開催するなど、それぞれのニーズ合わせた対応をしてきた。

 そんな中で、同センターが最近、必要に迫られて立ち上げたのが「ひきこもり家族会」だ。

 センター開設から2019年1月末までに受けた相談者数は、延べ174人。相談の内訳は、本人や家族だけでなく、兄弟姉妹、親族、地域住民と多岐にわたる。そのうち、何らかの形で本人と相談できたのは58件。家族のみの相談は60件。家族にも会えず、関係機関への情報提供止まりになっているケースが56件あった。

 ひきこもり支援員で社会福祉士、精神保健福祉士でもある佐々木恵さんによると、家族のみの相談を聞いていると家族が孤立してしまっていて、同じ境遇にある家族が話し合える場が欲しい、という声が何人かの家族から上がったという。

 2018年度に入り、佐々木さんらは家族会への参加を希望する人たちに声をかけ、家族会の設立準備会を毎月開いてきた。その集まりの中で家族会をつくろうという機運が高まり、8月に発足したという。

 とはいえ、家族は引きこもる子の存在を「家の恥」として隠す傾向が強く、なかなか外に悩みを発信することができないため、横につながれないことが多い。しかし同市では、市で活躍できる人対象の「ひきこもりサポーター養成講座」を受講していた家族たちの間で、「自分たちが変わらなければいけない」という意識に変わっていた点が大きな原動力になった。

「悩みを家族だけで抱え込んでいる他の人たちにも、家族会ができたことを知ってもらいたいと、メディアに出てもOKのご家族が率先して呼びかけて、設立記念式典でレモンの木の植樹を片岡聡一市長と一緒に行いました。そんなメディアを通じた姿が発信力となって、ご相談がまた増えたんです」(佐々木さん)

一軒家を借りてリラックス、
何でも話し合える仲になれた

 家族会は、平日の午後、一軒家を借りて開所された居場所の「ほっとタッチ」で、毎月第3木曜日の午後2時から4時頃まで開かれている。

「最初は会議室で開かれていたのですが、一軒家を借りるようになって、リラックスできる雰囲気なのか、自分のご家族の話を打ち明けてくれるようになりました。『ご近所の人には言えないけど、家族会なら同じ境遇にある家族同士なので、ここで話して帰ると肩の荷が下りた感じがする』と話される80歳代の親御さんもいました」

 また8050問題への対応としては、「地域を巻き込む」ことも重要なキーワードの1つだ。

 総社市は、社協の中に「ひきこもり支援センター」があるため、地域の行事などの情報にもコミットできて、それらの行事への参加者を募ることもできる。民生委員などの会議に出席し、地域でのお手伝いや体験できるような役割があるときは声をかけてほしいなどとお願いしてきた。

「地域には、まだまだ色々な資源が潜在しています。地域の方々にお声をかけて、引きこもりという特性を理解していただき、参加させていただく機会をつくってもらっています。サポーターになっていただいた方も地域のあちこちにいますので、役割づくりにも協力してもらったり、孤立している家族に関する相談を受けたりしています」(佐々木さん) 

 専門相談員は、必要に応じて本人や家族への家庭訪問も行っている。たとえば「電気が止まっていて心配」との情報があれば、その家庭を訪問する。しかし、本人から「電気を必要としていない」と言われると、“伝書鳩”のように「すり合わせ」を求められることも少なくない。

グレーゾーンにいる人々の叫び
専門スタッフの拡充が必要

 こうしたきめ細かな対応ができるのも、「ひきこもり支援」に特化した部署だからだ。

 ただ、周囲が「何かしら障害があるのではないか」「制度を受けたほうがいいのではないか」と感じていても、本人自身が「障害ではないから」などと捉えている場合、専門職として関わる中で、佐々木さんには迷いがあるという。

「これからどういう選択肢があるのかを提案させていただき、本人の選択で就労した仕事が失敗したとしても、『別の方法ででも頑張れるんだ』と気づいてもらえるよう、促しています」 

 佐々木さんによると、「引きこもり」と断定できない、どこにも該当しないグレーゾーンにいて、居場所を探している人が多いことも実感しているという。

「ひきこもり支援センターという看板を掲げた相談窓口ができたことでわかりやすくなり、来てもらいやすくなったことは強く感じます。『今まではどこに相談していいのかわからなかった』と、相談者の方々から何度も言われました。このセンターができたので、引きこもり当事者の方からの相談も多くなったように感じます」

 わかりやすさを伝えることは、相談につなげるための重要なキーワードだと言える。

 現在の相談員は2人体制で、手一杯の状態だという。これから社会が8050問題に向き合うためには、こうした専門のスタッフを拡充していくことによって、相談につながれずにいる家族に対し、きめ細かなサービスが提供できるのではないか。

(ジャーナリスト 池上正樹)

※この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方、また、「こういうきっかけが欲しい」「こういう情報を知りたい」「こんなことを取材してほしい」といったリクエストがあれば、下記までお寄せください。

Otonahiki@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)

 なお、毎日、当事者の方を中心に数多くのメールを頂いています。本業の合間に返信させて頂くことが難しい状況になっておりますが、メールにはすべて目を通させて頂いています。また、いきなり記事の感想を書かれる方もいらっしゃるのですが、どの記事を読んでの感想なのか、タイトルも明記してくださると助かります。
https://diamond.jp/articles/-/196124  

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