2018年12月14日 国民生活にしわ寄せし、富裕層優遇で不公平を拡大する与党税制改正大綱の決定について(談話) 社会民主党幹事長 吉川はじめ 1.本日、自民・公明両党は、当初の予定より2日遅れで2019年度与党税制改正大綱を正式に決定した。今回の大綱では、低所得者に負担の大きい消費税率の10%への引き上げを来年10月に「確実に実施する」と宣言した。その一方、消費税増税による「需要変動の平準化」を名目に、財界の要求に応える形で「マイカー」や「マイホーム」を購入できる層に対しては、減税を実施することとした。「平準化」のために特定の層を減税するというのは、いまだに安倍政権がトリクルダウンの呪縛から脱することができないことの証左であり、今回の大綱を通じて、「不公平税制」の極みであると言うほかはない。 2.そもそも森友問題をめぐる財務省による公文書の改ざん、片山さつき地方創生相による国税庁への口利き疑惑など、国民の財務省・国税庁に対する信頼は失墜し、税に対する不公平感は増大している。責任を部下に押しつけ、政治責任を一切取ろうとしない麻生太郎財務相に至っては、国民に対し信頼回復に努める姿勢は微塵もない。即刻、辞任すべきである。 3.また、与党大綱の決定プロセス自体が不透明であり、国民に公開されたオープンな場での議論がなされたとは到底言えない。少なくとも、与党税制調査会の議事録を公表するなど、国民に説明責任を果たす対応があって然るべきである。 4.消費税増税のたびに、住宅や自動車に関する減税が打ち出されるが、逆進性の高い消費税率を引き上げながら、住宅や自動車といった高額商品への購入支援を進め、高所得層を優遇することには、疑問が残る。消費税増税で負担を被る低所得者層にはその恩恵はしたたり落ちない。人口減少により、「空き家」が問題となる中、いまだに政府与党は「持ち家政策」に固執している。自動車関係税制についても、地域の生活の「足」になっている軽自動車については減税の恩恵が及ばない。 5.「低所得者に配慮する観点から実施する」とされる軽減税率も、実際は税率8%への据え置きであり、真の逆進性緩和策になっていない。しかも軽減税率によって、高額な飲食料品の購入をする富裕層ほど軽減の効果が大きくなる公平性の問題は、手つかずのままである。軽減税率の適用の条件も複雑で、様々なケースが考えられ、消費者や事業者の混乱を招くことは必至である。消費増税自体を取りやめ、不公平税制の是正こそ行うべきである。 6.富裕層が「相続税対策」として利用し、格差の固定をもたらす教育費贈与の優遇措置を延長したことも容認できない。金融所得への課税強化もなされない。社民党が求めていた、シングルマザーなど未婚のひとり親への支援は、「未婚の出産を助長する」、「伝統的な家族観に反する」などを主張する自民党に異論が強かったことから、一定の要件(事実婚状態でない、児童扶養手当を受給、前年の合計所得金額が135万円以下)のひとり親に対し、個人住民税の非課税措置を講ずるとともに、1万7500円を給付することとなった。寡婦(夫)控除そのものの適用などの改革は先送りされたが、なぜ住民税だけで所得税の支援ができないのか。子どもの貧困に対応するためというのであれば、親の婚姻歴で差別されるいわれはない。 7.来年10月の消費税率引き上げ時に法人事業税の一部を国税(地方法人特別税)として徴収し、人口と従業者数によって地方に再配分する仕組みを廃止することが決まっていたが、今回、偏在是正の名目で、法人事業税の一部を分離して、特別法人事業税・特別法人事業譲与税を創設することにされた。自治体固有の税を国税化することは、課税自主権を侵害するとともに、地方の財政基盤の弱体化につながり、地方分権の推進に逆行するものである。法人が受けた行政サービスに応じて負担する地方税を、応益関係のない地方に配分することは、応益負担や負担分任という地方税の大原則にも反すると言わざるを得ない。また大都市特有の膨大な財政需要への対応についても何ら考慮していない。地域間の税収格差の是正は、本来、地方交付税で調整されるべきであり、地方交付税の充実と、国から地方への税源移譲こそ求められている。その際、地域偏在性の少ない所得税・消費税を対象に国税から地方税への税源移譲を進めるべきである。 8.「ふるさと納税」について、「健全な発展に向けた制度の見直し」として、過度な返礼品を送付するなどの場合、制度の対象外とする見直しが行われる。利用者の多くは、実質2000円の負担で得られる返礼品が目的であると考えられ、自治体の「官製通販」として、無償であることが前提の「寄附」とはかけ離れた実態となっている。また、寄附者の年収が高いほど、控除される年間上限額が高くなるとともに、多くの返礼品を受け取ることができ、垂直的公平の観点で大きな問題がある。居住地でない地方自治体への寄附により、居住地である自治体から税額控除を受けることは、受益と負担との関係を歪める制度でもある。過剰な返礼品競争や、自治体同士の税収の奪い合いにもなっている。多くの問題のある「ふるさと納税」については、一旦廃止し、寄附の本来の趣旨に沿った制度に改めるべきである。しかし、今回の見直しは、「ふるさと納税」の問題点を解決するものではない。国の意向に地方を従わせる手法は、分権・自治の観点から問題がある。 9.社民党は、格差が拡大する中、社会的弱者の生活水準を落ち込ませる消費税増税に断固反対するとともに、「マイカーよりも公共交通」、「マイホームよりも公共住宅」のビジョンを提示し、富裕層・大企業を優遇する「不公平税制」全体の抜本改革を求めつつ、次期通常国会の論戦に挑んでいく。 以上 http://www5.sdp.or.jp/comment/2018/12/14/%e5%9b%bd%e6%b0%91%e7%94%9f%e6%b4%bb%e3%81%ab%e3%81%97%e3%82%8f%e5%af%84%e3%81%9b%e3%81%97%e3%80%81%e5%af%8c%e8%a3%95%e5%b1%a4%e5%84%aa%e9%81%87%e3%81%a7%e4%b8%8d%e5%85%ac%e5%b9%b3%e3%82%92%e6%8b%a1/
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