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Netizen College
学長兼事務員 加藤哲郎
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フェイクな「ダブルスピーク」にご用心!
2018.11.15
◆ アメリカ中間選挙結果の評価は、投票結果と同じように、分かれています。僅差ですが下院での 民主党の勝利、女性や人種的少数派、多様な宗教出自の候補の大量当選、下院議長と各種委員会委員長独占、それに総投票数での圧倒的勝利を見ると、トランプの敗北、アメリカ・リベラリズムの健全性を示したように見えます。
しかし、上院はトランプ与党の共和党の勝利、トランプ自身も「大成功」宣言、 大統領選なみの全国遊説とSNSを駆使した巨大なプロパガンダ、フェイクニュース戦略が成功して、宗教右翼や白人労働者ら4割の支持層を強固にかため、共和党内反対派を抑え込んで、2年後の大統領選再選の足がかりをつかんだという総括もありえます。
民主党内では、サンダース支持で「民主主義的社会主義者」を自負する若い候補者が、若者や女性、マイノリティの共感をよび議席を獲得しましたが、民主党全体をまとめる力になりうるかは未知数です。
「反トランプ」の根強い存在は示されましたが、トランプの排外主義・米国第一主義・独断政治を揺るがすかどうかは、これからです。早速トランプによるジャーナリスト差別やホワイトハウスの幹部更迭・人事刷新が始まりました。移民政策や貿易政策でも、「アメリカン・ファースト」は、ますます強まりそうです。
◆ そのアメリカからやってきたペンス副大統領に対して、日本の安倍首相は、とうとう「日米物品貿易協定(TAG)」という造語を使えず、サーヴィスを含む「自由貿易協定(FTA)」へと押し切られたようです。防衛省の装備をアメリカの言い値で過払いし、自動車追加関税を交渉中は課さないと引き延ばしてきましたが、自動車ばかりか金融や医薬品に及ぶのは時間の問題です。
中国の習近平主席とは、首相は「競争から協調へ」など「新3原則」で合意したと報じられましたが、中国側の記録ではどうやらこれも嘘で、中国側に希望を述べたが相手にされなかった、というのが真相のようです。ツイッターを使ったフェイクはトランプ並ですが、すぐに底が割れて、稚拙です。
ジョージ・オーウェル『1984』には、「ビッグ・ブラザー」の独裁下で蔓延する、有名な「ニュースピーク」「ダブルスピーク」が登場します。漢字もまともに読めないファシスト独裁者のもとで、いつのまにやら日常言語が単純化され、ねじまげられ、ついには「戦争は平和である」「2足す2は5である」と語り、信じなければ生きていけない世界。国会での「適材適所」大臣の答弁を見ると、遠い遠い先の話ではありません。
植民地朝鮮の「徴用工」を「労働者」に、「外国人低賃金労働者」を「国際貢献の技能実習生」に、米国の「有償軍事販売」を「有償軍事援助」と言い換え、公文書の改竄さえ責任を問われないこの国は、『1984』へと退行しつつあるのです。権力の分立と、権力に抵抗し監視するメディアが、切実に必要です。
◆ そして昨14日のプーチン大統領と安倍首相の首脳会談、「1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速」「2島先行も選択肢、日ロ領土交渉 4島帰属が焦点」などと報じられていますが、これは、「安倍外交」の危険な賭であり、北朝鮮との「拉致問題」交渉と共に、安倍ファシスト支配の基礎を揺るがす可能性を持ちます。
表面的には、「固有の北方領土四島一括返還」を主張する日本会議等右翼勢力の期待に応えて在任中の領土問題解決をはかったように見えます。しかし、右の朝日新聞デジタル11月15日の図解した歴史的経緯(http://netizen.html.xdomain.jp/AS20181115000344_commL.jpg)を視野におくと、プーチン大統領の唐突な9月「前提条件無しの平和条約」 提案にあわてて、日本側が「前提条件無しは困難」と伝えてしぶしぶ出した回答が「1956年の日ソ共同宣言を基礎に」という話で、完全にプーチンペースです。官邸は、「4島の帰属問題」へと進む「二島先行」で方針変更ではないとしていますが、信用できません。明らかに、「4島一括から転換」です。
「二島返還論」にも、少なくとも3種類あります。ロシア側は4島一括返還は一貫して否定し、そもそも領土問題は存在しないというのが基本的立場ですから、日本側が頼ったのは、1956年宣言通りの「平和条約締結後の歯舞・色丹引き渡し」です。しかし、これは入口の変更にすぎません。
第二に、かつて鈴木宗男議員や外務省の一部に「二島先行・段階的返還論」がありました。しかし当時は、鈴木議員らは政治的謀略で失脚させられ、否定されました。経済支援をからめた今回のプーチン・安倍合意は、かつて否定されたこの「二島先行・段階的返還論」に、限りなく近いものです。
おまけに第三の「二島譲渡論」が、ロシア側の公式見解です。つまり、「引き渡し」とは「返還」ではなく「譲渡」というのが、旧ソ連以来のロシアの主張で、これには日ソ中立条約からヤルタ密約、サンフランシスコ講和条約にいたる現代史の両国での解釈・歴史認識が、深く関わっています。
そもそも1956年の日ソ共同宣言には「日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡す」とあって、「返還」など一言も書いておらず、ロシア側が「譲渡」と訳してきた「引き渡し」のみが入っているのです。それも、アメリカ・中国・韓国等当時の関係諸国の思惑もからんでいました。対米貿易の「TAG」と「FTA」 とよく似た問題が、これから「返還・譲渡」と世界向けと国内向けで使い分けられ、両国とも厳しい国内世論に向き合いながら、進んでいくことになります。
◆ ただし抵抗のメディアは、消えたわけではありません。増大する米国からの兵器購入の実態に迫る「東京新聞」の「 税を追う」シリーズ、旧優生保護法の強制赴任手術を先駆的に報じてきた「早稲田クロニカル」、アイヌ人骨の行方や核研究を系統的に追い続ける「京都新聞」連載「帝国の骨」「軍学共同の道」など。これらに共通するのは、単発の調査報道ではなく、日本の戦争・占領・冷戦の現代史に入り込み、近隣世界の眼を意識しながら、今日的な市民的歴史意識形成に加わっていることです。
最近出た石井暁『自衛隊の闇組織ーー秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)も、その長期の取材で、旧帝国陸軍を引き継いだ自衛隊「別班」の憲法違反の海外活動、米国インテリジェンスとの秘密の共働を暴いています。
私も、これらにも学びながら、「科学技術の軍事化」の問題を、731部隊の細菌戦と人体実験、旧優生保護法の強制不妊手術の問題などから追いかけて行きます(https://mainichi.jp/articles/20180412/ddl/k26/040/407000c)。西山勝夫編・731部隊『留守名簿』(不二出版)から見出した「長友浪男」軍医少佐の経歴の問題は、11月17日(土)の八王子講演から、12月16日(日)戦医研例会・東京大学講演 などいくつかの講演・研究会・シンポジウム報告で、問題提起していきます。
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