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狡猾な安倍政権、弱体化するメディア…6年弱で国は変貌 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/241555 2018/11/13 日刊ゲンダイ 文字起こし 国の根幹が見るも無残に壊され(C)日刊ゲンダイ 安倍首相が官房長官時代に発表した「美しい国へ」と題した政権構想を焼き直し、「新しい国へ」を発表してから6年。この国は恐ろしいほど変貌を遂げてしまった。その変貌は表に見えていたものと、気が付いたらそうなっていたものがある。ここが安倍政権の狡猾なところだ。国民はのんきにお笑い番組を見ているうちに、国の根幹がすっかり変化してしまったのである。 国民監視を強める盗聴法改正に始まり、基本的人権や知る権利を踏みにじる特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を容認する安保法。憲法学者をはじめとする専門家の反対を歯牙にもかけず、世論の大反発も無視。現代の治安維持法といわれる共謀罪法も数の力で押し通した。 防衛予算はすでに6年連続で増大し、19年度は過去最大の5兆2986億円に膨張する見通しだ。トランプ大統領に脅され、米国製高額兵器を爆買い。安倍がなし崩し軍拡の口実に利用してきた北朝鮮危機は収束に向かいつつあるにもかかわらず、陸上配備型迎撃ミサイルのイージス・アショアの配備は着々だ。 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。 「政治的な目的といい、それを実現する手法といい、安倍政権は民主主義、立憲主義に反しています。選挙では有権者に耳当たりのいい公約を訴え、選挙に勝った途端、選挙期間中はおくびにも出さなかった法案を次々に出してくる。しかも、法律をつくる前提となる立法事実はデタラメばかり。世論や野党の反対には耳を貸さず、ウソを並べ立て、ロクに議論を重ねず、数を頼りに強引に法案を通す。自民党の支持基盤である財界の強い要望でゴリ押しした働き方改革関連法では、データ捏造がバレて裁量労働制拡大は頓挫しましたが、高度プロフェッショナル制度は通った。残業代ゼロで働かせ放題の高プロはまさに過労死促進法で、労働者保護の法規制が奪われた。憲法が保障する国民主権、平和主義、基本的人権をひっくり返すような政治が数の力を背景にゴリ押しされてきたのです」 ■ゴールデンタイムに自衛隊礼賛 そうやって、なし崩しに憲法を破壊してから、現実に合わせるように憲法改正に動く。ここも、安倍政権のずるさだ。連続2期6年までだった自民党総裁任期を3期9年に延長し、圧力と恫喝で3選を果たした安倍は、党人事であからさまな改憲シフトを敷いて、改憲の動きを加速化させるようにせっついている。側近の下村博文元文科相を憲法改正推進本部長、新藤義孝元総務相を衆院憲法審査会筆頭幹事に就けて尻を叩きまくっているという。腕まくりの下村は全国の各選挙区支部に「憲法改正推進本部」の設置を文書で要請。改憲を訴え、安倍政権を支える右派組織「日本会議」との連携も示唆した。 そんな中、露骨だったのが週末の11日、ゴールデンタイムに2時間枠で放送された「超スゴ!自衛隊の裏側ぜ〜んぶ見せちゃいます!」(テレビ東京系)だ。陸海空の全面協力で最新装備のほか、海洋進出を強める中国を念頭に3月に発足した陸自の水陸機動団の活動を紹介。ブルーインパルスのおっかけ女子まで登場させて、全編自衛隊のPR番組にしてたのである。女優の夏菜とお笑い芸人の博多華丸・大吉は、自衛隊の奮闘VTRに「スゴイ!」「スゴイ!」を連発。閉めは華丸の「本当になんか憧れる職業」という華丸のコメントだったが、ついにここまで来たかと嘆息した国民も多かったのではないか。 安倍政権の6年弱でテレビもすっかり、安倍色に染まってしまった。こうした番組を何の違和感もなく、見ている国民も国民だ。戦争に対する警戒感がすっかり、消え去ってしまったかのように見えるのだ。 その一方で、安倍は自身が疑惑のド真ん中にいるモリカケ問題からはいまだ逃げ回っている。森友学園問題では、安倍の国会答弁を契機に財務省は民主主義の根幹を破壊する公文書改ざんに走った。国家戦略特区を利用してオトモダチが切望する獣医学部新設をかなえた加計学園問題を巡っても、内閣人事局を通じて官邸に生殺与奪を握られた官僚が裏で走り回った。都合の悪い情報のヒタ隠し。こうして、安倍流の国家改造がどんどん進んでいる。こんな政権にやられっぱなしでいいのか。 安保法の強行採決で暴走に拍車(C)日刊ゲンダイ
構造改革で日本をおかしくした小泉政権の後を継いだ安倍は、第1次政権発足時の会見で、「まず初めに、はっきりと申し上げておきたいことは、5年間小泉総理が進めてまいりました構造改革を私もしっかりと引き継ぎ、この構造改革を行ってまいります」「私は、この構造改革をむしろ加速させ、そして補強していきたいと考えております」と言い切った。その言葉通りに、売国が進んでいることにも目を向けなければならない。 米や麦、大豆の安定供給を国費で担保してきた種子法が4月に廃止され、外資参入の扉が開いた。麻生財務相が国際公約した水道事業を民営化する水道法改正案も今国会での成立が確実視。安倍は「移民政策は取らない」と断言しながら、事実上の移民受け入れを急ピッチで進めている。出入国管理法改正案の本格審議がきょう(13日)の衆院本会議から始まった。 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は言う。 「保守を標榜する安倍首相は口では愛国を訴えますが、やっていることは売国そのもの。入管法改正案は安価な労働力確保を求める財界の要望の丸のみですし、無計画な外国人労働者の流入は賃金を押し下げる懸念があります。種子法廃止で国の礎ともいえる食材のタネを守らず、国民生活の生命線ともいえる水道の民営化で公共財を切り売りしようとしている。新たな利権を生み出すために規制緩和を推し進めるのは、新自由主義そのものです。安倍政権が恐ろしいのが、国民に政策への賛否を問わず、国会でまともに議論もせず、世論の理解も得ないままにやりたい放題を続けていることです」 ■カジノもFTAもトランプの言いなり 米国隷従も加速している。トランプに押し込まれたカジノ法案はスピード成立。輸入自動車への高関税措置で揺さぶりをかけられ、来年1月中旬から日米通商協議が本格化する。安倍はTAG(物品貿易協定)交渉と強弁しているが、その実態は紛れもないFTA(自由貿易協定)だ。異次元緩和で円安・株高を演出したアベノミクスもハナからデタラメ。金融緩和から引き締めに転じるタイミングを探っていたFRB(米連邦準備制度理事会)のプレッシャーに負けて動かざるを得ず、その結果が今の泥沼である。 マイナス金利で収益悪化に追い込まれた金融機関では不正が横行。年金まで鉄火場に突っ込まれ、国民の虎の子は蒸発しつつある。 その上、国民生活の基盤を壊す年金改革法で将来世代の給付カットを確実にし、改正介護保険法で利用者や家族の負担増を強いた。 現在進行形で国の形が変えられていることをどれほどの国民が気づいているだろうか。この5年半あまりで大メディアはすっかり骨抜きにされ、まともにニュースすら流さないのだから、絶望的な気分になる。 「大手メディアの報道姿勢は国民の知る権利に応えないばかりか、安倍政権の片棒を担ぐ御用機関に成り下がっていると言っていい。官邸の意向を垂れ流し、ヨイショ報道のオンパレードで、国民の暮らしを破壊する悪政の本質を知る機会を奪っている。問題を隠すよりも悪質です。中間選挙後のトランプ大統領の会見でCNNの記者が食い下がっていましたが、あれが権力を監視するメディアの本来のあり方です。彼が毅然とした態度で臨んだのは、事実を知りたいという国民の思いを背負っているからでしょう。メディアがおもねれば、安倍政権の暴走を許すことになってしまう」(法大名誉教授・須藤春夫氏=メディア論) 国民の暮らしと生命を守り、生活を向上させる。安倍政権が延命する限り、こうしたまっとうな政治が行われることはない。
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