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室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中
(c)小田原ドラゴン
室井佑月「因果は巡る」〈週刊朝日〉 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181107-00000022-sasahi-pol AERA dot. 11/8(木) 7:00配信 週刊朝日 2018年11月16日号 シリアでの拘束から解放されたジャーナリストの安田純平さんに対し、ネットを中心に繰り返される「自己責任論」。作家・室井佑月氏はその論調に皮肉を交え、警鐘を鳴らす。 * * * シリアで武装組織に3年間も拘束されていた安田純平さんが、無事に日本に帰ってきて、喜べない人ってなんなのだろう。 シリアへ行く前、安田さんは、それを止めようとする政府をTwitterなどで批判していたからなんだろうか? 安倍政権になってから、政府を批判する人を袋叩きにしたい集団がおるしな。 それとも、ほかの人が知り得ない貴重な情報を命がけで取得して、これから各紙各局の取材を受け、ど真ん中で光を浴びそうな彼に対する嫉妬なのだろうか? ま、ひとついえることは、世界の危険な場所へ、危険を承知で取材しに行くジャーナリストは必要だ。そして、国は国民を守る義務があり、国民は守られる権利がある。その大事な二つの事柄が安田さんを批判する人たちの頭から抜けている。 違う方向からいうと、彼らは今の自分にしか興味がなく、国が提示する情報だけで十分ということなのか? 国が自分に対し、最後の最後まで守ってくれるなんて信じていないから、そこから漏れない自分であるため、びくびくしてるのか? とにかく、彼らが安田さんを叩くとき好んで使う「自己責任」という言葉は、彼らがいちばん使われたくない場面で、自分に跳ね返ってくると思われる。それも、びくびくしながら従っていた国からだ。 先週号に「消費税の嘘」という話を書いた。この国は27年間、税収はほぼ変わっておらず、変わっているのはその内訳だと。 法人税や所得税が大幅に減り、消費税だけが増えている。 安倍政権はさらに消費税を上げ、一部の大企業やお金持ちがもっと儲けられるようにしたいようだ。 政府が急いで進めようとしている外国人労働者の受け入れ拡大もそう。 大企業にはありがたいことかもしれないが、今、低賃金で苦しめられている人たちは、外国人との競争でさらに苦しめられることになるのではないか。 この国はすでに超少子高齢化で外国人に労働力を頼らなくてはいけないのは、わかる。が、その前に、大企業の内部留保や、この国の最低賃金や過重労働をしないと食べていけない人々の話がなされないのはおかしい。 差別についても、安倍政権は寛容すぎないか? すでに、この国の最低賃金は先進国では下のほうだ。いずれ、この国の若者たちが海外へ出ていくことになるのかも。そこで待っているのは、差別だ。やられたことはやり返されると思っていたほうがいい。 と、この原稿を書いているあたしだって、貧困に陥り国から「自己責任」といわれる可能性はあるわけだ。でも、あたしは堂々と権利を主張し、保護を受けると思う。差別されたら理不尽だと怒る。だって、窮地に立たされた人を「自己責任」と叩いたことなんてない。その信用があるから、この国の法を守って、税金をきちんと払ってるんじゃ!
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