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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★滞貨一掃内閣の狙いは
https://wjn.jp/article/detail/5339694/
週刊実話 2018年11月1日号
10月2日に発足した第四次安倍改造内閣は、初入閣が12人を占めた。このうち、衆議院の場合当選5回以上、参議院の場合当選3回以上で閣僚経験を持たない「閣僚待機組」が10人と、大臣の椅子を待っていたベテラン議員を一気に入閣させたことになる。 総裁選で借りを作ったから、論功行賞はやむを得ないにしても、あまりにもリスクの大きい人事だ。第一に、新入閣の議員は舌禍事件を起こしやすいし、スキャンダルが出てくる可能性がある。そうなれば、内閣への批判が噴出する。第二に、待機組に押し出させる形で、女性閣僚が片山さつき氏だけになってしまった。女性の活躍を掲げる安倍総理に批判が向けられるのは、明らかだ。第三に、待機組大臣は官僚がなめてかかるから、強い政策を打ち出すことができない。 これだけのリスクを抱えながら、なぜ安倍総理が滞貨一掃を決断したのか。私は、来年の春の解散総選挙、あるいは夏の衆参同時選挙をにらんでいるのではないか、と考えている。解散の大義は、もちろん消費税凍結だ。 来年の日本経済は厳しい条件が揃っている。まず、景気循環で3年周期の在庫投資循環と10年周期の設備投資循環が、ともに下降に向かう。また、オリンピックバブルは、2019年にはじける。オリンピック前に施設やインフラの整備を済ませないといけないからだ。さらに、米中貿易戦争の悪影響が、来年から本格化する。 そうした状況で消費税率を引き上げたら、日本経済が壊滅的な被害を受けるのは、明白だ。まともな経済学者は、みなそのことを分かっている。分かっていても、財務省が恐ろしくて、そのことを言えないだけなのだ。 そのなかで、今回の人事で最も注目すべきことは、加藤勝信氏を自民党総務会長に据えたことだろう。 総務会というのは、自民党の最高意思決定機関だ。選挙に関しては、選挙管理委員長が仕切るが、総務会も当然、選挙の結果に責任を持っている。 来年は、参議院選挙と統一地方選挙がある。そして、自民党総裁選で石破氏が予想外の善戦をしたことからも分かるように、安倍政権にとって、いま国民からの強い逆風が吹いているのだ。 加藤総務会長は、元々、大蔵官僚だったから、消費税増税推進派の筆頭だ。その加藤総務会長に対して安倍総理が、「選挙で勝つためには消費税凍結しか方法がない」と迫ったら、何が起きるだろうか。私は、加藤総務会長のなかにある大蔵省の増税DNAより、目先の選挙での勝利への欲求の方が上回るのは、確実だと思う。政治家というのは、そういうものだ。 ただ、仮に安倍総理が消費税を凍結したところで、来年の景気が低迷するのは確実だ。消費税凍結というのは、あくまでも現状維持で、景気浮揚効果はない。国民の懐を潤すためには、消費税率の引下げがどうしても必要だ。私は、安倍総理が消費税率引き下げに踏み切る可能性は十分あるとみていたのだが、どうやら、それはないと考えている。数々のスキャンダルを重ねた財務省のトップである麻生財務大臣を留任させてしまったからだ。来年の景気がよくなる可能性は、ほぼゼロだろう。
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