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「ふるさと納税」の根本的欠陥がどこにあるのか
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2018年9月13日 植草一秀の『知られざる真実』
ふるさと納税についての議論がかまびすしい。
しかし、ふるさと納税に関与した人以外では、制度の詳細すら知らないことが多いのではないか。
街頭インタビューでの市民の声が流されるが、マイクを振り向けられて、「制度をよく知らない」という声はカットされて伝えられていない。
返礼品が高額すぎるとの指摘があり、総務省が高率の返礼品を贈る自治体への寄付については税控除を認めない方針を示して論議を呼んでいる。
ふるさと納税の制度は、大まかに整理して言えば、自治体への寄付を行った場合に、その金額から2000円を差し引いた金額が住民税から控除されるという制度である。
自治体は寄付受け入れに際して、寄付をどのような財政支出に回すのかを示す。
寄付を行う人は、どの自治体の、どのような事業に寄付を行うのかを選択した上で寄付を行う。
表向きの説明は、人々が自分の意思で、寄付を行いたいと思う特定の自治体の特定の事業を選択して、寄付を行う、というものだ。
特色ある地方自治体の事業が当該自治体以外に居住する人の寄付によって支えられるという説明がなされている。
返礼率を低くして、災害復旧事業などへの寄付が行われることが「ふるさと納税」の本来の趣旨に沿う行動であるとの説明も聞かれる。
しかしながら、表向きの説明、建前としての説明は、ふるさと納税の現実をほとんど説明していない。
納税者の現実の行動、自治体における対応の現実を踏まえると、この制度は、きわめて「歪み」の多い、劣悪な制度であると言わざるを得ない。
自治体に「ふるさと納税」という「寄付」を行う者の動機は、単純に「節税動機」=「利潤動機」である。
住民税として支払う税金を、地方自治体に「寄付」すると、2000円の費用はかかるが、返礼品が返ってくる。
そうなると、この人の納税負担は本来の納税額よりも、[返礼品−2000円]分だけ低いものになる。
現状では返礼品が現金ではなく、財・サービスになっているから多少分かりにくいが、分かりやすくするために、返礼品を現金に置き換えてみよう。
そうなると、ふるさと納税を行うことによって住民税負担を軽減できるということになる。
返礼の金額は高額納税者ほど大きくなる。
「ふるさと納税」を行っている人は、このような「節税」=「納税額圧縮」の動機でこれを行っているケースが圧倒的多数である。
「歪みがある」と指摘したのは、この制度が現行の所得税・住民税制度の構造を歪めるものであるからだ。
とりわけ問題なのは、高所得者=高額納税者ほど返礼品による税還付の金額換算値が大きくなることだ。
消費税増税が強行推進されているなかで、高額所得者に著しく偏る実質的な減税措置が取られていることになる。
「歪み」を生むもう一つの理由は、各自治体での「返礼品取り扱い事業者」の選定が、一種の利権になり得ることだ。
公的企業がすべてを取り扱うなら特定事業者への利益提供となることを回避できるが、その場合でも、特定事業者が取り扱う返礼品を供給する事業者をどのように選定するのかという問題が生じる。
地域の特産品を返礼品にすると言っても、当然のことながら、そこには品目選定というプロセスが発生する。
「政治」が関与して、「特産品」や「返礼品供給事業者」、「返礼事業実施事業者」が選定される可能性が高いことは明白だ。
高額所得者は「ふるさと納税」制度によって、実質的に巨額の「減税効果」を享受する。
地方自治体においては、返礼品供給事業者、返礼事業取り扱い事業者は極めて大きな利益機会を得る。
その事業者選定等の過程が、まさに政治が介入する利益配分、利権配分の不透明なゾーンになり得るのである。
納税者が利潤動機なしに、自分が居住する自治体への納税分を、自分が支援したい自治体への寄付に振り向けていることは稀であると思われる。
納税者は、自分の実質的な納税額を少しでも減らすために、返礼率の高さ、返礼品の種類、内容を比較して、経済合理的に行動しているだけに過ぎない。
返礼がなければ、他の自治体に納税額を移転させようとするインセンティブは働かない。自分の居住する自治体に積極的に納税するだろう。
高額所得者への巨大な実質減税であること、自治体における返礼品選定、返礼事業者選定のプロセスに利権が入り込む余地が極めて大きいことに根本的な問題がある。
この根本の論議がまったく抜け落ちている。
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