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古賀茂明「沖縄県知事選 新潟と名護の敗北を教訓に左翼色払拭と経済界支持がカギ」
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180826-00000008-sasahi-pol
AERA dot. 8/27(月) 7:00配信
著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者...
翁長前知事の遺志を引き継ぐことはできるのか (c)朝日新聞社
9月13日告示30日投開票の沖縄県知事選挙に玉城デニー衆議院議員が立候補することが決まった。本稿執筆段階の8月25日までの報道では、正式な出馬表明は29日になるとされている。
自民・公明両党は、既に、前宜野湾市長の佐喜真淳氏を推薦することを決定し、さらに日本維新の会にも推薦を依頼している。これで知事選は、自公(維)の佐喜真氏とオール沖縄が推す玉城氏の一騎打ちになることがほぼ確実となった。
選挙の争点は、辺野古基地建設の是非を含む基地問題と経済振興策などが中心になると見られる。
この選挙は、9月20日に行われる自民党総裁選後初の重要な選挙である。安倍総理としては、圧勝で3選を決め、さらにこの沖縄県知事選にも勝つことになれば、その勢いはさらに高まり、悲願の憲法改正に向けて思い切った政権運営が可能になる。逆にここで負ければ、出ばなをくじかれ、来春の統一地方選や来夏の参議院選挙への黄信号がともり、自民党内での求心力は大きく低下する。もちろん、憲法改正もごり押しすることは難しくなるだろう。
その意味で、この選挙は、安倍総理にとっても絶対に負けられない選挙である。
■「まやかし」「恫喝」「バラマキ」の鉄板戦術で新潟県知事選の再来を狙う安倍政権
先週の本コラムでも書いた通り、安倍政権の戦略は「まやかし」と「恫喝」と「バラマキ」だ。まともな政策論争で勝とうという気はさらさらない。この戦略は、6月の新潟県知事選挙での大勝を実現した二階俊博幹事長・菅義偉官房長官の黄金コンビによるものだ。
沖縄と新潟が抱える問題は全く違うが、見方を変えると非常に類似したところもある。
全国的に保守化が進んで自民党が優勢な地域が増えているのに対して、両県とも、元々革新系が強く、昨年の衆議院選挙でも、沖縄では4選挙区で野党側が3勝1敗、新潟では6選挙区で野党側が4勝2敗とともに与党に勝ち越している。野党が勝ち越したのは、この他には岩手、長野県、佐賀だけだから、極めて珍しい地域だと言って良い。
沖縄では、基地問題が大きな争点になっているのに対して、新潟では、原発再稼働問題が大きな争点だ。安全保障政策とエネルギー政策という違いはあるが、国の政策に地域が反旗を翻すという共通性がある。しかも、どちらでも保守層の中にかなりの基地反対派、原発再稼働反対派が存在するのもよく似た構図である。
その新潟県で、米山隆一前県知事の女性スキャンダルによる任期途中の辞任を受けて行われた6月の選挙では、組織票で優位に立つ与党候補に対して、野党候補は、当初から支持率で接戦を演じていた。組織力で優る与党候補を野党候補が猛追して逆転するという従来の選挙の野党勝ちパターンから見て、野党候補楽勝ではないかとの見方もあった。当日の投票率が前回よりも5ポイントも高くますます野党優位のはずだったが、ふたを開ければ、与党候補が圧勝した。しかも、野党側の大票田である新潟市でも与党候補が得票数で上回るという完勝であった。
その時に採った与党側の作戦が、「まやかし」「恫喝」「バラマキ」による誘導選挙であった。「まやかし」とは、本来は再稼働容認であるのに、あたかもそれに反対であるかのようなイメージを打ち出して戦い、原発を争点から消してしまう作戦だ。「恫喝」は、もちろん、与党候補を落としたら、新潟に対する予算配分を減らして、建設業関係などの仕事を減らすぞという業界団体への脅しである。「バラマキ」は、その逆で、当選させれば、予算措置で特段の配慮をすると裏で約束することだ。事実上の買収と言っても良い。
そして、これらの行為はすべて水面下で行われる。「ステルス」作戦とも言われた。大物議員を投入しても街宣はさせず、業界団体・企業回りで徹底的に恫喝とバラマキを繰り返す。やり過ぎで逆効果になるのではないかというほど徹底したローラー作戦が展開されたという。この選挙では、小泉進次郎氏が応援に入らなかった。それでも勝利したのは、この「鉄板」選挙戦術が極めて有効だということを証明している。
2月の沖縄県名護市長選でも同様の作戦が展開されたが、その時は「切り札」としての小泉進次郎氏の応援が破壊的な威力を発揮したとも言われ、その意味で、純粋な鉄板選挙戦術で勝ったのは新潟県知事選挙が初めてだと言って良い。
もちろん、今回の沖縄県知事選挙でも、この新潟方式が使われる。恫喝とバラマキについては、いつもの通り、既に業界団体には厳しい締め付けと懐柔が始まっているようだ。先週のコラムでも紹介したとおり、8月15日の日本経済新聞電子版には「自民党は沖縄県知事選に向けた新たな沖縄振興策の検討を始めた」という小さな記事が出た。こうしたニュースを書かせることで、自民党が、知事選向けに、わざわざ「新たな」沖縄振興策を準備してくれているのだということを業界に周知させるのである。
「まやかし」も定石通り。佐喜真氏は、出馬会見で、普天間の返還は進めるとしながら、その移設先の辺野古基地建設については、回答を先延ばしした。もちろん、これを争点から消す作戦だ。そのうえで、「沖縄を分断するな」という、いかにも誰もが賛成しそうなキャッチフレーズを口にする。分断させている責任者は自民党であるのに、あたかもオール沖縄に責任があるかのごとく喧伝するのだ。これも「まやかし」である。安倍政権与党の支援を受けていることによる「タカ派色」を消して、いかにも中道であるかのように振る舞えば、右翼層だけでなく中間層に食い込むことができるという計算だ。
■玉城氏はオール沖縄の政党色を消して経済界の幅広い支持を取り付けるべき
このような安倍政権側の戦術に対して、玉城陣営はどう戦うべきか。
ここでも新潟の例が参考になる。新潟では、米山隆一前知事の路線を引き継ぐとした野党候補の池田千賀子氏だったが、米山氏の支持基盤のうち、保守層の支持を大きく失うことになった。元々、米山氏は、自民党や日本維新の会からの立候補歴があり、保守層の支持もかなり集めていた。しかし、後継候補の池田氏には、そのような保守系とのつながりがなく、しかも、選挙戦は、市民連合の「左翼的な雰囲気」の漂うものとなった。実は、この選挙で、リベラル候補はリベラル層に働きかける必要はなかった。彼らは自民に流れることは絶対にないからだ。したがって、選挙戦は如何に保守層を取り込むかに焦点を当てるべきだったが、それができなかった。その結果、米山氏の保守支持層のかなりの部分を取りこぼし、それが自民候補に流れて完敗となったのである。
今回の沖縄県知事選でも同様の懸念がある。翁長前知事は元々自民党県連の幹事長を務めるなど、沖縄の保守本流だった。その保守の重鎮が、リベラル派とタッグを組んでまとめ上げたのが「オール沖縄」である。つまり、その支持層にはかなりの保守層がいる。右から左まで幅広い支持層に支えられているのだ。
玉城氏は自由党に所属していて、本人は、「保守」を自任している。DJ出身ということで、「左翼」というイメージは薄い。翁長氏が後継指名したとされるが、その理由は、保守層にも食い込めるのではないかという期待があったからかもしれない。
しかし、最近の「自由党」の主張は、共産党にもかなり近く、庶民の間では、必ずしも「保守」というイメージが強い訳ではない。玉城氏のブログやSNSのサイトを見ても、安倍批判やリベラル的な主張は目立つが、「保守」をイメージさせる内容はほとんど見当たらない。翁長氏が、何も言わなくても、「保守」であることがわかったのに比べれば、保守層に食い込むという意味での力は弱いと言わざるを得ない。
一方、佐喜真氏は、今後、基地問題の争点化を避け、バラマキに加えて、リベラル的な社会保障政策、そして、中間層にも受けが良い経済振興策を強調する選挙戦を展開すると思われる。そうなると、佐喜真氏がかなりの程度中間層を取り込み、さらにはリベラル層にまでその触手を伸ばしてくる可能性もある。
そこで、玉城氏が取るべき戦略として重要になるのが、中間層から保守層に食い込むイメージ戦略だ。リベラル派のことははっきり言って忘れても良い。彼らはどちらにしても玉城氏に投票するしかないからである。冷淡な言い方に聞こえるかもしれないが、それくらい「冷静」にならなければ、選挙には勝てない。バラマキや経済振興策は、どうしても与党側の方が実現可能性があるのではないかということで、野党側が唱えてもなかなか浸透しないのが現実だ。特に基地をなくして経済振興をという時には、その実現性が大きな争点になる。
そこでカギを握るのが、地元経済界の支持だ。企業が与党に反旗を翻して、「経済のために辺野古基地建設反対」「基地がない方が豊かになれる」と主張すれば、単なる基地反対よりも、一般市民は、はるかに心強く感じるはずだ。与党側が脅し文句に使う、「基地がなくなれば、お前たちの生活もなくなる」という言葉も通じなくなる。
そこで非常に気になるのが、沖縄の経済界の重鎮がオール沖縄と距離を置き始めていたことだ。今年2月の名護市長選後には、オール沖縄の共同代表だった金秀グループの呉屋守将会長がその職を辞した。もう一つの柱であったかりゆしグループも4月にオール沖縄を脱会した。その背景には、オール沖縄が左翼的政党の活動に利用されているのではないかという経済界の警戒感があるようだ。
しかし、経済界の大半がオール沖縄から自民党側に移行すれば、この選挙に非常に大きな影響を及ぼす恐れがある。幸い、共同代表を退いた呉屋氏は、今回の選挙で玉城氏支持を打ち出した。沖縄の経済界のカリスマ的リーダーが引き続きオール沖縄側についてくれるのは非常に大きい。一方、かりゆしグループは、これとは一線を画し、自主投票を打ち出している。両グループのトップとは、私も以前にシンポジウムのパネラーとして話をしたことがあるが、見識が深く、胆力を感じさせる立派な方々だった。この両重鎮が本気で動けば、かけがえのない大きな力になるだろう。今回かりゆしグループが自民党側に行かないことがせめてもの救いではあるが、できれば、もう一度オール沖縄に戻ってもらえれば、翁長時代に近い体制ができる。現状のままでは、オール沖縄側にとっては大きな痛手だ。
この選挙に負けたら、翁長前知事が最後まで訴え続けた「沖縄のアイデンティティー」が否定される。その危機感があるのであれば、リベラル系は、自己主張を抑え、経済界の重鎮たちに、土下座をしてでもオール沖縄に戻ってくるように「お願い」すべきではないかと思う。選挙公約や戦い方で相違が出るのであれば、リベラル側が譲歩して経済界に歩み寄って欲しい。翁長前知事の「これはイデオロギーの戦いではない」という意味をもう一度噛み締めて、右から左まで幅広い支持を得て、本当の意味で「沖縄のアイデンティティー」を確立するための戦いに結集するのだ。その度量がリベラル側にあるのかが、今問われている。
■小泉元総理の応援を得て、進次郎の応援を無くす計画
もう一つ気になることがある。それは、小泉進次郎衆議院議員の動きだ。彼は筆頭副幹事長として、二階幹事長の直属の部下である。二階氏に沖縄県知事選で自民候補を応援せよと言われれば、従う義務がある。一方、9月13日に県知事選が告示されても、20日までは党総裁選の最中だ。小泉氏が石破氏につくのかどうかが大きな関心を呼んでいるが、沖縄に応援に入るかどうかも、知事選には甚大な影響がある。
新潟では、進次郎氏は応援に入らなかった。小泉純一郎氏が野党の池田候補を事実上支援したことから、進次郎氏側が「親子対決」という絵を作りたくなかったという解説がなされている。それを口実にしたのかもしれない。また、二階氏が、マスコミに面白おかしく取り上げられると野党候補を利すると判断したという見方もある。
その経験に従えば、例えば、玉城氏が、県内の火力発電縮小と再生可能エネルギー推進による県外へのエネルギー輸入代金流出ゼロを目指す「沖縄エネルギー自立計画」を打ち出し、小泉純一郎元総理の支持を得てはどうか。脱原発ではないが、小泉元総理は、再生可能エネルギーの推進にも力を入れているので、支持の名目は立つ。それが実現すれば、進次郎議員は、新潟の時と同様に沖縄に入らなくて済むかもしれない。進次郎議員の応援の破壊力は、名護市長選で実証済みだ。何としても進次郎フィーバーを起こさないようにしなければならない。
オール沖縄は、とにかくできることはなりふり構わずやって欲しい。ダメもとで、ありとあらゆる可能性に賭ける。恥をかくことを恐れてはいけない。もちろん、翁長前知事の弔い合戦に持ち込めば勝てるなどという甘い考えは捨てるべきだ。
ここで負けたら、翁長前知事の命がけの戦いが無に帰する。そんなことだけは絶対にあってはならない。
よそ者の私が偉そうなことを言うのはどうかとも思ったが、それでもやはり言わせてもらいたい。これも、心底、沖縄県民の真の勝利を願っているからだ。
古賀茂明「沖縄県知事選 新潟と名護の敗北を教訓に左翼色払拭と経済界支持がカギ」https://t.co/DX0rRUKPss「非常に気になるのが、沖縄の経済界の重鎮がオール沖縄と距離を置き始めていたことだ…2月の名護市長選後には、オール沖縄の共同代表だった金秀グループの呉屋守将会長がその職を辞した」AERA
— rima (@risa_mama117) 2018年8月26日
引用:
— rima (@risa_mama117) 2018年8月26日
もう一つの柱であったかりゆしグループも4月にオール沖縄を脱会した。その背景には、オール沖縄が左翼的政党の活動に利用されているのではないかという経済界の警戒感があるようだ。
…
この選挙に負けたら、翁長前知事が最後まで訴え続けた「沖縄のアイデンティティー」が否定される。
引用:
— rima (@risa_mama117) 2018年8月26日
その危機感があるのであれば、リベラル系は、自己主張を抑え、経済界の重鎮たちに、土下座をしてでもオール沖縄に戻ってくるように「お願い」すべきではないかと思う。選挙公約や戦い方で相違が出るのであれば、リベラル側が譲歩して経済界に歩み寄って欲しい。
■日本会議系バリタカ派自公お維候補に投票しては絶対にダメ! 玉城デニーさんガンバレ!(https://t.co/uFkJUiofDX) 【古賀茂明「沖縄県知事選 新潟と名護の敗北を教訓に左翼色払拭と経済界支持がカギ」】(https://t.co/UPkjT26oJU)/《自公(維)…とオール沖縄が推す玉城氏の一騎打ちに》
— AS (@ActSludge) 2018年8月26日
古賀茂明「沖縄県知事選 新潟と名護の敗北を教訓に左翼色払拭と経済界支持がカギ」基地で疲弊した沖縄、経済への期待が大きい中自公は新潟式で札束攻撃をかけてくるだろう。その誘惑に県民が靡かないためには? - 北海道は素敵です!! - Yahoo!ブログ https://t.co/9ZezcJnp7t
— 松本 美紀子 (@yuuta24mikiko) 2018年8月27日
沖縄県知事選挙は、決して沖縄県だけの問題だとは思えない。今後の国政に影響する選挙だ。
— ngt0803 (@IwaoNAGATA) 2018年8月27日
古賀茂明「沖縄県知事選 新潟と名護の敗北を教訓に左翼色払拭と経済界支持がカギ」 https://t.co/2BFkk9eLUW
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