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原発再稼働の誤りを示せない裁判所の堕落
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2018年7月17日 植草一秀の『知られざる真実』
福井県おおい町に所在する関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止め訴訟で、名古屋高裁金沢支部は7月4日、運転差し止めを認めた福井地裁判決を覆し、周辺住民らの請求を棄却し、運転を容認した
福井地裁の樋口英明裁判長は2014年5月に大飯原発3、4号機の運転差し止めを命令した。
その判決文で樋口裁判長は、「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた議論の当否を判断すること自体、法的には許されない」と述べた。
この樋口英明裁判長が、翌2015年4月14日、2016年早期にも再稼働が予定されていた、同じ関西電力の高浜原発3、4号機について、再稼働の即時差し止めを命ずる仮処分決定を示したのである。
このことを私は、2015年4月15日付ブログ記事
「現代日本の良心福井地裁樋口英明裁判長を守れ」
https://bit.ly/2uI9Yvh
に記述した。
内容は後段で述べる。
樋口英明裁判長は極めて適正な、正当な司法判断を示した。
しかし、予想通り、上級裁判所がこの判断を覆した。
住民側は本日7月17日、福井市で記者会見し、最高裁への上告を見送ると発表した。
上告期限の18日を過ぎれば、住民側が逆転敗訴した高裁判決が確定する。
メディアは「上告断念」と伝えるが、実態は「上告拒絶」である。
「上告忌避」と言い換えてもよい。
まともな裁判が行われるなら、当然上告する.
しかし、まともな裁判が行われないと断定できるから、あえて上告しない、上告を拒絶、忌避するのである。
その行動は十分に理解できる。
住民側は上告見送りの理由について、もし最高裁で敗訴が確定すれば、各地の同種訴訟などが「一斉に大きな制約を受けるリスクを負う」と説明している。
不当な行政行為に対して主権者である市民が対抗するには裁判を活用せざるを得ないが、その裁判が正当に行われないのが日本の現状なのだ。
関西電力大飯原発、高浜原発の運転差し止めについては、樋口英明裁判長という、法と良心に基づいて裁判を行う優れた裁判官が事案を担当したために正当な判決が示された。
しかし、日本においては、このような適正かつ正当な判断は例外的にしか示されない。
裁判官が法の番人として法と良心に従って判断を示すことは例外的であり、圧倒的多数の裁判官は、法の番人ではなく、政治権力=行政権力の番人として、権力の意向に沿う判断を示すからだ。
安倍首相は権力を濫用して各種公的機関の私物化を進めている。
弊害が深刻であるのが、NHK、裁判所、日銀の私物化である。
最高裁長官、最高裁判事は内閣が決める。
内閣が恣意的に最高裁判事を決定しているため、司法は行政権力=政治権力から独立した存在ではなくなってしまっている。
安倍首相が自民党総裁の3期続投すると2019年3月には、すべての最高裁判事が安倍内閣によって任命されることになる。
裁判所は完全に権力機関と化すのである。
日本の民主主義が完全崩壊しようとしている。
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