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懐疑的報道が目立つ米朝会談 ご破算になったらオシマイだ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/231151
2018年6月14日 日刊ゲンダイ 文字お越し ※タイトルは紙面による
共同声明が現実になる(C)ロイター
「期限・具体策に触れず」(朝日新聞)
「共同声明 具体策盛らず」(毎日新聞)
「具体策示さず」(読売新聞)
「時期や検証 先送り」(日経新聞)
「北、検証なき半島非核化」(産経新聞)
「具体策示されず 米『体制保証』」(東京新聞)
史上初の米朝首脳会談が12日に開催されたのを受け、13日の朝刊1面トップには、こんな見出しが並んだ。見事なまでに、懐疑的な論調ばかりだ。
米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が署名した共同声明には、米国が合意の前提としてきた「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」の文言がない。スケジュールや検証方法といった具体策が示されなかったから、非核化が実現するかは疑わしいというのだ。
テレビのコメンテーターも「北が本気で核を手放すとは思えない」「これまで散々、裏切られて信用できない」「首脳会談は時間稼ぎに使われただけ」などと、声明が空文化する可能性を強調。本格的な交渉は始まったばかりなのに、早くも決裂を見込んでいる。北朝鮮だけでなく、トランプが体制保証という果実を先に与えたことに対する不満も強い。歴史的会談の“成功”を優先した米国が、北朝鮮に「譲歩」、あるいは「妥協」したと批判的な見方をしている。
■歴史的合意をこき下ろすナンセンス
こうした論調に対して、元外交官の天木直人氏がこう言う。
「トランプ大統領は会見で、米韓合同軍事演習の中止まで言及した。これは驚くべきことで、譲歩と受け取る人もいるかもしれない。しかし、2人が署名した共同声明と、その後のトランプの記者会見をしっかり見れば、誰もが想像できなかったような大胆な合意がなされたことが分かります。この世紀の合意をこき下ろすのはナンセンスですよ。首脳同士が協力関係を構築していくことで合意し、金正恩委員長は言いたい放題のトランプひとりに記者会見を任せ、すべてを委ねた。これからものすごい勢いで物事が動いていくと思います。早晩、互いにワシントンと平壌を訪れ、1年以内に国交正常化が実現するかもしれない。残り2年半のトランプ大統領の任期中に、共同声明に書かれた内容が現実になるのです。それは朝鮮戦争の終結であり、北朝鮮の完全非核化であり、朝鮮半島の非核化であり、在韓米軍の縮小、撤退であり、北朝鮮の劇的な経済開発です。“冷戦”が終わり、米朝が永続的な平和を実現する道を歩んでいくことになる。これほどの画期的な合意の前で、譲歩だの具体策だのといった論評は無意味です」
大枠の合意であれ、もう後戻りはできない。それは、米朝が共同声明にこぎ着けたタイミング、両首脳の置かれた状況を考えれば分かる。しかも今回の合意は、互いにメリットしかないのだ。
日本はメディアも蚊帳の外(提供写真)
トランプの譲歩が面白くない軍産複合体と安倍政権 |
「米朝首脳会談は、どちらかが得をすればどちらかが損をする綱引き形ではなく、両者にとって“ウィン・ウィン”が期待できる形です。トランプ大統領のビジネスマン的な視点から言えば、まず、国交正常化によって米国は北朝鮮の豊富なウランやその他のレアメタルを手にすることができる。安価でよく訓練された労働力や、爆発的な成長が見込める潜在市場も魅力でしょう。さらに、ロシア疑惑などで苦境にあるトランプ大統領にしてみれば、米朝会談の成果は起死回生の逆転満塁ホームランになる可能性がある。北朝鮮に核を廃棄させることができれば、米国に平和がもたらされるだけでなく、朝鮮半島の平和の礎を築いた功績でノーベル平和賞も転がり込んでくるかもしれないのです。米国の軍事的脅威に対抗するため、無理を重ねて核ミサイル開発を進めてきた北朝鮮は、国内経済を犠牲にしてきた。そこへ米国が軍事行動を示唆して追い詰められていましたが、核さえ放棄すれば、平和と経済発展の両方を手にすることができる。米国の脅威が取り除かれ、経済制裁も解除され、さらには新たな経済支援が受けられるとなれば、国内の経済優先策を進められる。米国との交渉を継続して国際的にも国家としての存在が認知されれば、それも大きな成果です」(経済評論家・斎藤満氏)
トランプ政権も北朝鮮も、こんな絶好の機会を逃すわけがないのだ。この交渉はお互いにメリットしかないのだから、決裂は考えられない。
米国世論だって歓迎しているのに、なぜ日本のメディアは決裂を予測し、悲観論を垂れ流すのか。
「決裂してくれた方がありがたい人々がいるのです。まず、米国のネオコン勢や軍産複合体がそうです。彼らは中東だけでなく、朝鮮半島でもドンパチが起きてくれれば、需要拡大のチャンスだと考えている。戦争になれば消耗品の武器弾薬は特需だし、韓国や日本に高値で売りつけることができる。日本でも省益拡大を狙う防衛省や官邸は、決裂を願っているでしょう。安倍政権は北朝鮮の脅威をアピールすることで求心力を高め、緊張の中で軍事費を増やして軍拡路線をひた走ってきた。北の脅威がなくたって、危機をあおって、法改正や総選挙に利用してきました。政権維持のためにも、北には暴れていて欲しいし、米朝の接近は心理的なショックも大きいはずです」(斉藤満氏=前出)
■決裂して戦争になってもいいのか
米国と北朝鮮。不倶戴天の首脳同士が北東アジアの平和のためにコミットした。これがご破算になれば、次のオプションは戦争しかない。それも核戦争である。そうなれば米朝ともにオシマイだ。日本にも甚大な被害が生じるというのに、なぜ平和的な交渉開始を喜べないのか。戦争リスクを排除し、自国民を戦火から守るのが為政者の務めではないのか。
せっかく半島の平和に向けたプロセスがスタートする機運が生まれたのだから、それを後押しし、周辺国として協力することを日本政府に求めるなら分かるが、米朝の合意に疑いの目を向けるメディアもどうかしている。戦争になった方がいいとでもいうのか。
前出の天木直人氏もこう言う。
「大メディアが、今回の米朝会談に目覚ましい成果はなかったかのように報じるのは、日本のメディアも蚊帳の外に置かれているからではないか。日本政府の関係者や米国筋では、昔ながらのネオコンからしか情報を取れないから、彼らが望む決裂シナリオに傾いてしまう。情報源の思惑に乗っかって、イチャモンを並べ立てているように見えます。しかし、歴史的な転換でこれから激動が起きるのは間違いない。北朝鮮に対する旧来の立場や見方を変えられない安倍政権では、時代の波に取り残されるし、日朝会談も実現できないでしょう。拉致問題を解決し、米朝合意を国益につなげるためには、一日も早く政権を代えて出直すしかない。安倍退陣を求める声がメディアから上がらないようでは、今後ますます日本の出る幕はなくなるでしょう」
確かに北朝鮮は信用ならない国かもしれないが、米朝合意が実現すれば、世界は劇的に変わる。したり顔で「決裂」を予言する大メディアと官邸のミスリードに惑わされると、大局を見失いかねない。
懐疑的報道が目立つ米朝会談 ご破算になったらオシマイだ https://t.co/nB5Hm1RF0V #日刊ゲンダイDIGITAL
— Masaharu Kuniie (@K_Masaharu) 2018年6月14日
ご破算になったら米朝ともにオシマイだ したり顔で「決裂」予言 大マスコミの愚 どちらが「譲歩」「妥協」などと論評する無意味と危うさ、さらには情報源の思惑を見極める必要 タイミング、両者の置かれた状況 お互いのメリットを考えればもう後戻りは出来ないだろう(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/njulQlBHrH
— KK (@Trapelus) 2018年6月14日
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