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(回答先: アーモンドアイを破り有馬記念を制した豪州人騎手ダミアン・レーン 投稿者 中川隆 日時 2019 年 12 月 23 日 11:13:45)
メロディーレーン 常に想像を超えるアイドルホース 小さな体に大きなハート
2019/12/28
https://www.keibalab.jp/column/interview/1999/
340キロに満たない身体ながら、底知れないスタミナを武器に菊花賞でも5着に食い込んだメロディーレーン。令和に現れた小さなアイドルは、有馬記念ファン投票でも2万票以上の票を集めた。そんなアイドルホースは昨年の春、あまりの小ささに「無事競走馬としてデビューできるのか…」そう心配されていた時期がある。育成を担当したノルマンディーファーム小野町の池田浩之主任に、当時の苦労、そして常に驚きとインパクトを与える"規格外ホース"の素顔を聞いた。
「凄いのが来たと思いました」
育成時代から全てが"規格外"!
−:メロディーレーン(牝3、栗東・森田厩舎)がノルマンディーファーム小野町に入厩したのはいつ頃だったのでしょうか。
池田浩之調教主任:2018年の3月が始まってすぐ、3月4日でしたね。それまでにも小さいとは聞いていましたが、お母さんがオープンの丹頂Sを勝ったメーヴェという血統馬ですからね。どんな馬なのだろうと思っていましたが、実際に見たら、思っていた以上に小さい馬でした。
「300キロ台の小さい馬が行くよ」という話は聞いていたものの、こちらとしては札幌2歳S2着のあるブラックオニキスをイメージしていたんです。あの馬は小野に来た際、400キロを切って380キロくらいでした。そのくらいをイメージしていたら……凄いのが来たなと(笑)
−:我々がメロディーレーンを初めて見させていただいたのはその2日後、3月6日でしたが、本当に小さく驚きました。
池:馬運車から降りてきた時点で小さいのは分かりましたし、ノルマンディー小野町に隣接する天工トレーニングセンターの皆さんにも、洗い場で「1歳馬?」と聞かれるほどでしたね。能力どうこう以前に、小さくて調教に耐えきれるかと思いました。
−:馬服もブカブカだった印象が強いです。
池:馬服もMサイズと言われるものを着せていました。Mサイズより小さいものはあるのですが、それこそポニー用とかになってしまいます(笑)。うちで用意している中ではMサイズが一番小さく、これが着れなければポニー用を着るしかないなと…。大きめのポニーに近いサイズですからね。
▲菊花賞のパドック 馬体重は340キロ
−:頭絡も緩かったですよね。
池:そうなんです。頭絡も一番小さいサイズのものを詰めて使っていました。頭絡も緩過ぎるとダメです。革製品は締まるところが決まっているのですが、穴を新しく開けて『特注サイズ』として使っていました。自分たちでアレンジできるところはアレンジして、という感じでしたね。
−:池田さんの今までのホースマンとしてのキャリアの中で、ここまで小さい馬はいなかったのではないでしょうか?
池:ないですね。乗馬クラブ時代からサラブレッドではないです。全部が経験したことのない小ささでした。
−:飼い葉は食べていたのでしょうか。
池:もっと食べてほしいというところではありました。そこまでガツガツ食べるような子ではなかったです。ただあの馬なりには食べていたと思いますね。
−:実際に乗られた方の感想はどうでしたか?
池:乗っている人間が言っていたのは、まず「腹帯が閉まりません」でした(笑)。鞍の下にスポンジを増やして、なんとか締めるような状態でしたよ。通常はタオル、スポンジ、ゼッケンと鞍の下に重ねていくのですが、メロディーレーンの場合はスポンジや厚手のゼッケンを3枚ほど重ねて、ようやく腹帯が締まりました。
相当な厚着でしたね。緩いと乗っている際に危ないので慎重にやらざるを得ませんでしたよ。ちゃんと腹帯を縛って、確認して……。最初は一番体重の軽い若い子を乗せたのですが、まあ乗りにくそうでしたね(笑)
−:厩舎スタッフさんに聞いても、乗り難しいという感想が聞こえてきます。
池:手綱も自然と短くなりますし。うちに来た時は頭の高い走り方で、ちょっと引っ張るとすぐ頭が上向くのですが、頭が騎乗者の胸のあたりに当たっているのではないかと思うほどでした。フォーム自体は調教を積んでトモに力がついていったことで、改善はされていきました。最初は気持ちは前向きでも、小さい分、力がまだ足りない感じでしたね。
−:池田さんもよく乗られていたのですか?
池:たまにです。騎乗者の体重が重いとかわいそうですし(笑)。乗っていて足がつきそうなくらいでした。自転車のような感じです。
−:乗り味はどうなのでしょう。
池:行きっぷりは良かったですし前向きなんですが、小柄過ぎて『乗れるポイント』が少ないんです。バランスがとりにくいのですよね。他の馬より重心がブレてしまうので、しっかり走らせることがまず大事でしたし、乗りにくさはありました。能力があっても難しい面があるなと。ただ乗っていてそこまで変わっている感じもなかったですよ。力がつけば走れるようになるのではと思っていました。
−:同じく小柄だったブラックオニキスと違うところはありましたか?
池:ブラックオニキスとは違いましたね。あの馬は小さいとはいえ完成度は高かったですし、体を大きく使えました。バネもありましたし、あまり小ささを感じさせなかったんです。比べるとどうしてもメロディーレーンの華奢な面は目立ちましたね。
驚きの連続 常に想像を超える馬
−:5月に入厩したわけですが、小野にいた2ヶ月で変わったところはあるでしょうか。
池:力がつきましたが、それでも慎重に乗らないといけませんでしたね。まだ競走馬になれるかどうかというところでした。
−:「心臓がいい」とジョッキーは褒めていましたが、育成時代からそのような面は感じていらしたのですか?
池:今思えば心臓は良かったですね。あの身体で他の2歳馬と同じメニューをこなしながら、そこまでへばっていませんでしたからね。同時期にきた他の2歳馬と同じメニューをこなしていましたし、心臓の強さはその時から垣間見えていたかもしれません。
−:普段からおとなしい馬なのですか?
池:おとなしかったですよ。周回コースに出て、キャンターを始める時に少しテンションが上がるくらいでした。脚元の問題もまったくありませんでした。夏場に一度筋肉を傷めたことで小野に戻ってきたくらいですからね。最初は6月の函館、中京でデビュー予定というプランもあったようです。
▲デビュー10戦目で待望の初勝利
−:9月に入厩し、10月にデビュー戦を迎えることになりました(10着も、上がり3Fタイムはメンバー中2位)
池:日曜のレースだったのでみんな仕事は休みでしたが、どういうレースをするのか気になっていました。こちらとしてはデビューしてくれるだけでも嬉しいですし。そうしたら最後脚を使ってくれて。コンパクトで仕上がりは早く、行きっぷりもいいので、気性的に新馬はいいと思ってはいましたが……。
−:そしてレースを重ねること10戦目、6月15日の阪神6R・3歳未勝利で嬉しい初勝利を挙げました。
池:小野では「勝てるんだ!」と話題になりましたね。前年11月に3着に来た頃から、牧場でも「毎回脚を使っているし、これはいずれ順番が来るんじゃない?」という話にはなっていたんですよ。
−:そうしたら9月に2勝目。圧勝しました。
池:驚きました。勝ち方も強かったですし。その前走、7月の中京2000mの1勝クラスでは、良血馬も結構いて末脚の切れ味勝負になっていましたし、13着とはいえ展開が向かなかったところはありました。ただ阪神に舞台が変わって、まさかあれだけの勝ち方ができる馬だとは思いませんでしたね。スタートをしっかり出て、どこまでいけるかという気持ちで見ていたんです。
−:常に想像を超えてくる馬ですね。
池:本当にそうですね。身体が小さいと飼い葉を食べませんし、調教をやってもなかなか筋肉がつかないものです。完歩も自然と小さくなりますし、それだけ完歩が増えて、小柄な馬は大変だと思います。ただメロディーレーンは極端に飼い葉を食べない馬ではありませんでしたし、340キロでもしっかりレースに使えるんです。不思議な馬です。
あのサイズなのでどうしても未熟児のように思えてしまいますが、あの子にしてはそれが普通で、周りが大きいだけなのかもしれません。体は小さくとも、心臓は他の馬と同じくらいであれば、それは大きな武器だと思います。小ささがいいほうに出ているのではないでしょうか。大き過ぎて体を持て余している馬はいますからね。
−:2勝目を挙げて、なんと次走は菊花賞。出走すると言われた時はどう思われましたか?
池:もちろん今年の菊花賞のメンバーなら……と少しは思いましたが、同い年とはいえ、相手はクラシックに出てくる牡馬ですから。斤量の問題もありますからね。岩田望来騎手は当時G1に乗れなかったので乗れず、テン乗りにもなってしまいます。斤量自体前走から6キロ増えるわけで、他の馬と比較すると、斤量が6キロ増えるだけでも大変ですから。厳しいだろうなと思っていましたが、それであの結果ですからね。驚きました。
−:レースはどこで観られていたのですか?
池:家で見ていました。菊花賞はNHKなどでもやっていますし、職場の人間も家で見ていたようですが、僕自身、まさか来るとは……と思いました。興奮しましたね。普通レースは前の馬から見ていくものですが、さすがに今回はスタートからずっとメロディーレーンを見ていました。ゴールした瞬間、これは掲示板じゃないか?と思うと同時に、で、何が勝ったの?とも思いましたね(笑)。こういうレースも珍しいです。
▲2勝目はレコードで快勝
−:菊花賞で5着に食い込み、次走候補に有馬記念という選択肢もありました。ファン投票でも多くの票を獲得するなど、もはやアイドル級の人気です。
池:嬉しいですよね。G1に出られる馬に携われたことももちろん嬉しいです。
−:池田さんはサウンドトゥルーやリッカルドといった強豪にも携わっていらっしゃいますが、共通点はありますか?
池:それぞれ違う面はありますね。走ると思っていても走らない馬はいますし、リッカルドやサウンドトゥルーも硬さがあるので、いい意味で期待を裏切るといいますか、その点は一緒かもしれません。
−:牧場の経験値も高まったのではないでしょうか。
池:高まりましたね。もうこれからいかに小さい馬がきても、ノウハウは十分にあります(笑)
−:最後に、メロディーレーンへメッセージをお願いいたします。
池:これまでよく頑張ってくれて、牧場としても、個人としても本当に嬉しいです。メロディーレーンによって新しく縁もできましたし、これからも精一杯走ってくれればと思います。
https://www.keibalab.jp/column/interview/1999/
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