★阿修羅♪ > 近代史3 > 803.html
 ★阿修羅♪
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
欧州で増える貧困層 イギリスではフードバンク難民が100万人以上
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/803.html
投稿者 中川隆 日時 2020 年 1 月 16 日 18:11:25: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 新自由主義を放置すると中間階層が転落してマルクスの預言した階級社会になる理由 投稿者 中川隆 日時 2019 年 4 月 16 日 11:09:23)

2020年01月16日
欧州で増える貧困層 イギリスではフードバンク難民が100万人以上


EUは財政規律を損なうとして貧困者対策を禁止している
その結果すべてのEU加盟国で貧困者が急増している

画像引用:https://pbs.twimg.com/media/DnCXF_QXgAAoG3X.jpg

イギリスのフードバンク難民

日本を除く先進各国では貧困者向けのフードバンクが普及しており、貧困者は食料を貰う。

フードバンクはスーパーから廃棄予定の食品を貰ったり、企業や個人からの寄付、自治体などの補助でなりたっている。

イギリスではフードバンク利用者が激増し、2016年のニュースには7年前と比べて利用者が44倍に増えたと書かれている。


フードバンク団体のトラッセル・トラストでは、2009年に約2.5万人だった利用者が2016年に約110万人に増えた。

トラッセル・トラストのフードバンクを利用するは医師やソーシャルワーカーの診断書が必要で、誰でも貰えるわけではない。

他のフードバンクも少なくとも公的な身分証明書が必要であり、身分証が無いホームレスは受け取れない。


トラッセル・トラストだけで全土に424拠点あり、約4万人の専門家と4万人のボランティアが運営している。

こうした状況はイギリスだけでなくEUの全ての国とアメリカなど先進国に共通だが、日本では広がっていない。

日本では生活保護制度があり、認定されると公的費用と医療費全てが無料になり、家賃などが支給され食費も支給される。


ただし日本で生活保護を受給できるのは貧困世帯の2割以下とされ、8割の貧困世帯は支援を受けられない。

イギリスや欧米の生活保護を検索すると「数百万円受け取れる」のような情報があふれているが、事実ではない。

イギリスをはじめとするほとんどの先進国に生活保護制度はなく、生活者支援制度があるだけです。

日本にも50万人以上のホームレスが居る

例えばイギリスでは離婚女性が子供数人育てていると、国から年間500万円以上を支給されるが、これは「子供を産んだ報酬」のようなものです。

もっと困っている貧困男性だと何の支援も受けられず、フードバンクに頼るしかありません。

欧米には日本の生活保護のように一生涯全て無料で国が全て面倒を見る」ような制度は存在しません。


複数の子供を育てているシングルマザーは年数百万円貰えるが、本当に困っている人は支援を受けていません。

アメリカでも同様で、もし欧米の貧困支援が日本より手厚いのなら、欧米に日本の数十倍のホームレスが存在するのを説明出来ません。

イギリスのホームレスは約30万人でドイツ120万人、フランス70万人でアメリカ60万人、日本は5000人でした。


欧米のホームレスの定義は「定住する住居が無い人」で施設に入居した人や、間借りしている人、ネットカフェ居住者も含んでいます。

日本は路上や公園で寝起きしている人だけを対象とし、ネカフェや簡易宿舎居住者を含めません。

もし簡易宿舎やネカフェ居住者などを含めると、日本全国では数十万人かも知れません


欧米流の計算方法だと日本にも50万人以上のホームレスが存在している可能性が高いが、国はホームレスではないとして何の支援もしていません。

イギリスで貧困者が増えたのはEU離脱とは関係なく、離脱が決まる遥か以前から深刻化していました。

むしろイギリスはEU加盟で貧困化したので、EU離脱を支持する人が増えました。


ドイツの路上生活者は5万5000人

EUは厳格な財政規律を加盟国に課していて、財政赤字を単年度で国内総生産(GDP)比3%以内にしなくてはならない。

このルールだと日本のGDPは550兆円なので、約16兆円までしか税収以上の支出が出来ない。

しかも過去の借金の利払いもあるので実質使えるのは税収と同じ程度に制限されます。


先進国の財政赤字のほとんどは高齢者福祉や貧困対策なので、EU加盟国の貧困予算は意図的に減らされています。

これを回避するためドイツやフランスは移民を増やし、若者に対する高齢者の比率を低く抑えようとしています。

少子高齢化を抑えるためにアフリカら中東から若者を輸入している事になります。


それでも高齢者割合は増え続けているので高齢者予算は切り詰められ、貧困高齢者が増加しています。

日本は少子高齢化を財政赤字拡大で乗り切ろうとしているが、欧州は高齢貧困者を切り捨てることで乗り切ろうとしている。

欧州では与党政治家になれるのは日本語で言う特権階級や上級国民だけで、決して「市民の代表」が首相になったりしない。


日本では土建屋の中卒総理や、ガスの点検員から総理になったり、市民団体上がりの首相や段ボール工場出身の政府首脳など色々いる。

イギリスでは旧貴族や王族の家系、富裕層や特権階級が重要ポストを占めていて、中流以下が首相や重要閣僚になったりしない。

政治家が富裕層ばかりなので富裕層減税や富裕層福祉は充実しているが、貧困対策は絶対にしない。


こうして困っていない人には年数百万円の給付金を出し、その日の食べ物が無い人は放置する国になった。

日本の知識人が福祉のお手本のように言うドイツには120万人のホームレスが存在し、2016年の路上生活者は約55,000人だった。

統計の取り方が違うとしても日本の野外生活者は5500人、ドイツは5万5000人で10倍も多いので「お手本」ではあり得ない。

http://www.thutmosev.com/archives/81957458.html

 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
1. 中川隆[-14344] koaQ7Jey 2020年1月19日 13:50:06 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-1254] 報告

2020年01月19日
ドイツ福祉国家の実態 ホームレス120万、路上生活者5万2千人


ドイツに路上生活者は居ない事になっているが、実際には5万人も存在する


画像引用:http://livedoor.blogimg.jp/karapaia_zaeega/imgs/6/c/6cb9100c.jpg


ドイツのどこが福祉大国か

ドイツは福祉大国で日本より遥かに充実している、いつの頃からか日本では常識になっているが、そうではないという一面もあります。

連邦研究会ホームレス支援協会(BAGW)の調査によると2018年にドイツでは約120万人のホームレスが存在した。

ドイツはホームレスや路上生活者のように、国家ににとって不都合な調査をしない事が多い。




BAGWは民間の支援団体で、約120万人というのは全国一斉に調査したのではなく推定値となっている。

ドイツ政府は「ホームレスは存在しない」という建前を取っており、存在しないから支援もしない方針を取っている。

日本でもそうだがドイツでは「ホームレスになるような人間は怠け者で本人に問題がある」という考えを持つ人が多い。


路上生活者の調査も行っておらず、支援団体の調査ではハンブルグだけで約2000人、全土では数万人が存在している。

2014年にドイツ全土のホームレスは3万9000人だったが18年は5万2000人に増加し、2020年は5万5000人程度になっている可能性がある。

ドイツ政府の統計ではホームレスは約86万人で、そのうち44万人は難民認定されて仮施設などに入居している人でした。


ドイツのホームレスの大半がドイツ以外から移住してきた人で、EU外から入国したが就職に失敗した人が多い。

ドイツ政府は日本のように支援するのではなく、職業を用意して賃金を払うという方法を取っている。

職業は公園のゴミ拾いや草刈り、低賃金の単純労働で、体のいい低賃金労働者になっているという批判もある。

欧州を福祉大国という間違い

ドイツは緊縮財政によって財政規律を守ろうとしているが、違う言葉で言うと福祉切り捨てで、ホームレス支援は行っていない。

ドイツの福祉政策は裕福な人には手厚く貧しい人には薄く、税金や年金を収めていない人には何もしない。

欧州のホームレス人口はイギリス30万人、フランス70万人でドイツは120万人と飛びぬけて多い。


ホームレスの定義はネットカフェや簡易ホテル、シェルターや知人宅で寝起きする人も含むので、日本とは比較できない。

日本の路上生活者数は約5500人でドイツは5万2000人以上、イギリスは統計が無いが1万人以上、フランスはパリだけで3000人以上が路上生活をしている。

イギリスは1年間で500人以上の路上生活者がなくなっていて、英仏独3か国ともに、全土での路上生活者は数万人と考えられます。


ネットで調べると3か国とも、いかに福祉が手厚いか書かれており、主に子供を産んだ日本人駐在員の妻が情報源になっている。

上場企業の海外駐在員のような「富裕層」への福祉は不必要なまでに手厚いが、税金を払えない貧困層への福祉はしません。

これが欧州流の社会福祉で、納税しない者に人権などないというのが一般的な考え方です。


日本のように生まれてから一度も納税せず年金も払ったことが無いのに、一生涯生活保護で面倒見てくれる国はEUには存在しません。

欧州でも格差問題が深刻化し、富裕層と貧困階層に社会が二分し、政治家は全員が富裕層出身なので貧困対策をしません。

「貧困者は怠け者だから貧困になった」のような考えが主流で、今後も欧州のホームレスは増える傾向にある。
http://www.thutmosev.com/archives/81976423.html

2. 中川隆[-14171] koaQ7Jey 2020年1月25日 17:48:38 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-984] 報告
2020年01月25日
ハワイでホームレス激増 大阪の15倍 ビーチに200人が居住
http://www.thutmosev.com/archives/45815972.html


大阪はホームレスが多いが、ハワイはその20倍の比率

引用:http://scottsharick.files.wordpress.com/2009/11/20091119-_dsc3639.jpg

ハワイでホームレス激増

日本人に人気の観光地ハワイで2015年10月に非常事態宣言が発令されたが、その原因はなんとホームレスが増えすぎたからでした。

当時ハワイ州全体では7600人以上のホームレスがいて、子ども440人を含む3800人は公的支援を受けていませんでした。

日本で最もホームレスが多い大阪府は人口882万に対してホームレス1100人、日本全体では5000人が存在しています。


比較すると日本全体より多いホームレスがハワイ州だけにいる事になり、アメリカ全体では40万人近いと考えられている。

アメリカでは約1000人に一人がホームレスで、日本全体は1万8000人に一人がホームレスです。

日本のホームレスは2002年に2万5千人を超えピークになったが、その後減り続けて5千人程度になりました。


日本ではホームレスの支援施設への収容や生活保護給付、簡易宿泊所への収容などが進んで急速にホームレスを減らしました。

全米で最もホームレスが多いのはカリフォルニアで11万人、ニューヨークで8万人のホームレスが生活しています。

ハワイは全米で最もホームレスの人口比率が多く非常事態を宣言し、ホームレス支援施設を整備しました。

ハワイの路上生活者は増加傾向

2019年1月調査ではオアフ島の路上ホームレス数は、昨年の2,145人から2,401人に12%増加しました。

オアフ島の避難所に住むホームレスの数は、2,350人から1,910人に減少しました。

2018年1月時点のハワイ州全体のホームレス人口は6,530人で、2017年の7,220人より減少しました。


日本や大阪では路上やテント生活者だけをホームレスに数えているので、路上生活者の比較では大阪1100人、ハワイ2400人と2倍程度です。

ハワイの人口は142万人で大阪は882万人なので、人口比では大阪は8018人に1人、ハワイは592人に1人が路上ホームレスです。

日本では物乞い行為は違法だがアメリカでは合法なので、観光客にお金を要求する人も多い。


ワイキキビーチ近くには200人ものホームレスが居住し、観光客にまとわりついている。

ハワイ州はホームレスが多いのを観光客には隠していて、当たり前だがPRビデオには登場しない。

ハワイにホームレスが多い理由は、物価が高い事と温暖な気候だと言われています。


物価高と温暖な気候

日本でも寒い地域でホームレスは少なく、暖かい地域の大都市ほど多い傾向が見られます。

ハワイの冬の最低気温は18度で夏の最高気温31度とあまり変わらず、非常に過ごしやすいので、路上で寝ていても大丈夫です。

ハワイは暖かいというので米本土の自治体では、ホームレスを追い出すために、ハワイへの片道切符を渡しているそうです。


もう一つの理由はハワイの物価が高いことで、離島なのであらゆる物に輸送費が掛かっています。

野菜とか果物が沢山とれそうな気がしますが、ハワイで取れるのはサトウキビくらいで、野菜も本土から運んでいます。

ハワイの物価は米本土より3割高く日本より高い、それなのにハワイの労働賃金は観光業中心なので、本土より安いのです。


ハワイの世帯収入は実は$86,000(1000万円以上)もあるのだが、一部の超富裕層が居るために高い数字が出ている。

実際の成人男性の年収は300万円から400万円なので、男性一人の収入で妻子を養う事はできず、ドロップアウトする人が多い。

ハワイは有名な観光地なので不動産価格が高く、従って家賃も高く古い1ルームで10万円以上はします。

ホームレスで居たほうが楽

ホノルル市内では100万ドル(1億2000万円)で家を買うのは不可能だとされています。

多くの労働者は収入の半分を家賃に使い、それでも払えないのでホームレスになっています。

ハワイ(アメリカ)では低所得者用に住宅がほぼ無料のような値段で提供され、フードスタンプが支給されています。


その人たちは家を提供してもらったり、フードスランプを貰うためにわざと働かず、低所得者に止まろうとします。

日本でも同じですが、生活保護を受給するためには収入があってはならない訳で、だから働かないのです。

フードスタンプを使うとスーパーの買い物の値段が10分の1になるので、僅かなお金で豪華な食事ができる。


一定以上の収入にならないために、週一日しか働かない人が多く、支援はホームレスを減らす役にたっていません。

ロサンゼルス市も2015年に一時非常事態宣言を出したが、路上生活者が2万5000人と全米で最も多い。

アメリカでは1%の富裕層の資産が90%の下位の資産合計を上回っていて、貧困者は増え続けています。

http://www.thutmosev.com/archives/45815972.html

3. 中川隆[-14169] koaQ7Jey 2020年1月30日 20:27:32 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[-852] 報告
2020年01月30日
世界2位の富裕国スイスで増える路上生活者 豊かになっても貧困者は減らない


スイスのホームレスは身なりがきれいな事が多い

画像引用:https://www.rts.ch/2018/10/04/11/58/9892752.image?w=800&h=449

スイスのホームレスはアメリカより多い

スイスは1人当たりGDPが世界2位の8万3000ドル(約900万円)と日本の2倍以上の超富裕国として知られている。

もともと時計などハイテクに強かったがITや金融で成功し、高所得者の移民を増やすことでGDPを上げた。

この辺はシンガポールに近く、高収入な企業や外国人を移住させれば何もしなくてもGDPが上昇します。


オランダもそんな感じで多国籍企業や富裕層、投資家、各界の成功者を低税率で受け入れてGDPを押し上げている。

こんなスイスにも貧困者がいるしホームレスも存在するが、スイス人気質として自分が貧困なのを隠そうとする。

スイス人は人種的にドイツ人と同じだが、ドイツ人も同じように貧困や失敗を隠そうとし、成功した話だけをしたがる。


こういう国では貧困者やホームレスが存在しないことになっていて、居たとしても社会の失敗者とか負け犬の烙印を押され同情されない。

ドイツもスイスもホームレスの公式調査をしていないが、民間団体によるとかなりの数が確認された。

スイス第3の都市バーゼル市(人口20万人)では屋外生活者50人とシェルター生活者50人の計100人が存在した。


路上生活者が4千人に1人存在するという事で、日本の2万5千人に1人よりも多い。

民間団体の推測ではドイツには5万2千人の路上生活者が居るので、1590人に1人が路上生活者という事になる。

アメリカは1000人に1人がホームレス(シェルター含む)で、ハワイは592人に1人が路上生活者です。

金持ち国になっても貧困者は減らない

スイスのバーゼル市という一つの街だけではあるが、スイスのホームレスや路上生活者は他の国と比べて少なくないのが分かる。

この事は重大な事実を示唆していて、それは国がどれだけ豊かになっても「貧しい人は減っていない」という事です。

多くの議論では国が豊かになったり景気が良くなれば貧困者が減り、ホームレスは居なくなるのを前提にしています。


だが実際には日本のあらゆる人が「目標にするべきだ」というドイツは日本の16倍もの路上生活者が居る。

好景気を謳歌してきたアメリカは日本の10倍以上のホームレスが居るし、金満国家スイスは日本の6倍の路上生活者が居る。

経済的成功と貧困者の減少には関連性が見られず、アメリカやスイスが今の10倍金持ちになってもホームレスは減っていないでしょう。


そういえば中東の金持ち国家ドバイでは貧困者が非常に多く、金持ちは貧困者を働かせることで、より金持ちになっている。

むしろ貧困者が増えれば増えるほど、お金を持っている人はお金を増やしているのが真実です。

日本でも某ワタミとか某ユニクロとか、貧困者を低賃金で働かせるビジネスモデルで大成功していました。


スイスは金持ち国家なのでホームレスや路上生活になっても、無料で食事をしたりシャワーを浴びれる場所が存在する。

だから物乞いをする必要がなく働く必要もなく、路上とシェルターを行き来して暮らす人が多い。

ジュネーブでは貧困者向けの無料食堂で毎日200人が食事をしており、そこではインターネットも使える。


スイス政府によると人口850万人のうち62万人が深刻な貧困で、約120万人が貧困層となっている。

富裕国なのになぜ貧困者が多いのかは簡単な話で、例えばユニクロの柳井は資産3兆円だが、ユニクロ労働者は時給1000円以下に過ぎない。

富裕国では豊かな人はどんどん豊かになるが、豊かな人の下で働く無数の人々は決して豊かにならない。


働いていも働いてもお金はたまらず借金が増えるばかりで、気づくと貯金ゼロの貧困老人になっている。
http://www.thutmosev.com/archives/82060156.html

これが世界の富裕国の人々の実態です。

4. 中川隆[-13472] koaQ7Jey 2020年2月26日 14:56:32 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[19] 報告
イギリスは、社会不安が「巨大暴動」という形で再燃してもおかしくない状況に 2020.02.26

イギリスもまた超格差社会である。『今日のイギリスは、先進国の中で最も不平等な国の1つ』と英社会学部教授は指摘する。

イギリスでは5人に1人が貧困状態で暮らしている。50万人近くがフードバンクを利用している。女性の中には生理用品が買えないという理由で学校を休んでいる女性もいるほどだ。(鈴木傾城)

先進国の中で最も不平等な国の1つ、イギリス

EU(欧州連合)離脱を成し遂げたイギリスのボリス・ジョンソン首相だが、EUを脱退したからと言ってイギリスが急に明るい国になるわけではない。イギリス国内はグローバル化の毒が社会の隅々にまで染み渡っている。

私たちはアメリカが激しい競争社会であり、格差がとめどなく広がっているいびつな社会であることは知っている。しかし、イギリスもそうなっているというのはあまり知らない。

イギリスもまた超格差社会である。『今日のイギリスは、先進国の中で最も不平等な国の1つ』と英社会学部教授は指摘する。

イギリスでは5人に1人が貧困状態で暮らしている。50万人近くがフードバンクを利用している。女性の中には生理用品が買えないという理由で学校を休んでいる女性もいるほどだ。

さらに子供の貧困も凄まじく、100万人の子供が適切な住居で暮らしておらず、空腹のまま学校に行かざるを得ない状況に陥っていると言われている。

ホームレスも増えて、バッキンガム宮殿のまわりにもホームレスだらけと化している。移民もまた昨今の不景気で次々とホームレス化している。

途上国の話ではない。イギリスの話である。

イギリスに来て成功している移民もいるが、逆に苦境に堕ちている移民も多い。低賃金と不安定な雇用でいつまで経っても生活の基盤が安定せず、白人系の低所得層と共に貧困に喘いで対立している。


人種問題・移民問題・差別問題・格差問題・貧困問題

イギリスの最底辺は荒廃している。

イギリスでは2011年7月23日にエイミー・ワインハウスという女性シンガーがドラッグとアルコールの過剰摂取で死んだ。彼女は家の近くの路地でいつもコカインを手に入れていた。

彼女はスラムに住んでいたわけではなく、ちゃんとしたところに住んでいたのだが、それでもドラッグの売人が路上で危険な薬物を売買する環境にあったのだ。

(ブラックアジア:エイミー・ワインハウス。名前にふさわしい死を迎えた歌手)

彼女が絶命した1ヶ月後、イギリスでは大規模な暴動が起きていたのも記憶に新しい。

これはロンドン北部にあるトッテナムで、29歳の黒人の男が警察官に射殺されたことで自然発生的に起きた暴動だった。

この射殺は不当だったとして家族と地元住民が警察署に抗議デモを行ったのだが、それを聞きつけて多くの黒人たちが警察署を取り囲み、日頃の警察官による差別的な言動を激しく抗議する状況になった。

こうしているうちに興奮した抗議デモ参加者の何人かがバスに放火したり、建物を壊し始め、あっと言う間に抗議デモが破壊と略奪を含む暴動と化した。

そこに社会の底辺で仕事もなく鬱屈していた白人の男たちも乗りかかった。そのため、暴動と破壊と放火は急拡大して他都市にも拡散していった。この暴動には人種問題・移民問題・差別問題・格差問題・貧困問題のすべてが爆発したものだった。
イギリスは、2008年のリーマン・ショックで直接的ダメージを受けた国のひとつで、その後も2010年のドバイ・ショックにも巻き込まれ、ギリシャ・ショックにも巻き込まれ、2011年は出口のない不況にもがいていた。

多くの若者が失業し、暴動が起きたトッテナム地区に限って言えば、失業率は20%近くもあった。

この20%が爆発したのが2011年8月のイギリス暴動だった。


EUを脱退してもグローバル経済から脱退できない

しかしながら、底辺の国民がいくらイギリス政府に不満をぶつけたところで事態は改善される見込みはなかった。経済的苦境はイギリス政府だけが問題なのではなく、先進国すべての問題になっていたからだ。

言うならば、グローバル経済という一国ではどうにもならない弱肉強食の資本主義システムでは、「労働者」はもはや単なるコストであり、使い捨ての対象なのである。

イギリスでもこうした状況が放置され続け、大量の移民が入り込んでますます労働環境が悪化していき、ついに移民反対派が反旗を翻してEU脱退を迎えることになった。

しかし、イギリスがEUを脱退したからと言って、すぐに格差問題や貧困問題が解決されるわけでもないし、「人種問題・移民問題・差別問題・格差問題・貧困問題」が解決されるわけでもない。

イギリスはEUを脱退しても、「グローバル経済」から脱退できない。今後も多国籍企業が下層の労働者を使い捨てにしながら肥え太っていくシステムは変わらない。
多国籍企業は、常に安い労働力を探して、労働力を安価で使うだけ使って、用済みになったら労働者を捨てるか、工場ごと捨てて去っていく。

労働者は使い捨てなので、労働環境を整えるとか終身雇用で面倒を見るような「コストのかかること」は絶対にしない。そうやって多国籍企業は世界の労働市場を荒らし回って莫大な利益を貯め込み、税金も回避して世界中を逃げ回る。
アップルも、グーグルも、アマゾンも、マクドナルドも、スターバックスも、世界各国で莫大な利益を計上しながら税金をうまくすり抜けているのを咎められて、あちこちの国で追徴課税命令を受けている。

しかし、これらは氷山の一角でしかない。

莫大な利益は巧みに隠され、株主と経営者と言ったステークスホルダーがその利益にありつき、労働者は賃金を抑えられた上に酷税が敷かれてどんどん貧しくなっていく。

人間の歴史の中で変わらない普遍的な方式とは?

かくしてイギリスの底辺では貧困が定着したまま放置され、怒りが充満したまま現在に至っている。このままではイギリスは再び巨大な暴動が起きるのではないかと噂する人もいる。

「貧困の増大と社会システムの行き詰まりは暴力を産み出す」という社会現象は、人間の歴史の中で変わらない普遍的な方式でもある。これらの根っこにあるのは、まさに貧困の増大と社会システムの行き詰まりだ。

イギリスにはそれが顕著になっている。だから、私自身もイギリスではEU脱退による後遺症が広がると、再度、大きな社会不安が巨大暴動という形で再燃してもおかしくないと考えている。

果たしてボリス・ジョンソン首相は、うまく舵取りができるのだろうか。
まずいことに、今後のイギリスはEUと切り離された形で生きていかなければならないのだが、そこに中国発の新型コロナウイルス問題が湧き上がっている。世界経済は暗転する。そのダメージをイギリスはまともに食らうことになる。

つまり、イギリスが経済的苦境に堕ちるのは確実な情勢となっている。

そうであれば最も大きな影響を受けるのがアンダークラス(貧困層)である。イギリスで2011年の大規模暴動が再現するような事態になっても不思議ではない。
今でもイギリスの底辺では経済環境の悪化に追い詰められる人たちが増えており、ますます不満と怒りをマグマのように溜めているのである。まさに「貧困の増大と社会システムの行き詰まり」の真っ只中だ。

イギリス社会がこの問題をどうやって解決できるのか誰も分からない。


『分解するイギリス: 民主主義モデルの漂流(近藤 康史 )』
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4480069704/ref=as_li_qf_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=asyuracom-22&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4480069704&linkId=0285d334d40558ea6b00a9c46899fad9

5. 中川隆[-13469] koaQ7Jey 2020年2月26日 14:59:55 : b5JdkWvGxs : dGhQLjRSQk5RSlE=[23] 報告
上のリンク
https://blackasia.net/?p=17284
6. 2023年1月08日 05:37:15 : IvOMpohD82 : dXNMVU90UHBCcUk=[4] 報告
英国で看護師10万人が一斉スト“公的医療守るために賃上げを” インフレで生活苦、人手不足で現場激務「働く者が生きられぬ」
国際2023年1月5日
FacebookTwitterHatenaLine共有

イギリス国内でストライキをおこなう看護師たち(昨年12月15日)

 イギリスでは現在、医療、鉄道、高速道路、空港、港湾、郵便、バスなどさまざまな公共サービス労働者が国内全土でストライキをおこなっている。2年以上もの間続いている新型コロナウイルスによる経済的疲弊、ウクライナ戦争の下でロシアからのガス供給ひっ迫によるエネルギー価格の暴騰、高インフレなどにより国民の生活費負担が急増している。こうしたなか、王立看護協会(RCN)は昨年12月から、106年の歴史上初めてストライキを実施している。医療現場では人手不足、物価高騰に賃上げが追いついておらず、実質賃金は2010年に比べ20%も下落している。こうした状況を変えるため、10万人をこえる看護師が行動し、国と直接対峙してインフレ率に対応した19%の賃上げや医療現場の救済を求めている。これに呼応するようにあらゆる公共サービス職員によるストが全国に急拡大している。

◇     ◇

 記録的な物価の上昇が続くイギリスで昨年12月15日、国営の国民保険サービス(NHS)の看護専門職による労働組合「王立看護協会」(RCN)が、106年の歴史のなかで初となるストライキを決行した。看護師たちはそれぞれの病院前にピケを張り、国による公正な賃金の確保と、国民にストライキ支持を訴えている。こうした姿に道行くバスやタクシー労働者がクラクションを鳴らして応える姿も珍しくない。ピケに加わるNHS看護師も日に日に増えているという。

 RCNは、世界最大の看護組合であり専門家団体だ。50万人近くの看護師、助産師、看護支援従事者、学生が協力して専門職の向上にとりくんでいる。今回のストについてRCNは、看護師たちが直面する「生活費の危機」がさらに悪化するなか、インフレ率を5%上回る19%の賃上げを政府に求めている。

 NHSに所属している看護師たちは、低い給与を理由にその多くが離職しており、現場では深刻な人手不足と過重労働が続いている。昨年9月末時点で、英国内では常勤相当の看護師4万7496人が欠員し、欠員率は11・9%となっている。

 新型コロナウイルス感染拡大のなか、英国内の医療従事者は人手不足による激務のなかで医療に貢献してきた。英国政府は医療従事者への感謝とねぎらいのため国民に拍手を呼びかけるなどしてきたが、賃金自体は一貫してインフレ率を下回っている。看護師たちの給料は現在、昨年と比べて実質約5000㍀(約83万円)も減少している。また、実質賃金は2010年以降20%も低下している。

 エネルギー価格をはじめとした物価高騰が深刻化するなかで「1カ月分の給料がすべて家賃で消える」という看護師も少なくない。さらに職員の3人に1人が自宅の暖房代や家族の食費をまかなえていないという。

 複数の国民保健サービスの病院を運営する国内各地の「NHSトラスト」は現在、その4分の1以上が、職員たちを飢えさせないためにフードバンクを運営している。また、自宅の光熱費を抑えるために職場に寝泊まりする看護師もいるという。

 こうした状況を改善するべく昨年12月12日、RCN書記長兼最高経営責任者のパット・カレンは、スティーブ・バークレー保健長官と会談し、正式な賃金交渉の開始を求めた。だが保健長官は報酬について話し合うことを拒否したため、RCNは予定通り12月15日、ストに突入した。

 RCNは今回のスト実施の理由について、「看護師や職員が燃え尽きてしまえば、患者の看護と安全に対する懸念が生じるため」だと説明している。RCNは、106年の歴史のなかで初めて踏み切った今回のストをめぐり「看護師は、ヘルスケアのなかでもっとも安全性を重視する職業であり、患者ケアにおいて重要な役割を担っている。にもかかわらず、国による投資不足が長年続き、看護師は依然として人手不足で、過小評価されている。政府は看護職を守り、患者ケアを守るために早急に行動する必要がある」と訴えている。

 RCNは今回のキャンペーンで以下のことを目的としている。

 ▼看護専門職の給与は一貫してインフレ率を下回っており、生活費の危機によってその事実が悪化していることを認識するとともに、それを反映させ大幅に引き上げること。
 ▼看護職員が日々発揮している訓練、資格、技能、責任、経験を大切にすること。
 ▼看護師が魅力的でやりがいがある職業とみなされるようにし、何万もの未充足の看護師ポストの確保に取り組むこと。
 ▼インフレ率よりも5%高い賃上げを確保すること。

 RCN側は、「この要求に対する政府の対応は、NHS以外で働く看護職員にも当然与えられるべきものである。看護職員が職場や部門に関係なく、同じように公平な賃金を受ける資格がある」としている。また、看護師の賃上げと患者の安全のために、自身の1日分の賃金をも顧みずストに立ち上がった看護師たちを支援するための「ストライキ基金」への寄付を呼びかけている。 こうした看護師たちの要求に対し、スコットランドでは、政府が平均7・5%の賃上げを提案し妥結を図った。しかしRCN側はこれを「圧倒的多数」で拒否しており、組合は新年にストライキの日程を発表する予定だ。

 イギリスでは昨年12月20日、スコットランドを除くイングランド、北アイルランド、ウェールズで再びRCNのストライキがおこなわれた。最大10万人の看護スタッフが、何年にもわたって実質賃金が減り続けていることや、NHSにおける患者の安全が脅かされていることに抗議した。

 RCN側は「首相は、看護スタッフが病院の外に立つ動機は何なのかを自問する必要がある。彼らは自分たちの懸念を聞いてもらうために、1日分の給料を犠牲にしている。彼らの決意は、個人的な苦難よりも、患者の安全とNHSの将来に対する懸念から生じている」と訴えた。

 さらに「英国政府がストライキ終了から48時間以内に対応しない場合、2023年1月のさらなるストライキの日程を発表せざるを得なくなる」と警告。これに対し英国政府はまたも交渉に応じることはなかった。

 ストライキに対しスナク首相は12月23日の声明で「本当に悲しいし、特にクリスマスの時期に、非常に多くの人々の生活に混乱が生じていることに失望している」とし、労働現場の要求に応じない構えを示した。

 政府の姿勢を受けRCN側は、1月にも18日と19日にストライキを実施することを発表。今後の政府の対応次第では5月まで続くことを予告している。

 看護師たちに呼応するように、昨年12月21日にはイングランドとウェールズで、1万人以上の救急隊が少なくとも9カ所でストをおこなった。救急隊は職場を離れてピケの列に加わり、賃金の引き上げとより良い労働条件、人員配置を要求した。

 こうした現場の抗議に対し、政府は賃上げに対応せず、代わりに軍を救急現場動員するなど対応に追われている。運転手などの救急業務の一部を代行するため、事前の訓練などもおこない750人の軍人を待機させた。

 政府が賃上げを拒否したことを受け、救急隊員たちは今年1月にも11日と23日にストを予告している。生命を脅かす「999番通報」や、もっとも重大な緊急電話には、引き続き対応する。

 救急隊のストに関わっている労組の一つ「UNITE」の書記長は「このストライキは厳しい警告だ。私たちは政府から国民保険サービス(NHS)を救うために立ち上がっている。患者の命はすでに危険にさらされているが、政府は傍観者として座ったままで、危機を救う責任から逃げている」「閣僚たちは、膨大な数のNHS労働者の生活を守るという切実な必要性に対処できていない」と批判している。救急隊員によるストは28日にも予定されており、英国政府は軍の派遣を1200人に増員した。

 NHSイングランドの最新データ(昨年12月20日現在)によると、昨年12月から看護師や救急隊員によるストライキが始まって以来、約3万5000件の手術と外来予約がキャンセルされているという。

空港や鉄道、郵便局でも ストの波が急拡大

 公務員組合(UNISON)のクリスティーナ・マカネア書記長は組織のホームページで「NHS全域のストライキに政府は真剣に耳を傾けるべきだ。パンデミック時に国を救った勇敢なNHSスタッフが、現在のNHSの深刻な危機に注意を喚起するために、この困難な労働運動を起こしている。政府は我々と建設的な交渉をせずに責任を押しつけてくるだろう。しかし、給与や人員配置、そして最終的には患者のケアを改善するという私たちの目標をあきらめるつもりはない」とコメントした。

 さらに全国でストライキをたたかう職員に対して「NHSの現状と、その結果引き起こされた今回の労働争議は、あなたたちのせいではない。今日の政府は、過去12年間の自身の行動に対する責任から目をそらしている。国民に安全で信頼できる一流の医療サービスを提供できなかっただけでなく、衰退させた。給与について話すことを拒否するだけでなく、まともで建設的な労使関係を築くことができないことも証明している。今は、私たちの行動が合法的で正しいものであることを忘れないでほしい。NHSの未来は、私たち全員のたたかいにかかっているし、たくさんの個人や組織から支援のメッセージが届いている。多くの国民が私たちを応援している」と訴えている。

 UNISONは、教育、地方自治体、NHS、警察サービス、エネルギーの分野で公共サービスを提供する現場で130万人をこえるメンバーを擁する英国最大の組合だ。

 英国全土のあらゆる公共サービスで連帯してたたかわれているストには、UNISONや、看護専門職の組合「RCN」、鉄道・海事・運輸組合「RMT」など、国内の大きな組織が一致し、インフレ率上昇に合わせた公正な賃金を支払うこと、職場環境改善や人員配置を国に求めている。

 医療現場以外の公共サービス現場でも、年末年始にかけてストの波が急速に広がっている。

 現在、ロンドンのヒースロー空港では、昨年12月23日から26日までと、同28日から31日までの期間に、英国出入国管理局のストライキが実施されている。日本にも影響があるため、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は、この期間中に英国に入国する場合、入国審査カウンターでの待ち時間が通常よりも長くなる可能性があるとの注意喚起をおこなっている。

 ヒースロー空港では入国審査官の約75%が組合員であるため、ストによって入国ゲートは大混雑が予想される。冬の休暇は空港が混雑する時期で、影響は数十万人に及ぶ見込みだ。政府は軍人600人以上を投入し、パスポート審査を代行するために訓練をおこなっている。

 イギリス国内の空港や港湾で働いている国境警備隊職員、空港の手荷物取り扱い職員もストをたたかっている。公共商業サービス組合(PCS)は昨年12月23日、政府が賃金交渉を拒否し続ければ、争議行為がさらに激化すると警告した。PCSは、政府が今年国境警備隊職員に2%アップの給与を提示したがこれを拒否し、賃上げ10%を要求している。

 クリスマスシーズンを通して鉄道労働者によるストライキも実施されている。その結果、車で移動する人が増えており、道路が通常よりもはるかに混雑する事態となっている。しかし同時に高速道路のメンテナンスや保安職員なども連帯してストライキをたたかっているため、今後かつてない混乱状況を招くことが予想されている。交通事故や道路の落下物などに対応する職員や、管制センターの職員が少なくなれば、交通規制や通行の再開を円滑におこなえなくなり、さらなる混乱を招くこととなる。

 現在国内では道路の渋滞を避けるために、のべ何百マイルもの道路工事がストップし撤去されている。ストの影響はこうした他業種にも及んでいる。それでも大幅な渋滞は避けられず、すでに一部地域の道路では深刻な渋滞が発生している。

 これらのストを組織している全国鉄道・海運・運輸労組(RMT)は、生活費の上昇に合わせて値上げを要求している。今月のストライキは、何百万人もの人々が家族や友人に会いに旅行したり、観光目的でイギリスを訪れたりする時期に実施される。鉄道会社は、イギリス全土のサービスが縮小され、一部の地域では完全に停止すると警告している。

 郵便業務を担う「ロイヤルメール」もクリスマスイブからストに突入しており、クリスマスカードが届かない事態となっている。また、運転免許試験官たちも年末から年始にかけ毎週5日間ストをおこなう。そのため国内の運転免許試験場では試験や指導が受けられなくなるなどの影響が予想されている。

 英「フィナンシャル・タイムズ」によると、多業種にわたるストの影響で、12月の労働損失日数は100万日をこえる見通しとなっている。サッチャー政権時の1989年以来33年ぶりの高水準だという。

300万人が光熱費払えず ウォームバンク設立も

 英国内でこれほど公共サービス労働者の賃上げ要求が高まっている背景には、大幅な物価上昇による生活苦がある。英国内のインフレ率(前年同月比)は、昨年10月に市場予想(10・7%)を上回る11・1%をつけ、1981年10月以来、41年ぶりの高水準となった。エネルギーおよび食品価格の高騰が主因とされ、先進国でも最悪の事態となっている。英中央銀行・イングランド銀行は昨年11月末、統計開始以降最長の景気後退に直面していると指摘。「経済は非常に困難な2年間に見舞われる可能性がある」と警告した。

 英国内の消費者物価は昨年1月から11月までで8・9%上昇したが、エネルギー価格においては46・3%も上昇している。うち電気は62・4%、ガスは73・5%、液体燃料(ガソリン・灯油など)は実に110・9%も価格が上昇している。こうした負担増に対しては、政府補助がもうけられているものの、電気ガス代が月に400㍀(約7万円)をこえる家庭も珍しくないという。

 昨年10月1日には、政府がエネルギー価格の上限を80%引き上げ、平均エネルギー料金は年間3549㍀(約57万円)と暴騰している。さらに日常生活に必要な牛乳や植物油、パンやパスタなどの食品価格もじりじり上昇している。家計への圧迫を理由に、光熱費を滞納している人は、英国内で少なくとも300万人いるといわれる。

 また、金利の急上昇がくり返されたことにより、住宅ローンの支払いが大幅に増加している人も急増している。さらに、家主が住宅ローンの請求額を増やしているため、賃貸料は過去最高の割合まで上昇している。

 そのため英国内ではこの冬、「Heat or Eat」(食うか暖をとるか)といわれており、全国各地にフードバンクならぬ「Warm Bank(ウォームバンク)」の設立が急増している。ウォームバンクとは、電気代高騰のなかで自宅の暖房を使用する余裕がない場合に、無料で暖をとることができるスペースのことだ。現在、英国内の慈善団体や教会、コミュニティセンター、図書館、美術館、企業などが、計約3700ものウォームバンクを開設している。多くの施設が食事や温かい飲み物、インターネットアクセスを提供しており、ウェブサイトにマップを掲載して利用を呼びかけている。

 英国内における物価高騰の主な原因は、ウクライナ戦争により、ガス価格が記録的な水準にまで上昇したことだ。

 イギリスだけでなく、EUの平均家庭用電気料金も急激に上昇した。ヨーロッパはエネルギーの約34%をガスから得ており、ロシアはウクライナとの戦争が始まる前に、EUのガス輸入のうち40%を提供していた。しかしウクライナ侵攻後、ロシアは最大の輸出先である欧州への天然ガス輸出を大幅に削減した。主要パイプラインであるノルドストリームを通じた供給停止も加わり、今年秋時点で欧州への供給量は9割減少した。昨年1年で見ても前年比7割減となる見通しだ。

 欧州全土でエネルギー価格が高騰し物価高が深刻化するなか、フランスでもストライキがたたかわれている。クリスマスの週末には、国内の列車の車掌の半数近くがストライキをおこなった。国立鉄道当局によると、昨年12月23日には予定されていた列車サービスの30%がキャンセルされ、週末にはさらに40%がキャンセルされた。

 他にも、EU圏内ではイタリア、オーストリア、オランダなどの鉄道労働者が賃上げを求めたストライキをおこなっており、来年以降も断続的におこなわれる。ドイツでは昨年11月末から12月にかけて、医療従事者が生活費に見合った賃上げを求めたストをおこなっている。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25450

7. 中川隆[-12810] koaQ7Jey 2023年1月08日 05:44:15 : IvOMpohD82 : dXNMVU90UHBCcUk=[5] 報告
2023年01月06日
各国政府はインフレを歓迎し、むしろインフレ誘導している

インフレが起きると過去の借金が軽くなるので、各国政府は意図的に高インフレにしています

コロナ対策で各国政府債務が膨張

経済学者のラッセル・ネイピアは世界的な高インフレと高金利が15年から20年続き、自由経済から政府主導経済に移行すると主張している

根も葉もない事ではなく今現在世界はインフレで苦しみ、インフレ対策として各国政府は利上げをし日本も利上げ政策に転換しようとしている

2010年にリーマンショックが終わってから2020年に新型コロナが流行するまでの10年間が自由主義市場経済の時代だったがそれはもう終わった


新型コロナ流行で主要各国の経済活動が縮小し、税収が減少したのに各国政府は莫大なコロナ対策費や経済対策費、生活支援などを支出した

米トランプ政権は数か月で300兆円ものコロナ経済対策をしバイデン政権でも同じくらい支出、おかげで多くのアメリカ人は働くより高収入になりました

日本も矢継ぎ早にコロナ支援を決め総額100兆円を上回り、欧州や中国など多くの政府は財政支出を大幅に拡大した


後に残ったのは膨大な公的債務だが各国政府は民間や地方行政府の債務に付け替えたり、証券化のような手法で(日本以外は)国の借金ではないかのように偽装している

日本政府は反対に国の借金ではないものまで国の借金に含めて借金を偽装しているが、それは今回の本題ではありません

2022年に世界で火を噴いた高インフレはラッセル・ネイピアによればロシアのせいなどではなく、各国政府が積み上げた公的債務を返済するために意図的にやっている


世界の主要国はどの国も民間債務と政府債務の合計がGDP比250%以上になっているので、このままでは借金を返すため増税を繰り返す事になる

日本政府が証明したように借金を返すために増税すると、増税によって消費が縮小しGDPが縮小し、結局増税しなかった場合より財政悪化を招く

そこで各国政府はインフレ率を上げて政策金利はインフレ率より低く保つことによって、公的債務のGDP比を縮小しようとしている

各国はインフレで政府債務を減らそうとしている

日本の公的債務が1100兆円でGDPは550兆円なのでGDP比200%、例えばインフレ率を10%にしてゼロ金利のままにし名目GDPだけを10%成長させます

このモデルでは実質GDPはゼロ成長だが名目GDPが10%成長し公的債務は1100兆円のままなので、あら不思議公的債務のGDP比は182%に下がりました

これは非常に極端な想定ですがインフレ率を上げると政府債務が圧縮されるので、各国政府はインフレを警戒しているどころか「インフレ大歓迎」なのです


でもインフレは国民生活を悪化させるので政府や政治家は表向き困ったような顔をしてみせ、まるでインフレを防止しているかのように演技をします

日銀黒田総裁は記者会見で「インフレは良い事だ」とうっかり本当の事を言ってしまったが、彼は正直に事実を言っただけだと思います

インフレ誘導で公的債務を圧縮するには15年から20年かかるので、それまで高インフレ高金利時代が続くというのがラッセル・ネイピアの主張です


彼の主張では2020年以降の新型コロナ対策によって経済の主導権が中央銀行や自由市場から、各国政府の手に移った

どう移ったかはアメリカ政府が3年で600兆円以上を国民に配ったのを見ればわかり、日銀による国債買い入れや日本国債買取を見ても分かります

世界経済はもはや自由市場で動いてはおらず、この事が米中対立や東西陣営のブロック経済化を招いている疑いがあります


東西陣営やブロック経済は1991年に崩壊したが、世界は再び中ロイランなどと日米欧が対立する時代を迎えています

一般的に経済は自由なほど成長するが制限を加えるほど縮小するので、ブロック経済時代の成長率は自由主義時代より低くなるでしょう

第二次大戦前のブロック経済では米英仏の豊かな国が日独伊の「貧しい大国」を締め上げたが、今回締め上げられるのは中ロになるでしょう


日独伊が米英仏に噛みついたように、締め上げられた中ロやイランが何らかの戦いを挑んでくる可能性があります
https://www.thutmosev.com/archives/89761747.html

8. 保守や右翼には馬鹿し[12] lduO54LiiUWXg4LJgs2Ubo6tgrU 2023年2月14日 12:26:48 : brmqNnC2zE : N1lSM3hxV1BmRlE=[1] 報告
イギリス 教員や公務員等50万人がスト 医療、鉄道、救急、郵便、消防の動きに呼応 「賃金上げ、生活と公共サービスを守れ!」
2023年2月13日
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25791

ロンドン市内でおこなわれたストライキ参加者や市民数万にによる抗議デモ(1日)

 光熱費や食料価格高騰など深刻なインフレに襲われ、医療機関や交通機関などで大規模ストライキが続いているイギリスで1日、過去10年で最大となる50万人規模のストライキが実施された。イギリス国内では、経済の低迷、コロナ禍、ウクライナ戦争、ロシア制裁の副作用などの複合的な要素が加わるなかで物価高騰と貧困化が急拡大し、貧困層(所得中央値の60%未満)は1600万人をこえるといわれる。それでも新自由主義的な緊縮政策を継続するスナク政府への激しい抗議とともに、あらゆる業種で同時多発的にストライキがおこなわれており、今回のストでは教職員や公務員労組なども加わった。労組の枠をこえ、広範な国民世論が下から突き動かしており、多国籍資本の代理人となって迷走する政府を追い詰めるゼネストへと発展しつつある。

政府の強硬策にゼネストで対抗

 イギリス国内では昨年から、医療、鉄道、高速道路、空港、港湾、郵便、バス、入国管理当局などの公共部門の労働者が一斉にストライキをおこなっている。とくに昨年末には、コロナ禍で医療を支えた公共医療(NHS)の看護専門職による労働組合「王立看護協会(RCN)」が史上初のストに踏み切り、全国で10万人の看護師が賃上げを求めて断続的にストライキを実行してきた。

 イギリス国内のインフレ率は3カ月連続で10%(日本は3〜4%)をこえており、過去四五年間で最高となった。とくに電気代(燃料費)は家庭によっては3〜5倍に高騰。イギリスでは定額前払い式メーターを利用している世帯も少なくないが、昨年10月からの電気代8割値上げ発表により、年額59㍀(約9700円)の追加料金支払いが義務付けられ、年間費用は3608㍀(約59万円)にまで跳ね上がった。

 ガソリンも昨年6月、1g当り平均価格が310円台となり、平均的な乗用車を満タンにするのに必要な55gの価格が100㍀(約1万7000円)の大台をこえた。

 食料品価格も平均で18%高騰し、牛乳やバター、チーズ、肉、パンなどの家庭の必需食料品価格は最大42%上昇した。1980年以来の最高値といわれ、平均的世帯がスーパーなどで食材を購入する年間費用は、1年前に比べて380㍀(約6万3000円)増加したといわれる。人々の善意に依存したフードバンク(食料寄付)などの支援策も、急速なインフレに追いつかない。これらにともなって航空運賃、飲食店、ホテル宿泊料に至るまで軒並み高騰している。

 人々の間では「heat or eat(暖房をとるか、食べるのをとるか)」と語り合われ、暖房費を払うために食事を抜いたり、減らしたりすることが一般的になっているといわれる。地元紙では、食材を買う余裕がないため、ペットフードを食べたり、燃料費を節約するために電子レンジやオーブンではなく、キャンドルやラジエーターで食べ物を温めたりするなどの記事まで見受けられる。

 こうしたなか、コロナ禍で過重な負担が押し寄せた医療現場では、長年の低賃金に加え、慢性的な看護師不足で生じる基準の配置人数以下での勤務が続き、サービス残業が押しつけられ、医療を受けられない患者からクレームが殺到するなど矛盾が顕在化した。看護師たちは適正な医療が継続できる体制と待遇改善を求めてきたが、当局からの回答が「3%の賃上げ」であったことが現場の怒りに火を付け、史上初の10万人ストへと発展した。

 看護師たちの要求は目先の待遇改善に止まらず、「公から民へ」を押し進めたサッチャーから始まる新自由主義政治による公的医療破壊に対する抗議を含んでいる。

 かつて看護師の育成・確保が国策だった時代には、予算が優先的に確保されていたため、看護学生は授業料無料、無償の奨学金を毎月5万円支給されるなどの政策もあって、看護師は倍率の高い人気職業だった。ところがリーマン・ショック後の2010年に公共部門の賃上げが凍結され、インフレが進むたびに所得は目減りし、看護職の志願者は次第に減少。2014年ごろからはEU各国から看護師を大量に受け入れて人手不足をしのいでいたが、2016年のEU離脱によってそれも難しくなった。

 そして2017年、英政府は「看護師育成の礎」といわれた看護学生の授業料無償化と奨学金を完全に廃止した。もはや看護職は、主婦や低所得家庭の学生に進学と就職のチャンスを与える魅力的な仕事ではなくなり、看護師離れは一層加速した。コロナ医療従事者に対する「危険手当、ボーナスの支給なし」の政府決定も、多くの看護師を退職に追いやった。これ以降、英政府は待遇を改善して看護師を増やすことよりも、この劣悪な待遇でも志願してくる外国人看護師のリクルートに舵を切っている。

 コロナ以降、NHS(公的医療システム)の待機手術の待ち期間は2〜3カ月と長くなり、プライベート病院(民間)に通えない貧困層が医療へアクセスすることは厳しくなり、公的医療は崩壊寸前に追い込まれている。

 約50万人の看護師、助産師、看護支援従事者、学生が所属するRCNは、「看護師や職員が燃え尽きてしまえば、患者の看護と安全に対する懸念が生じる」「看護師は、ヘルスケアのなかでもっとも安全性を重視する職業であり、患者ケアにおいて重要な役割を担っている。にもかかわらず、国による投資不足が長年続き、看護師は依然として人手不足で、過小評価されている。政府は看護職を守り、患者ケアを守るために早急に行動する必要がある」と訴えてストに突入し、インフレ率を5%上回る賃上げを求めている。

 看護師のストに呼応して、救急隊員2万5000人もストに合流した。隊員たちは、救急現場で働くスタッフがみな疲弊して士気を失っていることや、超過勤務が常態化して優秀な救急隊員が過労で次々と辞めていくこと、「通報を受けても隊員も救急車両も足りず、すぐに出動できない。ようやく搬送できても病院側も人手不足で、患者を担架に乗せたまま何時間も受け入れ手続きを待つ毎日だ」「患者にしわ寄せが行く悪循環が続いている」などと訴え、低賃金と重労働による人手不足、政府による救急車使用対象の制限によって人々の生命を救うことができない劣悪な医療体制の改善を求めている。

 政府当局は、組合側との交渉に応じておらず、逆に「ストは人々を危険にさらしている」と攻撃している。医療の現場を支えてきた労働者側は「ストのために人々が死んでいるのではなく、国の政策で人々が死んでいるからこそストをしているのだ」と断固として譲らず、医療現場の全国ストは2月も断続的に実施されている。

 1月からは、英国内の幹線鉄道、地下鉄、船舶、バス、トラックに至る交通運輸産業部門の労働者が加盟する鉄道海事運輸労組(RMT)が呼びかけ、全国4万人の労働者と14の鉄道運営会社労働者が一斉にストライキに突入し、全国のほとんどの鉄道サービスを閉鎖した。郵便労働者もクリスマス前にストを決行した。

反スト法案に怒り爆発 全国的にスト拡大


ロンドンのホワイトホールで開催された抗議集会に押し寄せたストライキ参加者と市民(1日)


反ストライキ法案に反対するデモに参加した消防士たち(1日、シェフィールド)

 スナク英政府は、医療や交通など基幹部門のストライキを制限する「反ストライキ法案」を提出して弾圧に乗り出したが、この動きが人々の怒りに油を注ぎ、ストライキの波は全産業に波及している。2月も輸送、医療、郵便、公務員などの複数の部門でストライキが同時に実施される予定となっている。

 2月1日には、国内5つの主要労組が呼びかけ、あらゆる業種の労働者50万人が一斉にストライキを実施した。2011年に200万人が保守連立内閣の年金削減政策に対する抗議ストライキを実施して以降、最大のストライキとなった。

 全国教員組合(NEU)が呼びかけたストでは、全国2万3000校(全国の8割)の学校で、約30万人の教員が参加した。政府の統計によると、公立学校の51・7%が閉鎖された。大学教員7万人もストに参加したため、全国150の大学すべてが閉鎖。大学でのストは、今後2カ月間に18回予定されている。

 教員たちは、「私たちの学校を守れ!」をスローガンにして、教育予算の削減や教員不足を放置する政府に抗議し、賃上げや教育スタッフの増員を求めている。

 また、公共・商業サービス組合(PCS)の組合員である10万人の公務員もストライキをおこなった。ホワイトホール(政府機関が集中する地域)の各省庁、規制当局、博物館、雇用センターで業務が停止した他、国境警備隊も業務を停止したため、パスポートチェックには政府が徴集した軍人が出動した。

 鉄道運転手の組合(ASLFE)と、鉄道、海運、運輸労働者の組合(RMT)の1万2500人の鉄道運転手が共同でストを決行し、鉄道ネットワーク全体の3分の2の便が停止した。

 今回のストライキは、1月30日に英国議会で「反ストライキ法」が可決されたことに合わせて実施された。反ストライキ法案(最低サービス水準)法案は、経済の主要部門におけるストライキのさい最低水準のサービスを提供する義務を課し、雇用主がスト参加者や組合に損害賠償請求することを認めている。最初の取締対象を鉄道、救急隊員、消防・レスキュー隊員のストライキに絞り、その後、運輸、医療、教育部門のすべてのストライキに適用する筋書きとなっている。

 労働組合会議(TUC)が呼びかけたロンドンでのデモでは、4万人が賃上げや緊縮財政への批判とともに「ストライキの権利を守れ!」と訴えながらポートランド・プレイスからホワイトホールまで行進し、ダウニング街付近で集会を開いた。またバーミンガム、シェフィールド、リーズ、ブリストル、マンチェスターなどの地方都市でも同時に集会が開かれた。

 これらのストやデモは、反ストライキ法の成立を目論む保守党政府と、交渉を拒む資本側と対峙する何百万人もの労働者の決意を表明するものであり、賃上げを求めるストライキ実施を決定したばかりの消防士らもデモ行進に参加した。

 労働者の要求をはね付け、ストへの強硬姿勢を見せるスナク政権に対して全国的な批判が高まっており、政権支持率は10%台に落ち込んでいる。

子どもの3人に1人が貧困  教員一斉ストの背景


ストライキを決行中の教員たち(1日、ロンドン)


子どもたちも教員たちとともにデモ行進に参加(1日、ノリッジ)

 全国教員組合(NEU)の前会長で現全国役員のダニエル・ケベデ氏は、教員一斉ストに踏み切った背景を次の様にのべている。

*      *

 私たちの学校は危機に瀕している。政府は、中等教育機関の教員採用目標をまたもや達成できなかった。中等教育で必要とされる教員の59%しか採用されず、校長協会も「破滅的としかいいようがない」と表現した。

 このことは、子どもたちの教育に直接影響を及ぼし、数学や物理といった教科を専門家ではない者が教えるケースが多くなっている。教師がまったく確保できないクラスも増え、子どもたちは代用教員や無資格の職員に教えられている。政府が教員に適切な報酬を払おうとしないために、子どもたちの教育が損なわれることは許されない。

 政府が手を抜いているのは、教師の給与だけではない。教師やサポートスタッフの給与の削減に加えて、2023年には国内の学校の90%が予算削減に直面し、教室でのリソースが減り、教育アシスタントが減り、朝食クラブや宿題サポートなどのサービスも削減せざるを得なくなった。

 これらはすべて、子どもの貧困が大幅に増加し、家計のやりくりに苦労する家庭が増えるなかで起きている。英国では3分の1以上の子どもたちが貧困状態にあり、特に2015年以降、劇的に増加している。

 低賃金と給付金の凍結によって、家族が苦境に追い込まれている。賃金水準がインフレに大きく遅れているため、大半の人が実質的な収入減に陥っている。

 学校は、教育危機や子どもの貧困化の進行に対処するための資源がないまま対応を迫られている。

 このような状況を変えなければならない。私たちは、給与カットに反対し、予算カットに反対し、子どもたちにふさわしい教育のために立ち上がっている。そのために30万人の教職員と支援スタッフがストライキを実施することに圧倒的な票を投じており、私たちは政府に耳を傾けさせなければならない。私たちは、大学労働者、公務員、鉄道労働者、郵便労働者、看護師、その他の人々とともにたたかう。低賃金の惨劇を終わらせるために政府が行動することを要求する。保健、教育、公共サービスへの投資を要求する。市場ではなく、人々の利益のために働く経済を要求する。

 私たちの争議は給与をめぐるものだ。なぜなら、それが子どもたちの教育に大きな損害を与えるものであり、これを続けることは許されないからだ。だが、これは私たちが望む教育制度のあり方を求める、より広範なキャンペーンの一部でもある。私たちの学校と大学では、より多くの予算確保と、サポートや供給スタッフを含むスタッフに対する適切な給与が必要なのだ。

 あまりにも長い間、私たちはカリキュラムや教育法について政府からの干渉を受けてきた。プロの教育者は信頼され、支援されるどころか、教育の専門知識をまったく持たない政治家によって、専門的な判断に反する方法で教えるよう圧力をかけられている。教育は政治的な道具となり、どんなに根拠が薄弱な研究でも、最新のトレンドが閣議決定で強制されるようになった。

 このすべては、懲罰的な検査制度によって支えられている。教員や上級指導者の大多数は、Obsted(教育水準監査局)が教育上何の役にも立っていないことに同意している。むしろ、自分たちの考えを持つ学校や教師を脅す道具として利用されている。貧困層の多い学校は「良好」や「優秀」の評価を受ける可能性が非常に低く、より豊かな学校は「優秀」判定を受ける可能性が3倍も高い。このような検査制度は明らかに破綻しており、最も不利な立場にある子どもたちを支援することには何の役にも立っていない。このような制度は廃止し、根本的に見直す必要がある。

 市場の要求よりも、子どもにとっての必要性が優先され、不正なデータやアルゴリズムではなく、教育の成功が評価されるような教育システムのための大胆なビジョンを持つべきときが来ている。今こそ、学校と教育システムの主導権をとり戻すときだ。

 今日、教師が街頭に立つとき、彼らは給与の改善と助成金の増額を求めてストライキをおこなうだろう。彼らはまた、私たちの教育制度の未来のためのキャンペーンをおこなうだろう。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/25791

9. 2023年7月11日 18:15:06 : mSueSJVZOA : cUpDNE04YVlzMUE=[1] 報告
<■69行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
イギリスの不況とインフレ、フランスは移民をめぐる暴動
2023.07.11
https://www.thutmosev.com/archives/285226cm.html

ロンドンの街角


画像引用:https://www.reuters.com/world/uk/uk-consumer-price-inflation-101-september-ons-2022-10-19/

関連動画が記事下にあります

イギリスのインフレ収まらず

欧州主要国の英仏独はインフレや社会不安などで経済状況が思わしくなく、23年はマイナス成長か低成長が予想されています

まずイギリスは戦後最悪だったインフレ率は低下しているものの、5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比8.7%と他のEU諸国よりも高い

インフレ率の高さは食料品価格の高騰、雇用の逼迫、天然ガスへの依存度の高さと言われていてEU離脱と関係があります

イギリスは島国で多くの食料を輸入しているがEUから離脱した事で関税がかかり手続きが煩雑になり、食品価格が上昇しやすくなりました

雇用のひっ迫もEU離脱と関係があり、従来は移民や外国人労働者を「押し付けられていた」が離脱して外国人労働者を拒否したら労働者不足になり、また外国人労働者を連れて来るというチグハグな事をしています

イギリスは北海油田を持っているが天然ガスの多くはロシアから輸入していて、ウクライナ侵攻によってエネルギー価格が上昇した

フランスには原発がありドイツにはパイプライン、日本には世界最強の商社があるがイギリスにはそのどれも無いので低価格なエネルギーが無い


インフレ率程労働賃金が上がらない上に賃金が上がらない職種もあったり、失業率も3.7%あるので苦しい生活を強いられている人は多い

イギリスの車の平均寿命は日本よりやや短く10年以上で古い車が多いが、経済事情によって定期検査を「パス」したりメンテナンスを先送りしている

イギリスでは毎年車検(MOT)だが文字通り検査だけで日本のように検査前に法定項目を事前整備せず、問題がなければなにもせず検査だけ通します

この制度だと整備しない車はいつかぶっ壊れる訳で多くの人は状態が悪化する車を騙し騙し乗っていて、中古車として売られる車の状態も悪化しています

イギリスでは中古車店も買い取った後乗れる状態にして買い手に売るだけで、売り手も買い手も自己責任のようなシステムになっています

10年以上経過し整備が不十分な車に乗る人が増えていて、右ハンドル規制もあって故障が少ない日本車は人気があるが程度の良い中古車の入手は困難になっています


イギリスの1均とフランス社会の分断
日本の100円(ではなくなったが)ショップのようにイギリスには1ポンド(約170円)ショップがあり、多くの日用品やお菓子が1ポンドか2ポンドで売られています

動画を見ると無理やり100円に抑えた日本の100均よりお菓子の容量が大きく、100円で売れない商品もあったりして利用しやすいようです

イギリスのインフレ率は依然として高いものの多くの商品がもともと日本よりも安かったので、値上がりしても肉は100g100円程度でアメリカなどより安い

フランスは23年に入ってから年金負担増加と給付額削減を巡ってデモが起き、6月に車で検問を突破した少年を警官が撃ってデモが暴徒化した

撃たれたのはアフリカ系少年だったので移民を中心に大規模デモが続き、経済活動にも打撃を与えています

フランスの23年6月のインフレ率は5.3%と1年ぶりの低さで23年成長率予想は0.7%とほぼゼロ、失業率は7.1%でした


フランスは失業率7.1%でも1982年以来の低水準で、移民の半分は若いのに働かずに手厚い失業手当で生活している

フランスは移民1世が人口の10%で2世以降を含めると15%以上、新生児の20%が移民の子供でドイツ程ではないが移民が急増している

ドイツは民間団体の発表で子供の40%が移民で新生児の50%が移民、全住民の30%近くが移民系になっています

警官による移民少年射撃への反発でパリで暴動が起きたが、一方で警官への寄付も150万ユーロ集まり社会の分断が深刻化している

マクロン大統領は暴動発生時にSNSやインターネットを遮断できる法律を議会承認を経ず成立させたが、「習近平と仲が良いわけだ」と独裁者として批判されている

フランスでは国民生活に必要な法律は議会の承認を経ず、国会議員全員が反対したとしても成立し施行する事ができる

動画:イギリスの日用品や食料はむしろ安いが、エネルギーなどが高く物価を押し上げている
https://www.youtube.com/watch?v=ynl1kxrIPtA


https://www.thutmosev.com/archives/285226cm.html

10. 2023年10月26日 17:27:52 : HlSD5Ve0sY : akVHWUl6UjU3MUk=[1] 報告
<■76行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
イギリス家賃高騰で住宅から追い出される人が急増
2023.10.26
https://www.thutmosev.com/archives/305267gr.html

サッチャーが捨て値で払い下げた公共住宅は今1戸1億円以上で転売されている

そして本当の貧困者は追い出されホームレスになった


https://money-academy.jp/uk-gentrification-public-housing/ 元公営住宅がウン百万ポンドの高級アパートに!?イギリスの深刻な住宅事情 _ お金に関する海外の反応【お金の学校】
家に住めるのは競争の勝者だけ?

イギリスとアメリカはアングロサクソン民族の国だが両国は自由主義や競争原理を根幹とし、競争に敗れた者に対して比較的厳しい

この両国で増えているのがホームレスで子供は保護されている筈だが、地域によっては生徒の半数以上がホームレス児童という学校もある

ホームレスの定義は各国で異なり日本では路上やテント生活の人だけを差すが、アメリカでは親戚の家で暮らす子供もホームレスに含めている

イギリスは親戚に預けられた子供はホームレスでは無いが、保護施設で暮らす子供はホームレスで、野外キャンプで集団生活をする人々もホームレスと定義している

日本で多いのはネットカフェやカプセルホテル、簡易宿所、民泊、ゲストハウス、車中泊などで居場所を転々としている人で、政府は正確な人数を把握できず福祉政策も行われていない

英BBC放送は最近、ハリス・プライマリー・アカデミー・ペッカム・パーク小学校という長い名前の学校の生徒ほとんどがホームレスであるという衝撃の番組を放送した

家庭が困窮しているため学校では全児童約300人に無償で制服、遠足、給食を提供し一部の家庭には食料も配っているという

大半が友人宅のソファや宿泊施設のベッド・アンド・ブレックファスト( b&b ゲストハウス)、ホステル(簡易宿泊所)で生活し学校に通っている

イングランド(イギリスの8割以上を占める)はそうした宿泊所に17.4億ポンド(約3200億円)に補助金を出したが、自治体はホームレスに家賃や光熱費を請求し住まいを差し押さえたりもしている

イングランド政府統計で子どものいるホームレス世帯は1万1250世帯、子どものホームレスは13万1370人もいて保護施設などに収容されている子供が多いのかも知れない

前述のハリス・プライマリー・アカデミー・ペッカム・パーク小学校の姉妹の家庭は公営住宅を追い出されて半年間に10カ所の宿泊所を転々とし次々に追い出されたという

英慈善団体によるとイギリスでは毎日172世帯、毎月5223世帯がホームレスになっているが原因は家賃の値上げを支払えなくなったからだった


これはイギリスの景気が良かった2016年の様子で、現在は遥かに状況が悪化しました
https://www.youtube.com/watch?v=GtN38BSotps


サッチャー政治と賃貸住宅不足
イギリスにおける賃貸住宅の借り手保護制度は、大家が「来月から2倍、払えなければ出て行け」と言われたら3か月以内に退去しなくてはならない

新型コロナで一時退去手続きが猶予されていたがコロナも沈静化し23年になって滞納者は続々と強制退去させられるようになった

彼らの多くは「契約した家賃」は払っていたのに家賃の値上げによって支払えなくなり、一方的に出て行けと言われて退去させられた家族でした

日本では一方的な家賃値上げは認められず強制退去には多くの制限があるが、その代わり最初の入居審査が厳しいのでどちらが有利とは一概に言えない

イギリスでは退去したあと次の部屋に入居するまで40%の世帯が2か月間かかり、60%の世帯は今の家賃を10%値上げしたら家賃を払えなくなると回答した

ロンドンの賃貸住宅の平均は月平均1450ポンド(約26万6300円)、ロンドンの賃借人は収入の35%を家賃の支払いに充てている

因みに東京23区の家賃は1人用9万円で2人用12万円、4人用14万円となっていて、古くても良ければ低家賃の公営住宅や古い団地なども多い

ロンドンの低所得世帯では収入の46%を家賃支払いに使っていて、安い公営賃貸住宅がほとんど無いのが原因と言われています

1980年にサッチャー首相は公営賃貸住宅を格安で入居者が購入できるようにしたが、その後ロンドンの地価が高騰したので購入者は転売で10倍もの利益を挙げてプチ富裕層になった

一方公営住宅は不足して本当の困窮者が住む低家賃住宅がなくなり、ロンドンではホームレスが激増したという仕組みです

足りないなら作れば良いがアングロサクソンは競争主義であるため、「なんで貧困者の住宅を俺の税金で作るんだ」と反対する人が多い

9月の消費者物価指数(CPI)は6.7%と高止まりし家賃で収入の半分が消える低所得者は万引きで飢えをしのぐようになっている

イギリスでは200ポンド(約3万6600円)以下の万引きは軽犯罪として扱われ、現実には警察は捜査せず捕まる事もない

イギリスには無料で食糧を配布するフードバンクがあるが需要が増えて供給が追い付かず、多くの貧困者が飢えていると支援団体は指摘している
https://www.thutmosev.com/archives/305267gr.html

11. 中川隆[-11855] koaQ7Jey 2024年1月05日 10:37:47 : sIL7lkzC4M : OGVEcllHOFJvbzY=[14] 報告
<■65行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
ロンドンクライシス、平均家賃47万円で家をなくす人達
2024.01.05
https://www.thutmosev.com/archives/32317.html

とあるロンドンのルームシェア


https://knowyourmeme.com/photos/2615400-starter-packs
ロンドンの平均家賃47万円?

英国立統計局(ONS)が23年4月に発表した統計では民間賃貸住宅に新規入居した国民が支払った家賃は収入の平均26.8%だった

別の調査によるとイングランド(イギリス本島の大半)の大学生の家賃は年間7566ポンド(約136万円)で月11万円だったが、これは田舎の地方都市も含んでいる

それに今時1人で1部屋を借りている学生は少ないので、1部屋分の家賃は11万円の数倍になっている場合もあります

生活維持のために借りた学生ローンの大半が家賃の支払いで使い切り、1週間平均50ペンス(約92円)相当しか手元に残らない

学生が借りる部屋の45%が大学提供のもので残りの55%は民間の部屋、西部のブリストルでは平均年間賃料は9200ポンド(約170万円)だった

学生が生活費として借りられる年間の上限額は9978ポンド(約184万円、ロンドンでは1万3022ポンド=約241万円)なので借りた金の7割以上が家賃だけで消えるのです

東京の平均家賃が9万円でロンドンは15万円、日本の平均は5万円台でイングランド平均は11万円なので比較すると1.5倍から2倍の差に思えるがそうではないのです

東京や日本の家賃は「1部屋丸ごとの家賃」でロンドンやイングランドは「一部屋や1軒を数人でシェアする家賃」なので数倍違います

東京で10万円の部屋を借りて2人でシェアすると家賃5万円ですが、ロンドンは40万円以上を4人でシェアして10万円以上になっています

NHKで紹介されたロンドン中心部の例では6.5畳の部屋の家賃が47万円で4人でシェアしてそれぞれが14万円なので、合計家賃56万円になっていました

4人のうち1人は1人で住む部屋を探したが1500ポンド(日本円でおよそ27万円)以下の物件は、まったく見つからなかったという

2023年10月時点で賃貸が可能な空き物件の数はコロナ禍前と比べて3割以上減少、これはコロナ後の都心回帰現象が影響しているという

間違った政策でホームレスが急増
NHKによるとロンドンの平均家賃は47万円で部屋数が不足していて、さらに契約期間中であっても家主の都合だけで契約解除し立ち退かせる事ができるためホームレスが増加している

イングランドでホームレスの子どもは13万1370人も居て、定住する安定した住居がなければ一時収容施設の人もホームレスにカウントされる

ホームレスになったきっかけで最も多いのは家賃の値上げや大家の立ち退き要求で、イギリスでは何の理由もなくても大家が「出て行け」と言えば立ち退かなくてはならない

その代わり入居時の審査は緩いのだがこれほど家賃が高騰してしまったために、立ち退き要求され家を無くした人は平均4か月次の部屋を借りれていない

英紙フィナンシャル・タイムズによると、ロンドンの賃借人は収入の35%を家賃の支払いに充てていて、これはイギリス平均の26.8%よりかなり高い

イギリスで賃貸住宅が不足しているのは公的賃貸住宅がないからだが、その原因は1980年代にサッチャー首相が行った経済政策にあった

サッチャーは景気対策として公的賃貸に住んでいる人に格安でその住居の所有権を払い下げ、その後住宅価格は数十倍に高騰した

公営住宅がなくなったので全てを民間賃貸住宅で引き受ける事になったが、需給バランスが崩壊してしまい平均家賃40万円という事になった

東京の場合は国営団地URの他に都営や区営住宅がかなりあり、民業圧迫と言われながらも家賃相場を下げる効果をもたらしている

イギリスのオンライン新聞インディペンデントは22年のロンドンでは8855人が住む家がないことが原因で路上生活者となっていた」と報じました

インディペンデント紙によれば、この数字はロンドンのホームレス人口が、過去1年間で20%増加している

こうした中でイギリスのスエラ・ブラヴァマン内相がホームレスへの罰則を科すと表明し「ホームレスは自分が望んだライフスタイル」と発言し国民の反発を受けて辞任に追い込まれた

ブラヴァマン内相はパキスタン系の女性政治家で、インド人のスナク首相が任命した「南アジアチーム」の1人だったが人々を大いに失望させた

https://www.thutmosev.com/archives/32317.html

12. 中川隆[-9606] koaQ7Jey 2024年8月05日 18:56:54 : DbOIAtchfM : SXVZcGE0bHhsSVU=[19] 報告
<■71行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
上位1%が富の半分を所有するアメリカの仕組み
2024.08.05
https://www.thutmosev.com/archives/80434166.html

貧しい人は高金利で借金し、支払った金利は富裕層の資産になる

富裕層向けの金利は驚くほど低く、税金も払わなくて良い

120124.poor-america
画像引用:http://blog.hix05.com/blog/Photo2012a/120124.poor-america.jpg
中流以下の借金が資産家の資産になっている

ある統計によるとアメリカでは数千人の資産家が富の半分を所有しています

別の言い方では10人ほどの資産家がアメリカの全資産の1割を所有し、アメリカの数十人が全世界の半分を所有しています

世界全体でみると人類の1%が下位80%以上の富を独占し、99%の人が18%を奪い合っています

日本は違うよというのも間違いで、人口の2%が約17%の個人資産を所有しています

アメリカや欧米の報道は偏っていて、「10人の資産家が人類の半分を所有している」のような言い方をします

この時の人類の半分は貧しい人から数えて人類の半分で、貧しい人は最初から資産を持っていません

「上位26人が下位38億人分の富を保有」も同じ論法で、下から数えるのでとんでもない人数に増えます

例えば平均的な日本人の年収250万円は、世界では上位2%の高収入であり、普通の日本人はアフリカ人100人分くらいを所有している事になる

所得で計算するとアメリカでは上位1%の所得が、1980年に国民総所得11%だったが現在は20%を占めている

一方アメリカの下から50%の低所得層は、以前は国民総所得の20%だったが現在は12%に減少した

貧しい人は所得があっても支払いで消え、豊かな人は所得のほとんどが資産になるので、資産格差は所得より遥かに大きいでしょう

こうした富の独占が起きる理由は、貧しい人の借金が資産家の資産になるという、資本主義のメカニズムによるものです

私たちは銀行やカード会社などから借金をしますが、そのお金はどこから来るのでしょうか?

銀行は預金した人の預金や、投資家の投資、日銀から調達などを元手にしてお金を貸しています

知っての通り現在は銀行預金は10年金利が‎0.02%という超低金利で、銀行はタダでお金を調達しています

皆さんがカードで買い物した時の金利は年16%、銀行が運営するカード会社はタダで調達したお金を貸して16%も儲けています

資産家は働かずに貧困者からお金を受け取る
実際には住宅ローンなどの貸し出し金利も低金利下が進んで、多くの銀行の貸出金の平均金利は1%を下回っています

ともあれ貧しい人ほど高金利でお金を借り、豊かな人はその配当を受け取るという仕組みが存在します

貧しければ貧しいほど金融機関は高金利で貸し、支払いで得たお金を配当として富裕層に配っています

富裕層はまったく労働しなくても毎日お金が増えていき、貧しい人は汗水たらして働いて高金利を払っています

この仕組みがあるから貧しい人はどんどん貧しく、お金持ちはどんどん資産が増えていくのです。

日本の個人資産は約2,000兆円超で米国の個人資産は約120兆米ドル(1京8000兆円)というとんでも無い額ですが、庶民には無関係な数字です

アメリカの金融資産は上位1%が3割を保有していて上位10%が7割を保有、日本では上位1%が24%を保有し上位10%が57%を保有しているという数字があります

資産10兆円のwバフェットは以前、「私より使用人のほうが納税額が多い」と言っていました

それだけアメリカの富裕層は納税しておらず、富裕層に増税するべきだという趣旨でした

その後も富裕層増税は行われずバフェットだけが自主的に納税した話も聞かないので、相変わらず特権を甘受している

バフェットの2015年の総所得は1156万ドルで547万ドルの税控除を受け、184万ドル(約1.9億円)の連邦所得税を支払った

バフェットは真面目に払っているようだがおかしな点があり、年収11億円で資産10兆円になるには1000年もかかる

バフェットの資産の多くは株や土地や権利に化けていて、それらの増加にはおそらく所得税がかかっていない

アメリカの富裕層は相続税も払っておらず、資産数兆円ともなると相続税を払わなくてもいい仕組みがある

ビルゲイツは資産13兆円で、2017年頃に「資産全額を寄付する。もうお金に興味が無い」と言って世界を驚かせた

これには裏がありビルゲイツはゲイツ財団をつくり資産を寄付したが、財団は営利事業をして出資者に配当金を出す

ゲイツが100%出した財団が年1000億円の利益を上げたとすると、数百億円が配当としてゲイツに支払われる

娘や息子を財団役員にすると配当は子供に支払われ、事実上相続税なしで13兆円を子供に渡すことが出来る

つまりアメリカの富裕層は年収の1%も税金を払っておらず、相続税は1ドルも払っていない
https://www.thutmosev.com/archives/80434166.html

13. 中川隆[-8879] koaQ7Jey 2024年10月11日 07:12:12 : S5ZERITXNY : SWxYenozNG0uVDI=[5] 報告
<■1148行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
イラク戦争の背景

東北学院大学講師・世界キリスト協議会前中央委員
川端 純四郎

 ご紹介いたします。

 先生は1934年のお生まれです。東北大学文学部に学ばれ、博士課程を終えられてから、ドイツのマールブルグ大学に入学されました。帰国後、東北学院大学教員として35年間お勤めになりました。その後ひきつづき講師として、現在も勤務されています。一貫して平和、人権、政治改革の活動に積極的に関わっておいでになりました。

 「9条の会」の講師団メンバーとしても、全国を股にかけて講演なさっており、昨年は1年間で80回以上の講演会を開いておられます。

 先生は今朝8時前に仙台を発ち、はるばる鋸南町においで下さいました。今日の講師としてほんとうにふさわしく、よいお話をうかがえると思います。早速、先生からお話をうかがいたいと思います。 先生、どうぞよろしくお願いいいたします。
                                        安藤

 みなさん、こんにちは。 安房郡の水清き鋸南町に伺って、こうしてお話できることをありがたいと思っています。初めておうかがいしました。木更津まで来たことはあるのですが、今日、電車で君津を過ぎたらとたんに山が美しくなり、あそこまでは東京郊外のなんとまあみっともない風景でしたけれど、あそこから南に来ると一気にほんとうに昔のよき日本の風景がよみがえってくるようでした。ほんとうに嬉しく思いました。

 いま、「さとうきび畑」の朗読と、合唱団のコーラスをお聞きしたのですが、どちらも聞いていて涙が出ました。

 私は、戦争に負けた時小学校6年生でした。仙台で敗戦を迎えましたが、仙台も空襲で全滅いたしました。街の真ん中にいましたから、もちろんわが家も丸焼けでした。忘れられない思い出があります。街の真ん中の小学校でしたから、同級生が一晩で8人焼け死にました。隣の家の、6年間毎日いっしょに学校へ適っていた一番仲の良かった友達も、直撃弾で死にました。今でも時々思い出します。

 今このような歌を聞くと、どうしてもその人のことを思い出します。思い出す私の方はもう70になりますが、記憶に出てくるその三浦君という友達は、小学校6年生のまま出てきます。どうして小学校6年で人生を終わらなければいけなかったのか、生きていてくれたらいろんな事があったのに、と思います。戦争なんて二度としてはいけない、というのが一貫した私の願いです。

 私は牧師の家に生まれました。父はキリスト教の牧師で、教会で生まれ教会で育って、讃美歌が子守歌でした。牧師の中には戦争に反対した立派な牧師さんもおられたのですが、私の父のような多くの普通の牧師は、政治や社会に無関心で魂の救いということしか考えていませんでした。で、私もその親父に育てられましたから、大学を出、大学院に入って博士課程までいって、ずっとキルケゴールや実存哲学という、魂だけ見つめているような学問をやっていて、政治とか経済、社会とかは25歳までいっさい関心がありませんでした。

 25歳の時チャンスがあって、ドイツ政府の招待留学生となってドイツヘ勉強に行くことになりました。1960年のことでした。1960年にドイツへ行ったというだけで、どんなにノンポリだったか分かります。安保改訂問題で日本中が大騒ぎの時、それを尻目に悠々とドイツ留学に行ったのです。幸か不幸かまだ世界は貧しくて、飛行機などというものは贅沢な乗り物で、まだジェット旅客機機はありませんでした。プロペラ機でヨーロッパヘ行くには途中で何遍も何遍も着地し、給油して、今のようにノンストップでシベリヤを越えて、などというのは夢のような話でした。しかもベラ棒に高いのです。船の方があの頃はずっと安かったのです。特に貨物船に乗せてもらうと飛行機よりずっと安いのです。そこで一番安いのを探して、5人だけ客を乗せるという貨物船をみつけました。

 その船で神戸を出航し、インド洋からスエズ運河をぬけ、地中海を渡ってイタリアのジェノバに上陸。そこから煙を吐く蒸気機関車でアルプスを越えて、ドイツのマールブルクという町に着きました。

 実は、飛行機をやめて船で行ったということが、私の人生を大きく変えることになりました。あの時もし飛行機で行ったなら、私は一生、世間知らずの大学に閉じこもって勉強だけしている人間で終わった、と思います。

 ところが船で行ったおかげで、しかも貨物船に乗ったおかげで、私は途中のアジア・インド・アラブの国々をくわしく見ることができました。まっすぐ行けば船でも二週間で行くそうですが、何しろ貨物船ですから、途中港、港に寄って荷物を下ろし、また積んで、一つの港に4日から5日泊まっているのです。おかげでその間、昼間は上陸してそのあたりを見て歩き、夜は船に帰って寝ればいいのですから、東南アジアからアラブ諸国をくまなく見て歩きました。

 1ヵ月かかりました。神戸からジェノバまでのこの船旅。その時見たものが、私の人生を変えたのです。何を見たかはお解りですね。アジアの飢えと貧困という厳しい現実にぶつかったのです。

 降りる港、港で、ほんとうに骨と皮とに痩せせこけた、裸足でボロボロの服を着た子供達が、行く港も行く港、集まって来るのです。船の事務長さんに、「可哀想だが、何もやっては駄目だよ。1人にやると収拾がつかなくなるよ」と言われていました。だから心を鬼にして払いのけて通り過ぎるのですが、その払いのけて通り抜ける時に触った子供の肩、肉などなんにもない、ただ骨と皮だけのあの肩、あの感触が、今でも時々蘇ってきます。

 船に帰って、眠れないのです。明日も、あの子供たちに会う。どうするか。私が考えたことは、「神様を信じなさい。そうすれば救われます」と言えるか、ということでした。

どんなに考えたって、言えるわけがありません。飢えて捨てられた孤児たちに、こちらは着るものを看て、食うものを食っておいて、「神様を信じなさい、そうすれば救われます」などとは、口が裂けても言えないと思いました。牧師館で生まれて、キリスト教しか知らずに育って、キリスト教の学問をして来て、それではお前キリスト教って何なのか、25年お前が信じてきたキリスト教とは、飢えた子供たちに言えないようなキリスト教なのか。とれが私の考えたことでした。

 もし言えるとしたら、ただ一つしかない。そこで船を降りて、服を脱いで、子供たちに分けてやって、食っているものを分けてやって、そこで一緒に暮らす、それなら言える。言えるとしたら、それしかありません。言えるじゃないか、と自分に言い聞かせました。

 それなら、船を降りるか──。くやしいけど、降りる勇気がありませんでした。折角これからドイツヘ勉強に行くという時、ここで降りて、一生インドで暮らすのか、一生アジアで暮らすのか、どうしてもその気にならないのです。
 ですから理屈をこねました。

 「降りたって無駄だ。お前が降りて背広一着脱いだって、何百人人もいる乞食の子に、ほんの布切れ一切れしかゆきわたらないではないか。自分の食うものを分けてやったって、何百人もの子供が1秒だって、ひもじさを満たされる訳がないじゃないか。お前が降りたって無駄だ。それは降りたという自己満足だけで、客観的にはあの子らはなんにも救われない。」

 「だから降りない、勇気がないのではなく、無駄だから降りない。」と自分に言い聞かせるのです。でも、降りなければ「神様を信じなさい」とは言えません。言えるためには降りなければならない、しかし降りても無駄なのだ。

 堂々巡りです。寄る港、寄る港でこの間題に直面しました。毎晩毎晩同じ問題を考え続けて、結局、答えが見つからないまま、閑々として港を後にしました。、出港の時、あの子たちを見捨て自分だけドイツへ行くことに、強い痛みを感じました。これは永く私の心の傷になって残りました。

 このようにして初めて、世の中には飢えた仲間がいるという、当然分かっていなくてはいけない事実に、何ということでしょう、25にもなってやっと気づいたのです。飢えた子供たちがいる、それを知らんぷりしてドイツに行くのか、お前が降りてあの子たちと一緒に暮らすことはあまり意味ないかも知れない、しかしやっぱり船を降りないのだとしたら、せめて世の中に飢えた子供なんか生まれないような社会を作るために、自分で何かしなければいけないのではないか。ただ魂の中だけに閉じこもっていていいのか。

 これが、私がヨーロッパヘ行く1ヵ月の旅で考えたことでした。

 ドイツヘ行って、宗教の勉強をしました。ブルトマンというドイツの大変偉い先生の所に1年いて、いろいろ教わりましたが、結局、私の結論としては、実存哲学だけではだめだということでした。自分が自分に誠実に生きる──これが実存的、ということですが、それだけでは駄目だ。自分が生きるだけでなく、みんなが人間らしく生ることができるような世の中になるために、自分にできる何か小さなことでもしなければいけない。

 こう思うようになって、日本に帰ってきたのです。

 それじゃあ、世の中で、そのように飢えて死ぬような子がいなくなるような社会とは、どうすれば出来るのか。これはやっぱり、飢え、貧困、戦争、差別、そういうものが生まれる原因が分からなければ、除きようがありません。原因を勉強しなければいけない。そのためには社会科学を勉強しなければいけない。特に経済学を勉強しなければいけない──。

 ドイツヘの留学は、大学院の途中で行きましたので、帰国して大学院に復学しました。幸い東北大学は総合大学ですから、中庭をへだてて向こう側が経済学部でした。帰ってきた次の日から、私は、経済学部の講義を経済原論から、授業料を払わずにもぐりで、後ろの方にそっと隠れてずっと聞きました。

 それからもう45年になりますが、ずっと宗教哲学と経済学と2股かけて勉強してきています。今日も、多少経済の話を申し上げるわけですが、やっぱり自分がクリスチャンとして、今もクリスチャンであり続けていますが、同時に、自分の救いということだけ考えていたのでは申し訳ないと思うのです。現実に飢えて死ぬ子がいるのです。ユネスコの統計によると、毎日2万人の子が栄養不足で死んでいるそういう世の中、このままにしておくわけにはいかない、自分でできることは本当に小さいけど、その小さなことをやらなかったら、生きていることにならない──。そう思って45年過ごしてきたわけです。

 キリスト教の中でずっと生きていますので、一般の日本の人よりは外国に出る機会が多いと思います。特に世界キリスト教協議会という全世界のキリスト教の集まりがあります。その中央委員をしていましたので、毎年1回中央委員会に出かけて、1週間か2週間会議に参加しました。世界中のキリスト教の代表者と一つのホテルに缶詰になり、朝から晩までいろいろと情報交換したり論議したりします。そのようなことを7年間やりましたので、世界のことを知るチャンスが多かったと思います。それを辞めてからも、自分の仕事や勉強の都合で、今でも毎年二週間ぐらいはドイツで暮らしています。そうしていると、日本ってほんとうに不思議な国だということが分かってきました。

 日本にいるとなかなか分からないのです。島国ですし、おまけに日本語という特別な言葉を使っています。他の国との共通性がない言葉です。ヨーロッパの言葉はみんな親戚のようなものですから、ちょっと勉強するとすぐ分かります。一つの言葉の、ドイツ弁とフランス弁、ベルギー弁、オランダ弁というようなものです。日本で言えば津軽弁と薩摩弁の違い程度のものです。津軽と薩摩では、お互いに全然通じないとは思いますが、それでも同じ日本語なのです。ヨーロッパの言葉とはそういうものです。ですからお互いに何と無く外国語が理解できるというのは、別に不思議なことではないのですね。ですから、自分の国のことしか知らないという人は、非常に少ないのです。

 新聞も、駅に行けばどんな町でも、ヨーロッパ中の新聞が置いてあります。ドイツのどんな田舎町へ行っても、駅にいけばフランスの新聞もイタリアの新聞も売っていますし、それを読める人がたくさんいるのです。そういう社会ですから、日本人とはずいぶん違います。自分の国を客観的に見られる。他の国と比べて見ることができるのです。

 日本にいると比べられません。そのうえ、日本はマスコミが異常です。ワンパターンのニュースしか流しません。ヨーロッパではいろんなテレビがあって、テレビごとに自由な報道をやっています。バラエティー番組のようなものがなくて、ニューハ番組が充実しています。きちんとした議論をテレビでやっています。ですから日本にいるよりは、比較的自分の国の様子を客観的に見られることになります。ドイツに行く度に、日本とは不思議な国だなあと思うのです。

 例えば、もうだいぶ前、バブルの頃です。日本のある有名なモード会社がミラノに支店を出しました。そしてマーケティング調査をしました。どんな柄が流行っているか、アンケートを集めそれを整理するために、イタリア人女性3人雇ったそうです。アンケートの整理をしていたら5時になりました。あと少ししか残っていなかったので、日本ならの常識ですから、「あと少しだからやってしまおう」と日本人支店長は声をかけました。ところがイタリア人女性3人は、すっと立って「5時ですから帰ります」と言って出て行こうとしました。思わず日本人支店長は怒鳴ったのだそうです。「たったこれだけだからやってしまえ」と。途端にこの日本人支店長は訴えられました。そして「労働者の意志に反する労働を強制した」ということで、即決裁判で数万円の罰金をとられました。

 これがヨーロッパの常識です。つまり9時から5時までしか契約していないからです。5時以後は命令する権利はないのです。9時から5時までの時間を労働者は売ったんであって、5時以降は売っていないのですから、自分のものなんです。会社が使う権利はありません。当たり前の話です。

 その当たり前の話が日本では当たり前ではないのです。残業、課長に言われたので黙ってやる。しかもこの頃は「タダ残業」ですからネ。本当にひどい話です。常識がまるで違うのです。あるいは有給休暇。ドイツのサラリーマンは年間3週間とらねば「ならない」のです。3週間休まなければ罰せられます。日本は有給休暇など殆どとれません。ドイツでは取らないと罰せられます。ですからどんな労働者でも3週間、夏はちゃんと休んで、家族ぐるみイタリアへ行ってゆっくり過ごしてきます。有給になっているからです。或いは日本では1週間40時間労働です。ドイツはもう随分前から36時間です。土日出勤などありえない話で、日本のように表向き40時間労働でも、毎日毎日残業で、その上休日出勤、日曜日には接待ゴルフなど馬鹿なことをやっています。接待ゴルフなど、ドイツには絶対ありません。日曜日は各自が自由に使う時間で、会社が使う権利はないのです。

 そういうところもまるで常識が違います。或いは、50人以上だったと思うのですが、50人以上従業員がいる会社、工場は必ず、労働組合代表が経営会議に参加しなければいけないことになっています。そんなことも、日本では考えられないことです。ですから配置転換とかもとても難しいし、労働者の代表が入っているから、簡単に首は切れません。

 そういういろんな面で、日本の外に出てみるとびっくりするようなことが山ほどあります。日本という国は、高度に発達した資本主義国の中で例外的な国なのです。資本主義が発達した点では、アメリカにもフランスにもドイツにも負けないのですが、資本主義が発達したにしては、労働者が守られていない。或いは市民の権利が守られていない。会社の権利ばかりドンドンドンドン大きくなっているのです。それが日本にいると当たり前のように思われています。外国で暮らしていると、日本は不思議な国だと分かります。特にこの数年それがひどくなってきているのではないでしょうか。

 私たちの暮らしは、戦後50何年かけて、少しずつよくなってきました。例えば年金なんかも少しずつ整備されてきた。健康保険制度も整備されてきた。介護保険も生まれてきた。或いは、労働者も土曜日チャンと休めるようになってきた。ところがこの数年、それが逆に悪くなつてきています。年金は削られる一方、介護保険料は値上がりする、労働者は首切り自由でいくらでも解雇できる。労働者を減らすと政府から奨励金が出る。タダ残業はもう当たり前・・・。

 特にこの数年、構造改革という名前で、日本の仕組みが変わってきています。いま申し上げたように、戦後50年かけてみんなで、少しずつ少しずつ作ってきた、いわば生活の安心と安全を守る仕組み、そういうものが今はっきり壊されかかっているのではないでしょうか。

 小泉首相という人は「自民党をぶっ壊す」といって当選したのですが、この4年間を見ていると、あの人は自民党を壊したのではなく「日本を壊した」のではないかと思われます。これまで日本が戦後50年かけて作ってきた社会の仕組みが、バラバラにされているのです。フリーターとかニートがもう30%でしょう。そうなると当然、この人たちは生きる希望がありません。お先真っ暗。いまさえよければ、ということになる。ですから若者が当然刹那的になる。人生の計画なんて立たない。今さえよければということになっていきます。

 昔なら10年に1回あるかないかのような犯罪が、いま毎日のように起きています。私は仙台にいますが、この正月には赤ん坊の誘拐事件で一躍有名になってしまいました。あんなことが日常茶飯事として起こっています。栃木県で女の子が山の中で殺された事件は、まだ解決されていませんが、こんな事件が今は「当たり前」なのです。世の中がすさんできて、何が善で何が悪なのか、みんなに共通な物差しというものがなくなったというふうに思われます。

 そのような世の中の変化、私は多分、「構造改革」というものがその犯人なのだ、と思っています。

《逆戻りの原因はアメリカの変化》

 その構造改革というのは、どこから来たのか。もちろんアメリカから来たのです。アメリカが変化した、日本はそのアメリカに右ならえをした、それが構造改革です。

 それでは何が変わったのか、これが一番の問題です。この変化の行き着くところが、憲法改悪です。

 社会の仕組み全体がいま変わろうとしているのです。憲法も含めて。いったい何がどう変わるのか。いったいどういう構造をどういう構造に変えるということが構造改革なのか。そこのところがアメリカを見ればよく分かってきます。アメリカがお手本なのですから。

 アメリカはソ連崩壊後変わりました。ソ連とか東ドイツは自由のないいやな国でした。昔1960年に西ドイツヘ留学した折、東ドイツへ何回か行く機会がありました。ふつうはなかなか行けないのですが、幸いキリスト教国なので、ドイツのキリスト教はしっかりしていまして、東ドイツと西ドイツに分裂しても、教会は分裂しなかったのです。東西教会一つのまんまです。ですから、教会の年1回の大会には、西で開く時は東の代表がちゃんと来たし、東で開く時は西の代表が行けたのです。ですから一般の人の東西の往来が難しかった時でも、キリスト教の人だけはかなり自由に行き来ができました。

 私も連れていってもらって、何回か東ドイツへ行って見ました。ご存じのように自由のないいやな国でした。ですからソ連や東ドイツが崩壊したのは当然だし、いいことだと思います。しかしソ連や東ドイツが100%悪かったかというとそんなことはありません。良い部分もありました。何から何まで全部ひっくるめて悪だったというのも間違いです。基本的に自由がない。ですから、ああいう国は長くは続かない。これは当然そうだと思います。滅びたのは当然だと私は思います。

 しかし同時に、良い面はなくしては困るのです。良い面は受け継がなければいけません。最も目につくのは女性の地位でした。これは立派なものでした。いまの日本なんかより遥かに進んでいました。男女の平等が徹底的に保障されていました。専業主婦などほとんど見たことがありません。だれでも自由に外に出て、能力に応じて働いていました。それができるような保障が社会にあるのです。文字通りポストの数ほど保育所があって、子供を預け安心して働きに出られるようになっていました。同一労働同一貸金の原則はきちんと守られていて、女性だから賃金が低い、女性だからお茶汲みだけなどというようなことは一切ありませんでした。これは凄いなと思いました。あれは、日本はまだまだ見習わなければいけないことです。

 もう一つ私がびっくりしたのは、社会保障です。私が初めて東の世界を見たのは、何しろ1960年の頃のことです。日本はまだ社会保障がない時代でした。いま若い方は、社会保障はあるのが当たり前と思っておられる方も多いと思いますが、そんなことはないのです。日本は1972年が「福祉元年」といわれた年です。それまでは、福祉はなかったのです。大企業とか公務員だけは恩給がありましたが、商店の経営者とか家庭の主婦なんか何もありませんでした。健康保険も年金も何もありませんでした。72年からようやく国民皆年金、国民皆保険という仕組みが育ってきたのです。

 もともと資本主義という仕組みには、社会保障という考えは無いのです。自由競争が原則ですから、自己責任が原則です。老後が心配なら、自分で貯めておきなさい。能力がなくて貯められなかったら自業自得でしょうがない。こういうのが資本主義の考え方です。労働者が、そんなことはない、我々だって人間だ、人間らしく生きていく権利がある。だから我々の老後をちゃんと保障しろと闘って、社会保障というものが生まれてくるのです。自然に生まれたのではありません。

 労働者が団結して闘って、止むを得ず譲歩して社会保障が生まれてくるのです。資本主義の世界で最初の社会保障を行ったのはビスマルクという人です。ドイツの傑物の大首相といわれた人です。ドイツの土台を作った人ですが、この首相の頃、何しろマルクス、エンゲルスの生まれた故郷ですから、強大な共産党があり、国会で100議席くらいもっていました。そこで、ビスマルクが大弾圧をやるのです。社会主義取り締まり法という法律を作って共産党の大弾圧をし、片方では飴として労働者保険法という法律で、労働者に年金を作ります。世界で初めてです。辞めた後年金がもらえる仕組み、病気になったら安く治してもらえる仕組みを作った。こうやって鞭と飴で労働運動を抑えこんでいったのです。

 社会保障というのは、そうやって労働者の力に押されてやむを得ず、譲歩として生まれてくるのです。放っておいて自然に生まれてくるものではありません。

 そこへ拍車をかけたのが、ソ連や東ドイツです。ソ連や東ドイツヘいってみて、1960年の時点なのですから、日本にまだ社会保障などなかった時、そう豊かではなかったのですけれども、老後みながきちんと年金をだれでも貰える、そして、病気になればだれでも、医者に行って診察を受けて治療を受けられる。これにはほんとうに驚きました。これが社会主義というものかと、その時は思いました。ただ自由がないのです。例えば、牧師さんの家に泊めてもらうと、こちらがキリスト教徒ということが分かっていますから、牧師さんも信用して内緒話をしてくれるわけです。

外国から来る手紙はみな開封されていると言っていました。政府が検閲して開封されてくる。だから、「日本へ帰って手紙をくれる時は、気をつけて書いてください。政府の悪口など書かれると私の立場が悪くなるから。手紙書くときは開封されることを頭に入れて書いてくれ。」というふうに言われました。こんな国には住みたくないなと思いましたけれど、同時に社会保障という点では驚きました。こういうことが可能な社会の仕組みというのがあるんだなあ、とこう思ったのです。

 その後、スターリン主義というものによって目茶苦茶にされていくのですが、私の行った頃はまだ、東側の社会保障がある程度きちっと生きていた時代です。こうして、ソ連や東ドイツが社会保障というものを始めると、資本主義の国もやらざるをえなくなってきます。そうでないと労働者が、あっちの方がいいと逃げ出してしまいます。ですから西ドイツが一番困りました。地続きですから、何しろ。ですから、東に負けないだけの社会保障をしなければならなかったのです。そうすると、自由があって社会保障があるのですから、こっちの方がいいということになります。いくら向こうは社会保障があっても自由がないのです。こうして西ドイツは大変な犠牲を払って、社会保障先進国になってきました。そのことによって、東ドイツに勝ったのです。

 実際西ドイツの労働者は、別に強制されたわけではありません。自主的に西ドイツを選んだのです。ですからあのような東西ドイツの統一も生まれてきたのです。

 つまり資本主義の国は、ひとつは自分の国の労働者の闘いに押されて。そこへもってきて、ソ連、東ドイツの社会保障という仕組みの外圧で、それに負けるわけにいかないものですから、そういう力があって、社会保障というものを造り出していくのです。しかし社会保障というものは莫大な財源がかかります。


《社会保障をやめて小さな政府へ──構造改革の中身(1)》

 いま日本政府は社会保障をどんどん削っていますけど、それでも国家予算の中で一番多い費目は社会保障です。大変な財源が必要なのです。そこで資本主義の国は、新しい財源を見つける必要ができてきます。

 そこで見つけたのが2つ。1つは累進課税です。それまでの資本主義にはなかった、累進課税という新しい仕組みです。つまり収入の多い人ほど税率が高くなるという仕組みです。日本でも1番高い時は1980年代、1番大金持ちはの税率75%でした。ですから、年収10億あれば7億絵5千万円税金にとられたのです。今から考えれば良く取ったものです。今は35%です。大金持ちは今ほんとうに楽なのです。35%ですむのですから。年収10億の人は3億5千万払えばいいのです。昔なら7億5千万取られたのです、税金で。「あんまり取りすぎではないか、これは俺の甲斐性で俺が稼いだ金。それを取り上げて怠け者のために配るのか。」と彼らはいいました。

 そうすると政府は、「いやそういわないでくれ。そうしないと、資本主義という仕組みがもたない。だから体制維持費だと思って出してくれ。そうでないと社会主義に負けてしまう」と言って、大金持ちからたくさん取ったのです。大企業も儲かっている会社からたくさん税金取った。法人税もずっと高かったのです、以前は。こうやって大金持ち、大企業からたくさん取る累進課税で一つ財源を作ったのです。

 もうひとつは、企業負担です。サラリーマンの方はすぐお分かりですが、給料から社会保障で差し引かれますね。そうすると、差し引かれた分と同額だけ会社が上乗せするわけです。自分が積み立てたものが戻ってくるだけなら、貯金したのと同じです。労働者の負担する社会保障費と同額だけ会社も負担しているのです。倍になって戻ってくるから、社会保障が成り立つわけです。

 これも資本主義の原則からいえば、おかしいことです。いまいる労働者の面倒を見るのは当たり前です。会社は労働者がいるから成り立っているのですから。だけど、辞めてからは関係ないはずです。契約関係がないのですから。辞めた人が飢え死にしようがのたれ死にしょうが、会社の責任ではないはずです。

 だけども一歩ふみこんで、それでは資本主義の仕組みがもたないから、労働者が辞めた後まで面倒みてくれ、そこまで企業負担してくれ、そうしないと資本主義がもたないから、ということになります。

 こうやって、社会保障というものが資本主義の国で成り立っているのです。これは、ただの資本主義ではありません。資本主義の原則に反するような累進課税とか、企業負担というものを持ち込んで、社会主義のよいところを取り入れた資本主義です。これを「修正資本主義」と呼びました。

 資本主義の欠点を修正して、社会主義に負けないようないい仕組みに造り直した資本主義ということです。学者によっては、資本主義の経済の仕組みと社会主義経済を混ぜ合わせた「混合経済」と呼ぶ人もいます。所得再配分機能を政府が果たすということです。もちろん修正資本主義というものは、このような良い面だけではなくて、公共事業という名前で国民の税金を大企業の利益のために大々的に流用するというようなマイナスの面もあることも忘れてはなりません。

 しかし、ともかくこうやって、西側の世界は、自由があって社会保障がある、そういう社会に変わっていくのです。そのことで東に勝ったのです。ところが、そのソ連と東ドイツが居なくなったのです。

 その前にもうひとつ。先進資本主義国というのは或る一種の傾向として、労働者が闘わなくなってきます。これは先進資本主義国の宿命のようなものです。つまり資本主義国というのはご存じのように、地球上の大部分を占めている低開発諸国、貧しい第3世界といわれた世界から、安い原料を買ってきてそれを製品にして高く売っています。そして差額、莫大な差額を儲けている。超過利潤と呼ばれています。だから遅れた国は働けば働くはど貧しくなるのです。一生懸命働いてコーヒー豆作っても、それを安く買われてチョコレートやインスタントコーヒーなどの製品を高く買わされるのですから、結局差額だけ損をすることになります。

 この20年、先進国と遅れた国の格差は開く一方、全然縮まらない。地球上の富を先進国が全部集めちゃって、とびきりぜいたくな生活をやっています。ですから先進国の労働者にも、当然そのおこぼれの分け前に預かるので、低開発国の労働者にくらべれば、ずっと豊かになります。豊かにれば闘わなくなってしまいます。その上、それを推し進めるようなありとあらゆる謀策が講じられているのです。

 資本主義というのは、物を売り続けなければなりたたちません。売ったものをいつまでも使われていたのでは、資本主義は成り立たないのです。早く買い換えてもらわなければなりません。いま、日本の車はよく出来ているので、30年は楽に乗れるのに、30年乗られたら日本の自動車会社はみな潰れます。3年か5年で買換えてもらわなれりばいけません。買い替えてもらうには、自分の車は古いと思ってもらう必要があります。ですからコマーシャルで、朝から晩まで何回も、「あんたは古い、あんたは古い。こんないい車ができてます。こんな新しい車が出ましたよ。もっといいのが出ましたよ」と宣伝して洗脳しいるのです。だから3年も乗ると、どうしても買換えざるをえない心境に引き込まれてしまいます。全てのものがそうです。まだまだ使えるのに新しいものに換えてしまう。そういう仕組みができているのです。

 そうしないと、資本主義はもちません。ですから労働者はどうなるかというと、「次、この車に買換えよう、次、パソコンこっちに買換えよう、次、今度はデジタルテレビに買換えよう、じゃあセカンドハウス、つぎは海外旅行・・・」。無限に欲望を刺激され、自分の欲望を満たす方に夢中になって、社会正義とか人権とか考えている暇がなくなっていくのです。

 いま日本の大部分がそうですね。「もっといい生活を」ということだけ考えています。ほかの人の人権だの社会正義なんて見向きもしない。見事に資本の誘惑にひっかかってしまいます。

 もちろん、欲しいからって、お金がなければ買えません。家がほしい、車がほしい、パソコンほしい・・・。それが、実はお金がなくても買える、なんとも不思議な世の中です。ローンというものがあるのですね。

 フォードという人が見つけたのです。それまでは、「つけ」で何か買うなどということは、労働者にはありませんでした。労働者が「つけ」で買ったのはお酒だけです。酒飲みはお金がなくても飲みたいのです。だから酒屋だけは「つけ」がありました。大晦日に払うか払わないかで夜逃げするかどうかもあったでしょうが、今は家を「つけ」で買う、車を「つけ」で買う、なんとも奇妙な世界になってきました。これをフォードが始めたのです。それまでは、自動車というのは大金持ちのものでした。フォードが、あのベルトコンベアーというのも発明して、大量生産を始めたのです。そうなれば、大量に売らなれりばなりません。大量に売るためには労働者に買ってもらわなくてはなりません。でも労働者にはお金がないのです。そこで、ローンという、とんでもないものを考え出したのです。ローンなら金がなくても買えるんですから、みんな買う。当然な話です。

 そりゃあ豊かなのに越したことはありません。マイホームが欲しくなる。ですからみんなローンで買う。そして「マイホーム」という感じになるのです。でも本当はマイホームではありません。あれは銀行のものです。払い終わるまでは、所有権は銀行のものです。銀行から借りてローン組んだだけなんです。こうして次々と新しいものを買わされていく。そのローンは多くの場合退職金を担保に組みます。一度退職金を担保にローンを組んでしまったら、ストライキはできなくなります。会社と闘って退職金がすっとんだら終わりなのです。家も途中でおしまいになってしまいます。ですから、ローンでマイホームが変えるようになってから労働運動は一気に駄目になりました。みんな闘わない、会社と喧嘩したくない、というふうになります。これはもちろん、向こうは計算済みのことです。

 ですから、高度に発達した資本主義社会というのは、労働者が、ある程度ですが、豊かになり、そして、このような消費社会に組み込まれてしまって、身動きができなくなるのです。

 こうして、いま日本では労働組合も、労働運動もストライキもほとんど力を失いました。そうなれば、政府は社会保障なんて、何も譲歩する必要がはありません。労働者が必死になって運動するから、止むを得ず健康保険とか年金制度とかやってきたのであって、労働者が闘わなければ、その必要はないのです。いま、どんどん社会保障が悪くなってきています。次から次から悪くなる。20年前だったら、いまのように社会保障が悪くなったらたちまち、大ストライキが起こりました。しかし今は何も起きません。労働組合が弱体化している、労働運動が骨抜きという状態です。

 そこへもってきて、ソ連や東ドイツがいなくなったのです。こうなればもう社会保障をやる必要はありません。社会保障は止めます、修正資本主義は止めます、ということになるわけです。修正資本主義にはいろいろな意味があるのですけど、一つの特徴は、大金持ちや大企業からお金を取って、弱い立場の人たちに配るところにあります。所得再分配と言われる働きです。だから政府は大きな政府になります。こういう仕組みが修正資本主義で、いろんなマイナス面もあるのですが、プラスの面も大いにあります。

 この仕組みをやめる、というのが今のアメリカです。もう政府は面倒みません、自分でやりなさい、と自由競争に戻る。自由競争一筋。これが、ソ連が崩壊した後に新しくなったアメリカの仕組みなのです。そして、それに日本が「右へならえ」ということなのです。

 それに対してヨーロッパは、アメリカのいうことを聞かず、「われわれはこれからも、社会保障のある資本主義でいきます。むき出しの裸の自由競争には戻りません」。これがヨーロッパなのです。なぜヨーロッパがそういえるかというと、労働運動が強いからです。先進資本主義国なのになぜ労働運動が弱くならないのか。これはこれで時間をかけて考えなければならない問題なのですが──。

 現実の問題として強い。ヨーロッパだって大企業は社会保障を止めたいにきまっています。しかし止めると大騒ぎになります。労働者が絶対に言うことを聞きません。だからやむを得ず守っているのです。企業負担もうんと高いです。日本の会社の倍以上払っています。ですからトヨタ自動車もフランスに、フランス・トヨタを作っていますけど、日本トヨタの倍以上払っています。それでも儲かっているのです。

 ですから、ヨーロッパでも、社会保障は少しずつ悪くなってきてはいますが、日本に比べれば遥かに違います。このようにして、ヨーロッパはアメリカと別の道を進み始めました。アメリカは剥き出しの資本主義に戻りますが、ヨーロッパは修正資本主義のままでいこうとしています。

 しかし、それでは競争で負けます。アメリカや日本は企業の社会保障負担がうんと減っていますから、利潤が増えています。ヨーロッパは高い社会保障負担でやっていますから、儲けが少ないのです。そこで競争しなくてすむようにEUいうものを作って、枠を閉ざしちゃいました。アメリカや日本の会社がヨーロッパに来るときは、ヨーロッパ並みの負担をしなければ、EUには入れません。だからEUの中でやっている時には、日本にもアメリカにも負ける心配はないのです。

 そういう仕組みを作って、アメリカとは別の道を進み始めました。そのためにユーロという別のお金も作りました。イラク戦争で表面に出てきたのですが、イラク戦争がなくても、ヨーロッパはアメリカとは別の道を進み出していました。もう2度とアメリカとは一緒にならないでしょう。

《規制緩和とグローバリゼーション − 構造改革の中身(2)》

 もう一つ、ソ連、東ドイツ崩壊の結果、アメリカが大きく変化したことがあります。それは何かというと、大企業・大資本を野放しにしたことです。

 ソ連がいる間は、大企業や大資本に、「あなた達は資本主義なんだから儲けたい放題儲けたいだろうけど、それをがまんしてください。あなたたちがやりたい放題にやったら、他の資本主義国はみんな負けてつぶれてしまう。アメリカの資本と競争できるような資本などどこにもありませんから。そうなれば、ソ連の方がましだということになる。だから、やりたい放題は抑えてほしい」と言ってその活動を制限してきました。

 具体的に何を抑えたかというと、為替取引を規制したのです。これが一番大きな規制です。いまではもう、中央郵便局へ行って「ドル下さい」といえば、すぐドルをくれます。「100ドル下さい」といえば「ハイこれ1万2千円」。ユーロでも、「下さい」といえば「100ユーロ・ハイ1万4千円」とすぐくれます。でもこれはごく最近のことです。それまでは、外貨・外国のお金は、日本では勝手に手に入りませんでした。お金を外国のお金と取り替える、つまり為替取引は厳重に規制されていて、個人が勝手にはできなませんでした。外国旅行に行くとか、何か特別な理由が認められた時しか、外国のお金は手に入りません。

いまは何も制限ありません。自由にだれでもいつでもできます。理由など聞きませんから、100ユーロとか千ドルくださいと言えば、そのままくれます。これが為替取引の自由化というものです。これがなかったのです。ソ連が崩壊するまでは、アメリカも厳重に規制していました。それをとっぱらったのです。理屈っぽく言えば、資本の国際移動が自由にできるようになったということです。こうして、アメリカの巨大な金融資本が、世界中を我が物顔にのし歩く時代が来るのです。

 もうソ連も東ドイツもなくなったのですから、「いや永いことお待たせしました。今日からもう儲けたい放題儲けていいですよ。やりたい放題やっていいですよ」ということになったのです。これが規制緩和とことです。規制緩和ということは要するに、大資本が野放しになったということです。そうなったらどうなるか、世界第2の経済大国といわれる日本でさえ、全然太刀打ちできません。アメリカの巨大資本、金融資本・銀行ですね。日本の銀行とは勝負になりません。ボブサップと私が裸で殴り合ぅようなもので、一コロで殺されてしまいます。

 それでもやれというなら、ボブサプは手と足を縛ってもらって、目隠ししてもらって、こちらは金槌でも持たしてもらって、それでやっと勝負になるのです。今まではそうだったのです。それを全部外して自由にする、無条件で自由競争にするというのです。負けないためには、相手に負けない位大きくなるしかないですから、合併、合併、合併。あっという間に30ほどあった都市銀行が3つになってしまったのです。UFJとか「みずほ」とか、元何銀行だったか覚えておられる方おられますか。すぐ言えたら賞金をさし上げてもよろしいのですが、まず、言える方おられないでしょう。合併、合併であっという間に3つになりました。3つにになってやっとなんとか対抗できるというくらいにアメリカの巨大銀行というのは大きいものなのです。それでもダメで、長銀はのっとられてしまいました。北海道拓殖銀行も山一証券ものっとられてしまいました。次々とのっとられています。

 ついこの間は青森県の古牧という温泉がのっとられまし。広くていい温泉なんですけど、驚いたことにゴールドマンサックスでした。世界最大のアメリカの金融投資会社、ハゲタカファンドの代表のようなものです。これがどうして古牧温泉なのかと思ったのですが、テレビで放送していました。古牧だけではありません。他に28ケ所、超有名温泉みんな買い占めちゃったのです、ゴールドマンサックスが。

どうするかというと、従業員みんな首切っちゃってパートにして、腕利きのマネージャーを送り込み、部屋をヨーロッパ、アメリカ向きに整備しなおして、欧米からの観光客をワーツと呼ぼうという作戦なんですね。儲かるようにして高く売るのです。ゴールドマンサックスが経営するのではありません。いま赤字の会社を買い取って、儲かるように造り直してすぐに売っちゃうのです。これが投資銀行のやっていることです。確かに、いわれてみればそのとおりで、日本の温泉ほどいいものはありません。知らないだけで、こんないいものは世界中どこにもありません。だから日本の温泉の良さが分かったら、おそらくヨーロッパ、アメリカからごっそり観光客が来ると思います。そこにゴールドマンサックスが目をつけたのですね。そして近代経営やって外国人が来て楽しめるような設備に変えて、世界中にジャパニーズスパーなんていって売り出す気なのですね。ですから、そのうち皆さんも温泉にいらっしやるとみんな英語で案内され、アメリカのお湯の中に入ることになってしまいます。

 アッという間に日本はアメリカ資本に乗っ取られようとしています。去年のホリエモン合併もそうです。今年から商法改正(改悪)して、乗っ取りを認めるということになったのです。株の等価交換、面倒な仕組みですから詳しいことは申し上げませんが、アメリカ株1億ドル分と日本の株1億ドル分を、等価父換していい、こういっているんです。ところが、アメリカの株の値段が高いのです。ですから1億ドルといっても、株の数からすると、例えば千株位しかない。日本は株が安いですから、同じ1億ドルで1万株位あるのですね。そうすると、千株と1万株で取り替えますから、あっという間にアメリカは大株主になってしまう。この等価父換を認めると、日本の大企業全部乗っ取られてしまう。

 そこで、日本の優良企業が狙われています。超優良企業を株式等価交換で、簡単にアメリカが乗っ取ることができる。今年からそれが可能になるはずだったです。それで去年、実験をやったのですね。ホリエモンにやらせてみたのです。ホリエモンはアメリカのリーマン・ブラザースから借りてやったのです。で、出来そうだなと分かったので、アメリカはお金を引き上げてしまいました。ホリエモンに乗っ取られては困る、いずれ自分が乗っ取るのですからネ。最後の段階で資金引き上げましたたから、ホリエモン降りる外なかった、多分そういう仕組みだったのではないかと思います。

 今年から自由に、日本中の会社をアメリカが乗っ取れるはずだったのですが、あのホリエモン騒動のおかげで日本の大企業が震え上がり、政府に泣きついて、「なんとか商法改正を見送ってくれ」と。それで見送りになりました。ですから、ちょっと一息ついているのです。今年すぐ、乗っ取られるというわけではありません。でも、いつまでも見送りというわけにはいかないでしょう。2・3年後には解禁。そうなれば、日本はほぼアメリカ資本に支配される、ということになるでしょう。

 日本ですらそうなのですから、まして、フィリピンとかタイとかいう国はたまったものではありません。あっという間に乗っ取られてしまいます。アメリカに勝手に経済的属国にされてしまう。それに対して、いやそんなの困るから、アメリカ資本が自分の国の株を買うことを法律で禁止する、というようなことをやろうとすると、アメリカはそれを認めないのです。グローバリゼーションだから地球はは「一つ」だというのです。いくら規制緩和しても相手国が法律で規制してしまったら終わりです。ですから、自分の国だけ勝手に現制することは認めません、地球はひとつですよ、グローバリゼーションですよ、ときます。フメリカの大資本が地球上のどこの国でもアメリカ国内と同じ条件で商売できるようにする、これがグローバリゼーションです。いやだと断ると制裁を加えられます。

 クリントン大統領の時は経済的制裁だけですんだのですが、ブッシュになってから、軍事的制裁になりました。いうことを聞かないと軍事制裁だぞという、これがネオコンという人たちの主張です。イラクを見ればみな震え上がるでしょう。ですから、アメリカの言いなりにグローバリゼーションで国内マーケットを開放して、アメリカ資本に全部乗っ取られてしまう、というのがいま着々と進行しているのです。

《アメリカの孤立》

 そこでどうなったかというと、ヨーロッパと同じように、「そんなの困る。自分の国の経済の独立は自分たちで守りたい」という人たちが手を繋いで、「アメリカに支配され引きずり回されないように、防波堤を作ろう」という動きが始まりました。だいたい5・6年前からです。アセアン(ASEAN東南アジア諸国連合)の動きが始まりました。5つの国です。インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン。元来はアメリカが造らせた組織だったのですが、いつのまにか自主独立を目指す組織に成長しました。

 手を繋ぎ、アメリカに引きずり回されないように、アメリカの資本が勝手に入ってこないように、自分たちの経済は自分たちでやりましょう、と。ところが、ASEANが束になったってアメリカにはとてもかないません。そこで、知恵者がいました。アセアンだけではかなわないので、中国と手を繋いだのです。「アセアン、プラス中国で、アジアマーケットを作り、アメリカにかき回されないようにしよう」しようというのです。確かに、中国が入ったらアメリカはうかつに手が出せません。しかし中国だけ入れると、反米色があまりにも露骨ですから、「アセアン、プラス・スリーでいきましょう。アセアン+日本+韓国+中国、でいきましょう」ということになります。日本はアメリカの51番目の州だといわれているのですから、日本が入れば、アメリカも安心します。

 EUのように、アセアン+スリーで、自分たちの経済は自分たちでやれるように、アメリカに引きずり回されないような自立したアジアマーケットを形成することが目標です

 ただひとつ、日本が具合が悪いのです。日本はそのスリーに入っているのですが、(アセアンの会議に)行く度に「アメリカも入れろ、アメリカも入れろ」というのです。アセアン諸国はアメリカから自立するために作っているのですから、「アメリカを入れろ」といわれたんじゃあ困るので、結局日本は棚上げになってしまいます。実際にはアセアン+中国で、経済交流が進んでいます。いずれ2010年には、東アジア共同体・EACというものを立ち上げる、という動きになっています。

 そうなってくると韓国が困りました。日本・アメリカ側につくのか、中国・アセアン側につくのかで、2・3年前から中国側に大きく傾いています。留学生の数を見ると分かります。中国の北京大学には世界中の留学生が集まります。21世紀は中国と商売しなければメシが食えなくなることが分かっていますから、将釆、中国語がしゃべれる人が自国のリーダーになり、中国の指導者に友達がいないと困ります。それには北京大学に留学するのが一番いいのです。あそこはエリート養成学校です。この前行った時聞いてみたのですが、入学試験競争率5千倍だそうです。超難関です。大学の構内を歩いて見たのですが、広い敷地に6階建てのアパートが36棟ぐらい建っていて、みな学生寮です。全寮制。そばに教職員住宅があって、朝から晩まで共に暮らしながら勉強しています。授業は朝7時からです。ものすごく勤勉に勉強しています。

35年間私は大学の教員でしたが、愛すべき怠け者の学生諸君を教えてきたわが身としては、「あ、これはかなわないなァ、20年もしたら──」と思いました。向こうは国の総力を上げて次の時代の指導者を養成しているのです。日本はもう全然、ニートとかフリーターとかいって、若者の気迫がまるでレベルが違います。これは置いていかれるな、という気持ちになりました。このように世界中の国が、いま一流の学生を北京大学に送り込んでいるのですが、去年、北京大学留学生の中で一番数が多いのが韓国なのです。

 おととしまで韓国の学生は殆どアメリカヘ行っていました。去年あたりから中国へ変わったようです。つまり韓国は、21世紀の自国は、アメリカ・日本ではなく、中国・アセアンと組むことで繁栄を図りたい、と向きを変えたということです。

 それに拍車をかけたのが小泉首相の靖国参拝。これで韓国は怒っちゃってあちらを向いた。そうなると、アセアン、中国、韓国と繋がって、日本だけはずされてしまった、という状況がいま生まれつつあります。

 さらに中国は、数年前からいま、「ふりん政策」を国の方針としています。フリンといっても男女の不倫ではありません。富、隣。隣の国を富ます、隣の国を豊かにする──富隣政策です。隣の国と仲良くする。中国だけ儲けたのでは相手に恨まれてしまいます。英語では「ウィン、ウィン」(win-win)というようです。どっちも勝つ、中国も儲けるけど相手も儲けるような関係を必ず作っておく、ということが基本政策です。

 つまりアメリカは、やっとソ連を倒したと思ったら、今度は中国が出てきたのですから、中国を目の敵にしているのは当然です。中国にすれば、アメリカにやられないためには、単独では対抗できませんから、周りの国と手をつなぐ、ということです。

 アメリカは修正資本主義を止めて自由競争の資本主義に戻りました。その結果大企業・大資本は野放しになりました。そのためにアジアにそっぽを向かれることになりました。アメリカにはついていけない。アメリカに勝手にされては困る。もちろんアメリカと喧嘩をしては駄目ですが、自分の国は自分の国でやれるようにしなければならない──、というふうに変わったのです。

 そして最後に、3年前から南米が変わりました。ようやく日本でも報道されるようになりましたからご存じと思います。ただ日本のマスコミはちょっとしか書きませんから、気づいておられない方もおありかと思います。南米がものすごい勢いでアメリカ離れを始めたのです。

 今まで200年、南米はアメリカの裏庭といわれていました。アメリカはやりたい放題やっていました。チリは世界一の銅の産出国ですが、このチリの銅はすべて、アナコンダというアメリカの銅会社が一手で採掘していました。だからいくら掘ってもチリは豊かにならない。アメリカのアナコンダだけが儲かるのです。

 ブラジルは世界一の鉄の産地です。これもみな掘っているのは欧米の会社で、いくら掘ってもブラジルは豊かにならない。ベネズエラは世界第五位の産油国です。これもみなアメリカの石油資本が持っていく。

 こういう国はこれまで軍事独裁政権でした。政治家は、自分の国の資源をアメリカに売り渡し、自国の国民の反発は力で抑えつけ、莫大なリベートを貰って自分たちだけベラボウな贅沢をしてきました。これがアメリカと南米のパターンだったのです。

 それが、3年ほど前から、「おかしいではないか。やっぱりベネズエラの石油はベネズエラ人のものだ。石油を掘ったら、ベネズエラが豊かにならないとおかしいではないか。いくら掘ってもアメリカだけ儲けるのはおかしい。石油をアメリカの石油会社から取り上げて、ベネズエラで掘ることにしよう。国有化しよう」というような政策を訴える大統領が、当選するようになりまし。この3年間で、南アメリカは80%が、このような自主独立派の大統領になりました。アメリカ資本に任せず、自国の経済は自分でやろうという政策を掲げた大統領が、次々と当選したのです。

 いまでは、南アメリカでアリカの言いなりというのは、多分コロンビアしかないと思います。あとは殆どみな、自分の国は自分でやりましょというふうに変わってきました。ベネズエラのウゴ・チャベスという人がそのチャンピオンです。ご存じですね、時の人です。アメリカはそのチャベスの当選を必死になって妨害したのですが、結局ダメでした。チャベスが圧倒的多数で選出されました。その彼の言い分がふるっているのです。

 「失礼にならないようにアメリカから遠ざかりましょう」というのです。いきなり遠ざかったのではゴツンとやられますから、アメリカを怒らせないように、喧嘩しないように、少しずつ「小笠原流」で遠ざかって自主独立に向かいましょうというのです。

 これがいま世界の合言葉です。「失礼にならないようにアメリカから遠ざかる。」日本もそうしなければいけない、と私は思っているのですが。絶対にやりません。

 こうやってアメリカは、ソ連や東ドイツがなくなってから、修正資本主義をやめて、いまの言葉でいえば「新自由主義」という仕組みに代わりました。日本はそれに右ならえしたのです。いま申し上げたように、このアメリカの新自由主義経済に無条件で追随しているのは、日本しかありません。あとはみな、「失礼にならないように」距離をおきました。

日本だけが無条件でついていきました。だから「ポチ」だといわれるのですネ、確かにポチと言われてもしょうがないほど、無条件でついていきます。それは恥ずかしいことですが、日本が追随していく。これが構造改革なのです。修正資本主義経済から新自由主義経済に変わるということです。簡単にいえば、弱い人の面倒を政府が見るような仕組みから、もう弱い人の面倒は見ませんという仕組みに、変わっていく──。これが構造改革です。

 だから、社会保障はどんどん悪くなる。自由競争で勝ち組と負け組がある。中には1千万ぐらいのマンション買って落ち着いているのもいる。片方には、国民健康保険料さえ払えなくて医者にも行けない。そういう人がもう全国で膨大な人数出てきている。まさに格差社会です。

 どんどんその格差が広がっています。金持ちからお金を取って弱い人の面倒を見る、というのが修正資本主義なのですが、それを止めてしまいました。野放しなのです。強い人はますます強くなり、弱いものは負けたら自己責任なんですよ。こういう仕組みにいま変わったのですね。

 それがいいか悪いか、止むを得ないのかどうかは、いろいろな立場によって考えが違うのですが、事実はそうなったのです。

 しかしヨーロッパは別の道をとっています。このように別の道もありうるというのも事実なのです。ヨーロッパのように社会保障を止めない資本主義もあり得るのです。

 日本の場合、アメリカほど徹底していませんが、流れとしては「政府はもう弱い人の面倒は見ません」、という方向に大きく動いています。


《憲法改悪の要求》

 こうして、アメリカは新自由主義経済で自国の企業を野放しにして、それを世界中に押しつけようとしたのですが、意外に抵抗が大きかった。ヨーロッパはいうことを聞かない。アジアも聞かない、南米も聞かない。これでは困るので力づくで押しつける。こういうことになるのですね。力づくで押しつける時に、最大の目標・ターゲットはもちろん中国です。やっとソ連を倒して、21世紀はアメリカが王様になれると思ったら、中国が巨大な国になってきて、アレリカの前に立ふさがっいます。このままではアメリカは王様ではいられません。中国を抑え込むことが21世紀へ向けてのアメリカの最大の長期的課題になっています。しかし戦争はできません。中国と戦争したのでは共倒れになります。唯一の道はエネルギーを抑えることです。

 ネオコンという人たちの書いた文章を読むと、非常にはっきり書いてあります。21世紀にアメリカが世界の支配権を握るには、中近東の石油を抑えなければならないというのです。中国は石油の自給ができません。どんどん石油を輸入していますが、殆どいま中近東から輸入しています。アメリカが中近東の石油を抑えれば、中国はアメリカのいうことを聞かざるをえなくなる。当然でしょうね。

 世界一の産油国サウジ・アラビアはすでにアメリカ側の国です。そこで第二の産油国であるイラクをアメリカは分捕りたいのですが、その理由がありません。そこでアメリカは「大量破壊兵器、テロ応援」という嘘をつきました。プッシュ大統領も、ついにウソであったことを認めました。

 ではなぜイラク戦争をやったのか。本当の理由はまだ公表されていません。しかしネオコンという人たちの文章を読むと、明らかに「石油を抑える。抑えてしまえば中国は言うことを聞かざるをえない」。ここに本当の理由があったことは明白です。そうだとすれば、恐ろしい話ですが、(次に)絶対にイランが狙われます。

 世界第1の産油国サウジアラビアは、昔からアメリカの同盟国です。第2位のイラクは抑えてしまいました。そしてイランは第3位の産油国です。ここを放っておいたのでは意味がないのです。中国はいくらでもイランから石油の輸入ができます。どうしてもイランまで抑えなければならないというのは、アメリカでは、いわば常識です。どんな新聞雑誌でも次はイランだということが堂々と語られています。

 ライス国務長官も3日前、「今イランに対するは軍事力行使の予定はない」と言っていました。「今は」です。イランは核開発やっているというのが理由です。たしかに妙な国ですが、しかし別に悪い国ではありません。あのあたりでは1番民主的な国です。曲がりなりにも選挙で大統領を選んでいますから。女性はみな顔を出していますし、大学へもいっています。イランは近代化した国なのです。サウジアラビアなどの国に比べたら、ずっと民主的な近代国家です。イスラム教のお妨さんが、選挙で選ばれた大統領より偉い、というのだけが変ですが、全員がイスラムですから、他国がとやかく言うことではないです。

 ですから、イランが悪魔の国というのは嘘なのです。イラクがそういわれたのも同じで、要するに悪魔の国と誤解させて、戦争しかけてもやむを得ないと思わせるための宣伝が行われているのです。

 イランはイランで、自分で自分他ちの国を近代化していけばいいのであって、核兵器持つなといっても、隣のパキスタンもインドも持っているのです。こちらのイスラエルもです。イランだけ持つなといっても、聞くわけありません。イランに持たせたくないのなら、「俺も止めるからあんたも」と言わなければなりません。「俺は持っている。お前だけ止めろ」と言ったってイランが聞くわけありません。そんな理屈が通るはずがないのです。実に馬鹿な理屈です。

本当にイラクに核開発をやめさせたいのなら、イギリスもフランスもアメリカも 「先ず自分が止める、だからお前も止めろ」と言うしかありません。お前だけ持つなと言って、聞くと思う方がどうかしています。核開発は現在の大国の論理では抑えられません。イランに言わせれば、「イラクがなぜあんなに簡単に戦争しかけられたかといえば、核兵器を持っていなかったからだ。持っていたら恐ろしくてとても戦争なんか仕掛けられない」ということになります。だからイランはいま核開発を急いでいるのです。核兵器を持たないとアメリカに攻められるから。そう思い込んでいるのです。

 そう思わせるようなことをアメリカはやってきたのですから、イランに核兵器開発を止めさせるためには、イラクから撤収して、中東の平和は中東に任せる、という姿勢を示すしかありません。自分がイラクを分捕って居座ったままで、イスラエルやパキスタンやインドの核兵器には文句をいわずイランにだけ、というのは通じない理屈です。実にゆがんだ国際常識というものが罷り通っている、と思います。

 もしアメリカがイランまで分捕ってしまえば、サウジアラビア、イラン、イラクと合わせて、世界の石油の70%ぐらいになるはずですから、中国はアメリカのいうことを聞かざるをえなくなります。だからつぎはイランだというのが、ネオコンの論理です。

 ただ問題は、イランに戦争を仕掛けるとしても単独ではできなません。兵隊がたりない。徴兵制ではなく志願兵制度ですから。いま、ありったけの兵隊さんがイラクに行っています。あれ以上いないのです。だからハリケーンが来ても出せなかったのですね。そうすると、イランに出す兵隊なんていないのです。そこで、アメリカの右翼新聞の社説など、堂々と書いています。「イラクにいるアメリカ軍でイランを乗っ取れ。カラッポになったイラクの治安維持は、日本にやらせろ」と。
 アメリカの論理から言えばそうなるのでしょう。自衛隊にイラクの治安維持をといいますが、実際は内乱状態ですから、今も毎日アメリカ兵は毎日5人位殺されています。そんなこと引き受けたら、自衛隊員何人死ぬか分かりません。第一そんなことは、憲法9条があるかぎりできないのです、絶対に。憲法があるおかげで、自衛隊はイラクにいますけれども、ピストル1発撃つことができないのです。憲法9条第2項というのがあるのです。自衛隊は戦力ではない・交戦権はないとなっていますから、不可能なのです。だから給水設備備を作るとか、学校修理とか、そういうことしか出来ません。これじゃあアメリカから見れば役に立たないのです。


《平和憲法こそ 日本生存の大前提》

 そこで、「9条2項を変えて、戦争ができる自衛隊になってくれ」というのがアメリカの強い要求なのです。みんな分かっています。言わないだけです。日本の新聞記者も知っています。しかし、「9条変えろ」がアメリカからの圧力、と書くと首になるから書かないだけです。でも誰も知っています。アメリカのに戦争に参加しなさい、という強い圧力がかかっているのです。

 ここのところをよく見極めておくことが必要です、「9条を守る」ということは、「アメリカの言いなりにならぬ」ということと一つ、なのです。

 アメリカと喧嘩しては駄目ですから、「失礼にならないようにアメリカから遠ざかる」のが何よりも大切です。仲良くするけれども言いなりにはならない、ということです。ところが、憲法が危ないという、この危機的な状況にもかかわらず、国内で労働運動が弱体化していますから、ストライキも起きない。大きなデモも起きない。大反対運動も起きない──。という状況です。

 ではもう駄目なのでしょうか。そうではないと思います。それには日本の国内だけではなく、世界に目を向ける、アジアに目を向けるこちとが必要のです。ご存じのように、これからの日本は、中国と商売せずには、生きていけなくなりま。いま、大企業だけですけど、多少景気がよくなってきています。全部中国への輸出で持ち直したのです。中国マーケットがなくなったら日本経済はおしまいだ、ということは誰も分かってきています。

 お手元の資料の中の(貿易額の)丸い円グラフは、2003年のもので少し古いのですが、アメリカ20.5%、アジア全体で44.7%、つまり日本にとって一番大事な商売の相手は、アメリカではなくてアジアなのです。

 アジアと仲良くしなかったら、経済が成り立たないところへ、いま既にさしかかっているのです。左隣の棒グラフは2004年ですが、左上から右に折れ線がずうっと下がってくる。これが日本とアメリカの貿易です。点線で右へずうっと上がっていくのが中国との貿易。遂に去年(2つの折れ線が)交差し、中国との貿易の方がアメリカとの貿易額より多くなりました。しかも鋏状に交差していますから、今後この2つは開く一方になってきています。

 つまり、あと2・3年もすれば、日本は中国との商売なしには生きていけない、ということが国民の常識になるということです。いま既に、中国を含めたアジアが、日本の一番大事なお客さんなんです。仲良くしなければいけません。一番大切なお客さんの横っ面ひっぱたいたんじゃ商売は成り立ちません。

 靖国参拝などというものは、一番大事なお客さんの横面ひっぱたくと同じことなのですから、個人の信念とは別の問題です。小泉首相は総理大臣なのですから、個人の心情とは別に日本の国全体の利益を考えて行動しなければいけません。それは総理大臣の責任だと思います。その意味でアジアと仲良ぐできるような振舞いをしてもらわなければ困るのです。

 もう一つ。アメリカとの商売はこれからどんどん縮小していきます。それは、ドルというものの値打ちがどんどん下がっていくからです。これはもう避けられません。

 昔はドルは純金だったのです。1971年まで、35ドルで純金1オンスと取り換えてくれました。だからドルは紙屑ではありませんでした。本当の金だったのです。

 われわれのお札はみな紙屑です。1万円なんて新しくて随分きれいになりましたけど、綺麗にしただけちょっとお金がかかって、印刷費に1枚27円とかかかると聞きました。27円の紙がなぜ1万円なのか。これは手品みたいなものです。あれが5枚もあるとなかなか気が大きくなるのですが、本当は135円しかないのです。それが5万円になるのは、法律で決めているのです。日銀法という法律で、こういう模様のこういう紙質のこういう紙切れは1万円、と決められている。だから、あれを1万円で受け取らないと刑務所に入れられます。法律で決まっているからです。ですから日本の法律の及ぶ範囲でだけ、あれは1万円なのです。その外へ出ると27円に戻ってしまいます。

 金と取り換わらないお札というのは、簡単にいえばその国の中でしか通用しません。他の国へ行ったら、その国の紙屑と取り換えなければ通用しません。ところが、ドルだけは世界で通用しました。純金だからです。

 ところが、1971年にアメリカはドルを金と取り換える能力を失いました。ベトナム戦争という馬鹿な戦争をやって莫大な軍事費を使ったのです。背に腹は代えられなくてお札を印刷し、航空母艦を造ったりミサイル、ジェット機を作ったりしたのです。そのために、手持ちの金より沢山のお札を印刷しちゃったのです。

 その結果、アメリカは、ドルを金と取り換える能力を失ったのです。そこで、71年8月15日、ニクソン声明が出されました。「金、ドル交換停止声明」です。あの瞬間にドルも紙屑になったのです。ドルが紙屑になったということは、ドルがアメリカの国内通貨になったということです。

 ところが、問題はそれ以後なのです。世界で相変わらずドルが適用したのです。皆さんも海外旅行へ行かれる時は、大体ドルを持って行かれますね。どこの国へ行っても大丈夫なのです。金と取り換えられないお札が何故世界で適用するかは本当に不思議で、経済学者にとって最大の難問なのです。いろんな人がいろんな答を言っていますけど、あらゆる答に共通しているのは、ひとつは「アメリカの力の反映」だから、ということです。

 つまり、日本が自動車を作ってアメリカヘ売ります、ドルを貰いますネ。日本は損をしているのです。自動車という貴重なな物質がアメリカへ行って、紙屑が返ってくるのですから。物が減ってお札だけ増えると必ずバブルになります。

 バブルの犯人はそこにあるのです。日本が輸出し過ぎて貿易黒字を作り過ぎているのです。だから日本は、アメリカに自動車を売ったら、「純金で払ってください」と言わなければなりません。ところがそう言うと、ジロッと睨まれてお預けになってしまいます。日本には米軍が5万人います。「アメリカのドルを受け取らないとは、そんな失礼なこと言うなら、在日米軍クーデター起こしますよ」、これで終わりなのです。黙って受け取ってしまう。だから日本は無限に物を提供し、無限に紙屑をもらう。こうしていくら働いても日本人の生活はよくならないのです。しかもその紙屑でアメリカの国債を買っています。アメリカに物を売って、払ってもらった代金をアメリカに貸している。言ってみればツケで輸出しているようなものです、現実に。アメリカにいくら輸出しても日本は豊かにならない仕組みになつています。

 2週間前に『黒字貿易亡国論』という本が出ました。有名な格付け会社の社長さんですが、「貿易黒字を作るから日本は駄目なのだ」、ということを詳しく論じたたいへん面白い(文芸春秋社の)本です。確かにそうだと思います。だからドルは、本当は受取りたくないのです。みんな紙屑なんです。だけど受け取らないと睨まれる。アメリカの軍事力が背景にあるのです。

 その力をバックにして、紙切れのお札を世界に通用させている。例えていえば──餓鬼大将が画用紙に絵をかき1万円と書いて鋏で切り、これ1万円だからお前のファミコンよこせ、とこれを取り上げる──のと同じです。いやだと言ったらぶん殴るのです。怖いから黙って渡して紙屑もらうことになります。その紙屑で、他の人から取り上げればよいのです。「お前のバイクよこせ、よこさなかったらいいつける」。「あの人、あんたの紙屑受け取らない」、するとガキ大将が釆て、ゴツンとやってくれる──。餓鬼大将の力の及ぶ範囲ではそれが通用するのです。

露骨にいえば、ドルがいま世界に適用しているのは、そういう仕組みが一つあります。

 もう一つは、ソ連の存在です。もし紙屑だからアメリカのドルを受け取らないといったら、アメリカ経済は潰れます。アメリカが潰れたらソ連が喜ぶ。だから紙屑と分かっていても受け取ってきた。ソ連に勝たれては困るから──。

 これも確かに一理あります。ということは、ソ連がいなくなって、紙屑は紙屑だということがはっきりしてきたのです。今まではソ連がいるために、紙屑なのに金のように適用したが、今や「王様は裸だ」というのと同じで、「ドルは紙屑だ」といっても構わない時代です。

 ともかくドルが危ないのです。私が言ってもなかなか信用してもらえませんが、経済誌『エコノミスト』、一流企業のサラリーマンなら必ず読んでいる雑誌すが、これの去年9月号が中国“元”の特集でした。その真ん中へんに「プラザ合意20年」という対談がありました。その中で、榊原英資さんは「5年以内にドル暴落」と言っています。

 榊原さんは大蔵省の元高級官僚で日米為替交渉の責任者を10年やりました。円・ドル問題の最高責任者だった人です。「ミスター円」といわれていました。通貨問題に最も詳しい現場の責任者です。停年で大蔵省をやめて今は慶應大学の先生になっています。この人が「5年以内にドルが暴落する」、つまりドルが紙屑だということが明らかになる日が近いと言っているのです。

 ソ連がいる間は隠されていたのですが、いまはもう、ドルは紙屑だから受取りたくないという人たちが増えてきています。これまでは世界通貨はドルしかなかったので、受け取らなければ商売ができなかったのですが、今ではユーロという代わりが出来てしまいました。ドルでなくてユーロで取引する国が増えてきています。そしてユーロの方が下がりにくい仕組みになっています。ドルは下がるのです。

 なにしろアメリカは、永いことドルが世界通貨ということに慣れてきました。だから自動車が欲しければ日本から自動車買って、アメリカは輪転機を回せばよいのです。紙とインクがあればいいのですから。ほかの国はこんなことできません。自動車が欲しければ、一生懸命働いて何か輸出し、その代金で輸入しなければならないのです。アメリカ以外の国は全部そうやっているのです。

 輸入は輸出と一緒です。輸入するためには輸出しなければなりません。ところがアメリカだけは輸出しないで輸入ができるのです。ドルという紙切れが世界通貨ですから。極端に言えば、欲しい自動車や石油を日本やアフリカなどから買って、紙とインクで支払う。実際そうして世界の富がアメリカに集まったわけです。

 71年以降の30年間、この仕組みのために、世界中にドルが溢れ出ました。ドルがどんどん増えますから、当然値打が下がります。こうしてドル下落傾向。(資料の一番下のグラフがそうです。円が上がっていく様子、為替取引だから短期的には上下しますが、長期的には間違いなく円高。ドルがドンドン下がるのは確かです。)これがあるところまでいくと、ガクッと下がります。

 あるところまでいくと、「ドルは信用できない、下がる通貨は持っていたくない」となります。ですからドルを受け取らない、ユーロか何か、別な、下落しない通貨でなければ受け取らないということが出てくる。そうなるとドルは暴落します──。榊原氏がそういっているのです。

 ヨーロッパはユーロでいくでしょう。アジア経済圏はなんといったって元です、中国の。中国は賢いですから、元を押しつけないで、何かアジアの新しい通貨を作るかもしれません。しかし元が中心になることは間違いないでしょう。ドルはアメリカでしか使われなくなる。そうすると、今まで全世界で使われていたドルが、みんなアメリカに集まって来るわけですから、アジア、ヨーロッパで使われいていたドルがみな戻ってきて、簡単にいえばドルの値打が3分の1に下がることになります。

 アメリカの生活は大きく収縮します。一家で3台自動車持っていた家は1台に。1台持っていた家は止めなくればならなくなる、ということです。

 アメリカ経済の収縮。これは大変恐ろしい話なのです。世界経済が大きく収縮し、日本経済は大きな打撃を受けます。しかし避けられない動きなのです。いつのことか分からないが、そう遠くない将来にドルの信用がドンと落ちていく。結果として日本がアメリカにだけ頼っていたら、大変なことになります。

 いまのうちに、アメリカに輸出してドルをもらったらユーロに代えておいた方がいい。ユーロの方は下がらないからです。EUという所は、国家財政が赤字だと加盟できないことになっています。赤字だと穴埋めにお札を出すので乱発ということになって下がるのです。だからユーロは一応下がらない仕組みになっています。乱発できないようになっているのです。ドルは短期的に持つのはかまわないが、3年、4年と長期的に持っていると下がってしまいます。それならユーロにしておいた方がいいとか、これから生まれるかもしれないアジア通貨にしておいた方がよいとかいうことになります。世界の大企業や国家が、決済のために多額のドルを持っていますが、これがユーロに切り替えられるとなると、ドルはもう世界通貨ではなくなります。

 そうなると、アメリカだけに依存している国は、大変苦しくなります。21世紀の日本を考えた時、アメリカと仲良くするのは大切ですが、しかしアメリカ一辺倒では駄目な時代になっているのです。アジアと仲良くしなければいけません。

 しかしアジアと仲良くするのには、無条件ではできません。なぜなら、60年前、アジアに戦争を仕掛けて大変な迷惑をかけた。その後始末がちゃんとできていないのです。仲良くするするためには、60年前のマイナスを埋めるところから始めなければいけません。別に難しいことではないのです。「あの時はごめんなさい。2度とやりませんから、勘弁してください」。これで済むわけです。

 問題は、「2度とやりません」が、信用してもらえるかどうかです。信用してもらうための最大の決め手が「憲法第9条」です。憲法9条第1項、第2項がある限り、日本は2度と戦争はできません。イラクの状態を見ても、自衛隊は鉄砲一発撃てない。(世界中)みんなが見ています。この憲法9条第1、第2項がある限り、日本は戦争はできません。だから安心して日本と付き合うのです。

 もし日本が憲法9条を変えて、もう1回戦争やりますということになったら、アジアの国々は日本を警戒して、日本との付き合いが薄くなってしまいます。いま既にそうなりつつあります。小泉首相は靖国に何度も行く。自民党は憲法9条を変えることを決め、改憲構想まで発表した。アジアの国々は用心します。「そういう国とは、あまり深入りしたくない」。

 小泉首相は「政冷、経熱」でいいじゃないか、といいます。政治は冷たくても経済では熱い関係というのでしょうが、そんなことはできません。中国と日本の経済関係はじわっと縮小しています。統計でもそれははっきり出ている。

 おととしまで中国の貿易のトップはアメリカでした。次が日本、3位はEU。これがひっくり返ってしまいました。去年はトップはEU、2位アメリカ、3位日本です。明らかに中国は日本との商売を少しずつ縮小させている。その分EUに振り替えています。

 去年5月、ショッキングなことがありました。北京・上海新幹線という大計画をEUに取られました。北京〜上海って何キロあるのでしょう。日本の本州より長いのではないでしょうか。このとてつもない計画があって、去年、まだ予備調査の段階すが、日本は負けました。ドイツ、フランスの連合に取られました。予備調査で取られたということは、本工事は駄目ということです。中国にすれば、日本にやらせるのが一番便利なのです。近いですし、新幹線技術も進んでいます。まだ1度も大事故を起こしたことがありません。ドイツもフランスも、1回ずつ大事故を起こしたことがあります。技術からいっても資本からいっても、日本にやらせれば一番いいのに、日本が負けました。明らかに政治的意図が働いたと思われます。日本との関係を深くしたくない。いざという時、いつでも切れるようにしておく。いざというとき、切れないようでは困る。そういうことではないでしょうか。

 いまのままアメリカ一辺倒でいいのでしょうか。私は長島さんをよく思い出します。後楽園での引退試合の時、最後に「読売ジャイアンツは永久に不滅です」といったのです。永久に不滅どころか、去年のジャイアンツのサマといったらもう、見ていられない。アメリカもそうなるのではないでしょうか。小泉首相は「アメリカは永久に不滅です」と、いまもいっているのですが、そうではないのではないでしょうか。

 アメリカにさえ付いていれば、絶対大丈夫という時代は終わったのです。アメリカとも仲良くしなければいけませんが、しかしアジアとも仲良くしなければいけない、そういう時代がいま来ているのです。仲良くするのには、憲法9条を守ることが大前提です。これを止めてしまったら、アジアとは仲良くできません。

 憲法9条は、日本にとって“命綱”です。いままでは、憲法9条というと、「理想に過ぎない。現実は9条で飯食えないよ」という人が多く、中には鼻で笑う人もいました。しかしいまは逆です。9条でこそ食える。9条を変えたら、21世紀日本の経済は危ないのです。

 憲法9条を守ってこそ、この世紀の日本とアジアとの友好関係を守り、日本も安心して生きていけるのです。こういう世の中をつくる大前提が憲法9条です。憲法9条は美しいだけではなく、現実に儲かるものでもあります。そのことがやっと分かってきました。

 奥田経団連会長は、去年までは小泉首相を応援して靖国参拝も賛成だったのですが、そんなこといってたらトヨタは中国で売れなくなります。そこで今年の正月の挨拶でついに、「中国との関係を大事にしてほしい」と、向きが変わりました。
 財界が、中国と仲良くしなければ自分たちは商売ができない、となってくれば、日本の政治の向きも変わるだろうと思います。あと3年たてば多分、これは日本の国民の常識になってきます。中国と仲良くしないと経済が駄目になる。それは中国のいいなりになることではないのです。良くないことはきちんという。だけど敵にするのではなく、仲良くする。でなければ、日本の経済は成り立たない。これがみんなの常識になってくるでしょう。

 これまで60年、アメリカベったりだったから、アメリカから離れたら生きていけないと皆思ってきました。しかし現実の数字はそうでなくなっています。一番大事な経済の相手は、もうアメリカではなくアジアなのです。これに気づくのにあと2・3年かかるでしょう。これが世論になれば、もう、憲法を変えるなどということは、絶対にできません。

 しかし、この3年の間に、国民の世論がそのように変わる前に、憲法が変えられてしまったら、どうにもなりません。

 あと3年、必死の思いでがんばって、子供たちに平和な日本を残してやるのが、私たちの務めだと思います。そう思って、私も必死になってかけ回っています。あと3年ぐらいはまだ生きていけるだろうから、なんとしても3年間は9条を守るために全力をつくしたいと決心しています。

 ありがたいことに、9条を変えるには国民投票が必要です。国会で決めただけでは変えられません。国民投票で過半数をとらないと、憲9条は変えられないのです。逆にいえば、これによってこちらが憲法9条を守る署名を国民の過半数集めてしまえばいいことになります。住民の過半数の「9条を守る」署名を3年間で集めてしまう。そうすればもう、変えることは不可能になります。

 そうすれば、子供たちに憲法9条のある日本を残してやれます。2度とアジアと戦争する国にならないようにして、そしてもし長生きできれば、新自由主義という方向、つまりアメリカ言いなりではなく、もっと自主的な経済ができるように、せめてヨーロッパのような修正資本主義、ルールのある資本主義の仕組みにもう一度戻すこともできるでしょう。

 日本中で、飢えている人、因っている人、貧しい人が、それでも人間らしく生きていけるような、最低限の保障ができる、生きる希望が出る──。そういう社会にすることが大切なのだ、と思います。これは長期的展望です。簡単にはできません。一度、新自由主義になってしまったので、10年位かかるでしょう。国民が賢くなって、正しい要求を政府につきつけていかなければいけません。その中心になる労働運動の再建が必要です。

 結局国民が主権者なんですから、国民の願いがかなうような、そういう日本に作り替えていきたいなと、そういう道を進んでいきたいなと思います。

 鋸南町は合併を拒否なさったというので、日本でも有数な自覚的な町といえます。合併するとまず住民自治がダメになります。大きくなるということは、住民自治が駄目になることでもあります。住民が主人公になる町こそ大切。ぜひこの美しい山と海と禄のある町で、1人1人が主人公であるような地域共同体というものを、みんなが助け合える町になることを私も希望して、講演を終わらせていただきます。
http://kyonannet.awa.or.jp/mikuni/siryo/2006/kawabata-kouen060114.htm

▲上へ      ★阿修羅♪ > 近代史3掲示板 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 近代史3掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
近代史3掲示板  
次へ