安倍総理「器」論の真実 (前編)2020-01-09 https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12565664582.html イランがイラクの米軍基地をミサイル攻撃し、いよいよ「第二次グローバリズムの終焉」が明確になってきましたが、「今後の日本」のために、現在の日本政府、特に「安倍総理」について改めて考えてみたいと思います。 『イランがイラクの米軍基地2カ所にロケット弾、トランプ大統領「万事順調」 イランは8日未明、米軍が駐留するイラクのアル・アサド空軍基地に複数のロケット弾を発射した。この数時間前には、米軍の空爆によって殺害されたイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官の葬儀が行われ、軍や政府の高官が米国への報復を誓っていた。(後略)』 この外部環境の変化を受けた上で、安倍総理の分析を続けます。 2012年12月26日 安倍内閣総理大臣就任記者会見 『デフレ脱却が我々の政権に課せられた使命であります。そのデフレを脱却していく上において、まずデフレギャップを埋めていくことが重要であります。』 2019年11月20日 首相「新しい時代つくる」 『「デフレからの脱却、少子高齢化への挑戦、戦後外交の総決算、その先には憲法改正もある。チャレンジャーの気持ちで令和の新しい時代をつくる」』 12年ならば分かりますが、七年後の19年に「チャレンジャーの気持ち」「デフレ脱却を目指す」と言っているわけですから、これを異常と思わない方が異常でしょう。 もっとも、総理の目的は「政治(権力の維持)」であり、デフレ脱却といった「政策」ではありません。
浜崎洋介氏の「安倍総理「器」論」ですが、緊縮財政の転換や国土強靭化を求める声、あるいは朝日新聞的な「戦後平和主義」の声は、一向に器に入れようとしないため、今一つピンとこなかったのですが、「政治(権力の維持)」と「政策」を分けると、俄然、分かりやすくなります。
ちなみに、なぜいちいち「政治(権力の維持)」と書いているかといえば、本稿では「政治」を「政治権力の維持」と狭義に捉えているためです。
安倍総理の「器」は、三つのパターンがあるように思えます。
1.器に受け入れる 2.器に受け入れるフリをするが、実際には入れない 3.器に受け入れることを拒否する
1〜3のどれになるかは、「政治(権力の維持)」に貢献するか否かで決まります。
1として受け入れたものは、「グローバリズム(ネオリベラリズム)」「アメリカ」「財務省主導の緊縮財政」「経済界」「いわゆるリフレ派(の金融政策)」になります。
昨日のエントリー「口先の賃上げ要請ではなく、緊縮路線の転換を」において、総理が経団連に賃上げ要請をしたことについて、 「とりあえず「口で言うのは無料だから」経済界に賃上げ要請をしておく。」 と表現しましたたが、令和の政策ピボット関連の「ある方」から、 「賃金が上がらないのは産業界の努力がたりないためで、政府のせいじゃない、というネオリベの含みがある」 と指摘され、なるほどと思ったのですが、「国家の店じまい」に基づき、経済や賃金上昇の責任を民間に丸投げするという点では、確かに整合的です。 アメリカとは、厳密には「アメリカ政府」であり、あるいはアメリカの多国籍企業ですね。モンサント(バイエル)⇒アメリカ政府⇒日本政府という「指示ルート」で、グリホサートの安全基準を引き上げた(2017年12月)のが典型です。
「いわゆるリフレ派」の金融政策は、財務省の緊縮財政と「整合的」である上に、株価上昇で「グローバリズム」も喜び、さらに株価上昇⇒支持率上昇⇒政治(権力の維持)というルートがあるため、実に目的にかなっています。
次に、2の「受け入れるフリだけはする」政策ですが、デフレ脱却、国土強靭化、憲法九条改正、拉致被害者救出。これらの政策は、中野剛志先生の「世界の政治経済マトリクス」の右下、「右寄り反グローバリスト」の支持を得ることができるため、「口先」で叫ぶ。但し、「グローバリズム」「アメリカ」「緊縮財政」とは不整合であるため、絶対に推進しない。(自然災害が頻発したため、国土強靭化はわずかに進めましたが)
特に、グローバリズムとは「デフレ化政策」であるため、デフレ脱却は「絶対に」できないのです。 【世界の政治経済マトリクス】
http://mtdata.jp/data_62.html#matrix そして、3の勢力、マトリクスの左側の勢力は、いずれにせよ「反・安倍」であるため、受け入れるフリもしない。というか、受け入れた「フリ」をすると、「右寄り反グローバリスト」の支持が消滅し、「政治(権力の維持)」という目的に反することになります。
しかも、マトリクス左上の「左寄りグローバリスト」は、佐藤健志先生の仰る「平和主義」の方々で、グローバリズムや緊縮財政にむしろ賛成です。
「国家に財政の自由を許すと、戦争になる〜」 ですね。 というわけで、マトリクス上層で右と左で「戦っているフリ」をすれば、国民国家の破壊を進めても、右下の「右寄り反グローバリスト」の支持率は落ちない。
もっとも、さすがにこの種の手法は、あちこちに不整合が生じざるを得ません。その一つが、「経済界」を器に受け入れ、中国に対し「友好」を進めていることです。
世界主要国がウイグル問題や香港問題で、中国批判を強めている状況で、何と「国賓」として習近平を招く。無論、アメリカも黙ってはいない。しかも、今回のイランの米軍基地攻撃を、中国は事実上「支持」しています。
世界情勢が大きく動いているため、習近平の国賓来日は、無くなるかもしれません。とはいえ、それは別に器に受け入れていない「右寄り反グローバリスト」のためではありません。器の大部分を占拠している「アメリカ」におもねっての話になります。
あるいは、歴史認識については「平和主義」そのままですが、これはもちろん受け入れていないマトリクス左側におもねったわけではなく、アメリカがそれを望むからです。むろん、平和主義的歴史観、東京裁判史観は「右寄り反グローバリスト」の反発を買いますが、 「まあ、他の部分で受け入れるフリをしておけば、支持率は下がらんだろ」 という計算があるわけです。 いずれにせよ、確定的なのは、総理の器の中に「日本国」「日本国民」は存在しないという点です。そういう意味でも、安倍総理は「戦後日本」を象徴する器なのでしょう。 https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12565664582.html 安倍総理「器」論の真実 (後編)2020-01-10 https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12565891140.html さて、昨日、分析・解説した通り、安倍総理大臣は特定の政策実現ではなく、「政治(権力の維持)」を目標とし、諸政策や諸勢力を、
1.器に受け入れる 2.器に受け入れるフリをするが、実際には入れない 3.器に受け入れることを拒否する の三つに分類。 1の器に受け入れた政策・勢力(アメリカ、グローバリズム・ネオリベラリズム、緊縮財政、経済界、いわゆるリフレ派)が欲する「政策」については、原則、全面推進。
2の政策・勢力(デフレ脱却、国土強靭化、憲法九条改正、拉致被害者救出)については、受入れるフリをし、口先対応。
3(朝日新聞的リベラル左翼)は断固拒否。
そして、諸勢力の利害が衝突するイッシューについては、「政治(権力の維持)」という目的達成にかなうか否かにより、計算するというスタイルをとっています。
何しろ、七年間、緊縮財政路線を採りつつ「デフレ脱却!」といい続けたわけです。「デフレ脱却」が「2」に入っているのは、疑いようがありません。
そもそも、デフレ対策は「反グローバリズム」の政策になってしまうため、「1」の器に受け入れたグローバリズムと衝突してしまいます。グローバリズムとは、政策的には、 「緊縮財政、規制緩和、自由貿易のトリニティ(三位一体)」 でございますので、デフレ化政策です。デフレ化政策の推進を器に入れた以上、デフレ脱却策などまともに打てない。だからと言って「デフレ脱却しません」というと「政治(権力の維持)」に支障が出るため、口では、 「デフレ脱却!」 と、言い続けて、はや七年。
まあ、さすがに何ら「デフレ対策」を打たないわけにもいかないわけですが、ここで都合よく登場したのが、 「日銀がインフレ目標を定め、量的緩和の継続をコミットすれば、期待インフレ率が上がり、実質金利が下がり、デフレ脱却できる」 という、財政と無関係にデフレ脱却を可能とした「いわゆるリフレ派政策」です。「いわゆるリフレ派」が器に入ったのは、緊縮財政とも、グローバリズムとも衝突しないためなのです。
とはいえ、さすがに「2」の勢力を敵に回すと、「政治(権力の維持)」に支障が出る。だからこそ、昨年11月の記者会見で、総理は、 『首相「新しい時代つくる」 改憲、デフレ脱却に意欲 安倍晋三首相は20日、在職日数が第1次内閣を含めた通算で2887日に達し、憲政史上歴代1位となったことを踏まえ、憲法改正やデフレ脱却に取り組む意欲を官邸で記者団に表明した。自民党総裁任期が2年近く残っていると指摘し「デフレからの脱却、少子高齢化への挑戦、戦後外交の総決算、その先には憲法改正もある。チャレンジャーの気持ちで令和の新しい時代をつくる」と強調した。(後略)』 と、語りました。 デフレ脱却、少子高齢化への対処、戦後外交総決算、憲法改正。すべて中野剛志先生のマトリクスの右下が望む政策なのでしょうが、総理の器には入っていません。 【世界の政治経済マトリクス】
http://mtdata.jp/data_62.html#matrix とはいえ、これらの諸政策を無視し、「政治(権力の維持)」に差しさわりが出るのは困る。だから、口では言う。というか「言い続ける」のです。
特に「チャレンジャー」「新しい令和の時代に」といった、それっぽいフレーズをくっつけておけば、それで万全。
「どうせ、右下の連中は、『やっぱり安倍しかいない!』『代わりがいない』とかいって、支持を続けるだろう」 という計算が働いており、そしてそれは確かにある程度正しい。
つまりは、安倍総理は「政治(権力の維持)」を政治の目的とした場合、恐ろしく「有能な政治家」ということになります。
『衝撃! MMTはグローバリズムを肯定する! ◆主権の視点から見たMMT デフレ脱却の切り札として、わが国で注目されているMMT(現代貨幣理論)は、「貨幣」理論と銘打たれてはいるものの、「主権」の概念と密接に関わっている。 同理論の代表的な解説書『MMT 現代貨幣理論入門』(L・ランダル・レイ、東洋経済新報社)など、原著では「A PRIMER ON MACROECONOMICS FOR SOVEREIGN MONETARY SYSTEMS」(主権に支えられた貨幣システムのためのマクロ経済学入門)という副題がついていたのです。(後略)』
佐藤先生が「MMT論三部作」の最終回として、MMTとグローバリズム(というか、むしろ戦後平和主義?)が意外に相性が良いという衝撃的な寄稿を書かれていました。MMT自体は政治色はありませんが(ただの貨幣の説明だし)、人間はそうではないのです。 我々にしても、「日本国」のためにMMTを活用しようとしているわけです。これが、 「超国民国家を作り、日本も金融主権や財政主権を委譲し、日本国民が超国民国家の「新国民」となり、MMTに基づく政策を推進しよう」 などと言われた日には、猛烈に反対しますよ。
とはいえ、安倍総理の場合、「グローバリズム+MMT」は受入れ可能です。むしろ、そういう形であれば、MMTを器に入れることはできる。
それに対し、日本国民のために「MMT的政策を」とやった場合は、器に入りようがない。我々が主張する、グローバリズムや緊縮財政と「真っ向から衝突」するMMT(現代貨幣理論)的な政策が、安倍総理の「器」に入る可能性はありません。
となると、どうすればいいのか。
とりあえず、右下、つまりは「2」の「器に入れるフリをされた」諸政策を主張する勢力が「騙されていた」ことを認めることが重要になります。いわゆる、認知的不協和問題があるため、難しいのですが、それでも右下「右寄り反グローバリスト」の勢力への働きかけが、最も有効だと思います。
騙された人に「騙されていたよ」と指摘する際には、プロセスを理解し、かみ砕き、分かりやすく説明して納得してもらわなければなりません。 というわけで、二日間にかけて浜崎洋介先生の「安倍総理の「器」論」について、わたくしなりの解釈を解説しました。「次」こそ、日本国や日本国民が器に入っている総理大臣、内閣を誕生させるために。 https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12565891140.html
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