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さほど静かではない戦争のためのワシントンの沈黙の兵器
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2018年9月 7日 マスコミに載らない海外記事
2018年8月20日
F. William Engdahl
現在、ワシントンの兵器庫で、最強の大量破壊兵器は、ペンタゴンや伝統的な殺人装置にはない。それは事実上の沈黙の兵器だ。アメリカ財務省と、一部のウオール街金融集団と協調した民間の連邦準備金制度理事会の行動を通して、お金、つまりドルの世界的供給を管理するワシントンの能力だ。1971年8月、ニクソンによるドルの金兌換停止以来、何十年もの期間にわたり開発されて、現在、ドル管理は、これまでのところ、それに耐える用意が出来ているライバル諸国が、あるとしてもごくわずかな金融兵器なのだ。
十年前の2008年9月、元ウオール街銀行家のアメリカ財務長官ヘンリー・ポールソンが、中規模ウオール街投資銀行リーマン・ブラザーズを破産させ、世界ドル体制の生命維持装置を意図的に外した。あの時点で、量的緩和として知られている連邦準備制度理事会による無限の貨幣創出のおかげで、ポールソンのゴールドマン・サックスを含むウオール街の半ダースの上位銀行が、連中の証券化された奇抜な金融が生み出した大混乱から救われた。連邦準備制度理事会は、EU世界の金融構造丸ごとの崩壊を明らかにひきおこしていたはずのドル不足を回避すべく、中央銀行に未曾有の何千億ドルもの与信枠を与えるよう動いた。当時、ユーロ圏銀行の六行に自国GDPの100%を超えるドル負債があった。
ドルに満ちた世界
十年前のあの時以来、世界金融体制への安いドルの供給は未曾有の水準にまで増えた。ワシントンの国際金融協会IIFは、30の最大新興市場の家計、政府、企業と金融部門債務は今年初め国内総生産の211%に増大したと推計している。2008年末には143%だった。
ワシントンIIFの更なるデータは、借金地獄の規模が、中南米からトルコからアジアに至るより遅れた経済の至るところで爆発するものの初期段階に過ぎないことを示している。中国を除いて、自国も含めあらゆる通貨の新興市場の総債務は、2007年の15兆ドルから、2017年末の27兆ドルへとほぼ倍増した。IIFによれば、中国の債務は同時期に、6兆ドルから、36兆ドルになった。新興市場の国々にとって、アメリカ・ドル建ての債務は、2007年の2.8兆ドルから、約6.4兆ドルに増大した。今、トルコの企業、トルコのGDPの半分を超える、ほぼ3000億ドルの外貨建て債務を、大半ドルで抱えている。多くの理由から、新興市場はドルを好む。
これら新興経済が成長し続け、輸出で稼ぐドルが増える限り、債務は対処可能だ。今やその全てが変化し始めている。その変化をもたらす主体は不気味なカーライル・グループの元共同経営者ジェローム・パウエルが新理事長をつとめる世界で最も政治的な中央銀行、アメリカ連邦準備金制度理事会だ。アメリカの国内経済は十分に強いので、アメリカ・ドル金利を“正常”に戻すことが可能だと主張し、連邦準備制度理事会は世界経済に対するドル流動性で巨大な方向転換を始めた。パウエルと連邦準備制度理事会は自分たちが何をしているが重々承知している。新興市場世界全体、特に主要な、トルコ、ロシアと中国などのユーラシア経済イランで、新たな深刻な経済危機を引き起こすべく、彼らはドル流れの締めつけを強化しているのだ。
ロシア、中国、イランや他の国々による国際貿易や金融のためのアメリカ・ドル依存からの離脱するためのあらゆる取り組みにもかかわらず、ドルは、世界の中央銀行準備通貨として、全てのBIS中央銀行準備高の約63%を占め、依然確固たる地位にある。更に、日々の外貨取り引きのほぼ88%が、アメリカ・ドルだ。ほぼ全ての石油貿易、金や商品取り引きはドル建てだ。2011年のギリシャ危機以来、ユーロは準備通貨覇権で、深刻なライバルではない。現在、準備金としてのユーロのシェアは約20%だ。
2008年金融危機以来 ドルと連邦準備制度理事会の重要性は、未曾有の水準にまで拡大した。これは、2008年以来、初めて 本当のドル不足を世界が感じ出して、ようやく認められ始めたばかりで、これまでのドル債務を借り換えるため更にドルを借りるには、ずっと費用が高くなることを意味している。満期になる新興市場ドル債務のピークは、2019年で、1.3兆ドル以上が満期になる。
ここで策略だ。連邦準備制度理事会は、アメリカ連邦準備制度理事会FF金利を、今年末から来年、より積極的に上げると示唆しているだけではない。2008年危機の後に購入したアメリカ財務省証券の量も減らしており、いわゆるQT、量的引き締めだ。
QEからQTへ
2008年の後、連邦準備制度理事会は、量的緩和と呼ばれるものを始めた。連邦準備制度理事会は、危機の発端のわずか9000億ドルから、ピーク時には、4.5兆ドルものびっくりするほどの金額の債券を銀行から購入した。今、連邦準備制度理事会は、それを今後数カ月で、少なくとも三分の一に減らす計画を発表している。
QEの結果、金利がゼロに急落し、2008年金融危機の背後にいた大手銀行は連邦準備制度理事会の流動性であふれた。アメリカ国債の金利がほぼゼロだったので、この銀行流動性は、利益率がより高い世界のあらゆる場所に投資された。流動性は、シェール石油部門のジャンク・ボンドや、アメリカ住宅の新たなミニブームに流入した。Most markedly流動性のドルは、トルコ、ブラジル、アルゼンチン、インドネシア、インドなどのハイリスク新興市場に流入した。ドルは、経済が好景気だった中国に殺到した。ドルは、今年始め、アメリカ経済制裁が外国投資家に水を差すまで、ロシアにも殺到した。
今連邦準備制度理事会は、QEの逆、QT、量的引き締めを始めた。2017年末、連邦準備制度理事会は、債券保有の縮小をゆっくりと始め、金融体制中のドル流動性を減らした。2014年末、連邦準備制度理事会は既に市場から新たな債券購入を停止した。連邦準備制度理事会の債券保有減少は金利を押し上げた。この夏までは全て“徐々に、徐々に”だった。そこでアメリカ大統領は、世界中を標的にした貿易戦争攻勢を始め、中国や中南米やトルコや他の国々の深刻な不安定さを引き起こし、ロシアとイランに対し新たな経済制裁を課した。
現在、連邦準備制度理事会は、400億ドルの財務省長期債券や社債を更新せずに、満期になるにまかせており、毎月増えて、今年末、500億ドルになる。これにより、このドルが、金融体制から失われる。あっと言う間に本格的ドル不足になりつつあるものを、トランプの減税法が更に悪化させ、赤字を何千億ドルも増やし、アメリカ財務省は新たな財務省証券を発行して、資金調達しなければならない。アメリカ財務省証券の供給が増えるにつれ、財務省は、そうした証券を売るために、金利を上げることを強いられる。アメリカのより高い金利は、既に世界中からアメリカにドルを吸い戻す磁石として機能している。
世界的引き締めに加え、連邦準備制度理事会とドルの優勢による圧力で、日本銀行と欧州中央銀行は、それぞれのQE活動で、もう国債を買うつもりはないと宣言するよう強いられた。3月以来、世界は事実上、QT新時代にある。
今後、連邦準備金制度理事会が180度方針転換し、グローバルな金融連鎖危機を避けるべく、新たなQE流動性オペレーションを再開しない限り、劇的なことになりそうに見える。現時点では、それはありそうもない。現在、世界の中央銀行は、2008年以前以上に、連邦準備金制度理事会の言いなりに行動している。ヘンリー・キッシンジャーが、1970年代に言ったとされる通り“お金を支配すれば、世界を支配できる”のだ。
2019年、新たな世界的危機?
これまでの所、ドル不足の影響は漸進的だったが、それも劇的になろうとしている。G-3 中央銀行合計の貸借対照表は、前の六カ月の7030億ドル増加と比較して、2018年上半期、わずか760億ドルしか増えておらず、世界の貸出資金からほぼ5000億ドル減ったのだ。三つの主要中央銀行による資産購入が、2017年末の一カ月ほぼ1000億ドルから、今年末までにはゼロになるとブルームバーグは予測している。2019年には、年間で世界のドル流動性が1.2兆ドル減るのに等しい。
トルコ・リラは今年早々以来、アメリカ・ドルに対し、半分に下落した。つまり“安い”ドルを借りることができていたトルコの大手建設企業や他の企業は、今やその債務を返済するのに倍の金額のアメリカ・ドルを探さねばならない。債務の大半はトルコの国家債務ではなく、民間企業借金だ。トルコ企業には、推計3000億ドル、トルコの全GDPのほぼ半分の外国通貨、大半ドルの債務がある。そのドル流動性が、2008年アメリカ金融危機以来トルコ経済を成長させ続けた。トルコ経済のみならず、中国を除くパキスタンから韓国に至るアジア諸国は、2.1兆ドル借りていると推計されている。
そうした通貨に対して下落し、2008年以来のように、連邦準備制度理事会が金利を低く維持している限り、2015年、ほとんど問題はなかった。今その全てが劇的に変わりつつある。ドルは、他の全ての通貨に対して、今年7%と大幅に上がった。これに加えて、ワシントンは、貿易戦争や政治挑発や、イラン核合意からの一方的離脱や、ロシアやイランや北朝鮮やベネズエラに対する新経済制裁や、中国に対する未曾有の挑発を意図的に始めた。トランプの貿易戦争は皮肉にも、トルコや中国などの新興諸国からアメリカ市場へ、中でも特に株式市場で“安全資産への逃避”を引き起こした。
連邦準備制度理事会は、アメリカ・ドルを兵器として使用しており、前提条件は多くの点で、1997年のアジア危機当時のものと良く似ている。当時、アジア経済で最弱のタイ・バーツ 南アジア諸国の大半から、韓国、そして香港に至るまで、至る所での崩壊を引き起こすには、アメリカ・ヘッジ・ファンドによる一斉攻撃だけで十分だった。現在の引き金は、トランプと、エルドアンに対する彼の好戦的なツイートだ。
連邦準備制度理事会の明らかなドル引き締め戦略という文脈でのアメリカのトランプ貿易戦争、政治・経済制裁や新たな税法が、ドル戦争宣戦布告をする必要なしに、世界の主要政敵連中に対して戦争をしかける背景になっている。巨大な中国経済に対する一連の貿易挑発や、トルコ政府に対する政治的挑発や、ロシアに対する根拠のない新たな経済制裁だけで十分で、パリからミラノからフランクフルトからニューヨークに至る銀行や、ハイリスクの新興市場にドル融資をしているあらゆる連中が大急ぎで逃げ出し始めた。パニックに近い状態での売りの結果の、リラ崩壊、イラン通貨危機、ロシア・ルーブル下落。中国人民元の下落の可能性とともに、全て世界的ドル不足の始まりを反映している。
11月4日、もしワシントンが、イランのあらゆる石油輸出停止に成功すれば、世界の(ドル)石油価格は100ドル以上に急騰し、世界のドル不足進展を劇的に推進する。これは別の手段による戦争だ。連邦準備制度理事会のドル戦略は、今やさほど静かとは言えない戦争の“沈黙の兵器”として昨日している。もしこれが継続すれば、中国新シルク・ロード周辺のユーラシア諸国の自立強化と、ロシア-中国-イランによるドル体制の代替手段を挫折させかねない。主要世界準備通貨としてのドルの役割と、それを支配する連邦準備金制度理事会の能力は、大量破壊兵器であり、アメリカ超大国による支配の戦略的大黒柱なのだ。ユーラシア諸国や、ECBでさえ、効果的に対処する用意ができているのだろうか?
F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書、オンライン誌“New Eastern Outlook”に独占寄稿。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2018/08/20/washington-s-silent-weapon-for-not-so-quiet-wars/
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