社説】被告席に着くハイテク大手 説明責任を果たさないインターネット大手に政府は介入する フェイクニュースや海外政府の介入についての質問を受けるため、上院情報委員会の公聴会に招致されたフェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOとツイッターのジャック・ドーシーCEO(5日、ワシントン) フェイクニュースや海外政府の介入についての質問を受けるため、上院情報委員会の公聴会に招致されたフェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOとツイッターのジャック・ドーシーCEO(5日、ワシントン) PHOTO: JOSE LUIS MAGANA/ASSOCIATED PRESS 2018 年 9 月 6 日 17:10 JST 更新 ツイッターとフェイスブックの経営幹部は5日、ソーシャルメディアやネット検索エンジンの政治的偏向に関する議論が活発化する中で、議会公聴会の厳しい質問にさらされた。ハイテク大手は保守派の意見を意図的に抑圧してはいないと主張しており、それは恐らく真実だろう。しかし、ハイテク大手のこの問題への関心の薄さは、利用者離れや政府の介入を招く恐れがある。 ハイテク技術の基盤を担う企業の反保守的偏向に対する苦情は、以前から増加傾向にあった。アップル、フェイスブック、グーグルが、疑わしい情報を流す右派の人物アレックス・ジョーンズ氏のウェブサイト「Infowars(インフォウォーズ)」を、「ヘイトスピーチ」に当たるとして8月に閲覧禁止としたことは、こうした企業が中立的だとする主張に対する疑いを増大させた。証拠は乏しいものの、各社の決定は同調して行われたように見えるし、正当化の理由もあいまいだった。 トランプ大統領は、いつものようにツイッターで騒ぎ立てた。先週のツイートでは「やつらは不正操作を行った」と指摘。「グーグルとその他の企業は、保守派の声を抑圧し、良い情報やニュースを隠している。やつらはわれわれが見られるものと、見られないものをコントロールしている。これは極めて深刻な状況であり、是正されるだろう!」と語った。トランプ氏はその後ホワイトハウスで、ハイテク企業は「極めて厄介な領域に踏み込んでいる」「慎重になるべきだ」と警告した。 ラリー・クドロー国家経済会議(NEC)委員長は、政府がハイテク大手の調査を開始すると発言。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は5日、ソーシャルメディア大手各社が特定の見解を「意図的に抑え込んでいる」かどうかについて、司法省が調査すると報じた。 *** 保守派のラジオ司会者のデニス・プレガー氏が立ち上げた団体「PragerU(プレガー大学)」による「ブッシュはイラクについてうそをついたか」や「アメリカは人種差別的か」といった教育ビデオを例にとってみよう。これらは、グーグルのユーチューブ部門で規制を受けているが、検閲された50前後のビデオのどれも、グーグルの社会ガイドラインに反する暴力的でわいせつで憎悪をあおるような内容を含んでいなかった。 ユーチューブのアルゴリズムや、ユーザーコミュニティーは、特定のビデオを不快なものとして報告することができる。しかし、グーグルのガイドラインによれば、こうしたビデオを排除するには、内部での検討が必要だ。つまり、表向きはグーグル従業員が合意することが求められている。PragerUは、グーグルを提訴。訴状の中で、「(ユーチューブは)なぜビデオを規制し、流通を阻害したのかについて、説明を拒否した。その理由は、規則に従わない利用者(規則の抜け穴を悪用する利用者)を利する可能性があるため、検討過程に関するより詳しい情報を開示することは通常できないというものだった」と指摘した。 保守系のコメンテーター、ダグ・ウィード氏は最近、保守系ウェブサイト「ザ・フェデラリスト」で、ケーブルテレビチャンネル「フォックス・ビジネス」でのインタビューを宣伝するために広告枠を購入しようとしたところ、グーグルに断られたと訴えた。同氏によると、グーグルの従業員から、画面の下に流れる字幕(トランプ氏がモラー特別検察官による捜査を「魔女狩り」と呼ぶのを引用した)がヘイトスピーチだと告げられたという。 グーグルの従業員がニュースや意見とヘイトスピーチの違いを区別できないのだとしたら、同社は深刻な問題を抱えている。インフォウォーズは禁じられるに値するものだったかもしれないが、ハイテク企業による不明確な弁明は、多くの保守派を動揺させている。それはジョーンズ氏を軽蔑するが、次は自分が標的かもしれないと懸念している人々だ。このため、ジョーンズ氏は「言論の自由のための殉教者」のように装うことができている。実際はそうでないにもかかわらずだ。 一部の保守派は、グーグルのニュースや検索サイトで自分たちのコンテンツが差別されているとも述べている。グーグルは、同社のアルゴリズムに政治的なバイアスはなく、数十の可変要素が組み込まれていると回答しており、その可変要素の一部は位置情報に基づいているため、時間単位で変わる可能性があると指摘している。このため、アルゴリズムが差別をしていることを証明するのは難しいだろう。個々のユーザーの体験はそれぞれ違うからだ。 大半の差別はまた、偶発的である公算が大きい。例えば、クリック数やリンク数が多いサイトを優遇すると、コンテンツが無料のリベラルなサイトに行き着く可能性がある。だが、これはより大きな問題を浮き彫りにする。すなわち、ソーシャルメディアと検索プラットフォームによるコンテンツについての編集判断は不透明で、恣意(しい)的なことがよくあるにもかかわらず、そうしたコンテンツが公の議論に多大な影響を及ぼしているという問題だ。 グーグルは全ての検索の90%をコントロールしている。同社はバイアスについて非難されると、自動化され不透明なアルゴリズムの後ろに隠れる。「見て、お母さん。ほら、触ってないよ」と言わんばかりに。その瞬間にも、同社の従業員はユーザーが見るものと見ないものに対し、大きな決定力をふるっている。PragerUの訴状によると、人間の審査員は自由裁量権を享受して、報告のあったコンテンツを遮断しているように見える。 フェイスブックとグーグルはまた、デジタル広告収入の60%を牛耳っており、市場での寡占状態を利用して競合相手を追いやってきた。フェイスブックは広告に政治的というタグを付けることによって、パブリッシャーがニュースストリームでコンテンツを宣伝できないようにした。 *** 2012年、連邦取引委員会(FTC)事務局はリポートを発表し、グーグルを反競争的行為で提訴するよう勧告した。オバマ大統領(当時)が指名したジョン・リーボウィッツ委員長率いるFTCは提訴に反対の姿勢を示したが、グーグルの競争相手は略奪的慣行に不平不満を言い続けた。 一方、政治的左翼と右翼に対する怒りは現在合流しつつあり、政府の行動を求める声が高まっている。ミズーリ州のジョシュ・ホーリー司法長官は昨年、グーグルのビジネス慣行に対する調査を開始したし、他の州も追随するかもしれない。民主党のマーク・ウォーナー上院議員(バージニア州)は、通信品位法第230条に基づくユーザー作成コンテンツのための法的保護の一部を、プラットフォーム運営会社から剝奪するよう提案した。テッド・クルーズ上院議員は、230条の免責規定の言わんとするところは「(プラットフォームは)中立的な公共の討論場であるべきだ」ということだと述べた。 トランプ政権のFTCは、ハイテク大手の調査を再開すると述べてきた。FTCはこうした独占企業を規制(恐らくコンテンツレビューを監督する政府監視人を指名)によって取り締まる可能性がある。民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員が大統領に当選しないように気を付けるべきだ。 次いで民間によって訴訟が起こされる脅威が存在する。グーグルが言論の自由の権利に違反しているとのPragerUの提訴は裁判所で勝利する公算はほとんどない。なぜならグーグルは政府ではなく、法律に基づいて一部のコンテンツを排除するという選択肢もあるからだ。しかしグーグルが自身の規約条件に違反することで不公正なビジネス行為をしたとの主張は、(議論として)もっと強いものだ。 政府がこれに対する答えを持っていないだろうとする懐疑論者にわれわれを数えてもらっても構わないし、われわれは「公平原則」(テレビとラジオ放送の公平性担保のため連邦通信委員会が1949年に制定し、1987年に廃止された)のインターネット版を必要としていない。しかし歴史が示しているのは、説明責任を果たさない企業を取り締まるよう、米国人が政治家に最終的には求めるということだ。ハイテク大手の支配者たちは、自分たちが政治的左翼の検閲部門であるとの印象を与えた場合、その代償を支払うことになる。 関連記事 サンドバーグ氏の新たな挑戦、フェイスブック「浄化」なるか 「開拓時代末期」のSNS、規制がもたらすコストは SNS大手幹部が議会証言、米司法省は政治偏向巡り調査へ ツイッターCEO、アカウント停止判断に介入か トランプ氏、グーグルを再度批判も規制には消極的
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