トランプ氏の支持率安定、元側近裁判の打撃見えず トランプ氏の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告(21日): CRAIG RUTTLE/ASSOCIATED PRESS By Janet Hook 2018 年 8 月 27 日 10:25 JST 更新 ドナルド・トランプ米大統領の元側近が裁判で有罪評決を受けたり、有罪を認めたりしたが、同氏の支持率は安定を保っている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)とNBCテレビの最新の共同世論調査で明らかになった。 2016年の大統領選でトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート被告は21日、詐欺罪などで有罪評決を受けた。またトランプ氏の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告も同日、脱税と選挙資金法違反について有罪を認めた。 その直後に実施された世論調査では、登録有権者間のトランプ氏の支持率は44%となった。2つの裁判に関する新たな動きが報じられる前に実施された前回調査の46%からは小幅な低下だが、この変化は誤差の範囲内で統計的に有意性はない。 民主党系の世論調査専門家ピーター・ハート氏は、元側近の裁判が中間選挙に向けて重要な分岐点になると期待していた反トランプ派にとって、今回の調査結果は期待外れだったと解説する。ハート氏は、共和党系の世論調査専門家ビル・マッキンターフ氏とともに、この世論調査の実施に当たった。 世論調査では、トランプ氏の支持基盤の忠誠心が堅固であることがあらためて示された格好だ。同氏の熱烈な支持者は、トランプ大統領就任以降のさまざまな議論にはほとんど動揺を見せずにきている。マッキンターフ氏は「(トランプ氏をめぐっては)たくさんの出来事が起きているが、支持率への大きな影響はない」と語る。 トランプ氏の支持率安定、元側近裁判の打撃見えず 調査は18−22日に900人を対象に行われ、続いて22―25日に600人を対象に実施された。 今回の調査では、米大統領選へのロシア介入疑惑に関する捜査について、トランプ氏が正直かつ誠実に対応しているかとの質問には、「イエス」が38%で、「ノー」が56%だった。賛否はほぼ支持政党に沿って分かれたが、共和党支持層はそれほど確信を持って「イエス」とは思っていない。民主党支持層では、トランプ氏が「正直ではないと強く思っている」のは81%だった。これに対し共和党支持層では、「正直だと強く思っている」のは46%で、「どちらかといえば正直」が30%だった。 また経済運営の面では、景気好転を受けて共和党に対する信頼感の方が高い。経済運営はどちらの党が優れているかとの質問では、共和党が43%、民主党が29%だった。7月の前回調査に比べ、その差は2倍に広がった。 それでも、中間選挙後どちらの党が議会の多数派を占めるべきかとの質問に対しては、民主党という答えが50%、共和党が42%だった。ここ数カ月間の調査では、民主党は一貫して共和党に同程度の差を付けてきている。 WSJとNBCの世論調査に従事している別の民主党系専門家フレッド・ヤング氏は、中間選挙の「未知要因」として大統領弾劾を挙げる。「民主党が弾劾の話を強く出し過ぎると、民主党が議会多数派の地位を奪取することへの疑念を引き起こし、共和党の対抗心をあおる可能性がある」と指摘する。 関連記事 トランプ氏の腹心が反旗、その背景に何が? トランプ大統領の最も暗い1日 【社説】大統領の弾劾に口つぐむ民主党 社説】大統領の弾劾に口つぐむ民主党 2019年に向けた最大テーマ、選挙前にあえて語らず 外国投資リスク審査近代化法案について議員らと意見交換するトランプ米大統領(8月23日) 外国投資リスク審査近代化法案について議員らと意見交換するトランプ米大統領(8月23日) PHOTO: JIM LO SCALZO/EPA-EFE/REX/SHUTTE/EPA/SHUTTERSTOCK 2018 年 8 月 24 日 16:20 JST
しー、お静かに。他に何をするにせよ、「I」から始まる言葉には11月まで触れないでほしい――。これはドナルド・トランプ米大統領の元個人弁護士マイケル・コーエン被告が選挙資金法に違反した罪を認め、トランプ氏の関与を示唆したことを受け、民主党指導部や同党に好意的なメディアの多くが国民に発したメッセージだ。「弾劾(impeachment)」という言葉は、今から11月の中間選挙当日まで禁句扱いとなった。 「これに関する情報が出てくるかどうか、いつ出てくるのかを注視している」。元下院議長で、恐らく将来その職に再び就くと思われる民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務はこう話す。「今後何か他の材料が出てこない限り、われわれの優先的な課題とはならない」 コーエン被告の罪は重大だが、大統領弾劾の議論は「時期尚早」だと民主党の上院院内幹事を務めるディック・ダービン議員も言う。「より多くの情報が出てくる必要がある」ため、「まだそうした言葉を使う段階ではない」 ワシントン・ポストのコラムニスト、E・J・ディオン氏は「トランプ氏は生き延びられるか?」と遠慮がちな見出しをつけ(読者には同氏の答えが分かっているだろうが)、民主党に次のように助言した。「トランプ氏の弾劾を支持する意見が突如、非常に強まった。だからといって弾劾を2018年の選挙テーマにするのは賢明でない」 こうした誤った見方を信じる人は、トランプ氏はストーミー・ダニエルズ(アダルト映画女優ステファニー・クリフォードさんの芸名)といちゃついたりしなかったと信じているのだろう。 政治的な現実はこうだ。民主党が11月の選挙で下院の過半数を獲得すれば、ほぼ確実にトランプ氏の弾劾手続きに入るだろう。民主党のこれまでの発言や既に動き出したプロセスからみて、民主党には他に取るべき道があまりない。ただ、選挙前の今はそれを認めたくないだけだ。4年の任期を見越して大統領を選んだつもりでいる大勢の「嘆かわしい人々」(トランプ氏の支持者)や無党派層の人々を刺激しないようにとの配慮だ。 *** 民主党が下院(定数435)で228議席を獲得し、過半数を奪還するのが妥当な推測だと思われる。10議席差は多くないが安定的多数といえる水準だ。それは民主党が2年間主張し続けたことによってもたらされた結果となる。すなわち、トランプ氏はロシア政府と共謀して2016年の大統領選をかすめ取った正当性を欠く大統領であり、大統領の地位を私利私欲の手段に利用しており、米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー前長官を解任したことは司法妨害にあたり、コーエン氏が有罪を認めた以上、もはや選挙資金不正の「起訴されていない共謀者」だという主張だ。 民主党はついにこの人類への脅威に対して何かできる権限を手にするのだ。それなのに突然「いや、気にするな」と言うのか。 恐らく民主党はゆっくりと始め、まずは捜査手続きを活性化させるだろう。召喚状や公聴会、それら全てがメディアを通じて最大限に伝えられる。コーエン被告が主要な証人となり、司法取引で名前の挙がった他の人々も証言するはずだ。中でもトランプ氏の納税申告書は大いに注目を集めるだろう。 このように展開し始めたら、民主党指導部が止めようとしてもそれを止めるのは難しい。ロバート・モラー特別検察官が上司に報告書を書き(その内容が漏れるのは必至だ)、自分には現職大統領を起訴することはできないが、司法妨害または怪しい資金調達だと思われる証拠があると告げたら、なおさら止められなくなる。証拠すら問題にならないかもしれない。というのも弾劾は政治的手続きであり、何が(弾劾に値する)「重大な罪および非行」かを定義するのは議会だからだ。 一方で、2020年の大統領選に向けた民主党候補指名レースが始まり、多数の候補者がリベラル派有権者の心をつかもうと躍起になる。そこで競われるのは、誰が最も大きな声で弾劾を主張するかということだ。テリー・マコーリフ前バージニア州知事は大統領選出馬に前向きだが、ビル・クリントン元大統領を擁護し、弾劾に反対した同氏でさえ、トランプ氏の弾劾は「わが党がぜひ検討すべきことだ」と述べた。 怒りというよりむしろ悲しい気持ちで、冷静な判断を求める声が高まりそうだ。だが政治的な機運には誰も手をつけられない。民主党の基盤であるリベラルな支持者が求めるのは、同党が弾劾採決まで持ち込むと期待できることだろう。メディアの支配層もそうだ。彼らはトランプ氏が正当な手段では自分たちのヒロインを打ち負かすことができなかったという確証がほしいのだ。 政治的に賢明なシナリオは2020年まで待つことかもしれない。国民がトランプ疲れを起こしたら、その波に乗るという作戦だ。だがリベラル派が現大統領にどれほど政治的な屈辱や法的な罰を与えたがっているかを過小評価すべきではない。われわれの話を信じないなら、ツイッターの投稿やコラムを読むといい。 大統領の弾劾が2019年〜20年にどのような政治的展開を見せるかは分からない。ロシア共謀疑惑と何の関係もない行為を根拠にした弾劾は、多くの国民をいら立たせるだろう。だが、ニューヨーク・タイムズは今週、「そんなことは問題ではない」と言い放った。現時点では上院で有罪と認定される見込みは低そうだ。だが共和党をトランプ氏の行動の擁護に回らせることができるのだから、民主党は気にしないかもしれない。 中間選挙の年である今年、肝要な点は、民主党がトランプ氏の弾劾は自分たちの政策課題の1つではないと語っても、それを決してうのみにすべきではないことだ。それは同党の唯一の課題なのだから。 関連記事 トランプ氏の腹心が反旗、その背景に何が?(前編) トランプ氏の腹心が反旗、その背景に何が?(後編) 「口止め料」情報提供で訴追免除、タブロイド紙CEO トランプ氏、また司法長官を攻撃 司法取引巡り
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