#中国留学生が減ると大学経営への影響は大きそうだ
コラム2018年8月19日 / 08:00 / 4時間前更新 コラム:米国で学費重視の大学選び、金融危機時より慎重に Gail MarksJarvis 3 分で読む [シカゴ 15日 ロイター] - 米フロリダ州に住むデニス・ノルトさんの継息子、ジェイコブさんは小学4年生のころから、自分の部屋の壁に名門マサチューセッツ工科大学(MIT)のポスターを貼り、いつの日か入学することを夢見ていた。 しかし現在18歳になり、大学に出願中のジェイコブさんに、ノルトさんはばつの悪いメッセージを伝えた。「ママが天国からやってきて十分な奨学金をもらえるなら、MITに行ける」と。「そうでもしない限り、州内の安くて手ごろな良い大学の方が理にかなっている」 フロリダ州ウインターパーク在住のファイナンシャルプランナーであるノルトさんは、MITのような学費の高い私立大学とフロリダの州立大学を比較。その結果、州立大にかかる学費や生活費などの合計額は、そのようなエリート大学の3分の1にも満たなかった。 MITの試算によれば、次年度にかかる全費用は7万0240ドル(約780万円)。一方、フロリダの州立大では2万ドル未満だ。 大学の高額な費用がメディアに大きく取り上げられ、また、金融危機の教訓もあり、そうした高額な費用を支払える人でさえ「ますます慎重になっている」とノルトさんは言う。 ノルトさんの抱いた印象は、米教育ローン大手サリー・メイが今週発表した調査と一致する。力強い米国経済にもかかわらず、前回のリセッション(景気後退)に苦しんでいたときよりも、今の方がはるかに大学費用の支払いに慎重であることが、生徒や親1907人を対象に実施した同調査から明らかとなった。 回答者の約90%が大学は良い投資と答えてはいるが、だからといって、費用がいくらかかっても入学することを意味するわけではない。 親の78%が大学教育の費用を重視していると回答。また、高校生の70%は2017年度の入学に出願する以前に、高すぎる大学は除外したと答えている。費用の高い大学は即座に避けると答えた生徒が42%に達していた2008年と比べると、大きな変化だ。 親も、より厳しい態度で臨んでいる。46%が最初から高額な大学は排除すると答えている。2008年は39%だった。 高額な大学を排除した後、金銭的援助の申し出が届いてからも精査は続く。2017年、奨学金や助成金を得ても十分ではなかった場合、生徒の69%は大学入学を辞退していた。2008年はわずか38%だった。 親も、49%が援助の申し出を吟味してから大学に「ノー」と言うと答えており、一段と厳しい目を光らせている。2008年、そう答えた親は30%しかいなかった。 一方、高額な大学に「ノー」と言いたくない親もいると、ファイナンシャルプランナーのショーン・ムーアさんは言う。彼はフロリダ州ボカラトンで「スマート・カレッジ・ファンディング」の会長を務めている。「子どもが一生懸命勉強したのに、そうした大学に行かせられないなんてどうしたらできるのか、と親は言う」 とはいえ、率直に「リターンは何かと尋ねてくる」親も増えているとムーアさんは話す。 そのような考え方の変化の背景には、大学入学者数の減少や、幅広い教養を学ぶ小規模なリベラルアーツ・カレッジの廃校がある。こうした傾向は、人口動態の変化などの要因のほか、大学教育の費用と価値に対する懸念を映し出している。一部の大学は、リベラルアーツ課程を減らし、キャリア志向を強める学生のためにエンジニアリングやビジネス課程を加えている。 <学費無料や減額も> 大学側は、費用の減額や免除によってコストに敏感な受験者に応えている。 エリッサ・シメールさん(17)は今秋、イリノイ州シカゴ近郊にあるコミュニティーカレッジのハーパー大学に入学する。新しいプログラムのもと、2年制の同大学で学ぶ学費は無料だ。その後、学士号取得のため公立大学に編入する計画だ。 「大学に進学するために地元を離れた友人たちは、結局は戻ってきて、大学費用の借金がストレスになっている」と彼女は言う。「おカネの心配をする必要がないので、良い選択だと母は私に言った」 コミュニティーカレッジは通常、親が大卒でない高校生や独立した既卒生に訴求力がある。両親が大卒のシメールさんは、キャリア志向が強く、意欲的な生徒だ。 ファイナンシャルプランナーは、経済的に苦しい親には子どもをコミュニティーカレッジからスタートさせるようアドバイスすることが多い。イリノイ州ローリングメドウズのブレンダ・ノックスさんもその1人だ。「富裕層であっても、大学費用の3分の1だけでも節約できたらと願っている」と語る。 その一方で、慎重な消費者である必要性について、ファイナンシャルプランナーは説いている。米コミュニティーカレッジ協会が最近発表した報告書によると、非常に多くのコミュニティーカレッジが厳しさに欠け、4年制大学に編入する際に単位が認められず、結果としてより多くの費用がかかり、学生の時間も無駄に費やされているという。 前出のサリー・メイの調査では、家族の半数が予想通りの経験を得ていると回答した一方、残りの半数はそうではないと答えた。後者は、教育の質や諸費用、交通費、住宅費、生活費にショックを受けている。1年目を終えると、予期せぬ授業料の値上げや奨学金の削減に見舞われることも多い。
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