#経済、政治、そして安全保障へ、米国の衰退と世界からの撤退は続く日本の未来もわかるというものだ コラム2018年7月10日 / 08:00 / 1時間前更新 コラム:変わる未来の戦争、米軍が失いつつある技術的優位性 Peter Apps 3 分で読む
[5日 ロイター] - 米軍の兵士や水兵、パイロットたちは、いざ戦争となれば、自分たちが目を見張るような技術的優位に立っていることにずっと慣れ親しんできた。しかし最近、それは急速に失われつつある。 米軍司令官は現在、南シナ海や東欧、ひいては朝鮮半島において、圧倒的な火力と最先端テクノロジーを展開する能力のある敵との戦争が起きる可能性を検証している。とりわけ、ロシアと中国との対立は予想よりも急速にエスカレートしており、武力衝突の初期段階で中ロが米軍をしのぐ戦力を自国周辺で展開する可能性は、いまや現実のものとなっている。 米国防総省は、中国とロシアが対艦・対空ミサイルシステムを急速に拡散していることにますます懸念を強めており、米軍事立案者を不慣れな立場に追いやっている。米軍が圧倒的な優位性なく戦闘に突入したのは、1943年に北アフリカでナチスドイツ軍と戦った時が最後だ。 一方で、ハイブリッド戦や情報戦が国際紛争のルールを再構築しつつあるが、西側はまだその変化に本格的に対応できていない。そして、新たなテクノロジーがそのルールを常により複雑にしている。 米国防総省は2014年、「第3の相殺戦略」を発表し、軍事的優位を保つため、自国の優れたテクノロジーを利用する可能性を示唆した。 だが、サイバー戦やドローン、人工知能(AI)といった分野における新たな進歩は、米国の敵にとっても同様にプラスとなる。彼らの方が新技術を実戦で試すことに前向きであるからなおさらだ。 ほぼ毎週のように新たな展開がある。 ドイツ当局者は今月、同国の送電網に対する一連のサイバー攻撃を行ったとしてロシアを非難。米国も同様の主張をしていた。一方、CNNが軍関係筋の話として伝えたところによると、領有権問題の渦中にある東シナ海の海域上空を飛行する米航空機を狙った一連のレーザー照射は、中国が背後にいるとみられているという。こうした出来事が続発しているが、ロシアも中国もそれぞれ関与を否定している。 最近まで米国とそのもっとも緊密な同盟諸国だけが保有していたテクノロジーが、いまやその範ちゅうを超えて拡散している。 南オセチア戦争でグルジアと戦った2008年当時、ロシアには有効な軍用無人機プログラムは存在しなかったが、今ではシリアやウクライナで日常的に使用している。 中国は、ハッキングか盗んで手に入れたとみられる設計図を使って、独自にステルス戦闘機や米空母に狙いを定めた弾道ミサイルなど自前の新システムを開発している。 そのような兵器が米軍に対して実戦でどの程度うまく機能するかは言いがたい。しかし明らかなのは、ほとんどの戦闘において、米軍がある特定の問題に直面することだ。 米軍はいかなる他国軍よりも強力であり続けているが、同時に世界中に展開している。一方、ロシアや中国、あるいはイランや北朝鮮のようなより小さな国など米敵対国は、自国の「裏庭」での戦闘にほぼ全軍事力を注いでいる。 戦争となれば、周辺で展開する米軍や同盟国軍は大いに不利な立場に置かれる。軍事力において、完全にかなわない可能性すら十分にある。 今後起きる飛躍的進歩によって、状況はさらに悪化するかもしれない。 軍事専門家は、大国間のAI軍拡競争について言及することが多くなっている。AIは今世紀において、第2次世界大戦中の核兵器競争に匹敵するほど重要になる可能性がある。とりわけグーグルなどシリコンバレーの一部大手企業が国防総省に協力したがらないことから、この競争で米国が後塵を拝するかもしれないと、公然と懸念を示す米当局者もいる。 ロンドンで今月開かれた主要軍事会議の場で、ある高官は、戦場で敵のシステムを機能不全にさせるため、最初に電磁パルス兵器を使う国が、戦争の仕方を一変させると語った。この競争でも、米国が勝つとは到底言いがたい。 英国のような大半の主要国は、空母やF35戦闘機などの主な兵器プラットフォームへの最近の投資により、まだ優位に立っていると考えている。だが専門家は、ロボット車両のような次世代テクノロジーですら、高度な技術力を持つ敵軍に機能不全にされてしまう恐れがあり、大規模な戦闘で実用性が発揮できないのではないかと懸念している。 西側の専門家がさらに危惧しているのは、戦闘開始前に重要な国家インフラがサイバー攻撃を受け、戦闘初日に基幹システムが「オフ」にされてしまう可能性だ。 不確実性の高さ自体が、戦闘を起こりやすくするかもしれない。 敵の能力と思惑を現実的に評価することに苦慮する各国が、戦術的に優位に立とうと先制攻撃に出る可能性が高まる。米国とその仮想敵はこうしたエスカレートする傾向を無視するわけにはいかない。少なくともそれらを話し合うための何らかの共通項を見いださなければ、悲惨な結果を招く恐れがある。 *筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。 *本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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