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トランプ経済「絶好調」はただの幻想? 見えてきた失速の要因
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/07/post-10569.php
2018年7月10日(火)17時40分 ビル・サポリト ニューズウィーク
「建国以来最高の好景気」を自画自賛し続けるトランプだが…… PHOTO ILLUSTRATION BY CJ BURTON. SOURCE PHOTO: C.J. BURTONーCORBIS/GETTY IMAGES, WIN MCNAMEE/GETTY IMAGES (TRUMP'S FACE)
<政権発足当初は好調な滑り出しに見えたが、移民締め出しや貿易戦争などのアメリカ・ファースト路線が逆効果を生み始めた>
昨年1月、ドナルド・トランプが大統領に就任したとき、アメリカ経済は空前の好景気を謳歌し、大不況のどん底から目を見張る回復を遂げつつあった。
それでも物足りなく感じたトランプは、アメリカ経済をフル充電すると請け合った。与党の共和党が総額1.5兆ドルの景気刺激策を成立させると、約束を果たすことは簡単に見えた。
トランプに経済政策を助言していたローレンス・カドロー(現在はホワイトハウスの国家経済会議委員長)は、「見通せる限りの未来にわたり3〜4%の経済成長」が見込めると、昨年12月に語った。「アメリカ経済は絶好調だ。空前の好景気だ」と、トランプも今年春にツイッターに投稿している。「今後、もっとよくなる」
しかし、風向きが変わってきた。失業率とインフレ率は抑えられていて、今年第2四半期のGDP成長率も「3〜4%」を超す可能性があるが、一部のエコノミストはバラ色の予測を修正し始めている。原因は、トランプその人だ。「アメリカ・ファースト」の政策が逆効果になりつつあるように見える。
移民政策はその一例だ。アメリカがGDPを成長させるには、人口増が欠かせない。GDPの70%近くを占めている個人消費は、消費者の人口が多いほど大きくなるからだ。
ところが、アメリカの人口増加率は年間1%に満たない。人口の多いベビーブーム世代は仕事の一線を退き、昔ほど活発に消費しなくなっている。しかも、この世代は次第に世を去り始める。アメリカが移民を締め出せば、消費が拡大せず、雇用もあまり生まれなくなるのだ。
移民の締め出しは、消費需要だけでなく、労働力の供給にも悪影響を及ぼす。多くのリゾート地は、夏の観光シーズンを前に外国人労働者の確保に苦労している。トランプ政権下で、ビザの発給が遅れたり、拒否されたりするケースが多いためだ。
現政権の移民政策の影響は、住宅市場にも及んでいる。建設業界の人手不足が深刻化し、住宅価格が上昇しているのだ。カナダ産の針葉樹材への関税が導入されたことも、住宅価格を上昇させる一因になっている。
■「目に見えない景気減速」
大型減税も、経済成長を牽引する効果を発揮できていない。減税の恩恵に浴したのは、主として企業と富裕層だった。企業は減税で浮いた金を、生産活動への投資や賃上げではなく、自社株買いに回した。自社株買いは株価を上昇させ、株主に恩恵を与えるが、株式投資をしている人は中流層と上流層が中心だ。
それに対し、庶民の実質所得が増えれば景気浮揚効果が見込める(庶民は所得の多くを消費に回す)。しかし、現状はそうなっていない。賃金の上昇率が物価上昇率を大きくは上回っていないのである。リベラル系シンクタンクの経済政策研究所によれば、労働者が経済成長の恩恵に浴するためには、年3.5〜4%の賃金上昇が必要だが、実際の賃金上昇率はこの水準に達していない。
景気循環調査研究所のラクシュマン・アチュサンCOOによると、賃金上昇と消費拡大のペースが落ち始めている。「目に見えない景気減速がもう始まっている」と、アチュサンはCNBCテレビの番組で指摘した。
貿易赤字解消にこだわるトランプの姿勢も、経済成長を脅かす要因の1つだ。カナダ、中国、メキシコ、ヨーロッパとの貿易戦争が長引く可能性が現実味を帯びてきたことで、アメリカの産業界は不安に駆られ始めた。
貿易戦争に負けることは許されないと、トランプは考えている。5660億ドルもの貿易赤字を抱えるアメリカが貿易戦争に敗れつつあるように見えているのだろう。
大半のエコノミストの考えは違う。全米納税者連盟が5月に発表した大統領宛ての書簡は、貿易戦争に突き進むことの危険性に警鐘を鳴らしている。この書簡には、ノーベル経済学賞受賞者14人を含む1100人以上のエコノミストが賛同した。
鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税が課されれば、メーカーがコスト増を価格に転嫁する結果として、消費者の負担が総額75億ドル増えると、中道右派系シンクタンクのアメリカン・アクション・フォーラム(AAF)は指摘している。
■貿易戦争が雇用を減らす
この関税によりアメリカの鉄鋼関連の労働者は恩恵に浴するが、国内全体の雇用は減る。コンサルティング会社トレード・パートナーシップの分析によれば、鉄鋼関税で失われる雇用は、差し引きで40万人を超す。鉄鋼関連の職が1人増えるごとに、16人の職が失われる計算だ。
自動車など、鉄鋼とアルミニウムを原料に用いる製品の価格が上昇すれば、需要は落ち込む。そうすると、サービス業の業績低下、製造業の雇用減少など、さまざまな負の連鎖反応が生まれる。
サプライチェーンと戦略的パートナーシップが国境を超える時代のビジネスは、国単位での勝ちか負けかという単純なものではなくなっている。
アメリカの金融大手ゴールドマン・サックスは昨年11月、中国の政府系ファンド「中国投資有限責任公司(CIC)」と手を組んで、50億ドル規模のファンドを立ち上げることを明らかにした。目的は、中国市場に製品を輸出するようなアメリカ企業に投資することだ。
「米国内で(輸出用の)製品が製造されれば、アメリカの雇用が増える」と、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOは言う。だが、トランプ政権が貿易戦争を過熱させれば、こうしたアメリカ国内への投資も脅かされてしまう。
ほかの国に関税を課せば、相手国による対抗措置が避けられない。カナダは総額128億ドル相当、メキシコは総額30億ドル相当のアメリカからの輸入品に関税を課すことを計画している。これにより打撃を被るのは、トランプの主要な支持基盤である農業と製造業だ。
16年の米大統領選でトランプがペンシルベニア州、オハイオ州、ミシガン州といった「ラストベルト地帯」で圧勝した一因は、アメリカの製造業を復活させると訴えたからだった。トランプが他国に仕掛ける貿易戦争は、これらの地域を苦しめる結果を招く。
それでもトランプは、歴史家や経済学者、そしてもしかすると自らの支持者たちが抱いている不安もどこ吹く風。相変わらず、「建国以来最高の好景気」を自画自賛し続けている。
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