2018年7月1日(日) 朝鮮戦争終結で在沖米海兵隊の駐留根拠消滅 「主要任務は朝鮮有事」 辺野古新基地が不要に 安倍政権が強行している沖縄県名護市辺野古の米海兵隊新基地建設の出発点となった1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意をめぐり、米側は在沖縄海兵隊の主要任務を「朝鮮半島有事」との認識を示していました。4月27日の南北首脳会談や6月12日の米朝首脳会談を踏まえ、53年以降は休戦状態にある朝鮮戦争が正式に終結すれば、新基地建設の根拠は崩壊します。 95年に沖縄県で発生した米兵による少女暴行事件を受け、日米両政府はSACOを立ち上げ、在沖縄基地の整理・縮小を検討。こうした中、第1海兵航空団司令部はSACOの米側当局者であるキャンベル国防次官補代理に、航空部隊の拠点である普天間基地(宜野湾市)の機能を説明しました。
96年1月23日付の説明資料(「琉球大学学術リポジトリ」で公開)によると、仮に同基地が「移設」される場合、代替基地は「米海兵隊や他の国連参加国が朝鮮半島の紛争に対応するための玄関口として、(朝鮮)国連軍基地に指定されなければならない」と指摘。さらに「普天間の海兵隊地上・航空部隊は朝鮮戦争の戦闘計画において決定的である」と述べています。 また、朝鮮半島有事を念頭に、「特定の有事」の際、普天間基地は常駐の約70機に加え、米本土からの増援部隊とあわせて300機を収容する機能を有していると説明し、そうした機能の確保を要請しています。 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-07-01/2018070101_02_1.jpg 日米両政府は96年12月1日のSACO最終合意で、普天間基地の「沖縄本島東海岸」移設を決定。99年12月に「辺野古」への海上基地建設を閣議決定し、2006年5月1日の米軍再編ロードマップで現行計画(辺野古沿岸部の埋め立て)を決定しました。 さらに、ロードマップでは普天間基地に代わる「緊急時」の海兵隊機の増援基盤として、航空自衛隊新田原基地(宮崎県)、築城基地(福岡県)が指定されるなど、機能分散も合意されました(図)。朝鮮半島有事の可能性が消えれば、これらも不要です。 米国防長官としてSACO合意に署名したウィリアム・ペリー氏は今年3月、沖縄県がワシントンで開催したシンポジウムで、北朝鮮の脅威がなくなれば「普天間基地の存在理由はなくなる」と述べています。 米軍居座りの口実が崩壊 沖縄の海兵隊を含む在日米軍が日本に居座り続ける口実は国際情勢に応じて変化していますが、一貫しているのが「朝鮮半島有事」への対応です。しかも、日米安保条約上の口実である「日本防衛」には責任を負わないことが、多くの米側文書に記されています。1953年7月の休戦協定が平和協定に代わり、朝鮮戦争が終結すれば、米軍が居座る論理は崩壊します。 ■朝鮮戦争を契機に 戦後、占領軍として駐留していた米軍は、50年6月に始まった朝鮮戦争を契機として、恒久的な駐留体制を確立しました。日本から朝鮮半島への出撃態勢は今も維持されています。朝鮮国連軍(実態は米軍)地位協定第5条に基づき、横田(東京都)、座間(神奈川県)、横須賀(同)、佐世保(長崎県)、嘉手納(沖縄県)、普天間(同)、ホワイトビーチ(同)を「国連軍基地」に指定。朝鮮国連軍の後方司令部は横田に置かれています。 また、在沖縄海兵隊のルーツである第3海兵師団の日本配備は、朝鮮戦争の休戦協定が「危険ないたずらになるかもしれない」(53年7月23日、米NSC=国家安全保障会議決定)―。つまり、休戦協定の崩壊に備えてのものでした。 米海軍作戦部長が米統合参謀本部(JCS)に宛てた57年8月21日付メモに添付された、太平洋地域での海兵隊の任務は、以下の点が挙げられています。(1)(朝鮮)国連軍の支援(2)ベトナム攻撃を想定した上陸作戦に備えた準備(3)反共のラオス国民軍の支援―。このうち、今も残る任務は(1)だけです。 米国防総省の極秘文書「日本と沖縄の米軍基地・部隊」(68年12月6日付)は、日本と沖縄の基地は「朝鮮半島有事」や「南西アジア」防衛(ベトナム戦争)のためだと述べ、「日本防衛のための基地は一つもない。いくつかの部隊が副次的に、そのような任務を持っているだけだ」と強調。ベトナム戦争は75年に終わっています。 米国務省が最近解禁した文書=キッシンジャー大統領補佐官からニクソン大統領に宛てた、沖縄返還問題に関するメモ(69年3月12日)でも、沖縄返還にあたっての最低条件の一つとして、「沖縄の基地から、日本政府との事前協議なしに朝鮮半島、台湾地域、ベトナムでの戦闘作戦行動の自由」をあげ、沖縄を含む「日本の陸海空域防衛は全面的に日本が責任を負う」こともあげています。 ■北の脅威を口実に 興味深いのは、米太平洋軍「コマンド・ヒストリー」91年版の記述です。「北東アジアにおける米国の国家安全保障目標の主要な挑戦は日本に対するソビエトの脅威だった。しかし、(ソ連崩壊後も)北朝鮮が主要な挑戦者として残っている」。こう記して、ソ連崩壊後も強大な米軍を維持する必要があるとしています。 ソ連崩壊後の90年代、沖縄の「海兵隊撤退論」が強まりましたが、「必要論者」が繰り返し強調していたのが北朝鮮の脅威でした。1面報道のように、米軍当局がSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)プロセスの中で「朝鮮半島有事」を強調したのも、沖縄での駐留継続を合理化する最も有効な口実として考えられていたとみられます。 ■沖縄駐留いらない 現行の辺野古新基地建設などを盛り込んだ2006年の米軍再編合意当時、首相官邸で安全保障政策を取り仕切っていた柳沢協二・元内閣官房副長官補も6月28日の都内での会見で、「米軍再編の後で沖縄に残る海兵隊の任務は、朝鮮有事での非戦闘員救出(NEO)や核施設の探索などだと説明があった」と証言。その上で、「本来、朝鮮半島情勢にかかわらず、海兵隊を沖縄に置く必要はない。まして朝鮮半島情勢が変わってくれば、少なくとも沖縄にいる論理は破綻する」と指摘しました。 米朝首脳会談(6月12日)でのトランプ大統領・金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の歴史的な合意は、北東アジアの安全保障環境を一変させ、在沖縄海兵隊の撤退や在日米軍の大幅削減につながる条件をもたらす可能性があります。 ただ、柳沢氏はこう警告します。「それだけでは辺野古新基地建設は止まらない。止めるには、別の政治的な力学が必要だ」。新しい平和の条件を生かした主体的な取り組みが不可欠です。 https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-07-01/2018070101_02_1.html
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