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米国の威圧が効力を減少させる中朝鮮半島で話し合いの気運が高まるが、米国は覇権を諦めない
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201804260000/
2018.04.27 櫻井ジャーナル
韓国の文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は4月27日に板門店で会談した。アメリカ政府は談話の中で、この会談が「朝鮮半島全体の将来の平和と繁栄に向けて前進することを希望している」としているが、南北対話の流れができるまでアメリカ政府は朝鮮半島での軍事的な緊張を高める政策を推進していた。今でも東アジアの軍事的な緊張を高めようと画策している。
この朝鮮政策は第2次世界大戦後、アメリカが中国を属国化することに失敗して以来続くもの。バラク・オバマ政権でNSC(国家安全保障会議)の安保副補佐官だったベン・ローズによると、大統領は数年にわたり、日韓両国の首脳との会うたびに慰安婦の問題を採りあげ、両国の対立を解消させようとしていたというが、これも軍事的な圧力を北へかけるため。アメリカの手下である日本と韓国が対立していては困るということだ。そして合意が成立、その翌年に韓国大統領だった朴槿恵のスキャンダルが発覚、2017年に失脚している。
それに対し、朝鮮半島で軍事的な緊張が高める政策に反対する文在寅大統領は2017年12月に慰安婦をめぐる問題の合意に疑問があることを明らかにしてアメリカが戦争をしにくい環境を作った。今年(2018年)1月4日に文大統領がドナルド・トランプ米大統領と電話で会談してオリンピック期間中に米韓合同軍事演習を行わないことを認めさせ、平昌オリンピックでは金與正(金正恩の妹)との友好的な関係を演出している。
オリンピックは2月9日から25日にかけて開催されたが、その開会式に出席するため、マイク・ペンス米副大統領は韓国を訪問した。副大統領は韓国へ乗り込む前、2月7日に日本へ立ち寄り、安倍晋三首相と会っている。その直後にアメリカ政府は朝鮮に対する非情で攻撃的な経済制裁を近いうちに発表すると語った。
ところが、同じ日にジェームズ・マティス国防長官は朝鮮半島の問題に関し、外交的に解決する意向をホワイトハウスでの記者会見で示している。ペンスは帰国してから朝鮮側が「話したいと言うなら話す」と軌道修正した。この時、アメリカ政府内で朝鮮政策をめぐる対立があったのか、方針の転換があったのだろう。
その後、金正恩は3月26日に特別列車で北京へ入り、釣魚台国賓館で中国の習近平国家主席と会談、27日に帰国したようだ。金正恩は4月下旬に韓国の文在寅大統領と、また5月下旬にはアメリカのドナルド・トランプ大統領と会談する予定で、その準備という見方も出ていたが、これは正しかった。
本ブログでは何度も指摘してきたが、朝鮮はアメリカの好戦派にとって都合の良い言動を続けてきた。それがなければ日本や韓国をアメリカの戦争マシーンに組み込む作業は難しかっただろう。朝鮮は1980年代、アメリカ政府のイランへの武器密輸工作に絡んでイスラエルとの関係が深まり、DIAによると、ソ連消滅後、つまり90年代にはアメリカの好戦派とつながる統一協会から多額の資金を受け取っていた。
文大統領と金委員長が会談する前日、アメリカ政府はマイク・ポンピオCIA長官が朝鮮で金委員長と握手する様子を撮影した写真を公表した。4月上旬に朝鮮を訪問した際のものだろう。朝鮮半島での出来事はアメリカが主導していると錯覚させようというハリウッド的な演出のつもりだろう。
東アジアを安定化させ、高速鉄道やエネルギー資源を運ぶパイプラインでロシア、中国、そして朝鮮半島をつなごうとしてきたのはロシアだ。韓国とロシアが経済的に関係を強めていたことは広く知られている。それを妨害するかのような行動、つまり「核兵器」やミサイルの実験を行ったのが朝鮮だった。自分たちの支配体制を維持するためにはアメリカと手を組むことが最善だと判断していた可能性がある。
その朝鮮がなぜ方針を変えたのか?
真相は不明だが、気になる出来事が昨年4月にあった。ドナルド・トランプ大統領は戦争を無謀だとしていた首席戦略官のステファン・バノンを4月5日にNSC(国家安全保障会議)から追い出し、その2日後にはホムスにあるアシュ・シャイラト空軍基地をトマホーク巡航ミサイル59機で攻撃したのだ。ミサイルは2隻の駆逐艦、ポーターとロスから発射されたが、ロシア側の主張によると、目標に到達したのは23機だけ。その後の報道をみると、ロシアの説明は基本的に正しかったようだ。
この攻撃は4月4日に有毒ガスが流出した責任はシリア政府にあるとして行われたのだが、その後の調査で偽旗作戦だった可能性が高まった。ジャーナリストのロバート・パリーによると、CIA長官だったマイク・ポンペオは分析部門の評価に基づき、4月6日、つまり巡航ミサイルによる攻撃の前日にバシャール・アル・アサド大統領は致死性毒ガスの放出に責任はなさそうだとドナルド・トランプ大統領に説明していたという。6月25日には調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュもパリーと同じ話を記事にしている。
ひとつの空軍基地を攻撃するために59機もの巡航ミサイルを発射した理由はECM(電子対抗手段)対策だった可能性がある。2013年9月3日に地中海からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されたが、このミサイルをロシアの早期警戒システムがすぐに探知、両方とも海中に落ちたとされている。イスラエルはミサイルの発射実験だと発表するが、事前の警告はなかった。実際に攻撃を始めたのだが、ECMで落とされたと見られている。その後、ロシア側はシリアに短距離防空システムのパーンツィリ-S1を配備したようだ。
2017年4月にアメリカ軍が行ったミサイル攻撃はロシア軍の防空システムの優秀さを証明した。そして今年4月14日にはアメリカ、イギリス、フランスの3カ国がシリアを攻撃した。3月1日にウラジミル・プーチン露大統領はロシア連邦議会でロシア軍の最新兵器を紹介し、アメリカに先制核攻撃を諦めるように警告していたが、これを無視しての攻撃だった。
アメリカ国防総省の発表によると、攻撃のターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)で、すべてが命中したとしている。
それに対し、ロシア国防省は攻撃された場所としてダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)を挙げている。約7割を撃墜したという。その後、撃墜されたミサイルの残骸とされるものが公表された。
ロシア軍の説明によると、迎撃に使われたのはパーンツィリ-S1(25機のうち23機に命中)、ブク・システム(29機のうち24機に命中)、オサ・システム(11機のうち5機に命中)、S-125(13機のうち5機に命中)、クバドラート(21機のうち11機に命中)、S−200(8機のうち0機に命中)だが、ロシア軍がECMを使った可能性がある。
ロシアや中国と組んで経済発展への道を歩み、アメリカから攻撃されても対抗できると朝鮮政府が判断しても不思議ではない。ロシア国防省は25日、シリアへS-300を近いうちに供給することを明らかにした。
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