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対北朝鮮融和に一直線、韓国文政権の「検閲」が始まった
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/post-10015.php
2018年4月21日(土)11時30分 ジェフリー・ファティグ(韓国在住ジャーナリスト) ニューズウィーク
USKIが運営してきた北朝鮮分析サイト「38ノース」は独立機関として活動を継続するが 38north.org
<批判派のメディアや学者に政治的圧力――異論を排除するのは韓国政府の悪しき伝統だ>
リベラル派とされる韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、異論を封じようとしているのか。
韓国の政府系機関、対外経済政策研究院が米ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院米韓研究所(USKI)への資金提供の中止を決定。USKIは5月11日に閉鎖されることになった。決定の背景には、保守派として知られるUSKIのク・ジェフィ所長の解任要求があったと批判派は主張する。
これに先立って韓国の中央日報は、文政権が国内のシンクタンクに所属する対北朝鮮政策批判派に政治的圧力をかけていると報じた。「ブラックリスト」に載っていたデービッド・ストローブ元米国務省韓国担当課長は先日、世宗研究所(ソウル)の研究員の職を辞したという。
こうした主張は極めて信憑性が高い。北朝鮮は4月27日に予定される南北首脳会談、6月上旬までの開催が見込まれる米朝首脳会談に向けて友好姿勢を持続する見返りとして、自国への批判を制限するよう韓国に求めているに違いないからだ。
むしろ、文政権の抑圧的な行動に衝撃を受けることのほうが驚きだ。文政権は南北和平の機運を維持しようと必死。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)党委員長がピョンチャン(平昌)冬季五輪に参加する用意があると新年の演説で語って以来、韓国の態度は一変した。今や世論は戦争ではなく平和への路線転換が起きているとの楽観的見方が優勢になっている。
そもそも、韓国の政府は保守・革新を問わずメディアや学界の異論を抑え込もうとするのが常。だがこの事実を、「民主的」で「リベラル」な韓国をたたえる欧米メディアは忘れがちだ。実際、文以前にいわゆるリベラル政権を率いた金大中(キム・デジュン)と盧武鉉(ノ・ムヒョン)は国内メディアに厳しく圧力をかけ、報道の自由の観点から国際団体に批判された。
■リベラルも例外にあらず
金大中は98年の大統領就任後、米NPOのジャーナリスト保護委員会の非難を浴びた。大統領選中に自身を「親共産主義者」と糾弾した記者や雑誌出版社を名誉毀損で告訴したためだ。
盧も、主要な保守系3紙の市場占有率の制限を狙った新聞法を施行(後に一部違憲との判決)。ネット利用に当たって実名登録を義務付けた際には、国境なき記者団が報告書「インターネットの敵」で韓国を監視対象に挙げた(同法は12年に違憲判決)。
つまり文政権の態度は目新しいものではなく、実のところ韓国の保守・革新両政権の行動パターンに沿っている。より懸念すべき問題は、検閲志向を見せ始めたこの政権が、北朝鮮という世界で最も独裁的な体制への接近を続けていることだ。
文は南北再統一に向けた第一歩として連邦制統一案を主張。補佐官に、親北朝鮮の学生らを率いて投獄されたことのある人物を指名して論議を呼んだ。さらに北と歩調を合わせるように、再統一は外部の関与を排して「わが民族同士で」と訴える。
南北が共通の再統一構想を持つことこそ、金正恩に非核化という「誓約」の履行を促し、アメリカの先制攻撃とそれに伴う朝鮮半島の壊滅的事態を回避する上で最も有効だと韓国政府は判断している。
朝鮮半島の再統一は主に、体制崩壊した北朝鮮が自由で民主的な韓国に吸収されるという形で構想されてきた。しかし「南北連邦国家」では、伝統的な自由民主主義は実現しない可能性が高い。少なくともそこに、報道や学問の自由はなさそうだ。
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