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拉致問題解決も約束。なにが日米首脳会談を大成功に導いたのか
国際 2018.04.20 by 北野幸伯『ロシア政治経済ジャーナル』
日本時間18日未明に行われた、6回目の日米首脳会談。海外メディアなどでは手厳しい評論も見られますが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、「大成功だった」としています。北野さんは何を以って「成功」と見ているのでしょうか。
日米首脳会談の最重要ポイント
皆さんご存知のように、安倍総理が訪米し、トランプさんと会談しました。会談は成功だったのでしょうか?
日米関係は、2015年4月の「希望の同盟演説」以降、ずっと良好です。当時、アメリカ大統領はオバマさんでした。しかし、安倍総理は、トランプさんとも「親友」といえる関係を築いています。
ところが、ここ数カ月、日米関係がらみで気になることが二つありました。一つは、トランプさんが3月8日、突然、「金正恩に会う!」といいだしたこと。日本は「圧力一辺倒」だったので大きな衝撃を受けた。そして、「安倍総理も金正恩に会うべきだ!」というバカげた主張も出てきました。
RPEは、「圧力派の目的は、金に『非核化前提の対話』を受け入れさせること。金が『非核化する意志』を示したのだから、対話するのは当然」と主張。さらに、「米朝首脳会談に対抗して日朝首脳会談を急げば、田中角栄の過ちを繰り返すことになる。トランプの最高顧問キッシンジャーは、『日本は、今も昔も最悪の裏切り者!』と絶叫し、日米関係は破壊されるだろう」と警告しました。安倍総理は、その後落ち着かれたようですが、「なんでもかんでも強気で行け!」という政治家さんたちが騒ぐので心配でした。
もう一つの問題は、「スクリパリ殺害未遂と、対ロシア制裁」の問題。3月4日、ロシアのダブルスパイ、スクリパリさん殺害未遂事件が起こった。イギリスは、この事件を、「ロシアの仕業!」と断定。アメリカ、EU諸国、カナダ、オーストラリアなどがこれに同意し、制裁として「ロシア外交官追放措置」を取りました。日本は、対ロ制裁に参加していない。
この二つで、「日米関係大丈夫かな?」と心配だった。実際はどうだったのでしょうか?
異例の厚遇
産経新聞4月19日は、トランプさんが「異例の厚遇」をしたと報じています。
日米首脳会談 またも異例の厚遇 濃厚な4時間に何を話したか?
産経新聞 4/19(木)6:33配信
【パームビーチ=田北真樹子】安倍晋三首相は今回の訪米でもトランプ米大統領から異例の厚遇を受けた。2人だけの会談、少人数会合、安倍、トランプ両夫妻だけの夕食会、そしてゴルフ。両首脳の会談の中身はほとんど表に出ていないが、北朝鮮情勢をめぐり、腹を割ったやりとりがあったとみられる。緊迫した情勢下で日米両首脳が強い絆を国際社会に見せつけた意義は大きい。
どうも、北朝鮮問題、対ロシア制裁問題での立場の相違は、両国関係にまったく影響を与えていないようです。
トランプ氏 「首相の訪問を歓迎する。日本はとてもとても特別な国で、とてもとても類いまれな指導者がいる」(同上)
安倍総理のおかげで、日本は「とてもとても特別な国」だそうです。
夕食会は約2時間。夫人を伴ったとはいえ、大部分が両首脳だけの会話に費やされた。両首脳は初日だけで4時間もの時を一緒に過ごしたことになる。(同上)
長さも大事ですね。ちなみに安倍総理、オバマさんとはじめて会った時、会談時間は、たったの30分でした。オバマさんは初め、「右翼」と呼ばれる安倍さんを嫌っていたのです。
何を話したのか?
二人が何を話したのか、正確にはわかりません。しかし、共同記者会見で、その内容は明らかになっています。主なテーマは、「北朝鮮」と「通商」だったようです。
〔北朝鮮〕
大統領 米朝首脳会談は世界的な成功を収めるよう努力する。安全で繁栄し、平和な中で暮らすことができ、核兵器のない朝鮮半島を目指す。圧力最大化路線は北朝鮮が非核化するまで続く。(時事 4月19日)
二つ重要なことをいっています。
●核兵器のない朝鮮半島を目指す
●圧力最大化路線は北朝鮮が非核化するまで続く
つまり、「北朝鮮にはもう核兵器があるのだから、その現実を認めてしまおう」というようなことはないと。そして、「非核化の前に、制裁を緩めることはない」と。
大統領 米朝首脳会談がもし実りあるものにならないと思ったら、会談しない。会談した際も、実りなければ丁重に席を立つ。(同上)
ここでは、要するに「妥協を強いられる交渉、中身のない交渉はしない」と。
拉致問題は私にとっても重要な問題だ。拉致被害者を日本に連れ戻すために、できることは全てやる。(同上)
日本にとっては、とても重要な発言ですね。総理は、何をいったのでしょうか??
首相 相当突っ込んだ形で方針の綿密な擦り合わせを行った。(南北、米朝両首脳会談が予定されるが)日本が取り残されるのではないかとの懸念は全く当たらない。核やあらゆる弾道ミサイル、何より重要な拉致問題を解決に導く歴史的会談になることを期待する。(同上)
「日本が取り残されるのではないかとの懸念は全く当たらない」
その通りです。ここで田中角栄さんみたく、「俺も目立ちたい」と愚かな行動をとれば、日米関係は破壊され、キッシンジャーとトランプに、「やっぱり日本は最悪の裏切り者」といわれるのです。というわけで、日米首脳会談は、「大成功だった」といえるでしょう。
安倍総理の「自立外交」
私は、現状安倍総理を支持しています。しかし「信者」ではありません。
●3K外国人労働者の大量受け入れ
●残業代ゼロ
●消費税再引き上げ
などに、大昔から反対しています。それでも安倍支持なのは、「外交がすばらしい」からです。そして、「日本を守ることに成功している」からです。
思いだしてください。「トラストミー」鳩山さんは、日米関係をボロボロにしました。野田さんの時代(2012年)を振り返ってみてください。日中関係は、「戦後最悪」だった。日ロ関係は、超悪かった(メドベージェフが北方領土を訪問)。日韓関係は、これも「戦後最悪」だった。当時の李大統領は、「日王が訪韓したければ謝罪せよ!」と語り、日本国民を激怒させていました。
ところが、今はどうです? 日米関係は、良好。日中関係も、2012年と比べずいぶん穏やかになりました。日ロ関係は、とてもいい。日韓関係も、李、朴時代と比べればずいぶんマシです。もちろん日韓関係については、「慰安婦問題」で問題がある。しかし、それは、「蒸し返している」文さんの問題で、安倍総理に責任はありません。
どうですか、皆さん。日本は今、アメリカ、中国、ロシア、韓国といい関係にある。欧州、インド、オーストラリアなどともいい関係にある。世界的に孤立していた民主党時代と比べて、なんとよくなったことか。
もう一つ重要なこと。安倍総理は、「トランプのことを100%聞いているから日米関係がいい」のではありません。実際、安倍さんとトランプさんは、重要問題でことごとく立場が異なっています。
●安倍さんは、TPP支持。トランプは、TPP離脱
●安倍さんは、パリ協定支持。トランプは、離脱
●トランプは、「エルサレム=イスラエルの首都」と認定。安倍さんは、これを認めず
●トランプは、スクリパリ事件後、ロシア外交官を追放。安倍さんは、追随せず
これだけ立場が異なるにも関わらず、安倍さんは、トランプと仲がいい。こんなこと、今まであったでしょうか?
私はずっと「日本の自立」を主張してきました。それは、「遠い未来に実現できればいいが…」という願望だった。しかし、安倍総理は、この願望をサクッと実現してくれた。だから私は、いろいろ意見の違いはあっても安倍総理を現時点で支持しているのです。総理が続投されることを、強く願います。
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