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政府の統計以上に物価は上がっている〜実質値上げラッシュで国民はますます貧乏に
斎藤満
2019年2月5日 ニュース
日銀が2%の物価目標を達成できずに頭を抱える一方、消費者は同じ値段で売られているお菓子の容量が減るなど「実質値上げ」を目の当たりにして、かなりの物価上昇を感じています。どうして実態と統計は噛み合わないのでしょうか。今回は総務省「消費者物価指数」の疑義を取り上げます。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)
※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年2月1日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
パソコンは性能が上がったから、同じ値段でも安くなった…?
消費者の実感と合わない物価指数
厚生労働省の「毎月勤労統計」問題が連日国会で取り上げられていますが、統計への疑義はほかにもたくさんあります。
すでに、総務省の労働力調査が失業率を過少に表示している可能性、厚労省の「一般職業紹介」が有効求人倍率を実態以上に高く見せていることを紹介しましたが、今回は総務省の「消費者物価指数」の疑義を取り上げます。
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昨年12月の消費者物価上昇率は前年比0.7%の上昇で、日銀は2%の目標が何年たっても実現できず、「高まらないインフレ率」に頭を痛めています。
一方で内閣府の「消費動向調査」や日銀の「生活意識に関するアンケート調査」をみると、消費者はかなりの物価上昇を感じています。
例えば、日銀の昨年12月に行ったアンケートをみると、消費者が実感する物価上昇率は、この1年で平均5.0%、中央値でも3.0%となっています。今後1年間の物価上昇についても、「消費動向調査」では、「2〜5%」を予想する人が38%で最大で、「5%以上」の21%と合わせると、59%の人が2%以上の物価上昇を予想(懸念)しています。
総務省の物価指数と消費者の実感とがこれだけ乖離する1つの理由に、毎日のように目にする食料品など生活周りの物価が全体平均よりも高い上昇を見せていることもあります。物価が下落している家電、パソコンなどは何年かに一度しか買わないので、意識の中に入りにくい面もあります。
しかし、それだけではなく、物価指数自体に実態とそぐわない問題がありそうです。
見えない値上げをカバーできない
実感と現実の物価指数の動きとの乖離をもたらしているものの1つに、数字に表れにくい実質値上げがあります。
例えば、私がよく利用する渋谷のデパートに入っているパン屋『R.ベーカー』のミルク・サンドは、1年前には30センチほどの長さがあましたが、現在は価格が同じで、長さが半分になりました。餡バターは価格が10円上がって大きさが1割から2割小さくなりました。
この他、牛乳の紙パックが変わったと思ったら、容量が1割減っていたり、同じ価格でも袋の中容量が1割減っていたり、チョコレートのサイズが小さくなって実質値上げとなっているものが少なくありません。
これらを統計調査員は十分カバーしているでしょうか。消費者物価の品目内訳をみると、「パン」は2015年100に対して足元は103と3%しか上がっていないことになっているところを見ると、この実質値上げは見落とされているようです。
Next: なぜ実感と統計はズレるのか?「実質値上げ」と並ぶもう1つの理由とは
恣意的な値下げ評価
もう1つ、実感と物価統計との乖離を大きくしているのが、計算上の恣意的な値下げ評価です。
これが目立つ分野の代表として、電気製品など「教養娯楽耐久品」と自動車の価格表示です。つまり、これらは現実の価格と大きく乖離して大幅値下げの形となったり、実際に値上がりしているのに上がっていない扱いになっていて、実感より物価を押し下げる形になっています。
<パソコンの例>
その一例として、パソコンの値段を見てみましょう。私は昨年の暮れに国産T社のノート・パソコンを買い替えましたが、その時の価格は約20万円でした。総務省の消費者物価指数では足元のバソコン価格は「101.1」となっています。そのパソコンの値段は、今から19年前の2000年1月時点で「8,379」となっています。今の80倍以上です。現在20万円のパソコンは、19年前には1,600万円以上していたことになります。
もちろん、実際に2000年当時のパソコンが1,600万円もしたはずがありません。記憶では、今とあまり変わらない値段だったと思います。
同じような値段であったはずのパソコンが、消費者物価統計では19年間に価格が99%近く下がったように計上されています。これは当局がこの間のパソコンの機能向上分を価格に置き換え、実質的な値下げと判断し、19年前より99%も安い価格で計上しています。
現実の消費者は20万円を拠出してパソコンを買い、財布がそれだけ圧迫されるのですが、物価統計上は19年前に20万円だったパソコンは現在2千円ちょっとに下がったという扱いになっているのです。
<カメラの例>
同じように、カメラの価格指数は昨年12月で「102.4」となっていますが、1977年には「5,100」強となっています。現在1台2万円のカメラが、1977年当時は100万円以上したことになります。逆に言えば、1977年当時5万円のカメラは現在1千円で買えることになります。
これも現実離れしていて、カメラの値段はそんなに下がっていません。当局が画素数の高まりや機能向上分を価格に置き換え、値下げしたように表示しているだけです。
自動車の価格上昇も物価統計ではなかったことに…
やや異なりますが、現実に価格が大きく上昇しているのに、物価統計上は上がっていないのが自動車です。
今から約25年前にニューヨークでトヨタの「カムリ」を1万8千ドル(当時の為替レートで200万円弱)で買いました。最近カムリが復活してまた市場に出回っていますが、その価格は約400万円で、25年前の2倍になっています。
ところが、消費者物価指数の自動車は、1993年1月で99.8に対し、昨年12月は100.9と、ほぼ横ばいとなっています。カムリが今でも200万円で買えるならこれでも良いのですが、実際は2倍払わないと買えません。レクサスの上級車は現在1,600万円くらいしますが、25年前のレクサスはやはり今の半分くらいのコストだったと思います。
自動車の価格は明らかに上昇しています。しかし、これも自動車の機能向上分を価格評価し、現実の価格が2倍になっていても、機能が2倍になっていれば価格は横ばいという形で物価統計に計上しています。
Next: 実態と大きくズレる統計。政府が思うより国民はずっと苦しい
政府が思うより国民はずっと苦しい
これらは「毎月勤労統計」のような偽装、ルール違反ではありませんが、現実の価格、消費者が支払う価格と、物価統計の価格とが大きくずれていて、そのズレは当局者が人為的に決めたもので、決して市場で決まったものではありません。
「価格は市場で決まる」という経済学のルールから見れば、日本の物価統計は恣意的な決まり方をしている分、ルール違反とも言えますが。
統計調査員の「実質値上げ」の調査漏れ、統計担当者の機能向上分の恣意的な価格引き下げが、実態以上に日本の物価を低く見せている可能性があり、現実には消費者が感じる「3%のインフレ」に近いのかもしれません。
日銀の物価目標はとっくに達成されていて、その中で無用な異次元緩和を続けている可能性があり、一方で、家計の実質所得は、統計の値よりもさらに大きく減少している可能性があります。
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- 不安を煽ったのは誰?「2020年景気後退」「2019年バブル崩壊」説は大きく後退へ うまき 2019/2/09 17:02:53
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