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「戦後最長の景気拡大」なのに実感できない3つの理由
https://diamond.jp/articles/-/192872
2019.2.8 塚崎公義:久留米大学商学部教授 ダイヤモンド・オンライン
労働力需給や企業収益などの
統計数字は景気の絶好調を示す
1月の月例経済報告が発表され、「景気は、緩やかに回復している」という景気判断を維持した。これを受け、茂木経済再生担当相が記者会見を行い、今回の景気拡大は「戦後最長になったとみられる」と述べた。
経済成長率などはそれほど高くないものの、失業率は極めて低い。有効求人倍率は極めて高く、企業収益も史上最高水準にある。こうした数字を見ると、確かに「景気はいい」といえるだろう。
しかし、人々の景況感は決していいとはいえない。「景気回復が実感できない景気拡大」なのだ。そこで本稿では、景気実態と人々の景況感が大きく乖離している理由について考えてみたい。
失業率は、「雇用のミスマッチを考えると、これ以上下がりにくい」と言われてからも下がり続け、2%台前半で推移している。これはバブル期のボトムだった2.0%に近い水準だ。
就業者数は順調に増加しており、「背に腹は代えられない」と考えて、多少のミスマッチには目をつぶって採用している企業も多いのではないか。有効求人倍率に至っては、バブル期を超えて高度成長期以来の高さだ。
企業の利益も史上最高水準だ。法人企業統計を見ると、全規模全産業(金融保険を除く)の経常利益額はバブル期の2倍近いレベルであり、売上高経常利益率もバブル期を大幅に上回っている。
日銀短観を見ると、雇用人員判断の不足幅はバブル期に近い水準であり、労働力需給が極めて引き締まった状況であることが推測される。国内での製商品・サービス需給判断もバブル期並みの水準だ。
日銀短観でもう1つ注目されるのが、製造業の生産・営業用設備判断の不足幅が、これまたバブル期に近づきつつあることだ。
つまり、労働力の需給が非常に引き締まっていて、企業が大いに儲かっているというわけだ。物が売れていて、設備も足りていない。これを「景気が絶好調」と表現しないで何を絶好調と表現すればいいのだろうか。
景気の実態を表す数字は絶好調
にもかかわらず景況感はさえず
このように、景気の実態を表す数字は絶好調である一方で、人々の景況感はいまひとつだ。
その一因は、バブル崩壊後の長期低迷期に人々の心に染み付いた「デフレマインド」だろう。デフレという言葉は、物価の持続的な下落を意味する言葉だが、デフレマインドという言葉は「これまでずっとダメだったから、これからもどうせダメだろう」といった人々の心理状態を指す場合が多いようなので、本稿でもそういう意味で用いる。
バブル崩壊後の長期低迷期に、景気が回復し始めては再び悪化し、期待が裏切られ続けてきたので、「期待しない方が裏切られなくていい」と人々は考えるようになった。個人としては合理的な判断なのだが、そのこと自体が個人消費や設備投資などの回復を鈍らせて景気の回復を阻害する「自己実現的予言」となってしまったのは、非常に残念なことだ。
企業は景気回復で需要が増えても、「どうせ遠からず、再び景気が悪化するだろう」と考えるし、失業者は仕事にありついても、「どうせ遠からず、再び失業するだろう」と思うし、サラリーマンの場合はリストラの恐怖から解放されても、「どうせ遠からず、再びリストラの嵐が吹き荒れるだろう」と思うわけだ。
企業のデフレマインドは、日銀短観から推測できる。利益などの客観的な指標が極めて良好であるにもかかわらず、業況判断DIはバブル期に遠く及んでいない。
消費者のデフレマインドは、消費者態度指数から推測できる。消費者態度指数は、今後の暮らし向き、収入の増え方、雇用環境等の指標を合成したものだが、直近の数値は43.7で、バブル期はもちろんのことリーマンショック前の水準も大幅に下回っているのだ。
給料が上がらないことに加え
「老後不安」も原因
家計の景況感がさえないことも、一因はデフレマインドだろうが、こちらは他にも原因が多数ありそうだ。
その1つは、正社員の給料が上がらないことであろう。「春闘での賃上げ、大企業は期待薄でも中小企業には薄日の理由」でも書いたように、正社員の給料はようやく薄日が差した程度だ。バブル崩壊後の「グローバルスタンダード」の流行によって、企業が「従業員の共同体」から「企業の金儲けの道具」に変身してしまった結果だ。
雇用者数は増えているが、「本来は定年後に引退するはずだったサラリーマンが定年後も仕事にありつけた」といった場合には、景気がいいから仕事が見つかったにもかかわらず、本人としては「景気がいい」と感じるよりも「収入が減った」と感じ、景況感がさえなくなってしまう。「景気が悪かったら自分は仕事にありつけなかったかもしれない」と気づくには、かなりの想像力を必要とするからだ。
もう1つ重要なのは、老後不安だろう。
財政赤字が膨らんで、政府の財政が将来は破綻するかもしれないと考える人が増えている。加えて、少子高齢化で年金財政が将来は破綻すると考える人もだ。もしかすると、「人生100年時代」という言葉を聞いて、「100歳まで生きたら老後の蓄えが底を突いてしまう」と不安に思っている人も多いかもしれない。
筆者としては、皆が70歳まで働いて70歳から年金を受け取るようになれば、年金財政は破綻しないし、個々人の老後の備えも可能だと楽観的に考えているのだが、少数派だろう。
個々人の老後不安は、本来ならば景気認識とは別のものなのだが、不安な気持ちでいると景気が暗く見えてしまうというのが人間の心理というものだ。
こうした悲観的な見方を増幅しているのが、経済評論家やマスコミの悲観的なコメントだ。「○○が心配だ」「○○のリスクもある」というのが評論家やマスコミは好きなので、そうした話ばかり聞いていると、そんな気になってしまうのだ。
問題は、こうした悲観的な物の見方が、設備投資や消費に悪影響を与えて、実際に景気を悪化させてしまうという「自己実現的な予言」になってしまうということだ。
個々人や個々の企業は、暗い将来が予測されれば消費や投資を抑制するのが「正しい」行動だが、皆が正しいことをすると皆がひどい目に遭うという「合成の誤びゅう」が起きてしまっているのだ。
今回、ようやくデフレマインドや合成の誤謬の悪影響を乗り越えて、景気が絶好調となっているのだから、これを機に人々のデフレマインドが少しずつ緩んでいき、消費や投資が素直に活発化していくことを強く期待する。
成長率が低いのに
労働力不足である理由
「景気のプロ」たちの間では、景気の良しあしを判断する材料として実質経済成長率(GDPの増加率から物価上昇率を引いた値。単に成長率と呼ぶこともある)を用いる場合が多い。景気討論会などでは、成長率の予測が景気の予測として用いられることもある。「成長率が高いときは、企業が大量の物を作るために大量の人を雇うから景気はよくなる」というのが基本的な考え方だ。
だが、今は成長率が平均1%台と決して高くないのに、労働力不足だ。なぜなのか。1つには少子高齢化で現役世代人口が減っているからであり、もう1つには労働集約的なサービスに対する需要が増えているからだ。労働集約的なサービスが増えている理由は、高齢化とデフレ脱却だと思われる。
若者が100万円の自動車を買う場合と、高齢者が100万円分の介護サービスを受ける場合で、どちらもGDP上の個人消費は100万円だが、全自動ロボットが自動車を組み立ててしまえば失業者はあまり減らない一方で、介護サービスには人手がかかるので失業者は大幅に減る。
したがって、少子高齢化によって自動車を買う人が減り、介護を受ける人が増えると、GDPは変わらないのに失業者が大幅に減ってしまうのだ。これは少子高齢化の結果といえよう。
人々が安売りより
サービスを求めるように
もう1つ、デフレからの脱却で、人々が安売りよりサービスを求めるようになったことも影響している。ビールを少しでも安く買うために遠くのスーパーまで買いに行っていた消費者が、利便性を求めて通信販売でビールを買うようになったとすれば、宅配便の需要が増えるので失業者は大幅に減るであろう。
つまり、GDPは増えていないけれど、必要とされる労働力は増えているので失業が減り、景気がよくなっているというわけだ。
最後に余談だが、景気拡大期間が戦後最長となったこと自体は、それほど喜ぶべきことでもなさそうだ。景気拡大のペースが緩やかであるがゆえに長続きしているという面が強いからだ。そのあたりは、「『いざなぎ景気を超えた』理由は景気回復が実感できないほど緩やかだから」 をご参照いただければ幸いだ。
(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
景気が良いのに、それが実感できていない人が多いのは、給料が上がらない事もありますが、デフレマインドが染み付いている事など、マインドの問題も多いようです。 #NewsPicks https://t.co/aErVPn5M01
— 塚崎公義 (@tsuka00738289) 2019年2月7日
【皆が70歳まで働いて70歳から年金を受け取るようになれば、年金財政は破綻しないし、個々人の老後の備えも可能だと楽観的に考えている】
— 独立系FP 橋本宗南 (@fp_shunan) 2019年2月8日
70歳まで働けば良いと思う。
「戦後最長の景気拡大」なのに実感できない3つの理由 ダイヤモンド・オンライン https://t.co/nxR6Y7Hdmr
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