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円高懸念という妄信
ストラテジーレポート
広木 隆 2019/02/01
米国株は絶好調だ。BloombergニュースはS&P500種株価指数はここ30年で最良の1月を終えたと報じた。予想以上に好調な企業決算に加えハト派な米金融当局が相場を後押しし、同指数の月間上昇率は7.9%と、1989年1月の7.1%を上回った。
グラフ1
出所:Bloomberg
NYダウ平均は大台の2万5000ドルを超えた。昨秋の急落分の6割以上を取り戻した。正確に言えば、フィボナッチ比率の61.8%を超えた。一目均衡表の雲を抜け、200日移動平均なども上回った。ここまでくれば、「半値戻しは全値戻し」本来の意味を信じられる。米国株は再び最高値を試すだろう。
グラフ2 NYダウ平均 フィボナッチ・リトレースメント
出所:Bloomberg
それに比べて日本株の戻りの鈍さが際立つ。日本株が弱い理由は、米国株に比べてディスカウント・ファクターが大きいからだが、それについて話すと週刊のレポートでは語りきれない。3月に刊行する予定の『新時代の企業価値向上論(仮題)』でじっくり述べているのでそちらをお読みください。
日本株の歩みの鈍さについて表層的な話をすると、円高という答えが返ってくる。年初のフラッシュクラッシュによる「104円台」の残像が投資家の脳裏から去らない中、株式市場では円高懸念が相場の重石だと見られている。だが、この「円高懸念」というものほど、バカバカしいものはない。以下、3つの理由を挙げて、いかに「円高懸念」がナンセンスであるかを述べよう。
まず、円高懸念が急速に強まったのは米連邦準備理事会(FRB)による利上げの停止観測が台頭したからだ。FRBは今週開いた1月の連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文にbe patient(忍耐強くある)と盛り込み、今年2回を見込んでいた追加利上げを棚上げする考えを示唆するとともに保有資産の縮小も「修正する用意がある」と明言した。ここで誰もが2016年の相場を思い出す。
2016年、FRBは年初に年4回と見ていた利上げを見送り、結局その年の終わりまで利上げできなかった。円相場は年初に120円台だったのが、3カ月で110円近辺まで上昇した。さらに6月に英国民投票でEU離脱派が決まると一時100円を突破した。中国景気の減速懸念が広がる中でのFRBの利上げ停止は2016年とそっくりだ、だから今回も円高が進む ― そんな見方が一部にあるが、因果関係の順序が逆である。
そもそも120円台までドル高円安が進んだのは2014年秋の黒田バズーカ2と米国のQE終了という「強力な2大材料」があったからだ。強烈に円安に振れた反動が、チャイナショック〜原油安〜と続くリスクオフの過程で巻き戻された。株価とドル円が急落したうえBREXITでボラティリティが高まった。非常に大きな市場の混乱のためにFRBは利上げできなかったのであって、FRBが利上げを見送ったから円高になったのではない。順番が逆である。
今回は昨年秋からの市場の動揺がFRBをハト派スタンスに変えた。市場はもう「催促してしまった」のである。喩えていうなら、2016年前半の円高進行は昨年秋の株価急落に相当する。2016年は急激な円高が起こるほどのリスク回避ムードに支配され、FRBは利上げできなかった。今回は昨年秋の株価の急落がFRBに利上げを停止させたのだ。FRBは市場の要求に満額回答し、そして米国株は昨年秋の暴落の6割強を取り戻した。市場の催促→FRBの対応というプロセスは一巡している。だから「2016年版の円高再現」というのはもうないだろう。
2つ目の理由として、2016年と違って発射台が高くない(=あまり円安になっていない)分、潜在的な反動圧力も小さいことが挙げられる。それは金利との関係を見るとなおさらよく分かる。日米の2年国債の実質利回り格差とドル円の動きを重ね合わせると連動していることが見て取れる。
グラフ3 ドル円(青)と日米2年国債実質利回り格差(緑) 2018年2月〜2019年1月
出所:Bloomberg
しかし、これは過去1年という、極めて狭いレンジ相場かつ米国の定期的な利上げ時期の話である。もう少し長期で、例えば5年程度に期間を拡大してみれば、短期金利差はほとんど相場の変動要因になっていない。
グラフ4 ドル円(青)と日米2年国債実質利回り格差(緑) 2014年1月〜2019年1月
出所:Bloomberg
むしろ10年債利回り格差のほうが、フィットがよい局面がある。
グラフ5 ドル円(赤)と米国10年債利回り(青)
出所:Bloomberg
その10年債利回りの上昇に過去1年程度、ドル円相場はまったく追随できなかった(グラフ4からは2年債利回り格差にも追随できていないことがわかる)。金利が上がって、それに連れてドル円も上がったなら、金利が下がればドル円も下がる、という論法は納得できる。だが、金利上昇に連れ高していないのだから、仮に金利が下がってもそちらにだけ連れ安するというのはおかしな理屈だろう。そもそも、FRBの利上げ停止は米国景気・株価の支援材料。だとすれば景気の先行きを不安視して長期金利が低下することも、株安→リスク回避の流れで米国債が買われて金利が下がることも可能性としてずっと後退するだろう。よって金利低下でドル安というシナリオの蓋然性は低い。
そして3つ目の理由を述べよう。本当はこの理由だけでじゅうぶんなのだが、よりご理解いただけるように1、2の理由も述べた次第である。
効率的市場仮説という考え方がある。効率的という言葉の意味は、いかなる情報も市場に瞬時に織り込まれるということだ。バートン・マルキール氏は著書『ウォール街のランダム・ウォーカー』のなかでこう書いている。「もし、一部の人々が、その銘柄の株価が明日40ドルになることを知っていたとすれば、株価は明日ではなく、今日ただ今40ドルになるだろう」
グラフ6
出所:Bloomberg
米国の金利先物市場から逆算した米国の利上げ確率は0%に達している。グラフ6は3月会合での利上げ確率の推移だが、3月以降もほぼ0%である。
FRBによる利上げの停止というのは市場に完全に織り込まれている。為替市場というのは非常に効率的なマーケットだ。「FRBが利上げを停止して円高になる」ならば、「今この時点ですでに相当な円高になっている」はずである。しかし、実際はそれほどの円高にはなっていない。確かに利上げ確率が後退していく過程では円高が進行してきた(グラフ7)。しかし、市場が織り込む利上げ確率はすでに0%に達しているので、これ以上はもう先がない。つまり、「FRBが利上げを停止して円高になる」という材料では円高はこれ以上進まないということである。
グラフ7
出所:Bloomberg
広木 隆
マネックス証券株式会社 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。 国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。 長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。 2010年より現職。青山学院大学大学院(MBA)非常勤講師。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、BSテレ東「日経プラス10」、日テレNEWS24「まーけっとNAVI」、J-WAVE「JAM THE WORLD」等のレギュラーコメンテーターを務めるなどメディアへの出演も多数。 マネックス証券ウェブサイトにて、最新ストラテジーレポートが閲覧可能。 著書: 「ストラテジストにさよならを 21世紀の株式投資論」(ゲーテビジネス新書) 「9割の負け組から脱出する投資の思考法」(ダイヤモンド社) 「勝てるROE投資術」(日本経済新聞出版社)
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バックナンバー
• 2019/01/25悪材料の織り込み進展 その先へ
• 2019/01/18弱い相場ながらも光明も見える
• 2019/01/112019年日本株相場のメイン・シナリオ
https://media.monex.co.jp/articles/-/10919
逃れられない日本の財政破綻、私たちの資産が政府に吸い上げられる日は近い
2019年1月29日 ニュース
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日本の株式市場の10%を公的資金で支え、日銀の量的金融緩和によって国と地方の借金は膨らむばかりで、両者を併せた負債額1,107兆円は、今年の国債の利払い分だけで政府税収の43%を占めるに至っています。
日銀は量的金融緩和を続行すると宣言しているので、現在の日本の財政における国債依存度30%はさらに増え続け、債務返済のための税収に対する割合は高くなっていくでしょう。
とうとう、これ以上は持続不可能なレベルまで来てしまったのです。それは、国家予算が組めないレベルです。(『カレイドスコープのメルマガ』)
※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2019年1月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
※不許複製・禁無断転載(本記事の著作権はメルマガ著者および当サイトに帰属します。第三者サイト等への違法な転載は固くお断り致します)
好んでハイパーインフレに突き進む日銀と政府。ついに禁じ手へ…
年金原資が失われるまで秒読み段階に入った
今日の世界金融の状況は、1929年のウォール街大暴落や、1987年のブラックマンデー前夜に酷似している、と多くの経済学者やアナリストが指摘しています。
確かに、ニューヨーク・ダウは、去年2月5日に起こった1,597ドルの歴史的大暴落に続いて去年10月10日の831ドルの大暴落と、2009年3月以来続いた上昇トレンドに終止符を打ちました。
日経平均株価も、10月2日の24,448円をピークとして頭を打ち、以後、下落トレンドに入って12月25日には1,000円を超える下げ幅を記録、とうとう2万円の大台を割り込む結果となりました。
「これで後味の悪い大納会を迎えて年を越し、大発会も下落の始まりだ」と投資家たちが意気消沈していたところ、突然、何の材料もないのに「2万円台回復!」の文字がニュースのテロップで流れたのです。
もちろん、日銀のETF(株式で構成される投資信託)買い入れ出動よって平均株価が吊り上げられたのです。
日銀は、2018年の1年間で、6兆5,040億円ものETFを買い入れ、日経平均株価指数を吊り上げてきました。
日銀は、年々、ETFの購入額を増やしており、現在の日銀のETFの保有残高は24兆円を超えています。つまり、日本の株式市場の時価総額の4%を日銀が保有している計算になるのです。
それだけでなく、去年の3月の時点で、国内株式市場に投入されている年金などの公的資金の時価総額が64兆円を超え、東証1部、2部にマザーズ、ジャスダックなど新興市場を併せた国内株式全体の時価総額665兆3000億円に占める比率は9.6%(2017年3月末時点では8.7%)にまで上昇。
東証1部では、公的資金の比率が10.02%ですから、実際の日経平均株価指数は、おそらく1万8,000円台、いや、さらに低いでしょう。
これは、日銀による世界の投資家たちを欺くトリックであり、これが、本当のアベノミクスの成果なのです。
したがって、米国の株式市場が下がれば、それに連動して日銀が大量に保有しているETFの時価総額も減ってしまうので、私たちの年金の原資が失われることになるのです。
そもそも、中央銀行が不安定な株式を大量に保有すること自体がリスクと見なされるので、株価が下がれば、即、日銀の信用を棄損することになります。
去年の暮れから年明けにかけての下落は、去年10月のアップル・ショックが収束しないうちに、12月5日、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術:Huawei)のCFOがカナダで逮捕されたことが原因となったことは明らかです。
しかし、これとは別の理由によって大暴落のトリガーが引かれたことは間違いのないことです。
今のところ、本当の原因が判明しないまま、直接のトリガーは、ウォール街の人工知能(AI)トレーダーやボットによるアルゴリズム・トレードが引き起こした「フラッシュ・クラッシュ」に違いない、というところに落ち着いています。
Next: 「バブル崩壊」という市場の大規模な荒療治が世界規模で始まる
バブル崩壊という市場の大規模な荒療治が世界規模で始まる
1929年のウォール街大暴落は、その後、世界金融恐慌に繋がっていったわけですが、その原因を突き止めようと数々の調査委員会が立ち上がったものの、やはり、未だに「誰がトリガーを引いたのか」特定できていないのです。
ファンダメンタル的には、米国の行き過ぎた保護主義が招いた貿易摩擦が極限まで達して、債権の流動性が失われたことが根本の原因とされています。1987年のブラックマンデーのときも同様です。
しかし、これらは、すべて後付け解釈であって、真相は、英フィナンシャルタイムズ紙の副編集長であり、経済論説主幹であるマーティン・ウルフ(Martin Wolf 72歳)やキャサリン・オースティン・フィッツ(Catherine Austin-Fitts)が漏らしたように、過去の金融危機は、国際銀行家が支配している中央銀行ネットワークによって引き起こされてきたことは、多くの経済学者が認めるところとなっています。
株式市場の下落トレンドが明確になった以上、投資家たちの次の関心事は「制御できないほどのインフレが、いつ起こるのか」ということです。百戦錬磨の投資家にとっては、ハイパー・インフレでさえ、資産を増やす絶好のチャンスだからです。
中央銀行がもっとも警戒しているのはインフレです。
特に、米国の連邦準備制度は、過去の経験から、ハイパー・インフレの兆候がわずかでも見え始めると金融引き締めに入って、瞬く間に、その芽を摘んでしまいます。
米・連邦準備制度理事会(FRB)は、そのあたりは抜かりなく、2015年に資産購入プログラムを終了し、欧州中央銀行(ECB)もまた、去年12月末に量的緩和政策を終わらせると宣言しています。
中央銀行が一転して引き締めに入ったことから、少なくとも2019年からは株式市場、債券市場、そして不動産市場の大幅な調整が見込まれていますが、問題は、すでに、あらゆる市場がバブル状態になっていることです。
つまり、バブル崩壊という市場の大規模な荒療治が世界規模で始まるということです。
好んでハイパーインフレに突き進む日銀と日本政府
翻って、日・米・欧の中央銀行のうちで、日銀だけは量的緩和の続行を表明しています。
それどころか、「構造改革は道半ば」を呪文のように唱えながら、さらに量的緩和を進めるべきだと圧力をかけている日本の経済学者や元FRB議長が「まだまだ、全然足りない」と日銀にプレッシャーをかけ続けています。
といっても、昨年は、量的緩和を80兆円規模から60兆円規模に縮小しているので、2019年の今年は、さらに縮小することは確実です。
端的に言えば「国債の発行が、これ以上できないデッドラインが近づいている」ということを暗示しているのです。
財務省の公式発表によると、国と地方の借金を併せた日本の債務残高は、平成30年度末(2018年末)で1,107兆円にまで膨らみ、対GDP比で200%をゆうに超えています。
それだけでなく、安倍内閣は、2016年9月に日本のGDPを嵩上げするというトリックを使いました。
GDPの算定方式を改定して、わざわざ2011年まで遡って新基準を採用し、これを19.8兆円増としたのです。
ロイター(2016年9月15日付)が、皮肉交じりに「600兆円経済に追い風か」との見出しで記事を書いているように、名目GDP600兆円に向けた成長戦略「日本再興戦略2016」を打ち出したため、少しでもGDPが伸びているかのように装飾する必要があったからです。
ちょうど、2015年の暮れ頃から、アベノミクスの虚構に気がついた海外メディアが、いっせいに、アベノミクスに死刑宣告を下すような記事を書き始めたため、メッキが完全に剥がれ落ちる前に、なんとしてでもGDPを膨らませる必要が出てきたのです。
さすがに、「GDP600兆円など不可能に近い」と呆れ果てる経団連企業の経営陣たちの冷ややかな反応をよそに、「データの捏造は毎度のこと」と国内外のメディアに揶揄されながら打ち上げたのが、「GDP600兆円ー日本再興戦略2016」の大花火だったのです。
アベノミクスという虚構
安倍首相の主導でGDPデータの捻じ曲げが行われた決定的証拠が、2017年10月10日の自民党広報によるこのツイートです。
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自民党広報
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@jimin_koho
【データで見る!アベノミクス5年間の実績】
名目GDPはこの5年間で50兆円増加!過去最高の水準です。#アベノミクス の加速で #景気回復 #デフレ脱却 を実現します!多くの方に知っていただきたいのでぜひシェアにご協力ください!#この国を守り抜く #自民党 #衆院選 #拡散希望
1,190
20:44 - 2017年10月10日
1,019人がこの話題について話しています
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もちろん、50兆円どころか、アベノミクスによってGDPはまったく伸びておらず、GDPの算定方式を都合よく変えてしまったために起こった珍事ならぬ誤魔化しです。
つまり、アベノミクスの下で、異次元の量的金融緩和を続ける日銀、さらに政府の国債を買い続けるために、少しでも、「日本の債務残高対GDP比率」を圧縮したいという不純な考えから出てきた稚拙なトリックに過ぎなかったのです。
つまり、2016年の時点で、すでに政府の借金は国債の増発ができない水準まで来ていたということを意味しているのです。その証拠に、2016年6月13日、三菱UFJ銀行が国債入札特別資格の返上を申し出ました。
これらの出来事を時系列に沿ってつなぎ合わせてみれば、アベノミクスそのものが虚構であることを否定できる専門家は誰一人として現れないでしょう。
Next: 国民の資産が政府に完全に吸い上げられる?「財政ファイナンス」に踏み切る日銀
禁じ手「財政ファイナンス」に踏み切る日銀
元FRB議長ベン・バーナンキは、現職のときから日銀関係者や麻生太郎財務大臣に、「ヘリコプター・マネーを導入すべきだ」と吹聴してきました。
ヘリコプター・マネーとは、三菱UFJ銀行が国債入札特別資格の返上を申し出たように、財務省から政府が発行する新規国債を引き受けるよう要請を受けても「応じない」との意思を固くするメガバンクが次々と出てきても、日銀が市場を介さずに直接引き受けることによって、無制限に国債を発行できるという禁じ手のことです。
バーナンキは、FRB議長の任期が終了した後も、たびたび日本にやってきて、安倍首相や日銀関係者と非公式の会合を繰り返してきました。
この時期は、安倍内閣が「GDP600兆円ー日本再興戦略2016」を打ち出し、GDPの算定基準を変更した時期と重なっています。
彼の目的は、歴史上、最初にヘリコプター・マネーを日銀に導入させてハイパー・インフレを引き起こすことでした。
バーナンキの執拗な悪魔のささやきは、2017年3月に、麻生太郎財務大臣が「シムズ理論はヘリマネだ、私が閣内にいる限りない」と言明するまで続きました。
しかし、バーナンキは、オバマ政権下で米国政府の負債を一気に2倍にした“功績”を称えられて、ブリッジ通貨と呼ばれるリップル(Ripple)の利権に食い込むという利得にあやかることができたのです。
ヘリコプター・マネーは、財政ファイナンスと同じ効果をもたらします。
財政ファイナンスは、日本では財政法第5条に明確に違反します。 米・連邦準備制度理事会でも、欧州中央銀行でも、めまいがするほど多くの法律改正を経なければ踏み切ることができません。
しかし、日本政府は、去年の2月、「日銀の国債買入は財政法第5条に抵触しない」という政府答弁書を出してきました。 これは、法改正をせずに、いつでも財政ファイナンスをやるぞ!という明確な意思表示に他ならないのです。
状況から見ても、安倍内閣は2020年の東京オリンピックまではメンツを保つために、閣議決定によって財政ファイナンスに踏み切るべく準備していることは明らかです。
しかし、現政権下で日本がハイパー・インフレになれば、朝鮮半島情勢から想定されるように、戦争という最悪の選択肢を選ぶことさえ決して「ありえない」とは言いきれないのです。
つまり、国民の資産が政府に完全に吸い上げられるのです。
ところが、最悪にして最終的な選択肢=財政ファイナンスへの道さえ閉ざされそうな情勢になってきました。
為替条項によって円安誘導ができずに円高になる!?
ムニューシン米財務長官が、去年10月、日本との新たな通商交渉において、為替介入をはじめとする意図的な通貨安誘導を阻止する「為替条項」の導入を日本側に迫ってきたのです。
「為替条項」とは、米国の貿易相手国が輸出促進のために通貨安誘導を行った場合、報復関税など対抗措置を取ることを可能にするルールのことで、米国側にとって一方的に有利な状況をつくり出すことができます。
このルールを日本側が受け入れようと受け入れまいと、報復関税を恐れて、日本政府と日銀は、日米間の貿易不均衡を是正する目的以外には、これまでのように大規模な為替介入も赤字国債の発行も、思うようにできなくなります。
仮に、禁じ手の財政ファイナンスに踏み切れば、日銀は政府が発行する国債を無制限に買い入れてマネタリーベースを増やすことができるので円安に誘導することができます。
しかし、その場合は、景気はさらに悪化して確実に「悪性インフレ」に陥るでしょう。
というのは、日銀の異次元の金融緩和の本質が、国民の資産を国債と等価交換するだけであって、マネーストックを増やすものではないからです。
少々乱暴ですが、可能な限り分かりやすく言えば次のようになります。
銀行は、国民が銀行に預けた預金で財務省から割り当てられた(半ばノルマのように)国債を購入します。そして、その国債は、債券市場を通して日銀が買い入れます。
その買い入れた国債の対価として日銀は紙幣を印刷して市中に放つことによってマネタリーベースが増え、為替を動かすことができるのです。
しかし、日銀が供給する通貨の量が増えたからといって、それが循環して活用されなければ景気は良くなりません。
アベノミクスの致命的な間違いは、トリクルダウンという仮説をもとにして大企業優遇一辺倒の政策を取ってきたため、大企業は国際競争の舞台から降りて内部留保に励むようになってしまったことです。
つまり、日本の大企業は、ほとんど働かず家に引きこもって大飯を食らい続けた結果、とうとう動脈硬化を起こして血流障害を引き起こしてしまった過保護のメタボ息子に似ています。
GDPの7割を占める内需を喚起するためには、中間層の手当てを厚くして消費を活発にしなければならないのですが、アベノミクスでは、一気に非正規雇用を増やしてしまったことから、いっそう労働者の消費者としての意欲が失われ、結果として低欲望化社会を創りだしてしまったのです。
国際銀行家のアジェンダのとおり構造改革を政府に迫って来た竹中平蔵氏自らが、「トリクルダウンは起きない」と言い切ったように、アベノミクスとは、最初から虚構であったことが白日の下に晒されたということなのです。
笑いが止まらないのは大企業だけですが、国際競争力を失った日本の大企業が市場からしっぺ返しを食らうのは時間の問題です。
Next: 「原発輸出」を政府の方針とせざるを得ない理由と消費増税10%の怪しいゆくえ
「原発の輸出」を政府の方針とせざるを得ない理由
日銀は、民間銀行が日銀の当座預金に預けたままにしている莫大な資金と、大企業の500兆円にも迫ろうかという内部留保を市中に引き出すために、苦肉の策としてマイナス金利を導入したものの、政府主導の国策事業は、相変わらず原発の輸出と兵器関連産業の振興でしかないので、大企業も方向感がつかめないというのが実態です。
マネタリーベースを増やすという小手先の金融政策を使っても、マネーストックが増えなければ絶対と言っていいほど景気は良くなりません。
それどころか、金融緩和の本質が国民の資産を国債と等価交換するものである以上、日銀が債務超過に陥ってしまえば国債は暴落し金利が急上昇して、とうとう利払いができなくなります。
要するに、国民の資産が召し上げられて、気が付いたら紙切れ同然になっていたなどと、ブラックジョークにもならない凄惨な事態を引き起こしかねないのです。
それは、つまり、日本政府のデフォルトです。
量的金融緩和の本質を理解できない国民は、銀行に資金を預けておくだけで価値(購買力)が目減りしていくなどと夢にも思っていません。結局のところ、それはステルス増税そのものであることを理解しなければ資産を防衛することはできません。
大企業が資金の流れを止めず、これを新規事業などに活発に投資すれば、中小企業の資金需要が増えて金利が徐々に上昇し、これにともなって従業員の給料も増えていくはずです。
そのときに、半ば退蔵状態にあった円が、いっせいに市中に流れ出して消費に回ったり株価を押し上げたりするでしょう。
日銀が大量に刷った円によって、購買力が低下(実質的なインフレ)しても、労働者の給料がそれを上回る形で増えていけば何の問題もないのですが、アベノミクスでは、これと正反対のことだけをやり続けているのです。
どんな角度から見ても、「中央銀行の中の中央銀行」と呼ばれている国際決済銀行(BIS)は、無知な日銀を使って日本をデフォルトに導き、国民の資産を強奪しようとしているとしか考えられないのです。
世耕弘成経済産業相が、日立製作所が英国での原発建設の凍結を発表した翌日の閣議後の会見で、原発輸出政策について「相手国の意向も踏まえて平和利用や気候変動問題への対応に責任を果たす方針に変わりない」と、引き続き原発の輸出が政府の方針であることには変わりがない、と述べました。
ヨルダン、ベトナムに続いて英国での原発建設計画のとん挫と、日本の原発輸出計画はゼロになりました。
日立、東芝、三菱が輸出する原子炉が設置され台湾第四原子力発電所もまた、2014年に建設が凍結されており、さらに台湾議会で「2025年までに、台湾のすべての原発を停止すること」を決める「脱原発法」が成立したため、幻の原発になることが確定しました。
すべての原発輸出計画が破談、あるいは頓挫しただけでなく、オーストラリアへの潜水艦輸出をはじめとする日本の兵器輸出も雲散霧消。安倍外交のすべてが、税金をドブに捨てるだけの放蕩三昧で終わったことが確定したのです。
では、なぜ破廉恥とまで言われながら、世耕経産相はできもしないことを公の場で行ったのでしょう?日本の原発輸出に未来がないことぐらい世耕経産相は承知しているはずです。これは、経団連へのリップサービス以外に、日本のメガバンクを救うために放った言葉だったのです。
つまり、台湾のように、政府が原発から完全に撤退すると言った瞬間に、原発は巨大な産業廃棄物と化し、原発建設のために電力会社に融資した「兆」の単位に及ぶ貸付金が焦げ付きかねないからです。
日本の銀行は、公にできないほどアベノミクスによってそれほど弱っているということなのです。
それだけでなく、残り50基の天文学的な廃炉費用が本格的に議論されるようになれば、巨額の財源の見つけるのは、現在の財政状況から見ても、ほぼ不可能に近いため、結局、廃炉にすることもできず、そのまま野ざらし状態に置いておく以外にないのです。
これは、日本列島全体に核爆弾を放置しているのと同じことになるのです。
消費増税10%の怪しいゆくえ
安倍首相が、今年10月に実施することを公約にしている消費増の10%引き上げですが、急に政府内のドタバタ劇が外に漏れだしてきました。
軽減税率の適用、介護保険料の軽減拡大、福祉給付金の支給、そして、例によって、ポイント還元や商品券の発行…まるで、学園祭前の実行委員会のはしゃぎようです。
内閣人事局に運命を握られた哀れな官僚たちの政権への忖度は、尽きることがありません。
彼らは、可能性が高いと言われている衆参同時選挙の直前になって、「国民の生活を守るために議論を積み重ねてきたものの、断腸の思いで消費増税を延期することを決めました」と安倍首相が言うための伏線づくりに忙しく働いています。
選挙の直前な支持率を維持しようとすれば、消費増税の延期ぐらいしかなくなってしまったのですから…。
安倍首相は、G7伊勢志摩サミットのとき、「リーマンショック級のことが起こらない限り、消費税を上げます」と言って他の首脳を唖然とさせました。
そして、今再び、それを繰り返しています。
この局面で消費税を上げれば、今度こそ、いくつかの大企業と銀行が破綻するでしょう。
つまり、消費税を上げると景気の腰折れどころか、財政破綻を近づけることが分かって来たので、今のうちに10%に上げないように逃げを打っているのです。
日本は、この政権によって、すでに完全に破壊されてしまったのです。政治に無関心な人々でさえ、今年、それが少しずつ分かって来るでしょう。
Next: 今年から厳格適用されるバーゼルIIIが、日本の弱い金融機関を淘汰させる!?
日本の財政破綻が間近に迫っている
日本の市場は、政府と日銀によって意図的に形成された官製相場ですから、米国やヨーロッパの市場とは本質的に異なり、同日に論じることは適切ではありません。
日本の株式市場の10%を公的資金で支え、日銀の量的金融緩和によって国と地方の借金は膨らむばかりで、両者を併せた負債額1,107兆円は、今年の国債の利払い分だけで政府税収の43%を占めるに至っています。
日銀は量的金融緩和を続行すると宣言しているので、現在の日本の財政における国債依存度30%はさらに増え続け、債務返済のための税収に対する割合は高くなっていくでしょう。
とうとう、これ以上は持続不可能なレベルまで来てしまったのです。それは、国家予算が組めないレベルです。
事実上、破綻状態にある米国でさえ国債依存度は10%台ですから、日本の財政が、いかに凄まじいか誰でも分かりそうなものなのですが、間違いなくマスメディアには安倍官邸が箝口令を敷いているでしょうから国民は知ることができないのです。
この危機的状況に関する日銀総裁の発言は、経済財政諮問会議の議事録からさえも削除されてしまったという不気味さ。
フォーブスが、「いつか『安倍が日本をダメにした』と振り返る日が来る」と日本の投資家に警告するジム・ロジャーズの直言を取り上げています。
ジム・ロジャーズは、過去何度か、アベノミクスの破壊力についてメディアに言及してきました。
今となっては、彼をデマ呼ばわりする人は皆無に近いでしょう。
日本の数年後について「日本は酷いデフレになる」と主張する有識者と、「日本は、酷いインフレになる」と主張する有識者に別れています。
どちらが正しいかということではなく、期間の取り方によっては、どちらも正解となるでしょう。
「世界中の経済学者がインフレを警告しており、日本はアベノミクスによって、人手不足なのに実質賃金が下がり続け、年金崩壊が叫ばれているくらいだから、デフレになるんだったらお金の価値が上がるんだから、一般の労働者や年金生活者にとっては生活が楽になるんじゃないの?」…
こう考えている人がいるとすれば、この先の凄まじい経済崩壊にサバイバルできないでしょう。
今年から厳格適用される「バーゼルIII」が、日本の弱い金融機関を淘汰させる!?
問題は、何がトリガーとなり、どちらが先にやって来るのか、ということです。
もっとも可能性が高いのが、2019年の春から厳格適用される「バーゼルIII」です。
バーゼルIIIとは、主に西側主要国の金融監督当局で構成するバーゼル銀行監督委員会が、銀行の健全性を維持するために導入した自己資本規制のことです。
バーゼルIIIは、1998年のバーゼル合意(いわゆるBIS規制)に端を発しています。
その後、バーゼル合意が見直され、2004年にバーゼル2(いわゆる新BIS規制)が発効されたことによって、銀行の自己資本比率を高めることが要求されるようになったのです。
そして、その範囲が拡大され、株式や内部留保などからなる銀行の資産に加え、投資や融資(債権)などによるリスク資産についても総合的な評価が行われ、それらの総資産に対して、一定割合以上の自己資本を持つことが強制されるというのがバーゼルIIIです。
確かに、銀行の財務体質強化、経営の健全化にとっては良いことですが、その反動として、銀行がバランスシートを重視するあまり、リスクを取らなくなってしまう恐れが出てくるのです。
バーゼルIIIが適用されることで銀行の貸出能力を束縛されてしまうことから、銀行にとって、まさに最高の借り手にだけに資金を貸し付けるということが起こって来るのです。
バーゼルIIIは、世界市場における流動性を減少させて信用成長を遅くしてしまうため、産業社会にとっては死活問題となり、ショックが大きければ、財政的なパニックを誘発することにもつながってしまうのです。
バーゼルIIIは、すでに世界中から非難の的となっているにも関わらず、不思議なことに西側の金融機関は、この横暴なルールに従おうとしているのです。
バーゼルIIIでは、銀行の事業によって蓄積してきた利益の内部留保(中核的自己資本)の比率を、実質7.0%以上とすることが求められており、2012年末から段階的に導入されてきましたが、いよいよ2019年から全面的に適用される運びとなったものです。
2019年からは、国際取引を行う銀行を対象としたバーゼルIII(新BIS規制)が実施されるので、中規模の銀行でさえ貸出能力が強い束縛を受けるようになります。
バーゼルIIIによって、国際取引を行うことのできない地銀など小規模の金融機関は資金の逃避先をほぼ失います。
それでも多少は、国内の不動産や金・銀などの商品の現物に資金が向かうかもしれませんが、やがてその過程で形成された資産バブルも破裂するので、その後、続々と破綻していくことが懸念されます(※臨時増刊号 2016/3/31【Vol.009】に詳述)。
Next: 生き残るのはメガバンク数行だけ/かつて日本で行われた「預金封鎖」の悲劇
生き残るのはメガバンク数行だけ
不動産市場は、すでにバブル崩壊前夜の様相を呈しています。
つまり、マイナス実質金利の導入もバーゼルIIIも、ペーパー・マネーを一掃し、キャッシュレス・エコノミーへ移行させるための道程に位置付けられたもので間違いないのですが、その前段階として、弱小の金融機関を淘汰させて「あまりに大きすぎて潰すことのできないメガバンク数行」に統合させるプロセスであると見なければならないわけです。
そのために、ハイパー・インフレを人為的に生成し預金封鎖を行う必要があるのです。日本政府は、愚かにも、せっせと公的債務残高をひたすら積み増しているのです。
バーゼルでは、国債をリスク要因と見なすことが前提になっているので、今年の春から厳格適用されるようになると、それを理由に、国債の引き受けを拒否するメガバンクが次々と出てくるはずです。
賢明な三菱UFJは、それを見越したからこそ、2016年の段階で国債入札特別資格の返上を財務省に申し出たのです。
メガバンクがどこも国債を引き受けなくなれば、政府は国家予算を編成できなくなるので、日銀は財政ファイナンスに踏み切らざるを得なくなります。
1992年度末から本格適用された「バーゼルI」によって何が起こったのかというと、連日、多くの経営者の自殺がマスコミで報道されたように、金融機関による「貸しはがし」と「貸し渋り」原因とする中小企業の破綻です。
そして、2006年から適用された「バーゼルII」では、金融機関の自己資本比率の最低基準8%はそのままでしたが、対象となるリスクの適用範囲が、信用リスク、市場リスク、オペレーショナル・リスクに拡大されたため、バーゼルIよりさらに基準が厳しくなりました。
そして、今度のバーゼルIIIこそが、脆弱な金融機関にとっては消滅の危機と呼ぶべき事態となるかも知れません。
…世界中の中央銀行をコントロールするためにロスチャイルドら国際銀行家たちが設立した国際決済銀行(BIS)のこうしたシナリオが見えるのは私だけではないはずです。
ですから、特に、AIの導入が真っ先に行われる銀行業界では、財務体質の弱い地方銀行以下が大手に吸収されるか破綻するかで整理統合され、さらに大手行といえども、リストラの大嵐が吹き荒れること必至です。
この状況で、移民を受け入れるという後世に大きな禍根を残す安倍政権の迷走は責められるべきです。安倍首相は、いったい、誰から日本を破綻させる命令を受けているのでしょう?
かつて日本で行われた「預金封鎖」の悲劇
日本には、似たような状況でハイパーインフレを招くと思われていたのに、反対にデフレになったという経験があります。
それは、戦後の占領期の1949年に、GHQの経済顧問、ジョセフ・ドッジが、日本政府に経済の自立と安定のために勧告した財政金融引き締め政策「ドッジ勧告(通称ドッジ・ライン)」によってもたらされました。
終戦後間もない昭和21年(1946年)2月16日の預金封鎖から3年後のことです。
日本政府は、コントロールできなくなったハイパーインフレを収束させるため、銀行を閉鎖するという「預金封鎖」を行いました。政府は、国民に何も知らせず、自分の口座からお金を引き出せないようにしたのです。
その後、預金封鎖は、なんと2年間も続き、その間に多くの国民が餓死させられたのです。
表向きは「ハイパーインフレ退治」でしたが、預金封鎖の本当の狙いは、政府の放漫財政による国家破綻を防ぐため、銀行からお金を引き出せないようにしている間に、国民から財産税を徴収して、その穴埋めに使うことだったのです。
70年も前に、過酷なベイル・インが行われたのです(※メルマガ第148号「ハイパー・インフレ、預金封鎖、資産税への道」にて詳述)。
日本政府は、多くの国民を餓死させた反省からジョセフ・ドッジの勧告を受け入れ、国債の発行をゼロにして、徹底したインフレ抑制、国内消費の抑制を行ったのです。
その反動から、今度は一気にデフレに振れたため、失業者や企業倒産が増大し、東京証券取引所では、史上最安値となる85.25円という平均株価を記録したのです。
その後、外資が日本の企業の株式を最安値で大量に買い入れ、大儲けしたことは言うまでもありません。
ドッジ勧告が実施された翌年の1950年6月25日、朝鮮戦争が勃発。朝鮮戦争特需によって日本の本格的な経済復興が始まったのです。
Next: 日本は、金融という見えない追っ手によって袋小路に追いこまれつつある
日本は、金融という見えない追っ手によって袋小路に追いこまれつつある
現在の日本は、このときの状況に酷似しています。
朝鮮半島で再び戦争が勃発するかどうかは分かりませんが、少なくとも南北の激しい経済格差によって朝鮮半島で経済的な動乱が起こることは避けられません。
トランプ政権による通貨安誘導を阻止する「為替条項」、今年の春から厳格適用されるバーゼルIII、不透明な北朝鮮情勢、減速する中国経済、そして、日銀による官製相場の崩壊…。
日本は、金融という見えない追っ手によって袋小路に追いこまれつつあるのです。
そうしたところに、日本国債の格付けの引き下げや、スルガ銀行のような事件が起こると、市場の空気は一瞬にして変わってしまうのです。
おそらく、それがトリガーとなって、日本は一気にデッド・トラップの負のスパイラルに吸い込まれていくでしょう。
国・地方併せて1,107兆円の負債の利払いが1%になったときの公債費の利払いは10兆円です。
金利上昇の初期段階では、2〜3%程度、つまり3兆円程度利払いが増えるだけですから、政府はなんとかヤリクリすることができますが、中長期的には10兆円の利払いを履行しなければなりません。
今でも、予算編成の半分以上を赤字国債に頼っている現状で、さらに10兆円利払いが増えれば国家予算が組めなくなります。
もっとも、そのずっと前の段階で、逃げ足の速い外国勢は日本の株式市場から資金を引き揚げ始めるでしょう。
つまり、政府は国債の利回りに応えるために、さらに国債を発行しなければ日本が完全に「ジ・エンド」になってしまうにも関わらず、自決覚悟の最終手段である財政ファイナンスさえ道を閉ざされようとしているのです。
https://www.mag2.com/p/money/628701/7
少子高齢化で日本は生涯現役「強制」社会へ、死ぬまで働く私達が幸せになる唯一の方法は?=鈴木傾城
2019年1月31日 ニュース
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少子高齢化で衰退へ向かう日本では、高齢になっても働かなければならない。これは生涯現役の「強制」であり、死ぬまで働かされる事態に突入したのだ。しかしこの状況でも、幸せに生きる方法はある。(『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』鈴木傾城)
※本記事は有料メルマガ『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』2019年1月27日号の抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。
我慢して働けば何とか食べていける…そんな時代はとうに終わった
少子高齢化を無策のまま放置したツケが回ってきた
日本は少子高齢化問題に関して「人口を増やす」という正攻法を頑なに取ろうとせず、日本人もまた「先進国は少子になるのは当たり前」と変な達観をして人口を増やすのをあきらめてしまった。
本当は先進国であっても、子どもを生むことに対するインセンティブが働き、子どもを生み育てる環境がきちんと整えば人口が増える。日本は増やせる人口を増やしていない。やるべきことをしないで無策のまま超少子高齢化に突入している。
そして、社会保障費はパンク寸前となって、福祉や医療費や年金はどんどん削減されていき、さらに年金受給年齢も引き上げられようとしている。消費税も強烈なまでに上がっていく。
すべては「少子高齢化を無策のまま放置した」ことに要因がある。
そして皮肉なことに、日本の労働現場では人手が不足するようになって「生涯現役社会」という言葉が提唱されるようになり、日本人は高齢化しても働き続けなければならない社会と化した。
高齢になっても働かなければならない。これは、生涯現役の「強制」である。自分の意思がどうであっても、死ぬまで働かされる事態に突入したのだ。
いよいよ「生涯現役社会」が強制に
アメリカのみならず、ほぼすべての国は「アーリーリタイアこそが幸せなこと」という意識がある。そして、アーリーリタイアできた人が人生の成功者であると認識されている。
40代で引退(リタイア)して、ハワイかフロリダのどこかでくつろぎながら生きる。あるいは、収入を度外視してボランティアや趣味で自分の好きなことを追求して生きる。要するに「好きなことをして生きる」のだ。
しかし、日本では「アーリーリタイア」という生き方はまったく一願にもされないし、身近に「アーリーリタイアした」という人を見かけることもほとんどない。では、日本人は「アーリーリタイア」に興味がないのか。
いや、そうではない。
日本人もまた心の底では「カネのためにあくせく生きるのではなく、自分の好きなことをしてのんびり生きたい」という気持ちを持っている。
しかし、日本人はそのような気持ちを抑えて、朝早く会社に向かい夜遅くまで働いて、企業にいいようにこき使われて過労死するか過労死寸前にまで追い込まれてまで働く。
そして、いよいよ「生涯現役社会」が強制されるようになり、日本人は文字通り老いて死ぬまで働かなければならなくなってしまった。
人口を増やす施策をまったく取らないで高齢層を死ぬまで働かせるのだから、誰が考えても、こんなやり方では日本の未来が活性化するはずがないと分かるのだが、現実はそのようになってしまっている。
日本人もアーリーリタイアの夢を見ることがあるのだろうが、現実はどんどんアーリーリタイアは非現実と化して、単なる空想の世界の話となっている。
Next: 1億円あればアーリーリタイアは可能?しかし、資産家ほど働くのをやめない…
金融資産が1億円以上あれば可能
実際問題として、アーリーリタイアは日本でも不可能ではない。たとえば、金融資産が1億円以上あれば、アーリーリタイアは可能になる。もし本人が望むのであれば明日からでもできる。
1億円を高配当の株式で回していれば、毎年300万円なり400万円なりが定期的に入ってくるわけで、その範囲内で慎ましく暮らせるのであれば、あとはボランティアだろうが趣味だろうが、好きなことをして生きてもいい。
しかし、普通に働いている99%の日本人は1億円の金融資産を持っていない。
厚生労働省の『国民生活基礎調査(各種世帯の所得等の状況)』によると、一番貯蓄額が大きい60から69歳でも、1,339万円程度でしかない。全世帯の中央値は約1,033万円、高齢者世帯でも約1,224万円である。
普通に働いて給料をもらっている「だけ」の人たちは、金融資産1億円に到達するのはかなり厳しいというのが統計でも見て取れる。
1億円の限界を突破できるのは成功した起業家・経営者・会社役員、成功した芸能人やスポーツマン等の表現者、遺産相続した一族、そして一部の金融リテラシーを持った狡猾な人たち等が中心である。
こうした人たちは「望めば」アーリーリタイアが可能になる。
1億円を突破できる人は働くのをやめない…
だが、非常に皮肉なことがある。1億円の限界を突破できる仕事に就いている人は、遺産相続した一族を除けば、そのほとんどが「自分のやりたいことを仕事にして稼いでいる人」である。
こうした人たちは、仕事が好きで好きでしょうがないのでアーリーリタイアを考えようとしない。
今やっている仕事が好きで好きで仕方がないのであれば、それをやめることの方が苦痛になる。だから、「生涯現役社会になる」と言われれば涙を流して喜ぶことになる。一生「好きなこと」ができるのだから喜ばないわけがない。
それで稼げるのであれば、なおさら仕事をやめようと思わない。だから、アーリーリタイアができる人が、逆にアーリーリタイアをしない。
Next: 生涯現役「強制」社会の勝ち組は、自分の好きなことを仕事にしている人だけ
生涯現役「強制」社会になっても困らない人とは
1億円の限界を突破できるのは、そのほとんどが「好きなことを仕事にして成功している人たち」である。
では、仮に好きなことをして食べていけるものの1億円突破は難しいと分かったら、彼らは好きな仕事をやめるだろうか。
いや、やめるわけがない。好きだからやめたくないと考える。
「やりたいことをやってるのだから、もっとやらせてくれ」と思って仕事をする。つまり、好きな仕事に就いていれば、生涯現役社会になろうがなるまいが、アーリーリタイアができるようになろうがなるまいが、まったく関係がなくなる。
つまり、生涯現役「強制」社会になっても困らない人が世の中には存在する。それは「自分の好きなことを仕事にしている人」である。「自分の好きなことを仕事にしている人」は言われなくても生涯現役を望むし、自らそうする。
そして、好きなことに打ち込んでいるうちに成功したら、アーリーリタイアしたくなくてもアーリーリタイアできる資産が入ってきたりする。それを目標にしなくても、普通は好きなことに打ち込んで生きられるだけでも幸せなことなのだ。
好きでもない仕事で食べていける時代は終わった…
日本人の大多数は「死ぬ直前までこの仕事に打ち込んでいたい」とか「仕事が好きで好きで仕方がなくて、月曜日の朝が待ち遠しい」とか思っていない。
今までは企業が終身雇用で最後まで面倒を見てくれたから「好きでもない仕事でも我慢したら最後は報われた」のだ。
しかし、もう好きでもない仕事を最後まで我慢しようと思っても、途中で放り出される可能性は高い。
Next: どうせ死ぬまで働かされるのであれば、好きな仕事をするのが合理的な生き方
どうせ死ぬまで働かされるのなら…
さらに、少子高齢化を放置した日本政府は社会保障費の増大に苦しみ、年金も福祉も医療費も削減に走っている。年金受給年齢も引き上げられて、本当に年金がもらえるのかどうかも怪しくなっている。
そうであれば、この時代に生き残るのは、戦略的に「自分の好きなことを仕事にする」ことを深く考えなければならないというのは分かるはずだ。
好きなことを仕事にして、成功して、なおかつ金融リテラシーがあれば決して悪いことにならない。
生涯現役が「強制」される社会で生き残るためにやるべき重要なこととは、ただひとつ。何が何でも「自分の好きなことを仕事にする」ことである。それが基本であり、生き残るための土台となる。
どうせ死ぬまで働かされるのであれば、好きなことをする方がいいのは自明の理だ。それが最も合理的な生き方なのである。
【関連】日本円での貯金はもはや自殺行為。必ず来るインフレが「老人の国」日本を殺す=鈴木傾城
https://www.mag2.com/p/money/629915/4
迫る中国の経済崩壊。5,000万戸の空き家が引き起こすリーマン級ショック=吉田繁治
2019年1月29日 ニュース
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「中国の空き家が5,000万戸」との報道が出ました。銀行とノンバンクの不動産融資は不良化し、これから中国はリーマン危機のような金融危機に向かいます。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2019年1月16日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
富裕層の住宅投資も大きく減少。中国不動産バブル崩壊は近い…
中国の住宅価格は(統計マジックで)下がらない
ブルームバーグが「中国の空き家が5,000万戸」と報じています。ご承知のように、住宅価格を含み、中国の経済統計は、信頼に足るものが少ない。日本の厚労省とは次元が違って、集計の基準が、激しく任意だからです。
中国の経済統計には、かつてのソ連のような計画経済のものが多くなっています。ソ連では、製造された商品の価格は政府価格であり、売れ残った不良在庫があっても、下がらなかったのです。
中国の新築住宅の価格は、日本や米国のように、自由な市場が、売買で価格を決めたものではありません。新築住宅価格、GDP統計には、作りすぎて残った住宅在庫の、値下がり統計が入っていません。
GDPは生産額を集計します。いつも4%付近とされている失業率も、都市戸籍の人だけが対象です。農村戸籍の人には失業という概念がないからです。
この中国でも、株式市場の株価は、売れた価格です。しかし資本(=マネー)を自由化してはいず、世界市場からは、保護された株価です。
通貨では、
・資本の流入になる、ドルから人民元への交換は自由
・元の国外流出になる「ドル買い、ユーロ買い、円買い/元売り」には、金額の制限がある
という状況です。
中国の株価は、2018年は、年初の3,500ポイントから2,535へと、28%も下げています(19年1月14日:上海総合の平均指数)。時価総額では250兆円という大きな損失が生じ、株の形の金融資産は250兆円縮小しています。
株が250兆円下がっているのに、住宅価格が下がっていないのは、新築の売り出し価格の統計だからです。売れた価格の統計は公表されていません。
計画経済では、商品・住宅価格はどうなる?
共産主義の計画経済では、在庫が売れたときの価格統計ありませんでした。ソ連のGDP統計では、商品は政府の統制価格で全部売れたとされていました。流通在庫、不良在庫という概念はなかったのです。このため価格は下がらず、GDPは増え続けていました。
風船のように膨らんでいたGDPに応じて増刷されていたルーブルは、ソ連邦が解体した1991年(ゴルバチョフの時代)、暴落(1/1000)して、ハイパーインフレになったのです。紙幣は、政府の意思で、生産にかかわらず、いくらでも増刷できるからです。通貨の増刷は、砂糖水を水で薄めるように、マネー1単位の価値を希薄化させます。
中国の住宅価格も、新築価格だけを統計する限りは、下がりにくい(筆者注:住宅、不動産、固定資本の建設額は、そのままGDPになります)。
政府統計をもとにした、2012年から6年間の住宅の単価は、以下のように、2014年を除いて、上がり続けています。
一級とは、周辺部を含むと3000万人クラスの人口が住む北京、上海、シンセン、広州の4都市です。二級は武漢、成都など25都市。三級・四級都市は邯鄲、金華など21の市です。
経済体制が今も違う香港は、除外されています。
リーマン級の危機に向かう中国
<中国の住宅単価の指数:2012年から2017年>
2012年 13年 14年 15年 16年 17年 平均上昇
—————–
一級都市 100 110 110 140 160 185 13%/年
二級都市 100 105 100 100 120 130 5%/年
三級都市 100 100 105 95 105 115 3%/年
—————–
(データは、三井住友銀行中国有限公司:17年9月)
一級都市の1平方メートルあたりの住宅単価は、2012年を100とすると、年平均13%上がり続け、5年で1.85倍です。今、1億円や2億円の住宅はザラです。統計から漏れている香港では、2億円から数億円。一戸の面積の増加もあるからです。
ドルペッグ制(対ドルの準固定相場)をとる香港ドルが、元の送金・受金の、仲介と中継基地になっていて、香港は、ロンドンのシティのような金融都市だからです。
二級都市では、平均年率5%の上昇。三級都市では、年率3%の上昇と穏やかです。ただし、人口では三級都市でも、大都市周辺の東莞、佛山、廊坊、中山などでは、一級都市と同じように、5年で1.8倍の上昇率。総じて、年10%の上昇を続けてきたと言っていいでしょう。
住宅と商業用不動産は、固定資本投資の新築価格として、中国のGDPを底上げしています。あとで述べる5000万戸(新築の5年分)という、膨大な売れ残り在庫が、世帯に売れるときの価格を統計したら中国のGDPは、2ポイントは低下するでしょう。
住宅価格の過大見積もりという要素で、6.5%が4.5%の成長になるということです。
それとともに、銀行とノンバンクの不動産融資は不良化し、リーマン危機のような金融危機に向かいます。不良債権は200兆円以上になるかもしれません。
Next: 着々と金融危機に向かう中国。そのいびつな経済構造とは
一方でローン残高は、過小に集計されている
住宅ローンの残高は、2016年で20兆元(320兆円)とされていますが、これは日本とあまり変わらない額です。
米国が1000兆円ですから、中国は、その1/2の500兆円はあるでしょう。店舗やオフィスの商業用不動産のローンは含んでいません。
中国では、GDPの中に占める、住宅と不動産投資、および道路や鉄道、電力、通信などの社会インフラの投資率が異常に高く、45%です(日本では20%:米国では15%)。代わりに、個人消費の構成比が少ない。
固定資本投資額がGDPの40〜45%(※日本は約20%)
2018年の名目GDPは13兆ドル(1430兆円;日本の2.6倍、米国の2860兆円の半分)です。
固定資本投資は1年分で、日本のGDPを超える570兆円(40%)を占めています。そのための資金が、(1)企業負債、(2)政府負債、(3)個人負債の、増加の原因になっているものです。
特にリーマン危機のあと、企業負債の増加率が高い。金融危機になった米欧への輸出の減少を、中国政府は、住宅建設、商業用不動産、政府の固定資本の増加でうずめる政策をとったからです。
計画経済の中国では、政府の政策は、時間差なく、企業の投資行動になります。人民銀行が元を刷って銀行に貸して、銀行は増えたマネーを企業に貸す。これが08年のあと、企業負債の増え方が大きくなった原因です。この点も、政策の波及時間が長い先進国と違います。
人民元の増刷は世界一のスケール
人民銀行のB/S(資産=負債)の規模は、元発行の金額を示します。2017年5月で、580兆円に膨らんでいます。米国のFRBが4.14兆ドル(455兆円)、日銀が553兆円です(19年1月)。
※参考:https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2019/ac190110.htm/
5年間、世界の中央銀行の、約100年の歴史で、異例な異次元緩和を行っている日銀より、人民銀行の通貨発行が多い。住宅建設、商業用ビル建設、道路、電力、通信の固定資本投資を増加させるための元の増発を行ったからです。
ドル準備で元を発行している
日本や米国では、中央銀行が通貨を増発するときは、代替資産として国債を買います。ところが中国では、人民銀行がドル債を買って元を発行しています。人民元は、世界にはあまり知られていませんが、ドル準備制の通貨です。
理由は、元と中国国債は、資本が自由化されてないので、国際的な信用が低いからです。資本の自由化とは、企業や個人が自由に、外貨を買うことができることです。
政府は「中国人の、ドル買い/人民元売り」を恐れ、外貨への交換に制限を加えています。
資本を自由化すると、ホンネでは共産党政府と人民元の価値を信用していない富裕者の多くが「ドル買い/元売り」に殺到するからです。海外への留学と移住が多いことからも、わかるでしょう。
Next: 増え続ける売れ残り新築。中国の資産バブルが巨大な貧富格差を生んだ…
増えすぎた経済主体別の負債
こうした通貨シナリオを知っていれば、中国共産党は、以降で示す、リーマン危機のあとの不動産投資による負債の急増を、冷静に眺めることもできるでしょう。バブルの崩壊からの失業が引き起こす、天安門のような民主革命の恐れがなくなるからです。
政治・経済の体制の転覆であり下克上でもある民主革命は、計画経済の中で失業した、あるいは所得が減った貧者の連合の、富者への反感が起こすものです。中国では、資産バブルにより巨大な貧富の格差が生じています。
<中国の主体別負債:リーマン危機後から2年ごと(単位:10億ドル)>
2008年 2010年 2012年 2014年 2016年 2018年
——————-
政府 1,162 1,749 2,646 3,697 5,021 6,428
世帯 767 1,359 2,227 2,312 4,706 6,629
企業 3,928 6,429 9,818 14,096 18,090 22,052
——————-
合計 5,837 9,537 14,692 21,105 27,817 28,681
——————-
GDP比 145% 180% 187% 205% 255% 239%
——————-
データ:BIS(国際決済銀行)※ここでは2年ごとに示した
世界中の、部門別負債の大きなエクセルなので、分かりにくい元データが公開されています。BISの中国の負債データには、偽装はないと考えています。日本でも、順次、新聞が書くようになってきました。当方は、ほぼ4年前から、講演や書く時に使っています。
※参考:https://www.bis.org/statistics/totcredit.htm
中国では、建設会社が建物の骨組みを売り、買った人が内装と設備をします。このため、売れ残って夜間に照明がつかない骨組みだけの建物は、幽霊の屋敷に見えるので、「鬼城」と言われます。
建設する企業部門の負債は、2008年は3.9兆ドル(429兆円)と、GDPに対して97%と他国よりは大きかったものの、まぁまぁ妥当での線。
これが、2018年の3月には、22兆ドル(2420兆円)に膨らみ、GDP比184%という残高になっています。年平均の増加率は21%と、GDPの増加である10%程度の2倍です。平均増加額は、2兆ドル(220兆円)です。GDP比で1.8倍の企業部門の総負債は、日本の国債(GDP比約200%)と同じく、異常な大きさです。
企業の負債は、なぜ10年間も、年率20%という高さで膨らみ続けてきたのか。年1,000万戸の住宅建設、商業用不動産建設、インフラ投資のためです。
しかし、住宅建設では、それが売れれば、建設会社の負債は減って、世帯の負債に置き換わります。世帯の負債の増加は2008年に7670億ドル(84兆円)から6.6兆ドル(726兆円)です。
年平均で、71兆円の増加でしかない。他方で。多い建設業を含む企業の負債は、1年に220兆円という速度で増加しています。「近代化の経済」では、住宅、ビル、道路や電力の土木・建設業が多くなります。日本でも1980年代まで建設業は600万人でした。現在は500万
人。
なぜこんなに企業の負債が増えたのか。年平均1,000万戸の建設した住宅に、鬼城のままの売れ残り在庫が出ているからです。
新築の価格は、多くが売れていないので、下がっていない。毎年、新築が行われている新しい価格の統計だからです(筆者注:NYの調査会社によると、上海では、2018年の新築価格は、前年比で8%下がっているという調査が出ています。これは、まだ政府統計には入っていません)。
Next: 住宅在庫5,000万戸の衝撃。国有企業の負債も増え続けている
住宅在庫が5,000万戸
18年の12月に、ブルームバーグから、驚くべきデータが公表されました。中国の住宅在庫が5000万軒というものです。調査したのは、中国の西南大学の甘犁教授という。重慶市にある、この大学は、中国の失業率でも、本当を示すデータを出しています。
5,000万戸は、中国の全住宅の22%、1年で行う1,000万戸建設の5年分です。
※参考:https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-09/PHWXGI6TTDSF01
一級都市の北京、上海、広州での、政府の在庫統計は、5か月分から10か月分でした。もっとも多いシンセンでも、20か月分です。しかしこの在庫が、全中国で5000万戸、新築の5年分という。
(筆者注:日本も、全住宅の13%・新築の8年分にあたる800万戸の空き家がありますが、中国とは、要因が違います。日本は、人口減と老朽化による空き家です。中国では、GDPを増やすための政府が音頭をとった「建て過ぎと価格高騰」が原因の空き家が多い。政府・銀行が、「貸付金」を増やしたからです。)
これで、中国の企業負債が、毎年平均2兆ドル(220兆円)増える一方で、減らない理由が分かりました。
作った物件が、約5年分も売れ残っていたのです。普通の世帯が買うことのできない価格(年収の10倍から15倍以上)の新築価格だったからです。
売れていないから、価格は最初のまま統計され、次のまた上がった新築価格になっているのでしょう。売れなければ世帯のローンには振り替わらないので、企業の建設費の負債が増えるままになります。
商業用の不動産でも、急激に伸びているアリババなどのネット販売によって、客をとられ、閑古鳥が鳴いているショッピングセンターが多いという。これも、企業部門の負債の増加になります。利益が出ず、借金を減らすことができなくて、運転資金借り入れが増えているからです。
こうした不動産が、投げ売りするしかない不良在庫にならないのは、政府の意向で動く、計画経済の銀行が企業に対して、利払いの分の追い貸しをしているからでしょう。他の国では、資金繰りのために投げ売りになります。
銀行からの追い貸しが続く間(企業負債が増える間)は、新たな借入金で利払いができるように見えるので、不良債権ではない。GDPの70%を生む国有企業の負債は、年220兆円という異常な金額で、膨らみ続けています。
Next: 住宅価格崩壊は高騰中の都市部から。そして今後、価格が上がる見込みはない
価格下落の端緒は、最も住宅が高くなっている上海・香港・シンセン
最近10年で3倍に上がり(年12%上昇)、中国でもっとも高い香港の住宅価格は、2018年の8月のピークからは5%下げています(大手仲介業の中原不動産より)。※参考:WSJ2018年11月27日
戸籍人口2,418万人という上海の新築物件も、10%下げています。売れていない在庫が、もっとも多いシンセンも下げているはずです。なお中国の都市人口は、無戸籍(農村戸籍)を含むと約20%は多いでしょう。中国人には居住地の自由はないからです。
2019年は、中国住宅価格が下がる開始年でしょう。中国の総人口は、2018年から、日本の8年遅れで減り始めています。
世帯所得の増加率も年10%の期待から、商品生産の粗利益であるGDPの伸び率の低下に対応して、5%程度かそれ以下に下がってきているからです。
<期待所得の増加率は低下>
所得の、期待上昇率の低下への認識は、年収の10倍から20倍の高い住宅を買ってローンを組むことを、押しとどめます。共稼ぎを想定した男性は10年後、20年後の住宅価格と、所得の上昇を期待して(織り込んで)、住宅を買っているからです。
中国に多い共稼ぎで、無理なく買える住宅価格は、大都市部で、共稼ぎ700万円の年収の5倍から6倍までです。中国では、住宅を買うことが結婚の条件ですが、価格が上がってしまった30歳以下の世代には、これが果たせなくなっています。
<今後、住宅価格が上がる、需給面からの要素はない>
2019年に、中国の新築住宅価格が上がる要素はあるでしょうか。
(1)米中貿易戦争で、輸出が減り、所得を決めるGDPの伸びは低下する
(2)増え続けていた中国の人口が、横ばいから下落に入ったことにより、増え続けていた住宅の需要動機が下がり、少しずつ減少に向かう
ということは決定的な要素です。
国連は中国の人口は、2020年からピークになり、減少は2030年からとしていましたが、現実では、12年早まっています。1人の女性の出生率が1.28と日本の1.41よりも相当に低く、幼少人口の減少に慌てた政府が一人っ子政策を停止しても、子供の誕生が過去の想定より減ってきたからです。
※参考:https://toukeidata.com/country/china_jinkou.html
人口減は0.2%や0.3%と低いように見えても、平行する住宅価格の下落率では、年10%と高くなります。これが、シンセン、香港、上海で先駆けて起こっている下落でしょう。
住宅は「1年に10%は上がるという期待」から、賃貸しの投資用としても多く買われてきました。「10%下がるという予想」になると、中の上の所得クラスの人で二軒目三軒目、富裕者の10軒目や20軒目の新築住宅購入が、大きく減ります。
Next: 富裕層の住宅投資も大きく減少へ。中国不動産バブル崩壊はすぐそこか
富裕層の住宅投資も大きく減少する
中国では、2014年ころまで、先進国以上に富んだ階層の投資・賃貸住宅の買いが多かった。世帯の居住のための需要より、価格が高く上がっていた理由でもあります。
需要数が減れば、売れる住宅価格は10%、15、20%、30%と価格が下がります。これが、2018年秋から2019年にかけ、新築価格ピークアウトしたあと、起こることでしょう。
政府が管理している新築住宅価格に、需要数の急減が反映されることはなくても、実際の売買市場では、下がって行きます。数年後は、新しく作られる新築価格も、大きく下げるでしょう。全住宅の5戸に1戸の割合にもなる、5000万戸の空き家が価格低下に及ぼす圧力は巨大です。
住宅価格の下落は、景気循環からでなく構造要因から
景気の減速がもたらす住宅価格の下落なら、回復もあるでしょう。2019年からの下げは構造的なものです。
日本では、200万戸/年だった新築が、1980年代末に、今の中国と同じ需要の構造変化から80万戸から100万戸に減っています。平均価格も年収の6倍から6倍で買うことができる価格(約半分)に下がりました。
同じことが、2019年からの中国で起こります。景気循環の問題ではないのです。
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2019年1月配信分
毎月勤労統計がウソだったとしても(1/18)
原油価格下落への満足感が続く限り(1/17)
政治の膠着、焦れた買戻しを呼ぶ(1/16)
今年、国債暴「騰」が気になります(1/15)
海鮮丼にはなれない日本株(1/11)
トランプの「お行儀」とFedの利上げ路線(1/10)
米中楽観・景気慎重、昨年とは逆の心理(1/9)
ビットコインとエスペラント語(1/8)
柔軟という名の行き当たりばったり(1/7)
原油安、喜ぶトランプ、下げる株価(1/4)
https://www.mag2.com/p/money/628666/6
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