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(回答先: あなたがAIデバイド「下層」に入る日 すぐそこまで来ている「新デジタル格差社会」日本人が取り戻すべき「人の力を引き出す 投稿者 うまき 日時 2019 年 1 月 15 日 19:36:47)
官営ファンド意味なし!世界ではもう結論が出ている
産業革新投資機構の失敗は起こるべくして起こった
2019.1.14(月) 加谷 珪一
(加谷 珪一:経済評論家)
官民ファンドの「産業革新投資機構」が空中分解した。所管する経産省と民間出身の経営陣との間に埋めがたい溝ができたことが主な原因である。市場原理に照らして官営ファンドに意味があるのかという話は、以前から議論されてきたテーマであり、世界的にはほぼ結論が出た状況にある。今回の失敗は起こるべくして起こったとみてよいだろう。
報酬をめぐる対立は問題の本質ではない
産業革新投資機構は、前身の産業革新機構を改組して出来上がった組織である。経済産業省は同機構が高い成果を上げられるよう、高額報酬で民間から優秀な経営陣を招聘するという方針を打ち出し、こうした呼びかけに対して集まったのが、今回、辞表を提出した経営陣である。
ところが経産省は、当初、提案していた高額の役員報酬を撤回。対応に不審感を抱いた経営陣との間に溝ができてしまい、民間出身の全役員が辞表を提出するという事態に発展した。
経営陣の怒りは激しく、辞任会見に臨んだ田中正明社長は「日本国政府の高官が書面にて約束した契約を、後日一方的に破棄し、さらには、取締役会の議決を恣意的に無視するという行為は、日本が法治国家でないことを示しています」と激しい口調で政府を批判した。
経営者がいない状況で業務の遂行は不可能であり、経産省はこうした事態を受けて、2019年度に予定していた1600億円の関連予算を取り下げる考えを明らかにした。同機構は発足とほぼ同時に空中分解してしまった。
表面的に見れば報酬でモメたということになるが、田中氏は元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長で金融庁の参与も務めた人物であり、取締役会議長にはコマツ相談役の坂根正弘氏が就任している。どちらも財界の大物であり、役員報酬の金額そのものは大した問題ではないだろう。
経産省の対応に激怒したということであり、この問題はガバナンスの本質的な部分と密接に関係している。
発足と同時に空中分解するとは誰も考えてなかったかもしれないが、経産省と経営陣に大きな溝ができることは当初から、ある程度、予想されていた。というのも、産業革新投資機構の経営陣の選定プロセスそのものが、経営に対する政府介入の排除を目的としたものだったからである。
なぜそのような状況になったのか理解するためには、同機構が出来上がった経緯について知る必要がある。
ニワトリが先かタマゴが先か
同機構の前身組織である産業革新機構が設立されたのは2009年のことである。官民ファンドという呼び名もその時に政府が用いたものだが、「官民」と銘打っているものの、実質的には政府が出資する国営ファンドということになる。
ファンド設立の目的は「先端技術を使った新産業の創出」とされており、ベンチャーキャピタル的な要素が多分にあった。つまりグーグルやアップルのような企業を発掘し、そこに思い切って投資を実行することで、日本の新しい産業基盤を確立しようという野心的なプロジェクトである。
筆者自身、かつてベンチャーキャピタル・ファンドの運用に従事したことがあるので、実感としてよく分かるのだが、こうしたファンドについては常にニワトリとタマゴの議論となる。
日本に有望なベンチャー企業が少ないというのは昔から指摘されてきたことだが、その理由としてよく指摘されるのが、リスクを取って投資するベンチャーキャピタルが少ないという問題である。一方、そうしたファンドを運用する側からすると、投資したくても、それにふさわしい会社がなく、投資そのものが実行できないという話になる。
米国のように新産業の創出がうまくいく国の場合、ニワトリとタマゴ(つまりファンドと起業家)のどちらも揃っているのだが、案の定、産業革新機構も設立早々、この問題にブチ当たった。政府が巨額のカネを用意したにもかかわらず、優良な投資先が見つからなかったのである。
こうした状況に陥った場合、ファンド運用者が誠意を持って対応するならば、投資を見合わせるという判断にならざるを得ない。見込みのない企業に投資することはできないからである。
民間のファンドであれば、有望な投資先を見つけられない場合、投資家からの評価は下がるので、期限が来た段階でファンドは解散することになるだろう。だが、税金という無尽蔵の原資を持つ役所にはそうしたメカニズムは働かない。一旦付けた予算を撤回することは、省益の喪失を意味するので、よほどのことがない限り、撤退という決断は下されない。
結果として産業革新機構が行ったのは、ジャパンディスプレイやルネサスエレクトロニクスなど、経営が傾いた旧来型産業に対する湯水のような資金提供であった。
市場に関する話は市場に任せる以外に方法はない
新組織の産業革新投資機構の設立に際して、田中社長は「(前身の産業革新機構では)1件1件の投資にも経済産業大臣の意見が必要という仕組みが投資をやりづらくしてきた」と述べており、ジャパンディスプレイやルネサスエレクトロニクスの反省を踏まえ、政府介入を排除する仕組みの構築が念頭にあった。それにもかかわらず、いきなり報酬という重要案件で政府のスタンスが二転三転した状況を考えれば、経営陣が不審感を抱いたとしても不思議はない。
では、同機構の経営陣が主張する通り、政府が直接、経営に介入しない形であれば、機構の運用はうまくいくのだろうか。筆者はそうは思わないし、市場メカニズムをよく知る人間であれば同じ結論になる可能性が高い。
投資案件が経営陣に一任されるということは、仮に投資に失敗して、ファンドに大きな損失が発生したとしても、出資者である政府はこれを受けれることを意味している。だが、ファンドに投じる資金は国民から徴収した税金であり「投資で失敗しました」といって許される類いのものではない。
税金という公金を投入している以上、政府がファンドの運用に関与しようと試みるのは当然だが、ここで生じてくるのが、果たして、政府にファンドを運用したり評価する能力があるのかという問題である。
もし、公務員が、市場で鍛えられたプロのファンドマネージャーよりも投資に対して高い能力を発揮できるというなら、そもそも民間が投資をする意味がない。実際、そうした考え方に基づいて、経済を運営してきたのが、旧ソ連に代表される共産圏や太平洋戦争中の日本である。
試験で選抜された学歴エリートが最適な資源配分を計画的に考え、政府の権限に基づいて統制経済を運営した結果がどうなったのかについては、今さら説明するまでもないだろう。こうした多くの試行錯誤を経て、市場メカニズムに関する話は市場に任せるしかない、という深遠な結論が得られている。
政府だけでなく世論もそれを求めていた
つまり、政府が口を出すファンドである以上、そもそも同機構はうまくいかない可能性が高いのだ。もし同機構を適切に運用しようと思うなら、原資が税金であってもリスクマネーの原則を適用し、巨額損失が生じても、国民はそれを甘んじて受け入れるしかない。
投資というのはそういうものであり、その覚悟を持った人にしか参加資格はないので、その覚悟が国民に存在しないなら(言い換えれば政府が国民に対して事情をしっかり説明し、国民を納得させる自信がないのなら)、官営ファンドは設立すべきではない。
官が民に口出しすべきではないという話は、何十年も前から繰り返し議論されてきたものだが、日本の状況はいつまで経っても変わらない。これは、民の市場にむやみに介入しようとする政府の側だけでなく、国民の側にも問題があると考えた方よいだろう。
産業革新機構が設立された当初、世の中には「官民をあげて日本の技術を世界へ!」など、目がくらむような官営ファンドに対する賛美の声が溢れかえっていた。当時も、官営ファンドの運用について疑問視する声は一部から上がっていたが、情緒的、扇動的な世論に押されて顧みられることはなかった。
一国の経済というのは、国民一人ひとりの経済活動の集大成として形成されるものであり、景気を良くするのも悪くするのも、最終的には国民自身の行動にかかっている。官民が総力をあげて取り組めばよい成果が得られるというのは単なる精神論であり、自己に対する甘えでしかない。
本当に強い経済を作るためには、適切な市場環境を維持し、各経済主体が競争を通じて能力を高めていくしか方法はない。それが実現できれば、ホンモノの起業家も出てくるだろうし、そこに投資をするリスクマネーにも不自由しないはずだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55189
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