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知っておくべき年金改革:現役時代の給与が少ないほど年金の目減りも大きい!? <2020年の年金改革に向けた議論の状況と残された課題> https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/01/2020-10.php 2019年1月11日(金)18時00分 中嶋邦夫(ニッセイ基礎研究所) ニューズウィーク 再来年にも制度改正が行われるが、このままでは基礎年金が大幅に減少して逆進性が高まる itasun/iStock. <2019年は、5年に1度の公的年金の財政検証が行われる年である。年金部会ではパート労働 者や高齢者の就労と関係した論点を扱ってきたが、基礎年金の大幅低下という難しい論点が 残っている。基礎年金の大幅低下は、多くの受給者に逆進的な削減をもたらす重要課題である> 2019年は公的年金の将来見通し作成(財政検証)の年であり、早ければ2020年に制度改正が行わ れる。現在は社会保障審議会の年金部会が議論を重ねており、主な論点は、財政検証に用いる 前提と、財政検証と同時に行われるオプション試算(仮に改正した場合の影響の推計)の内容で ある。前者については、同部会の専門委員会で議論が進められ、具体的な設定方法がまとまり つつある。一方、後者については、論点は提示されているものの、具体的な姿がまだ見えない。 前回(2014年6月)の財政検証の前後には、2013年に成立した社会保障制度改革プログラム法に 掲げられた4つの検討項目を考慮して、年金制度の見直しが検討された。しかし、最終的な制 度改正には年金部会で検討された項目の一部しか盛り込まれず、いくつかの課題が残された。 加えて、2016年改正後の閣議決定などで、年金制度の追加的な見直しの検討が明示されている。 例えば、企業への影響が大きい短時間労働者(パート労働者)への厚生年金の適用拡大について は、正社員501人以上の企業での実施を決定した2012年の改正法の附則に、2019年9月末まで に更なる拡大を検討することが盛り込まれた。その後に閣議決定された「ニッポン一億総活躍 プラン」(2016年6月)や「骨太の方針2017」(2017年6月)でも、検討や措置を講じることが盛 り込まれている。2018年4月に招集された第4次年金部会では労働分野の専門家が複数追加さ れ、同年9月に開催された同部会では「別途の検討の場」の設置などが議論されたが、それ以 降は具体的な動きが見えない。前述した検討期限までに企業規模等の具体的な条件が提示され るのかや、オプション試算に具体的な条件が反映されるのかなどが、今後の注目点となる。 また、高齢者の就労促進と年金の関係については、2018年2月に閣議決定された高齢社会対策 大綱に、70歳以降の受給開始を選択可能にするなどの柔軟な受給方法や在職老齢年金のあり方 の検討が盛り込まれた。これらは同年10月と11月に開催された年金部会で議論されたが、賛否 両論があり、具体的な結論には至らなかった。今後は、これらの見直しの採否や具体的な内容 (70歳以降の繰下げ受給の割増率や在職老齢年金の具体的な見直し内容)が、注目される。 このように、短時間労働者(パート労働者)への厚生年金の適用拡大と高齢者の就労促進につい ては、具体的な結論には至っていないものの、年金部会で議論されている。その一方で、将来 の基礎年金の水準が大幅に低下する問題への対処は、まだ議論されていない(12月20日時点)。 2014年の将来見通しでは、経済が改善する前提で、基礎年金(1階部分)の給付削減は2043年ま で続き、給付水準が2014年と比べて▲29%、実質的に低下する見込みとなっている。他方、厚 生年金(2階部分)の削減は2019年度頃に終わり、給付水準の低下が▲3〜5%にとどまる見込 みである。この結果、世帯年収別に見た年金額全体の実質的な低下率は、図表2のようになる。 このように、厚生年金より基礎年金で給付水準の実質的な低下(目減り)が大きいことは、会社 員OBの中でも現役時代の給与が少ない人ほど、年金額全体の目減りが大きいことを意味する(太字は編集部、以下同じ)。現役時代の給与が少ないと厚生年金の金額が少なく、年金全体に占める基礎年金の割合が大きい。他方、目減りの程度は厚生年金より基礎年金で大きい。この2つを合わせると、現役時代の給与が少ない人ほど年金額全体の目減りが大きくなる。つまり、逆進的な給付削減になる。前回改正では、基礎年金の適用期間を現行の20〜59歳から5年間延長し、その分だけ基礎年金の水準を底上げする案が検討されたが、国庫負担の増加を理由に法案化が見送られた。 この問題は、原因が基礎年金の大幅低下であるため、自営業など基礎年金だけ受給する人の問 題だと考えられがちだ。しかし、基礎年金は受給者全員に共通した年金である。加えて、基礎 年金の受給権者のうち加入期間が自営業等(第1号被保険者)の期間だけなのは、全受給権者の 約1割、2017年に65歳になった受給権者では約4%に過ぎず、受給者の多くは、この逆進的な 給付削減の影響を受ける。前述した社会保障制度改革プログラム法では、明示した4項目以外 の「その他必要な事項」についても「検討や必要な措置を講じること」としている。この逆進 的な給付削減の問題が「その他必要な事項」に該当するか否かや、国庫負担の増加を理由に見 送らざるを得ない問題なのかについて、年金部会での議論を期待したい。 *この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。 [執筆者] 中嶋 邦夫 (なかしま くにお) ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任 |
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