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日立製作所によぎる、海外巨額買収で経営危機に陥った“東芝の悪夢”
https://biz-journal.jp/2019/01/post_26182.html
2019.01.09 文=編集部 Business Journal
日本企業の成長戦略の柱が、買収である。M&A(合併・買収)を多用して事業のグローバル化を加速する。そんな欧米では当たり前の経営手法が、日本の伝統的な大企業でも定着するかが問われている。
M&A総合研究所(東京・渋谷)は「M&Aによる巨額買収ランキング(2018年最新版)」をまとめた。
日本の巨額企業買収ランキングは、以下の通り。2018年に買収の発表があったものが対象で、まだ取引が完了していないものについても載せている。
【M&Aによる巨大企業買収ランキング〜日本編】
※以下、発表日、買収企業、被買収企業、売買金額、買収先業種
(1)4月、武田薬品工業、シャイアー(アイルランド)、6兆8000億円、ヘルスケア
(2)9月、ルネサスエレクトロニクス、IDT(アメリカ)、7330億円、ハイテクノロジー
(3)1月、富士フイルムHD、ゼロックス(アメリカ)、6659億円、卸売・サービス
(4)7月、太陽日酸、プラクスエア(スペイン)、6438億円、原料・材料
(5)2月、JERA、東京電力FP・火力発電事業、6289億円、エネルギー・電力
(注:IDTはインテグレーテッド・デバイス・テクノロジーの略。富士フイルムHDは富士フイルムホールディングスの略。東京電力FPは東京電力フュエル&パワーの略。資料:M&A総合研究所)
■武田薬品のシャイアー買収がダントツ
1位は武田薬品工業によるアイルランドの製薬大手シャイアーの買収。4月に両社は買収に合意。武田薬品は12月5日に開いた臨時株主総会で買収を決議した。買収額は約6兆8000億円で、日本企業による海外企業の買収としては過去最高。このM&Aで武田薬品は、消化器や中枢神経系を強化するとともに、希少疾患の製品とパイプライン(新薬候補)を獲得。製薬業界の中で世界第8位の売上規模になる。
2位はルネサスエレクトロニクスによる、米半導体メーカーのIDTの買収。両社は9月に買収で合意。買収額は7330億円。日本の半導体メーカーとしては過去最大。ルネサスは車載用半導体では世界でもトップクラス。補完性の高いIDTの製品を取り込むことで競争力を高めることを狙う。
3位は富士フイルムHDによる米ゼロックスの買収。買収額は6659億円。1月に買収に合意したが、買収交渉は暗礁に乗り上げている。
「このM&Aの案件は、米ゼロックス経営陣が反旗を翻し、現在は両社の訴訟合戦に発展している。買収契約を結んだ時のゼロックスの経営陣は5月に退任。この富士フイルムHDの買収計画は、事実上破綻状態に陥っている」(M&A総合研究所)
第4位は三菱ケミカルホールディングスの子会社で産業ガスの製造・販売を手掛ける太陽日酸による米同業大手のプラクスエアの欧州事業の買収で6438億円。太陽日酸は欧州事業に参入し、欧州の産業ガス市場で16%のシェアを獲得する。一方、プラクスエアはドイツの企業との経営統合を計画。欧州での独禁法違反の懸念を緩和するため、売却先を探していた。
第5位はJERA(ジェラ)による東京電力FP・火力発電事業の6289億円の買収。JERAは東京電力と中部電力が共同で設立した火力発電会社。JERAが東京電力FPと中部電力から火力発電所の資産を買い取り、国内最大規模の火力発電事業者になる。
ランキングは11月末現在で作成されているが、12月にも大型買収の発表があった。
日立製作所は12月17日、発電所から家庭や工場に電気を送り届ける送配電システム事業を、世界最大手のスイスのABBから買収すると発表した。同事業の株式8割を7000億円で取得し、最終的には100%傘下に収める計画だ。18年の巨額買収ランキングで3位に入る買収額だ。
日立のような日本の伝統的な大企業で、海外での大型M&Aが成長戦略として定着するかの試金石となる。東芝が米国の原子力発電事業の買収失敗で経営危機に陥ったことは記憶に新しい。
世界に目を転じると、1兆円を超えるM&Aが目立つ。そのなかでも、武田薬品の巨額買収は世界ランキングで2位となる。ちなみに世界1位は、ユニリーバNV(オランダ)によるユニリーバPLC(イギリス)の906億ドル(約10兆円)の買収。ユニリーバはオランダとイギリスの両方に別組織の本社を持ち、2つの株式市場で上場していた。1年前にクラフト・ハインツから買収提案があったことから会社を一体化することにした。オランダのNVがイギリスのPLCを吸収する。
世界5位は携帯電話会社Tモバイル(米国)による同業スプリントの買収。スプリントはソフトバンクグループ(SBG)、Tモバイルはドイツのテレコムが株式の大半を握る。合併は株式交換方式で586億ドル(約6500億円)規模で行われ、スプリントが新生Tモバイルの100%子会社になる。
これにより、スプリントはSBGの子会社ではなくなるが、SBGは新生Tモバイルの株式を一部保有することになる。
(文=編集部)
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