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日本でキャッシュレスが広まらない理由 フジマキが解説〈週刊朝日〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190108-00000048-sasahi-bus_all
AERA dot. 1/9(水) 16:00配信 週刊朝日 2019年1月18日号
藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務努めた。2013年7月の参院選で初当選。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)
福岡県内の観光地に置かれた、中国人向けの電子決済「アリペイ」のQRコード (c)朝日新聞社
“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、キャッシュレス化を巡る日中の差を指摘する。
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「男は泣いちゃいけない。泣いていいのは財布を落とした時だけだ」。確か落語家の先代林家三平師匠のお言葉だったと思う。私は三井信託銀行入行後、初ボーナス20万円を現金でもらったその日、飲み屋からの帰りに落として号泣した。
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20年近く前、中国・天津郊外の大学に1週間、金融の講義に行ったことがある。日中友好事業の一環で、宿泊先の学生寮まで中国人通訳が案内してくれた。寮の管理人とインターホンでやりとりして鍵を開けてもらった後、通訳氏は「部屋は5階の○○号室。政府機関に登録が必要なので、パスポートを預かります。明日8時に迎えに来ます」と帰っていった。
エレベーターがなく重いスーツケースを5階へ上げたら、のどがからからに。部屋で水を飲もうとしたら、ポットにはレントゲンの撮影に使うような白い固体がたまっていて、とても飲めたものではない。
仕方なく、近所の店へ水を買いに出かけたところ、現金(人民元)の持ち合わせがないことに気づいた。支払いをしようとしても、地元商店街の人たちは円紙幣、トラベラーズチェック、クレジットカードのいずれも見たことがない様子。完全な現金決済社会で水は買えずじまいだった。
その中国がこの十数年間で、世界に冠たるキャッシュレス社会となった。いつの話だったか、はっきりと覚えていないが、米国のオバマ前大統領が訪中した際、「3年以内にVISAやマスターのクレジットカードを中国内で使えるようにする」と中国側からの約束を取りつけたとのニュースを記憶している。3年たっても、これらのカードは普及しなかった。しかし、クレジットカードを飛び越し、中国はQRコード決済(=店舗での支払時にスマホのアプリなどでQRコードを表示することで決済)の時代になった。
中国では、昔ながらの青空市場でモノを買う際も、決済になるとスマホを取り出してピピピと簡単に代金を支払える。そんな前近代的な取引形態と最新の決済事情とのギャップに、金融庁の遠藤俊英長官が中国視察の際に驚いた、との話が漏れ聞こえてくる。決済に関して中国は急発展した。
日本は相変わらずの現金社会が続いている。優れた印刷技術で偽札が出回ることはまれで、犯罪が少ないため大量の紙幣を持ち歩いても安全。キャッシュレス化の必要に迫られなかった。
一方で、現金決済はデメリットが多いことも事実だ。入金や引き出しのためにわざわざ銀行へ行く必要があり、時間的ロスが大きい。前日の売り上げを毎日銀行へ入金しに行く個人商店主も多いだろう。送金の際は現金書留で送るか、銀行口座にお金を入れなくてはならない。現金だとおつりの計算が大変だし、インフルエンザなどの伝染経路にもなりうる。脱税やマネーロンダリングも助長する。世界がキャッシュレス化しているのに日本だけ現金社会のままだと、外国人観光客が戸惑う……。様々なデメリットがある。
世界中が携帯電話を使っているのに、日本だけは固定電話に固執している。日本のキャッシュレス化の遅れについては、そんな認識が必要だと思う。
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