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史上最安値圏の邦銀株「PBR 0.4倍」は買いか
金融テーマ解説
大槻 奈那 2019/01/07
・昨年の邦銀株は‐28%と、TOPIXを大きく超えて下落。年始時点でも、業界平均PBRは0.4倍と、過去最低を記録した2016年半ばと同程度。PBRランキングでも地銀株等がPBR0.2倍で下位を独占。
・邦銀株が「清算価値」であるPBR 1倍を超えられないのには固有の事情もある。現在も低金利が続き、海外クレジットリスクの増加、運用難、個人業務への他業界からの参入等もあり事業環境は厳しい。しかし、足元では、利鞘低下幅の縮小や経費圧縮等で、これ以上の大幅な悪化も考えにくい。
・昭和末期の邦銀株は殆ど変動せず「株ではない」とも揶揄された。平成の30年間も内外金融危機と低金利の厳しい環境に置かれた。依然高成長は見込めないが、他業界と違い、倒産リスクが極めて低く、PBR的にほぼ底値。高配当は維持されるとみられる為、邦銀株は配当重視の長期保有を推奨。
昨年の邦銀株の下落幅は、リーマンショック後最悪
昨年、邦銀株は、TOPIXを大きく超える28%の下落を記録した(図表1)。リーマンショックのあった2008年に記録した43%の下落以来、10年ぶりの暴落である。平成期の30年間をみても、他業界の株価純資産倍率(PBR)が概ね1.0倍の清算価値で下げ止まるのに対し、邦銀株はこの10年間1.0倍を超えられずに推移している(図表2)。
特に昨年末にかけての下げはきつかった。年が明けてからやや持ち直したものの、1月7日の前場終値ベースのPBRは0.4倍と、マイナス金利導入直後の2016年半ばにつけた過去最低圏をなかなか抜けられない。東証のPBRランキングでは全銘柄中の最低位をほぼ独占している(図表3)。
昭和末期までの銀行株は殆ど変動せず(図表4)、かつ、銀行の格や利益水準によって株価の序列も決まっているなど、「株ではない」とも揶揄されてきた。ようやく「株」らしく変動するようになってからは、土地バブルの崩壊とリーマンショックという日米のショックに相次いで見舞われ、正常化に時間がかかった。この間、銀行株のPBRが東証の平均を上回ることはごく稀だった。
邦銀がPBR 1倍を割れ続ける理由
邦銀株がPBRが1.0倍を超えられない理由はいくつかある。
第一に、清算時点の資産価値がアテにならないということがある。他の業界なら、清算時に資産を売却すれば、現預金や土地建物など、少なくとも簿価程度のものは回収できると考えるのが自然だ。一方、銀行の場合、清算時点では、たいてい取引先の経営も悪化しており、貸出や有価証券等の保有資産価値が大きく毀損している。預金も減少し、それに合わせて流動性の高い優良資産から先に売却してしまうため、資産の劣化に拍車がかかる。このため、今の資産価値は清算時には維持できない可能性が高い。
第二に、邦銀はROEが極めて低い。資本の必要水準が定められているため、他業界のように、大規模な自社株買いで資本を圧縮してROEを改善するという手は打ちにくい。扱っている商品にイノベーションが少ないため、急に利益が切り上がることもない。
第三に規制業種であることが挙げられる。銀行の場合、経営が苦しくなれば増資や公的資金注入などで資本が増強され、PBRが更に低下する可能性がある。また、買収を企てるファンド等も少ない。安定株主が多い上、業務の制約が厳しく、収益が計画通り上がらなかった場合でも解散して資金を回収するなどということは難しいためだ。これらの結果、「PBR 1倍」は他の業界のようなバックストップにはならない。
今後の見通し:さすがに底入れ感
今後については、ある程度の規模の銀行で、現在のPBR0.2~0.4倍という今の水準を大きく割り込むリスクはさすがに低いと思われる。
短期的には、金利の更なる低下、海外を中心としたクレジットリスク増加や、運用難が重石となる。中長期的には、地方の顧客減少や、他業界から個人向け業務への参入などもあり、銀行の事業環境は引き続き厳しい。
しかし、足元では、利鞘低下幅の縮小や、ゆっくりとではあるが経費の圧縮などもあり、減益傾向にも歯止めがかかりつつある。
銀行業界は、たとえ低PBRでも、倒産リスクは極めて低い。減配リスクも、赤字に転落しない限りまず考えにくい。赤字リスクは、スルガ銀行ほど極端なコンプライアンス問題が生じない限り、当面なさそうだ。このため、現在の高い配当利回りが維持されることが期待できるだろう。
高配当維持の可能性は極めて高く、更なる還元強化も。配当重視の長期保有を推奨
特に、近年は、コーポレート・ガバナンスに対する見方が厳しくなっており、ISSなどの議決権行使助言会社もPBR 1倍割れ企業への対応を厳格化する可能性を示唆している(ISS「18/8/2議決権行使助言方針改定に向けたサーベイ」参照)。とはいえ、PBRの分母である資本を削ることが難しい中では、株価引き上げのため、あるいは、地銀の場合は地元の株主に報いるため、安定的増配を志向する可能性が高い。
預金金利と銀行株の配当利回りを比較するのは、株価変動リスクを無視する見方ではあるものの、これだけ下値が限定される中ではある程度可能だろう。配当利回りの預金金利からの乖離幅は、今や過去最高水準である(図表5)。難しい環境が続く邦銀株に大きなキャピタルゲインは見込みにくいものの、配当利回り重視の長期保有を推奨したい。(配当利回り上位銘柄を図表6に例示)
大槻 奈那
マネックス証券株式会社 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長 マネックスクリプトバンク株式会社 マネックス仮想通貨研究所所長
東京大学文学部卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学 経済学部教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。 著書: 『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、 『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
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日本株続伸、米中交渉期待や円高一服−輸出や資源関連株中心に上げ
長谷川敏郎
2019年1月8日 7:56 JST 更新日時 2019年1月8日 15:42 JST
中国の劉鶴副首相が交渉に予想外の出席、為替一時1ドル=109円
原油や金属など商品市況上昇、株式需給改善の見方も
Photographer: Takaaki Iwabu/Bloomberg
8日の東京株式相場は続伸。米国と中国の貿易交渉進展期待や為替円高の勢い一服、商品市況高から過度の業績懸念が和らいだ。輸送用機器や機械など輸出関連をはじめ、石油・石炭製品や非鉄金属、海運といった資源関連業種中心に高くなった。
TOPIXの終値は前日比5.90ポイント(0.4%)高の1518.43
日経平均株価は165円07銭(0.8%)高の2万0204円04銭
7日から始まった米中両国の通商協議に中国の劉鶴副首相が出席し、中国側が交渉を重要視していることが示唆された。7日のニューヨーク原油先物は1.2%高の1バレル=48.52ドルと6営業日続伸、ロンドン金属取引所(LME)の金属市況も高くなるなど、景気先行き懸念が和らぐとともに商品市況は上昇。きょうのドル・円相場は1時1ドル=109円と、前営業日の日本株終値時点108円20銭に比べて円高の勢いは一服した。
大和住銀投信投資顧問の門司総一郎シニア・エコノミストは「昨年11月以降の株価乱高下は、ヘッジファンド閉鎖に伴う換金売りと米中交渉の不透明感という2つの理由があった」と語る。そうした売り物が途切れる中で米金融政策期待など後押し材料が重なって相場が反転したことから、「一部のヘッジファンドは買い戻しを迫られている。米中交渉もお互いに決着させようという意志がみえる」と分析。足元の株価上昇は「日本株を含めたグローバル株式の底入れを示すものだ」との見方を示した。
TOPIXは昨年12月19日以来、日経平均は同12月20日以来の高値となり、年末年始にかけて乱高下を繰り返した株価は戻り歩調を強めつつある。丸三証券の服部誠執行役員は「需給面が落ち着いてきている。PBRなどから判断して日本株はファンダメンタルズの悪化を過度に織り込んだ部分がある」とし、「3月までは日経平均で1万9000−2万1000円のレンジ相場に移行するだろう。今回の米中協議で悪い話が出なければ、当面はレンジの上限を目指す動きになりやすい」と予想した。
もっとも、TOPIXと日経平均の上昇寄与度首位はソフトバンクグループで、株価指数先物主導の色彩も強かった。「相場の先行き不透明感は晴れていない。足元では国内投資家は積極的に動いておらず、ショートカバー主体の動き」とも、丸三証の服部氏。バイオ関連株の活況も、先行き不透明感が残っている表れとみていた。
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東証33業種では石油・石炭製品や精密機器、海運、情報・通信、機械、輸送用機器、証券・商品先物取引が上昇
陸運、空運、食料品、パルプ・紙、化学、建設は下落
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https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-08/PKYJ246TTDS401
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