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マネックスを蝕み始めたコインチェック買収…株価暴落、「凄まじい儲け」幻想崩壊
https://biz-journal.jp/2019/01/post_26089.html
2019.01.01 文=編集部 Business Journal
ネックスグループ・松本大社長兼CEO(左)とコインチェック・和田晃一良社長
(写真:つのだよしお/アフロ)
マネックスグループが2018年4月に完全子会社にした仮想通貨交換業者、コインチェックは10月30日、停止していたサービスの一部を再開した。新規口座開設とビットコイン、イーサリアム・クラシックなど4種類の仮想通貨による入金、イーサリアム・クラシック、ライトコインなど3種類の仮想通貨の購入が可能になった。今秋から9種類の通貨の入出金や売買を再開した。
ただ、仮想通貨交換業登録の審査は長引き、金融庁は年末になってようやく改正資金決済法に基づく正式な登録業者として認める方針を固めた。免許業種に準ずる厳格な審査が行われ、コインチェックはそれをクリアしたことになる。
マネックスGは大規模な不正流出を起こしたコインチェックを、4月に36億円プラスアルファで買収し、この秋に一部のサービスの再開にこぎ着けた。この間、取り扱う仮想通貨の選定基準を見直したほか、外部の専門家の協力を得てシステムの再構築、サイバーセキュリティ推進部や全社のリスクを把握するリスク委員会を設置した。社員数は1月時点の2倍の250人に増員した。
しかし、早期に業務の全面再開ができなかったことから、システム開発費、人件費などのコストがかさんだ。そのため、コインチェックの業績は悪化。コインチェックの収益を反映するマネックスGのクリプトアセット事業の4〜9月期の決算は赤字だった。出金・送金手数料などの受入手数料、仮想通貨の売買差益などのトレーディングの収益を合わせた営業収益(売上高に相当)は12億5600万円。販売費及び一般管理費は22億4400万円。そのほかの収益が1億4000万円。税引き前損益(セグメント損益)は8億4700万円の赤字だった。
半年前はまったく違っていた。同じ会社の決算なのかと信じられないほどの稼ぎぶりだった。
コインチェックの18年3月期決算は、営業収益が626億円で営業利益は537億円。1月に流出した仮想通貨ネムを個人投資家に補償したことで437億円の特別損失を計上したが、それでも純利益は63億円あった。17年3月期に比べて営業収益は64倍、営業利益は72倍。仮想通貨交換業者の凄まじい収益力に、世間は驚かされた。
マネックスグループは、この収益力の高さに目をつけ、4月にコインチェックを買収した。当初6月をメドにしていたコインチェックの仮想通貨交換業者への登録は、年末になってゴールが見えてきた。
マネックスの株価はコインチェックを材料視して激しく乱高下してきた。買収したコインチェックの収益が寄与するとの期待から、5月8日に735円の年初来高値をつけた。コインチェックの赤字決算を受けて、10月29日に一時、前週末比14%(64円)安の399円まで急落した。5月の高値から5割弱下落したことになる。
ところが10月30日、コインチェックが一部のサービスを再開すると発表したとたん、株価は後場に急騰。一時、前日比12%(80円)高の480円と反発した。12月20日の終値は367円である。
年間の高値は、前述の5月8日の735円。安値は1月4日の321円となっている。
コインチェックの18年3月期の凄まじい儲けぶりが個人投資家の頭に焼き付いている。サービスを全面再開し、正式な登録業者になれば、「ボロ儲け間違いなし」と信じている個人投資家が、まだまだ存在するようだ。
■“仮想通貨バブル”が弾け、個人投資家は大損
仮想通貨を取り巻く環境は様変わりした。
11月6日付日本経済新聞は、「ビットコインの円建て売買はピークの25分の1に沈む」と報じた。
「特に仮想通貨離れが深刻なのが、若者を中心にバブルに沸いた日本市場だ。(中略)ビットコイン価格は3月を最後に1万ドルに届かず、6000ドル台で膠着状態が続く。17年に年間で15倍近くになった値動きをみて参入した個人も多くが含み損を抱える」
“仮想通貨バブル”のピークは、17年12月〜18年1月の2カ月間だった。一攫千金を夢見て参戦した個人投資家たちは、まったく当てが外れ、大損をした。彼らは仮想通貨市場に戻ってこないとみられている。
11月20日、1年1カ月ぶりに1ビットコイン=5000ドルを割り込み、3500ドル近辺まで下げる場面もあって、年初来の安値圏での取引に終始した。その後は下落に拍車がかかり、12月中旬に3100ドル台。ビットコインの価格は一時、ピーク時の5分の1となった。
投機マネーが消えれば、どうなるか。“株バブル”や“不動産バブル”の崩壊後、証券市場、不動産市場は長い間、低迷が続いた。“仮想通貨バブル”も同じだ。無から有を生み出してきた仮想通貨の価値は著しく低下。栄光の日々は夢のまた夢でしかなかった。
マネックスグループの2018年4〜9月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる営業収益が前年同期比7%増の264億円、純利益は13%減の17億円だった。信用取引の手数料を引き下げたことや、システム関連費用の増加が響いた。4〜9月の中間配当は前年同期より1円少ない2円70銭とした。
コインチェックの収益力に期待したが、思惑通りにはいっていない。マネックスGおよび松本社長の大いなる誤算だろう。
12月12日、マネックスGは事業戦略説明会を開いた。松本氏は、それでも「仮想通貨事業を国内外で拡大する」方向性を打ち出した。松本氏は「大きなビジネス機会がある」と持論を展開。「今後は米国やアジア地域で仮想通貨事業を本格化させたい」とも述べた。
松本氏はビットコインなどの価格急落を「あくまで一時的」とみているが、果たしてこの見立ては正鵠を得ているのだろうか。一方で「ビットコインは終わりの始まり」といったシビアな意見もある。
(文=編集部)
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