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WEDGE REPORT
人口減少の下で供給過剰の恐れはないか?「住民合意」の新しい枠組み作りの必要性
『どうなる首都圏のマンション』 その10
2018/12/31
中西 享 (経済ジャーナリスト)
首都圏のマンションはどうなるかについて、専門家にインタビューしてきた。今回は中長期的な視点も加えながら東京の将来を考えてみたい。予想されている中で確実なのが、東京都の総人口が2025年の1398万人をピークに減少に向かうことだ。地方から人口を吸収して発展してきた巨大都市・東京が、日本の人口が減っていく中で果たして輝き続けられるのかどうか。現状は、湾岸部でタワーマンションの建設が続くなどマンションの建設の勢いは衰えてないが、首都圏の経済成長が鈍化してくれば、供給過剰になり空き家だらけオフィスやマンションが林立する「虚大都市」化のリスクが高まる。
(Shin/Gettyimages)
「国際金融都市」
都心の開発計画を見ると、2025年以降に完成するプロジェクトが目白押しで、オフィスビルがどんどん建つ予定になっている。みずほ証券の予測によると、東京オリンピックの終わった2021年以降も23区内では大規模開発が完成する見込みで、2022年〜24年のオフィスビルの供給量は2017年の95万平方メートルを上回るとみている。
これだけ増えるオフィスの需要を賄うために小池百合子東京都知事が推進しようとしているのが「国際金融都市 東京」だ。昨年11月にシンガポールで「東京版ビッグバン」を宣言し、「もう一度東京を活気ある国際金融都市にしたい」として、英国の金融街であるロンドンのシティとの間で覚書を締結した。かつてはアジアでナンバーワンの取引量を誇った東京の金融市場は、いまではその機能の一部をシンガポールや上海などに奪われつつある。この構想の実現が国際金融都市としての東京復活につながるかどうか注目される。
人口が減少しても日本全体の経済活動を示す国内総生産(GDP)が増えれば、国力の勢いは維持できる。政府が5月に出した名目GDP予測によると、2040年度には18年度経済見通しの564兆円より4割増しの790兆円になるとはじいている。これが現実のものになれば、人口が減っても日本経済のエネルギーはそれほど落ちないだろうが、エコノミストによるとこの試算はかなり甘めの成長率を織り込んでいるという。
カギ握る外国人
厚生労働省の発表によると、外国人労働者は128万人で、この5年間に60万人も増えた。雇用労働者数の約2%を占めており、農業、建設、外食産業ではなくてはならない労働力となっている。安倍政権は近く外国人労働者受け入れについての新しい方向性を打ち出すとしており、新しい在留資格の付与や、現在の資格の延長などが検討されそうだ。そうなると、これまでよりも長期滞在が可能になり、日本の生産人口の減少を下支えしてくれることになる。
またインバウンド(訪日外国人)は今後も伸びると予測、2020年の4000万人は「射程距離」になり、8兆〜10兆円の経済効果を期待している。2030年には6000万人という目標を掲げており、波及効果の大きい「第二の輸出産業」と位置付ける観光産業。インバウンドが果たしてどれだけお金を落としてくれるかも日本のGDPの行方を左右する。
東京一極集中減らす働き方
働き方改革に関連して、インターネット環境があれば職場に行かなくても別の場所や自宅でも仕事ができるようになってきている。テレビ電話を使った会議などができる「テレワーク」や、空いた時間を使って自由に好きなだけ働く「クラウドソーシング」が全国的に普及している。
日本経済新聞社の集計によると、ネット上で仕事を受注してネットで仕事の成果物を送信する「クラウドワーカー」と呼ばれる人は2018年末に500万人を超え、国内の労働力人口の7%以上を占める見通しだという。「クラウドワーカー」は離島にいても、地方の山奥にいてもネットがつながれば仕事をすることができる。こうした仕事のやり方がさらに増えれば、これまでのような東京一極集中にも変化が生まれるはずで、これは東京の人口増にはマイナスに働く。毎日「痛勤電車」に乗って都心に通わなくてもよくなり、都心指向にも変化が生まれるかもしれない。
かつてのように就職すると、定年を迎えるまで同じ会社に勤務し続けるというよりも、自分のキャリアアップを目指して会社や仕事を変える人も増えるとみられる。そうすると、ライフスタイルも変化し、その時のライフステージに応じて住まいも替える可能性が多くなる。となると、一人当たりの一生における住み替えの回数も増え、今まで以上に中古市場が活性化する。中古市場は新築以上に注目されるマーケットになることが予想される。
東京都の人口減少の将来予想の話をゼネコンにしても、担当者は目先の1、2年の販売を増やすことしかみていないようで、議論がかみ合わなかった。だが、一部の大手ゼネコンは通常のマンションに隣接して高齢者住宅を建設するなど、住民の高齢化を見据えたマンション作りも始まろうとしている。
対応遅れる行政
国土交通省はマンションの老朽化について予測数字を発表はしているが、人口減少により首都圏で必要となる住宅戸数がどのくらいになるのかといったシミュレーションは出していない。その象徴が、1971年に入居が開始され、人口が約20万人ある日本最大のニュータウンといわれた東京都郊外の稲城市、多摩市、八王子市、町田市に広がる多摩ニュータウンだ。ニュータウンの中の「諏訪2丁目住宅」は建て替えに成功したが、人口減少により一部「ゴーストタウン」化しているところもある。
国交省住宅局も老朽化対策にやっと取り組み始め、本年度にマンションの老朽化についての「総合調査」を実施、「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」を開いて、団地の再生方法、マンションの建て替えなどについて議論を開始、対策の必要性は認識している。
現在の法律では、マンションの大規模修繕は住んでいる住民の過半数、改修は4分の3以上、建て替えは5分の4以上、取り壊して住み替えは全員の同意が必要なことになっている。住んでいる人の考え方がそれぞれ異なる中で、これだけ多数の住民の意見を一つに統一するのは至難の技と言える。国交省内では、この合意条件を緩和することについてはまだ議題になってないようだ。これを変更するとなると、マンションという財産権についての議論になり、民法改正、さらには憲法29条で定める財産権をどうみるかにまで及び、法務省もかかわってくる。簡単に結論の出る問題ではなくなる。
東京都内のマンションストック数は2017年には約181万戸(総世帯数の約4分の1の相当)になり、都民の主要な居住形態になっている。このうち着工から40年以上経過したのが2018年に24万5000戸あり、2023年には42万8000戸に増える。
東京都都市整備局はこうしたマンション老朽化の予測を踏まえて、この7月に「東京都における分譲マンションの適性な管理促進に向けた制度の基本的な枠組み」を作成、条例化を視野に入れた施策を推進する。具体的には、管理組合が少なくとも年に1回は総会を開催して議事録を作成しているか、修繕積立金を設定して必要に応じて額の見直しをしているかなどについて、まず実態把握に努める。合意形成の見直しは、必要だとの認識はあるが、まだしばらく先の問題としかみていない。
富士通総研の米山秀隆・主席研究員が警告したように、マンションの老朽化問題は深刻化してくる。急に表面化はしないが長期修繕、建て替えをどうやって円滑に進めていくのか、そろそろ準備、検討を始める必要がある。その際に最大の課題になるのが、当該マンションに住んでいる住民のコンセンサスをどうやって取り付けるかだろう。
壮大な実験
しかし、マンションの建て替え、大規模修繕に関しては、それほどのんびりとは待っておられない。住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「この問題はいまからやっておかないと、大変なことになる」と指摘する。「合意形成」に関して例外規定を設けるなど、何らかの対応措置をそろそろ考えるべき時期に来ているのではないだろうか。
先進国の中で、日本ほど急ピッチで少子高齢化が進んだ事例はない。東京という大都市は大企業の本社が集中し、首都行政機能と経済機能が1か所にまとまり、働くにも住むにも便利な街として君臨してきた。その巨大都市も成熟化の時期を迎え、人口減少化の下で中枢機能を維持しながら世界をリードできる大都市に変われるかどうかが問われる。人口1000万人を超える東京で、過去に例のない世界で初めての壮大な実験が始まろうとしている。首都圏のマンションが将来にわたって資産価値を維持できるかどうかは、この実験結果にかかっている。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/14922
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