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安倍政権、BSEリスク高い米国産高齢牛の輸入制限を撤廃へ…頻発するBSE事例を無視
https://biz-journal.jp/2018/12/post_26069.html
2018.12.31 文=小倉正行/フリーライター Business Journal
今年に入って牛海綿状脳症(BSE)が2回も発生した。8月に米国フロリダで非定型BSEが発生。この発症牛は6歳齢であった。10月には英国スコットランドで定型BSEが発生。この牛は5歳牛であったが、飼料規制が行われているなかでの飼料を原因とする定型BSEの発生は、飼料規制が有効に行われていない可能性を示すものであり、憂慮すべきものであった。
非定型BSEは飼料を原因としない発生原因が不明な弧発タイプのBSEであるが、毎年EUでは8例前後の発生が続いており、米国、カナダ、ブラジルでも発生が認められている。このような非定型BSEも、人への感染性が認められている。依然としてBSEに対する警戒が必要であることはいうまでもない。
今、日本では30カ月齢以上の米国産牛の輸入を認めないという月齢制限が行われている。それは、30カ月齢以上の高齢牛はBSEの発症事例が多いからだ。8月にフロリダで見つかったBSE感染牛も6歳齢牛で月齢制限対象牛であり、日本に輸入されることは防がれている。
しかし、驚くべきことに、2013年以降行われていたこの月齢制限が撤廃されようとしている。舞台は食品安全委員会プリオン専門調査会。今年4月9日から食品安全委員会は米国産牛の月齢制限の見直し評価作業を開始し、6回の審議の結果、11月15日に月齢制限を撤廃したとしても「人へのリスクは無視できる」との評価結果を答申した。これによって月齢制限撤廃のお墨付きを与えたのである。
■政治的事情
この評価作業を食品安全委員会に要請したのは厚生労働省だが、背景には次のような政治的圧力があった。
それは、本年1月に開催された日米経済対話事務レベル会合であった。そこでトランプ政権の要望として米国産牛の月齢制限の廃止が提起されたのである。さらに、3月には米国通商代表部(USTR)が「2018年外国貿易障壁報告書」を発表し、そのなかで「すべての月齢の牛肉及び牛肉製品を受け入れ、市場を完全に開放するよう働きかけていく」と米国産牛の月齢制限撤廃を要求したのである。
来年1月から日米FTA交渉を開始する安倍内閣は、交渉の障害になるような事項はできるだけクリアしなければならないとして、米国産牛の月齢制限撤廃を受け入れたのである。そして行われた食品安全委員会での評価作業は、結論ありきであった。7カ月の審議期間中に前述のとおりBSEが2回発生したが、食品安全委員会は、「情報が限られている部分がありますので、引き続き、類似の発生がないことなどを注視していく必要はあると思います」「疫学調査の結果を待ってからでないと、なかなか確かなことは言えないのかなと思います」などとして十分な議論をしなかった。
国民の健康を守るためにも、厚労省と食品安全委員会の賢明な判断が待たれる。
(文=小倉正行/フリーライター)
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