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奇跡のサバ缶「金華さば」、日本中から注文殺到の秘密…売上が工場流失の震災前を大幅超え
https://biz-journal.jp/2018/12/post_26087.html
2018.12.29 文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント Business Journal
(左)木の屋石巻水産の「金華さば」缶・水煮 (右)木の屋石巻水産の「金華さば」缶・味噌煮(画像提供:木の屋石巻水産)
「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。
2018年もカウントダウンを迎え、今年を振り返る言葉や商品が次々に発表された。よく知られているのは「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会が選定)で、18年は「災」が選ばれた。京都市の清水寺で森清範管主(住職)が揮毫する姿は、12月の風物詩でもある。
食文化では「今年の一皿」(ぐるなび総研が選定)に「鯖(さば)」が選ばれた。こちらは、その年の日本の世相をもっとも反映・象徴する料理という位置づけだ。サバにはDHA、EPA、カルシウムなどが豊富に含まれ、健康機能性も期待できる。18年に国内各地で相次いだ台風や大雨、地震などの災害による、防災意識の高まりでも、サバ缶が注目された。
このサバ缶を製造するメーカーのひとつに、宮城県石巻市に本社がある「木の屋石巻水産」(以下、木の屋)がある。石巻港に近い本社工場が、11年の東日本大震災後の大津波で流失した経験を持つ。震災の翌年から同社の取材を続ける筆者は、15年2月12日付本連載記事『「命の缶詰」工場、震災直撃から奇跡の復活…驚異の行動力と多角化、何千人の支援』で、その復活劇を紹介した。
あれから4年弱。木の屋の業績は好調で、震災前の年間売上高を超えた。その理由は何か。取り組みを紹介しつつ、同社の主力商品「魚缶・鯨缶」の消費者意識も考えてみたい。
■被災後の商品が「命の缶詰」「希望の缶詰」に
まずは、木の屋がV字回復を成し遂げるまでの経緯を、簡単に紹介しよう。
(1) 東日本大震災後の津波で工場を流失
(2) 被災後の缶詰が「命の缶詰」や「希望の缶詰」として話題に
(3) 震災支援でできた「縁」を生かし、各方面にメディア露出
(4) 新たな商品開発や消費者訴求などに注力
(5) 「金華さば缶」などが人気となり、売り上げが拡大
(1)と(2)は前述の本連載記事で触れたが、11年3月11日の東日本大震災と、その後の大津波で、石巻港に近い本社工場が流失。流れてきた缶詰を食べて、当面の空腹をしのいだ被災者にとって「命の缶詰」となった。その後、取引先である東京・世田谷区経堂のイベント酒場「さばのゆ」の活動などで支援の輪が広がり、工場在庫として残った約22万缶(当時の記事では25万缶)の缶詰が、多くの人の協力や支援で完売した――という話だ。
なお「さばのゆ」を経営する須田泰成氏の本職は放送作家・脚本家だ。18年には一連の取り組みを紹介した『蘇るサバ缶』(廣済堂出版)という単行本も発売された。
■マツコが絶賛した「金華さば」缶詰
「木の屋の缶詰ごはん」の「さば水煮のドライカレー」(画像提供:木の屋)
1957年に木村實氏(故人)が創業した木の屋石巻水産は、当時の日本人の貴重なタンパク源だったクジラ肉などを取り扱い、事業が成長した。現在は、石巻港や女川港に水揚げされたサバやサンマやイワシなどの魚介類を、鮮魚のまま缶詰に加工する「フレッシュパック製法」で知られる。味は、魚や鯨の特徴に合わせて水煮、醤油煮、味噌煮、大和煮などにする。だが、震災前は「地元では知られたメーカー」という位置づけだった。
それが震災で注目された結果、メディア露出が増え、売り上げも拡大した。現在は、木の屋ホールディングスの木村長努社長や木村隆之副社長(2代目の兄弟)が登場することもあれば、商品が脚光を浴びることもある。たとえば2017年12月5日に放送された『マツコの知らない世界』(TBS系)では「サバの缶詰」が取り上げられ、多くの商品が紹介された。そのトリを飾ったのが、木の屋の「金華さば」(味噌煮)だった。
「サバは苦手」と公言していたマツコ・デラックスも、次々に登場するサバ缶に「私の情報古すぎたわ、おいしくなったのね」と認識を改め、金華さばを口にすると「これは美味しいです。爽やかな感じの味噌ね。どちらかというと日本酒とこれだけでいきたいぐらい美味しい。ものすごく上品な(味)」と話した。番組の放映直後から、同社にはネット注文が殺到した。
「当日のうちに当社のPCサーバーが一時ダウンしたほどです。結局、1年分の在庫の3分の2が売れました」と木村社長は明かす。地方の缶詰メーカーが、サバ缶ブームの追い風にも乗ったのだ。ほかのサンマ缶やクジラ缶などの販売も好調で、18年9月期の売上高は約21億円となり、東日本大震災前の売上高(約15億円)を大幅に超えた。
■新たな「缶詰の食べ方」を訴求
「試食会」で提供された料理(筆者撮影/料理製作=杉山順子氏)
近年は、缶詰を使った料理を「木の屋の缶詰ごはん」として発信する。こちらはフードスタイリストとして、テレビ・映画・出版などで活躍する飯島奈美氏がメニューを考案した。
たとえば、パーティー用では「小女子(こうなご)と大根のサラダ」「まぐろの尾肉のバゲットピザ」「いわしみそ煮とブロッコリーの巣ごもりエッグ」などを紹介。いつものごはん用には、「鯨の大和煮あんの卵焼き」「さば缶ごはんの手巻き寿司」といった料理のほか、「お弁当」メニューも訴求した。同社の公式サイトで見ることができる。
東京都内にある「木の屋サロン」で、缶詰料理を披露することもある。筆者も今年7月、「クジラ肉の缶詰試食会」に参加した。参加者から「牛肉のような柔らかい味」という声が上がったのが、「長須鯨 須の子 大和煮」(通称・白缶)だ。 1缶150グラムで、価格は1080円(税込み)。須の子とは、アゴから胸にあたる部分で、よく脂がのった希少部位だ。担当編集者のひとりは「まったくクセがない。驚いた」と、興奮気味だった。
缶詰といえば「保存食」のイメージが強いが、味はかなり進化した。消費者の意識も変わり、簡単・便利な食材として利用されている。
■「クジラ肉」は今後どうなるか
「長須鯨 須の子 大和煮」。価格は1缶1080円(税込み。画像提供:木の屋)
ところで、本稿執筆時に「日本がIWC(国際捕鯨委員会)脱退」というニュースが飛び込んで来た。脱退すれば、1987年に日本で禁止された商業捕鯨の再開をめざすことになる。
実は、試食会で好評だった鯨缶の原材料は、長須鯨(ナガスクジラ)で、アイスランドやノルウェーなど商業捕鯨を行う国から輸入したクジラ肉だ。
「10年前は日本の調査捕鯨枠で、ナガスクジラは10頭の割り当てがありましたが、実際の捕獲数は3頭。すべて当社が仕入れて缶詰に加工していました。それが現在はゼロ。入手困難になり、商業捕鯨国のアイスランドから輸入しているわけです。一般に、鯨は脂分があるほうがおいしいといわれ、ナガスクジラは約10%でもっとも多いのです」(木村隆之副社長)
クジラ肉は「健康機能性」の視点からも注目されている。たとえば、抗アレルギー肉としての魅力だ。「全員ではないが、食肉アレルギーの強い人でも食べられる」(関係者)という。
認知症を改善する効果も見込まれている。星薬科大学の塩田清二特任教授と平林敬浩特任助教の発表によると、クジラ肉に多く含まれる「バレニン」を含む抽出物を、「物忘れが多くなった」と自覚する70〜77歳の男女14人(うち非投与者7人)を対象に、12週間投与したところ、バレニン投与者のほうが認知機能などの計算テストのスコアが向上したという。
もちろん、だからクジラ肉の消費拡大――という単純な話ではない。商業捕鯨の再開には多くの問題が横たわる。それでも魚缶・鯨缶への消費者意識の変化、クロマグロやウナギなど水産資源の枯渇問題がいわれるなかでの「鯨」の存在は、今後が注目されるのだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
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