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2019年展望:資金の流れが変わり、日本は消去法で選ばれる
金融テーマ解説
大槻 奈那 大槻 奈那 2018/12/25 印刷 2019年展望:資金の流れが変わり、日本は消去法で選ばれる印刷
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2019年相場展望
・19年は過剰流動性の巻き戻しの年になりそう。企業収益は悪くないが、資金逆流でリスクマネーが逃げ足を早め、資産価格が下落。金融以外でも、米中貿易摩擦や財政問題等長引きそうな要因が多い。
・最大の注目点は、米国がいつ利上げを停止するか。利上げ停止はリスクマネーを呼び戻す契機となりうるものの、景気後退の決定的なシグナルと受け取られる可能性もあり、市場の反応は読みにくい。
・一方日本は、各種イベントや、日銀の緩和継続、消費税引き上げに対する財政政策で、環境は悪くない。米国のリスクオフに加え、欧州ではBrexit、仏伊の財政リスクも燻り、日本は消去法で選ばれる可能性。海外には慎重スタンスで、例えば日本株と高クレジットの金融機関債等への投資を選好。
2019年は行き過ぎた金融の巻き戻しの年
2018年の金融市場は、リスク要因がありつつも拡大を続けた年だった。世界の総債務(金融を除く)は、リーマンショック後54%拡大し、史上最高の180兆ドル(約2.0京円)まで膨れ上がった(図表1)。
しかしその間、既に膨張していた金融市場では、”マグマ”がさらに肥大した。収益が挙げにくくなった金融機関は、これまで以上に深いリスクを取るようになった。
その典型が高リスク企業やプロジェクトに対する融資の条件緩和である。以前は、こうした融資にはコベナンツ(財務制限条項)を付けて、経営をモニターするのが一般的だった。ところが、2018年には、こうした条項がない「コベナンツ・ライト」案件が大幅に増加、新たに発行された高リスク債券の8割を占めるまでに膨張した。
年末に市場価格に変調
18年の第4四半期から、さまざまな資産の価格が反転し始めた。株価に加え、リーマンショック後上昇し続けてきた主要国の住宅価格も反落に転じた(図表2)。原油価格も急落(図表3)し、12月に入ってVIX指数も急上昇した(図表4)。このままいけば、VIX指数の上昇幅は、暦年ベースで過去最大となりそうだ。
2019年、資金の流れは鈍化へ
これらの資産価値下落の背景の一つに、FRBのバランスシートの縮小があるとみられる(図表5-1)。マネーの量が減少するにつれ、まずは高リスクの投資から資金が流出している模様だ。これを端的に表しているのが、高リスク社債市場である。クリスマス直前の2週間で300億円近い資金が高リスク債ファンドから流出し、利回りが急上昇している(図表5-2)。
調達金利の上昇は財務の弱い企業にとって致命傷になりかねない。BISは2018年9月に、主要国の上場企業の約12%は利払いすら苦しい「ゾンビ企業」であるとするレポートを発表した。こうした高リスク企業の倒産が増えれば、銀行が保守的になり、ますます経営が苦しくなる。19年には、米FRBのコントロール次第では、かつての金融の負のスパイラルの足音が聞こえ始める可能性がある。
米中貿易摩擦も長引くことが予想され、トランプ政権下で一層傷んだ米財政の問題も市場を冷やす。19年の米企業収益は弱くないが、こうした市場のセンチメントを反転させる材料は見つけにくいだろう。特に、この数年間、金融市場の膨張への警戒感が高まっていただけに、2019年は過剰流動性の巻き戻しの年になりそうだ。
19年の米国の利上げ停止は反転の契機となる可能性も。但し、市場の反応は読みにくい
来年の金融市場最大の注目点は、米国がいつ利上げを停止するかである。FRBメンバーの19年の利上げ回数予想は、3回から2回に引き下げられた。現時点では、中立金利と現在の政策金利の格差縮小から、概ね2回の利上げが妥当と考えられよう(図表6)。
だとすると、FRBは来年3月か6月には利上げを停止する可能性が高い。利上げ停止は資産価値にポジティブであり、リスクマネー呼び戻しの契機になる可能性もある。しかし同時に、市場には景気後退の決定的なシグナルと受け取れられる可能性もあり、反応は読みにくい。相当相場が荒れる可能性もあり、楽観視はできない。
また欧州も不透明感が増してきた。特に3月末のBrexitについては落としどころが予想しにくく、かつ、フランスの財政運営も厳しさを増している。イタリアは、財政面ではEUと折り合いをつけたが、金融正常化に向かうECBの動向次第では、不良債権問題の再燃が懸念される。ドイツでは、マネーロンダリングの捜索を受けているドイツ銀行の株価下落が止まらず(図表7)、銀行業界の台風の目になりそうだ。
日本の動向:ポジティブなイベントや金融・財政政策で、相対的に選ばれる市場に
このように、来年、世界の金融市場は転換点を迎えると予想するが、日本市場はどうか。
日本は、周知の通り大イベントが目白押しだ。5月連休の天皇の交代、6月にはG20サミットが初めて日本で開催される。2020年の東京オリンピックの準備も佳境を迎える。主要国サミットとオリンピックを連続で開催した国は、1983-84年のレーガン政権下の米国しかない。この頃は、景気刺激策として知られるレーガノミクスの影響もあり、米国のGDP成長率は7%に達した。
来年10月の消費税率引き上げはリスク要因のはずだが、2兆円規模の大盤振る舞いの景気刺激策が打たれることで、影響は前回の増税時よりは限定的となりそうだ。また、欧米が金融政策の正常化に向かう一方、日本ではインフレ率の停滞で、超緩和的な金融政策が続くとみられる。このため、日本は、他国よりはかなり良い金融環境を享受できるだろう。
もっとも、海外市場が崩れれば、日本もその影響から無縁ではいられない。また、日本でも、イベントごとに財政負担が増すことになり、人々の中長期的な不安感は払拭されないだろう。来年の特殊要因の効果は長続きしないかもしれない。
とはいえ、ひとまず日本は固有のポジティブ要因で、相対的には選ばれる市場になりそうだ。海外市場にはディフェンシブなスタンスで、例えば、日本株と高クレジットの米金融債などを選好したい。
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大槻 奈那
大槻 奈那
マネックス証券株式会社 チーフ・アナリスト 兼 マネックス・ユニバーシティ長 マネックスクリプトバンク株式会社 マネックス仮想通貨研究所所長
東京大学文学部卒、ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。スタンダード&プアーズ、UBS、メリルリンチ等の金融機関でリサーチ業務に従事、各種メディアのアナリスト・ランキングで高い評価を得てきた。2016年1月より、マネックス証券のチーフ・アナリストとして国内外の金融市場や海外の株式市場等を分析する。現在、名古屋商科大学 経済学部教授を兼務。東京都公金管理運用アドバイザリーボード委員、貯金保険機構運営委員、財政制度審議会分科会委員。ロンドン証券取引所アドバイザリーグループのメンバー。 テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」等、メディアへの出演も多数。 著書: 『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)、 『1000円からできるお金のふやし方』 (ワニブックス)
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https://media.monex.co.jp/category/financial-market
セリング・クライマックスが近い
今週のマーケット展望
広木 隆 広木 隆 2018/12/25 印刷 セリング・クライマックスが近い印刷
国内株式
マネックス
米国株の大幅続落を受けて週明けの東京市場も急落しているが、さすがにそろそろ下げ止まる頃だろう。移動平均乖離率、騰落レシオ、RSIなどテクニカル面でも売られ過ぎを示すサインが続々点灯している。25日午前10時現在の日経平均の値、約1万9300円でバリュエーションをみると予想PERでは10倍ちょうど、PBRで1倍をわずかに下回る。上場企業のROEが10%に達している現在、日経平均のPBRが1倍割れというのは異常値である。また、予想PER10倍は過去6年平均から比べて2.9標準偏差下の水準で、同じく異常値である。
先週金曜日も東京市場は全面安となったが、そのなかでTDK(6762)、アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、太陽誘電(6976)などの電子部品・半導体関連や、日立建機(6305)、ダイキン工業(6367)、ファナック(6954)などの中国関連の機械株は押し目買いで上昇した。今日も、アドバンテスト、ファナックなどは比較的下げ渋っており、先行して売られた銘柄は底値に近付いていることを示している。先週末の東証の売買代金は3兆5000億円と膨らんでおり、セリング・クライマックスが近いと思われる。
今週の予想レンジは、19200円〜2万円とする。
https://media.monex.co.jp/articles/-/10702
賢明な投資家は市場の行き過ぎを利用して利益をあげる
ストラテジーレポート
広木 隆 広木 隆 2018/12/21 印刷 賢明な投資家は市場の行き過ぎを利用して利益をあげる印刷
国内株式
マネックス
2019年相場展望
先週のストラテジーレポートで「こんな相場は間違っている」と述べた。意は伝わると思って、「だから、どうだ」とは述べなかったが、念のため、書いておこう。2つある。ひとつは、「相場はしばしば間違うものであるから、こういうことも起こり得る」ということ。実際に起きているのだから言うまでもないが。もうひとつは、間違ったものはいずれ修正されるということである。
11/16付「チャイナショック〜ブレグジット(BREXIT) 2015-2016との相似形」で紹介したハワード・マークス『市場サイクルを極める』から彼の至言を引用しよう。
<カギとなるのは何か。心理の振り子と、バリュエーションのサイクルが今どの状態にあるかを知ることだ。(中略)冷え込んだ心理とバリュエーションの低下でパニックに陥った投資家が、全般的に価格が低下しているにもかかわらず売りに走り、掘り出し物を生み出しているときに、買うことだ。>
日経平均の予想PERはアベノミクス相場開始以来の平均から2標準偏差下のレベルを下回っている。統計的には異常値の領域である。
日経平均の予想PER
出所:QUICKデータよりマネックス証券作成
ハワード・マークスは言う。<市場は動くようにしか動かない。景気の動向や企業業績を反映する場合もあれば、投資家の心理とそれに伴う行動に左右されている場合もある。ランダム性や運が影響することもある。>
<理論上、起こるべきことと実際に起きることの関係については、つねに不運がつきまとう可能性があるが、ポジショニングについて正しい判断を下せば、市場の趨勢が自分に有利に働く確率を高めることができるのだ。>
<市場がサイクルの低いところに位置しているとき、利益が得られる可能性は通常より高く、損失が出る可能性は通常より低い。>
これらはすべて「当たり前のこと」である。しかし、市場が悲観心理一色に傾くと、その「当たり前のこと」が見えなくなってしまう。
当たり前のことをもう一度、確認しよう。株価はファンダメンタルズと市場心理で決まるということだ。例えば、
株価=企業業績(ファンダメンタルズ)×バリュエーション指標(PER等=市場心理)
この意味で、企業業績(ファンダメンタルズ)は必要条件だが十分条件ではない。業績は良くとも、それをきちんと冷静に評価できる市場心理がなければ株価はあがらない。株価はファンダメンタルズを中心として投資家の「楽観」と「悲観」の心理の振り子の振れで揺れ動く。そのサイクルを意識することが重要とハワード・マークスは言う。
この概念図を実際に示したのが日経平均のEPSの増加トレンドと株価の動きだ。
日経平均と日経平均のEPS
出所:QUICKデータよりマネックス証券作成
市場の趨勢とポジショニングを確認しよう。そして、ハワード・マークスの言葉を思い出そう。<市場がサイクルの低いところに位置しているとき、利益が得られる可能性は通常より高く、損失が出る可能性は通常より低い。>
ただ、見落としていた部分もある。それはファンダメンタルズとして企業業績しか見ていなかったことである(上記グラフの赤い右肩上がりのトレンド)。重要なファンダメンタルズにはマクロ景気の動向もある。世界の景況感は、2013〜2016前半でひとサイクル終了し、次の短期循環は2016半ばを底に始まり、2017年末でピークをつけていた。2018年は振り返れば短期景気循環の下降トレンドの中にあった。ファンダメンタルズも悪化しており、これを受けたセンチメントの悪化であったことを見逃していた。いま振り返ればそうだったと気づく。
米ISM(白)日銀短観(青)中国PMI(赤)独IFO(黄)
出所:Bloomberg
このサイクルはキチン・サイクル(およそ40カ月)と言われ在庫循環に一致する。ざっくり、1年半上昇、1年半下降のサイクルに当てはまれば、今回のサイクルのボトムは来年前半にくるだろう。
年明け以降も数カ月は不安定な相場が続くかもしれないが、世界景況感の底入れを背景に、市場のセンチメントも改善していくだろう。中国と日本の景気対策、米国の利上げ打ち止め感などがそれをサポートしていくだろう。
https://media.monex.co.jp/articles/-/10692
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- こんな時こそPBR、日経平均の「最悪ケース」は 中国、全国版のネガティブリストを公布 市場の参入ルールを全投資家で統一 うまき 2018/12/25 18:58:54
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