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少子高齢化が進む北京市 70年弱で5倍以上の人口増にピリオド 持続可能な財源確保と経済成長を考慮した健康保険制度の再構築
http://www.asyura2.com/18/hasan130/msg/240.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 22 日 08:56:15: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 企業における医療コストの急激な上昇が生産活動を蝕む要因に 企業や健保組合の努力が及ばないところで高齢者医療負担が増え続け 投稿者 うまき 日時 2018 年 12 月 22 日 08:51:22)

少子高齢化が進む北京市 
北京駐在員事務所から
長野 雅彦 長野 雅彦 2018/12/21

70年弱で5倍以上の人口増にピリオド

経済発展に伴い人口の増加が続き、現在2,000万人を越える北京市では、住宅価格の高騰、大気汚染や深刻な交通渋滞など、大都市ならではの問題が頻発し、市政府は対策に頭を悩ませています。

市政府下の研究機関が発表した人口動態データによると、オリンピックが開催された2008年の人口は1,771万人でしたが、2016年には2,173万人となり、8年間で22%増加しました。その多くが社会増(他地域からの人口流入)です。

ところが、昨年2017年は2,171万人となり、前年から2.2万人減少しました。

その理由としては、大気汚染対策の一環で、重厚長大産業などの労働集約型の工場が市外に移転したことにより、多くの労働者が市を離れたことが指摘されています。

1949年の中華人民共和国建国時には420万人でしたので、70年弱の間に5倍以上に膨らんだのですが、どうやら人口増にピリオドが打たれたようです。

人口増には歯止めがかかりましたが、こちらも大都市に共通する問題である高齢化の進行は止まっていません。

2010年には、65歳以上の高齢者人口は171万人で、全人口に占める割合は8.7%でしたが、2017年には238万人、10.5%へとそれぞれ増加、上昇しています。少子化の進行と、寿命が延びていることの2つが背景にあります。

北京市の出生率(総人口に占める年間の新生児数の割合)は、1991年に1%を切り、その後も一貫して下がり続けています。

単純計算で、また社会増を考慮しない想定ですと、市民の平均寿命が100歳まで延びても、人口を維持できないということになります。

人口構成の歪みが中国社会の不安定化要因となる可能性
一方で、死亡率(総人口に占める年間に亡くなる人の数の割合)は、過去20年間、0.5%程度で安定的に推移しており、結果、年々高齢化が進行することとなっています。

死亡率の低下には、市民の高学歴化も寄与していると指摘されています。北京市民の学歴は、特に2010年以降高まっており、現在全人口の40%程度が、大学卒業以上の学歴を有しています。

学歴の向上が、健康への意識の高まりや生活の改善につながっています。

研究機関の教授は、高学歴の女性が出産を遅らせる傾向があると述べ、学歴の向上が少子化にもつながっていると指摘しています。

加えて、妊娠した女性に対する職場環境の改善や、休暇制度の充実、さらには妊婦に対する種々のサービスの質の向上を求めています。

中国の法制度は、例えば妊娠、出産、育児休暇中に、国の社会保障制度である「生育基金」からの給付金が支給され、実質的に有給となっている等、日本よりも充実している面もあるのですが、「マタハラ」等の問題は日本と同様に存在するようで、女性の妊娠出産をためらわせる環境要因が様々あります。

政府による政策対応や予算措置では対応できない、人々の意識、心理に係る問題も多々ありますので、状況の改善は容易でないように思われますが、社会の持続可能性という観点からも、対策が求められるところです。

中国に共通の問題ですが、一人っ子政策という他国にない特殊な要因があるため、高齢化が極めて速いペースで進行しています。

北京で生活しておりますと、様々な点で、「中国が昔の日本を追いかけている」ことを実感するのですが、こと少子高齢化に関しては、遠からず日本を追い抜くことが予想されています。

年金制度など、社会保障制度が未整備で、「老親の面倒は子がみるもの」との考えも強く、若年、中年層にかかるプレッシャーは強いものがあります。

人口構成の歪みは、貧富の差の問題とともに、将来中国社会の不安定化要因となる可能性も考えられ、政府には広く国民を巻き込んでの対策を打ち出すことが期待されます。

中国あるいは北京市の動向から、将来日本にも参考となる点が出てくるのではないかと思います。


https://media.monex.co.jp/articles/-/10695


 


コラム Vol7
日本総研・西沢和彦氏が語る 「社会保障・税の一体改革」の深層C
持続可能な財源確保と経済成長を考慮した健康保険制度の再構築 

わが国の高齢者医療は、公費(税)に加え、現役世代の負担で支える構造になっており、急速な少子高齢化の進行を背景として、高齢者医療制度ひいては国民皆保険制度そのものも存続が危うくなっている。
 シリーズ最終回となる今回は、一層の増大が見込まれる高齢者医療費を支えていくために、どのような制度設計が望ましいのか、公費投入のあり方は公平かつ効率的か、財源確保はどうすればよいのか——。健康保険制度の再構築に向けた提言を、日本総合研究所調査部上席主任研究員の西沢和彦氏に語ってもらった。
民主主義的な意思決定が可能な
健康保険制度のシステム基盤づくりが必要

日本総合研究所調査部上席主任研究員
西沢和彦氏
 わが国の健康保険制度は、主に現役世代の保険料を原資とする支援金等を通じて高齢者医療費を支える構造になっている。前期高齢者(65〜74歳)の加入者数の多い国民健康保険(国保)には現役世代が加入する健保組合や協会けんぽ等からの財政支援が行われ、75歳以上の後期高齢者医療制度には現役世代からの支援金に加え、公費も投入されている。こうした仕組みのため、各保険者の収支の流れは非常に複雑だ。本来、社会保険料は「負担」と「受益」が対応していることによって租税と大きく差別化されるのだが、現状では健康保険料によって「負担」と「受益」の対応関係を把握することは困難であり、その結果、国民一人ひとりが健康保険制度の問題点を認識できなかったり、保険料の使い道の検証が疎かになったりすることに結び付いている。
 私たちは、自分の受けた社会保障サービスと支払った金額とを比較することでサービスの価値を実感できる。例えば、マンションで大規模修繕が行われる際、理事会は工事費と工事の質とを勘案して総会に諮り、入居者の意向に沿って修繕案が決定される。こうした民主主義的な意思決定の基盤が、健康保険制度にも求められる。健康保険料の負担水準が適切かどうか自分で判断し、負担が重すぎると感じれば、医療給付の効率化を促すという関係を再構築しなければ、社会保障サービスの価値は実感できず、国民が負担に対し納得感を得ることはできないだろう。
 厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会の議論を見ても、結局、後期高齢者支援金への「全面総報酬割」導入といった話題が中心で、一般の国民が議論に参加することは困難になっている。本来は、わが町・わが村に病院と診療所がいくつあり、かくかくしかじかの医療費がかかるから保険料はこうなる、というのが「負担」と「受益」の議論のはずだ。
再考されるべき公費投入のあり方
 国民一人ひとりが「負担」と「受益」の対応関係を実感できるようにするには、社会保障制度に対する公費の投入方法を抜本的に見直し、健康保険料を含めた社会保険料のあり方を本来的な姿に改めることが重要となる。例えば、現行の公費投入方法では、一般会計から特別会計や地方自治体を通じて各家計に給付されるため、高所得者層も低所得者層も等しく恩恵が受けられる。しかし、これは効率的ではないし、本当に公費が投入されているかどうかもよく分からない。
 これに対する改革案として、一般会計から所得の低い家計にダイレクトに公費を給付する方法が考えられる(図1)。これは社会保障に対する公費の役割を「高齢化・低成長経済モデル」に切り替えることであり、このような国民自らが判断できるような民主主義的な制度設計が不可欠である。

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/17/kenpo/column/vol7_1/img1.jpg

>> 税を負担する能力(担税力)に応じた負担構造への転換
 財源確保や負担の公平性という観点からは、年齢ではなく、税を負担する能力(担税力)に応じた負担構造へと転換することが重要である。まず、保険者が分かれている限り、現役世代から高齢者に対する支援金という財政調整は発生する。ただ、その場合、現役世代の納得が得られる仕組みにする必要がある。しかし、現在、健保組合などは「いわれるがまま支援金や負担金を出すしかない」という構造になっている。そうではなく、保険者にインセンティブが働くような仕組みが求められる。例えば、各保険者の年齢構成と所得水準には差があり、このような保険者の責任に帰すことのできないものについては財政調整を行う。一方、保険者の責任による医療コスト増、あるいは保険者の努力による医療コスト減などについては調整をせずに保険料に反映させる——。このような納得感のある財政調整にしていくことが望まれる。
 また、高齢者医療費は現役世代の保険料が主な原資となっているが、その保険料は賃金だけにかかるので、支援金や納付金のような再分配の原資として公平とはいいがたい。本来であれば、賃金だけでなく、例えば不動産所得、預貯金の利子、株式譲渡所得、事業所得など、あらゆる所得を包括的に把握してかけるべきである。また、賃金のみにかけることは「労働需要」を減らすことにつながり、効率的でもない。従って、包括的な所得をベースとした保険料にしていく、という方向性が議論されてもよいと思う。その保険料率に医療給付の水準を反映させれば、賃金だけにかけたときに生じるような不公平さ、非効率性を抑えることが期待できる。高齢者に対しても所得に応じた負担を求めていくべきであり、そうしなければ少子高齢化による原資不足は解消されないだろう。
医療サービスのあり方は
高齢者医療に対する支援とセットで考えるべき
 医療費を抑えていくことも欠かせない。昨年8月にまとめられた社会保障制度改革国民会議報告書では、医療提供体制の改革が大きな柱の一つになっている。そこでは、地域の診療所の医師が予防や在宅医療を含む1次医療を担い、必要に応じて2次医療を担う地域の中核的病院、3次医療を担う特定機能病院や大規模病院を紹介し、紹介後も診療所医師が継続的にケアに関わるといった体制が目指すべき方向として示されている。こうした改革は、財政健全化、病院と診療所の機能分化、高齢社会における医療ニーズの変化への対応という観点から評価できる。しかし、報告書は「病院改革」は示しているが、「診療所や診療所医師の改革」を具体的に描いていない。家庭医の育成計画、地域における配置計画、診療報酬体系の根本的な見直しなど、「制度改革」に踏み込むべきではないだろうか。これを医療提供側の自主性にほぼ任せており、はたして報告書が目指す改革が実現できるのかどうかは不透明である。仮に、多すぎるわが国の病床数を削減できたとしても、診療所を核とする地域医療が受け皿として機能しなければ、患者は行き場を失ってしまうだろう。
 医療サービスの重点化・効率化は喫緊の課題であり、高齢者医療に対する支援とセットで考えなければならない。しかし、こうした論点が国民一人ひとりの問題として認識されないのは、健康保険制度の仕組みの複雑さが根底にあると思われる。
経済成長を促すための
現役世代に向けた社会保障制度へ
 社会保障の重点化・効率化という点でも課題がある。ともすれば高齢者に対する社会保障のみがクローズアップされがちだが、「経済成長を促すための社会保障」という観点も必要だ。わが国では、少子化により生産年齢人口が減っていくことが予想されている。しかも、わが国特有の現象として、女性の労働力率は出産・育児期になると一旦落ち込み、育児終了後に再び高まる傾向が認められることから、現在、政府は女性の労働力確保のためテコ入れを図ろうとしている。こうした「労働供給」を促すためには家庭内労働(育児、介護など)をアウトソース(外部委託)できることが重要であり、そのための社会保障が必要になってくる。
 また、経済を成長させるためには、労働供給と同時に、労働力を成長分野に移動していかなければならない。この「労働移動」を促すには、失業保険や職業訓練といった支援が重要になってくる。しかし、わが国は諸外国に比べ現役世代に向けた社会保障が少ないことが示されており(図2)、課題の一つになっている。単に社会保障費を上げればよいという話ではなく、「経済成長を促すための社会保障」という発想が重要であり、健康保険もこうした大きな社会保障の枠組みの中で捉える視点が必要だ。

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/17/kenpo/column/vol7_1/img2.jpg

高齢者医療費に関しては、現役世代の負担がますます重くなろうとしている。そうした現役世代の負担だけで、国民皆保険制度が維持できるのかという根本的な疑問に立ち返り、公費投入のあり方、医療サービスのあり方、経済成長の促し方など、さまざまな観点から議論されることが重要だと考える。
(談)
西沢 和彦氏
1989年一橋大社会学部卒、三井銀行(現三井住友銀行)入行。98年さくら総合研究所出向、2001年日本総合研究所調査部主任研究員。02年法政大学修士課程(経済学)修了。著書に第51回日経・経済図書文化賞を受賞した『年金制度は誰のものか』(日本経済新聞出版社, 2008)、第40回日本公認会計士協会学術賞を受賞した『税と社会保障の抜本改革』(日本経済新聞出版社, 2011)などがある。

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/17/kenpo/column/vol7_1/

 

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