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「空飛ぶクルマ」もうSFの世界ではない! 日本でも実現間近、5年後には販売開始へ
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181212-43246485-nkctrend-bus_all
日経クロストレンド 12/12(水) 13:00配信
カーティベーターが開発する空飛ぶクルマのイメージ(提供:株式会社SkyDrive)
垂直離着陸が可能な次世代モビリティ「空飛ぶクルマ」が、世界で注目を集めている。国内でも、政府がロードマップを策定するなど、実現に向けた動きが本格化。日本発の空飛ぶクルマとして知られる「SkyDrive(スカイドライブ)」が羽ばたく日はいつなのか。どんな移動社会が生み出されようとしているのか、最新動向を追った。
「空飛ぶクルマ」と聞いてSFの世界を思い浮かべる人も多いだろうが、実はそう遠くない将来、日本でも現実の移動手段として羽ばたこうとしている。
政府が2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」で掲げた次世代モビリティ・システムの構築に向けた新たな取り組みのなかで、モビリティ革命「MaaS(Mobility as a Service)」などと共に、世界に先駆けて空飛ぶクルマの実現を目指す方針を示した。早速8月には、経済産業省と国土交通省が「空の移動革命に向けた官民協議会」を共同で立ち上げ、11月16日に行われた第3回会議において、技術開発やインフラ・制度整備に向けたロードマップの素案を作成。空飛ぶクルマを新たな産業に育てようと本腰を入れている。
一方、民間では大手企業やスタートアップが入り乱れ、今や世界120社以上が開発競争を繰り広げている。2020年の試験飛行を目指す米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズを筆頭に、航空機大手のエアバスとアウディ連合、英ロールス・ロイス、米グーグルを傘下に持つアルファベットCEOのラリー・ペイジ氏が出資するキティ・ホークなど、そうそうたるプレーヤーが空飛ぶクルマに名乗りを上げている。
そんななか日本発の取り組みとして世界で羽ばたこうとしているのが、有志団体CARTIVATOR(カーティベーター)が開発する空飛ぶクルマ「SkyDrive(スカイドライブ)」だ。12年から活動を始め、現在は ⾃動⾞メーカーや航空業界、スタートアップなどに所属する有志が100⼈ほど集まって活動を継続している。トヨタ自動車出身でカーティベータ―の共同代表を務め、18年10月に設立した事業会社、SkyDriveの代表取締役である福澤知浩氏は、「目指すのは2050年までに誰もがいつでも空を飛べる時代を創ること」と話す。
14年には5分の1スケールの実験機「SD-00」を開発し、18年5月には2号機となる実物大モデルの「SD-01」を公表した。その間、トヨタグループをはじめNEC、パナソニックなど、さまざまな企業からの出資や技術協力を得ながら急ピッチで開発を進め、19年夏には屋内における有人飛行テストを行う構え。そして東京五輪が開催される2020年、屋外での試験飛行にこぎ着け、聖火台への点灯を目指すとしている。
欧米では固定翼があるタイプの空飛ぶクルマの開発も進んでいるが、「長距離を飛べる半面、機体が大きくなり、陸上で走れる場所や着陸する場所が限られてしまう」(福澤氏)。そのため、スカイドライブは機体の四隅に8つのプロペラを配置した2人乗り・世界最小サイズの実現を目指している。ちょうどドローンを大型化したものに人が乗るイメージだ。電動駆動で排気ガスゼロ、騒音を抑えており、滑走路なしでもコンビニの駐車場2台分のスペースがあれば垂直離着陸できるから、究極のところ街中でも運用可能になる。「例えば、現在のビルの屋上は5t以上の機体重量があるヘリコプターの離発着に耐えられる仕様のところはまだ少なく、移動サービス面では大半が未活用のまま。スカイドライブは最大離陸重量を400sに設定しており、これなら既存のビルの屋上を移動拠点として有効活用できる」(福澤氏)という。
バッテリーの進化などにもよるが、スカイドライブは年間数台規模の生産を目指す23年の時点で、飛行時の最大時速100q、飛行距離にして20〜30q程度を予定している。機体価格は当初スーパーカー1台分、4000万〜5000万円程度がターゲット。量産化が進めば半額以下に引き下げていくことも可能で、ヘリコプターに比べて燃料やメンテナンスなどのコストも低い。2030年代以降は空飛ぶクルマの自動運転化も進むとみられており、移動サービスとしては将来的にタクシー並みの料金を期待できるだろう。
誰もが使える「3D交通」に期待
では、スカイドライブのような空飛ぶクルマが生み出す新たな移動サービスはどんなものか。福澤氏は「楽しさ」と「生産性」という2つのキーワードを挙げる。前者は文字通り、空を飛ぶ体験が日常化する楽しさである。スカイドライブが普及すれば、飛行機やヘリコプターより気軽に、そして割安に空を飛べるようになるだろう。観光地での活用はもちろんのこと、街中で実現されるならタクシーや高速バス、新幹線などを補完するものになるかもしれない。これまでクルマや鉄道を使って「2D(平面)」を移動してきた人々が、空飛ぶクルマによる新たな「3D交通サービス」に引かれる世界は想像に難くない。他にも、救急ヘリコプターの代わりとなって低コストで柔軟な運用が可能な“空飛ぶ救急車”、あるいは災害時の移動手段として、または離島への輸送を担うなど、社会的な期待も大きい。
後者のキーワード・生産性とは、従来の交通手段で遠回りを強いられていた、あるいは渋滞などで時間を浪費していた2拠点間の移動が、空飛ぶクルマの導入によってスムーズに行えるようになるということ。例えば、東京湾周辺の飛行ルートや、関西国際空港から神戸空港を結ぶルートなど、当初は住宅地の真上を通らず海上を渡るプランが計画されている。他にも空港や新幹線の駅から移動時間がさらに1時間以上かかるような観光地など、ルートの設定次第で新たな移動需要を生み出し、地域の活性化に役立てられる。もちろん、先述したビルの屋上の有効活用に加え、今後クルマの所有から利用への流れが進むにつれて既存の駐車場スペースが“空き地化”していくことを考えると、街中でも空飛ぶクルマの離着陸場所を確保することは可能で、いずれ浸透していくだろう。
世界的な開発競争の幕が開け、日本でも早期実現に向けて取り組みが本格化している空飛ぶクルマ。まだ法規制や安全面の技術開発、管制システムの整備、そもそもの社会受容性など、高いハードルがいくつも残っているのは事実だが、既にさいは投げられた。カーティベーターは海外市場も視野に入れて展開を進めており、和製の空飛ぶクルマが世界のビッグプレーヤーに伍(ご)する存在に成長するか、期待したい。
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