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「日産クーデター」の陰で囁かれる経産省の失地回復の思惑
https://diamond.jp/articles/-/188028
2018.12.11 山田厚史:デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史の「世界かわら版」 ダイヤモンド・オンライン
Photo:PIXTA
カリスマ経営者の「突然の逮捕」は、ルノー・日産・三菱自動車の「3社連合」の主導権を持つルノーに対する日産の奪権闘争へと局面を変えつつある。
日産はカルロス・ゴーン氏を代表取締役会長から外し、ルノーに「後任会長の指名は受け入れない」と通告。ルノー主導の提携強化にクサビを打とうと必死だ。
だがここにきて事態は、自国の自動車産業を守ろうとする日仏政府の思惑がからんだ外交案件の様相を帯び始めている。
日産・三菱を100%子会社にする「完全統合」は、ルノーの最大株主のフランス政府の方針でもある。一方で日本(経済産業省)は真逆で「対等な関係」を望んでいた。「不平等条約の改定」と表現する人もいる。
早ければ年内にも完全統合が決まる、というタイミングでのゴーン氏の逮捕は、仏側には、経産省も絡んだ「日産のクーデター」と呼吸を合わせた“国策捜査”と映っているようだ。
日本側はこの疑いを晴らすことができるか。
「国策」を否定できるか
脱ルノー支配で経産OBの影
アルゼンチンで開かれた主要20ヵ国・地域首脳会談(G20)の会場で、11月30日、急きょ行われた日仏首脳会談。マクロン仏大統領は、ルノー主導の3社の提携関係の維持を強調するとともに、ゴーン前会長の司法手続きが「きちんと進められる」ことへの確認も求めたという。
メディアは連日、出所は検察と思われる「ゴーンの悪事」を書き立てている。仏政府としては、ルノー支配のもとでゴーン前会長らが勝手放題をしたという空気が醸成され、日産のルノーからの「独立」が進む流れになることを警戒してのことだろう。
なかでもフランス側が神経をとがらせているのは、経産省の動きではないか。
大手メディアは報じていないが、6月から日産の非常勤取締役になった経産OB、豊田正和氏の存在感が高まっているからだ。
決して表舞台に立たないが、新聞記者の夜回りに対応する豊田氏は今や「夜の広報担当」といった存在だ。
1973年に通産省(現経産省)に入省し、事務次官に次ぐNo.2である経済産業審議官まで上り詰め、2008年に退職。その年に内閣官房参与になった。
内閣官房とは通称「首相官邸」。産業通商政策で首相に助言する役目だった。
現在は経産省系のシンクタンクの日本エネルギー経済研究所の理事長に納まっているが、経産官僚時代は、国際派の実務家として評価された。
GATTやWTOなど国際交渉で日本の立場を主張し、他国と折り合う難しい交渉を担ってきた。
なぜ新聞記者が豊田邸に集まるのか。
官邸とのパイプを持ち、対外交渉にも経験豊富となれば、日産の“独立”に向けた大局的な判断や地ならしができるのは、この人物しかいないと思っているからだ。
日産の取締役会は今や真っ二つ。ルノー側は拘留中のゴーン氏、グレッグ・ケリー前代表取締役のほかに、ベルナール・レイ取締役と非常勤(社外取締役)のジャンバプティステ・ドゥザン氏の4人。
日本側は常勤が西川廣人社長、志賀俊之氏、坂本秀行氏。非常勤としてカーレーサーの井原慶子氏と豊田氏だ。
西川社長は、11月19日のゴーン氏逮捕後の会見で分かるように、ゴーン氏の不正には多弁だが、重要なことは言葉を濁す。決められた役割に沿って慎重に発言しているようにみえる。
志賀氏はゴーン改革の現場責任者だった。坂本氏は技術担当。「ゴーンのイエスマン」だった人たちが、急に立場を変え、ルノーに立ち向かうほどの力があるのか。疑問のほうが先に立つ。
ゴーン氏、仏政府と関係修復
「完全統合」に慌てた日産と経産省
もともと、豊田・井原両氏が非常勤取締役に加えられたのは、ゴーン氏とマクロン大統領との確執が背景にあった、といわれる。
マクロン大統領はルノーを動かして人気挽回を狙う。雇用確保のために日産や三菱の事業をフランスに移転させたい。手っ取り早くグループを動かすには吸収合併を含め「完全統合」を望んでいる。
ルノーはフランス政府の産業政策と密接不可分の企業である。隣に自動車王国ドイツがある。対岸には日産を先駆けにホンダ、トヨタを引き込んだ英国がある。
EUでドイツに対抗する自動車産業を築くにはルノーを軸とした3社連合の強化が欠かせない。
国営企業だったルノーは経営危機の辛酸をなめたが、ゴーン体制になって地力をつけ、海外展開をバネに、昨年、トヨタを抜いて世界第2の自動車グループに躍り出た。
首位は僅差でドイツのフォルクスワーゲンだが、ワーゲンに対抗して、欧州では本拠地のルノーが、中国では日産が頑張る。アジアでは三菱が強い。3社の強みを生かしたのは、ゴーン氏の経営力である。
3社の完全統合を果たせば、英国にある日産の欧州主力工場をフランスに持って来ることも可能だ。EUを離脱する英国から工場を移転させればマクロン政権の大手柄になる。
これに対して、グローバル経営者であるゴーン氏には別の論理があった。
ルノーは多国籍企業であり、世界のどこだろうとも最適な場所で生産・調達・販売を行う。ルノーは政府の支配下にあるが、日産に影響が及ばないように役員構成を変えた。
ルノー系役員より日産系を増やしたのは、ゴーン氏が独立王国を維持するために方策でもあった。
豊田氏の社外取締役就任はこうした思惑からだったが、有力OBの人事に経産省が蚊帳の外のはずはない。
役所は「天下り斡旋」はできないが「人事の相談」には乗る。
同期入省で次官になった望月晴文氏は、日立製作所で取締役会議長を務める。原子力推進の国策に沿って英国での原発事業を進めるものの、多額の建設費問題を抱える日立は、経産省にとっては目が離せない重点企業だが、同様に日産も心配のタネだった。
三菱自動車がルノーグループに組み込まれたことで、日本の自動車産業の一角が崩れるという憂慮は一段と深刻になっていた。
「日産・三菱がフランス企業になってしまっては大ごとだ」という危機感があったから、日産からの豊田氏招へいは「渡りに舟」の思いだっただろう。豊田氏は「経産省から日産に送り込まれた」という見方もある。
ところが 、情勢が一変する。
フランス政府が3社の「完全統合」を求めるのに対して、日産・三菱に仏政府の介入が及ぶことを警戒するゴーン氏だったが、態度が変わったという。
改選期を迎えるゴーン氏にマクロン大統領が「完全統合するなら、ルノーCEOの再任を認める」と突き付けたといわれ、条件をのんだゴーン氏は、経営統合に動き始めた。
慌てたのが日産・経産省だ。そんななかで「ゴーン逮捕」の口火が切られた。
海外メディアが「国策捜査」と疑うおかしなことは、確かにいくつかある。
ゴーン氏の逮捕容疑は、有価証券報告書への報酬の過小記載が金融商品取引法違反とされた。2011年3月期から5年間で計約50億円の報酬を申告していなかったという。
GMやフォードなどの経営トップが年間20億円前後の報酬を得ているなかで、ゴーン氏は年間報酬を、半分の約10億円と低く記載した。記載しなかったのは、その分は退職後に支払う「約束」だったからだとされる。
組織ぐるみで不正な経理処理を行い「粉飾決算」の罪に問われた東芝で、経営者は逮捕されていない。
有価証券報告書虚偽記載というのは、投資家の判断を誤らすような不正を禁止している。赤字を黒字になるように偽装した東芝は、東京証券取引所も悪質と判断し、東芝を特設注意市場銘柄に移したほどだ。
東芝の犯罪に比べ、ゴーン氏はいきなり逮捕されるほどの「重罪」といえるかどうか。
奇妙なのは日産の経営陣である。
経営陣が問題を知った発端は、内部からの通報によるとされるが、不正を疑われる会計処理がトップにあったとしたら、監査役が調べ、本人や周辺から事情を聞く。
大掛かりな不正なら、第三者委員会を設け、徹底して調べる。さらに監査法人が外部の目として会計処理を点検する。それで不正が明らかになったら検察などに告発する、というのが、企業の標準的なやり方だ。
西川社長は11月19日の記者会見で、「調査委員会はゴーンさんから聞いたのですか」と問われて、「聞いていない」と答えた。
不正が疑われる当人の言い分も聞かず、検察と司法取引していた。知らぬはゴーン氏ばかり。ゴーン氏が拘置されていて出席できない取締役会で会長解任を決め、ルノーによる会長指名を拒否した。
日産では、司法取引の以前から、海外の住宅購入や家族の海外旅行費用を日産の金で賄う「公私混同」について、極秘の調査委員会を設けてゴーン氏周辺を調べていたという。
メンバーは西川社長らごく少数とされているが、豊田氏がこのメンバーではなかった、とは考えにくい。
第三者の目を求められるのが非常勤取締役である。事件が表面化すれば日仏間の政治問題に波及することは明らか。官邸や経産省とパイプを持つ人物は必要とされただろう。
検察にとっては、司法取引で大物を挙げる絶好のチャンス。日産は「完全統合」計画から逃がれる最後の機会だった。
「官民一体」の不正追及が進むなかで、豊田氏から、経産省や首相官邸にも情報が上がっていなかったとはとても思えない。
トップを解任するなら、取締役会で解任動議を出すことだってできる。検察による逮捕をきっかけにトップを引きずり降ろすのは「社内クーデター」と呼ばれても仕方がない。
クーデターを正当化できるとすれば、理屈は2つある。
ゴーン氏の不正は会社で処理できないほど巧妙で悪質だということ。もう1つは、「ルノー・日産の不平等条約の改定」という大義の訴えである。
つまり、やり方は乱暴だが、「こうするしか関係正常化の糸口はつかめなかった」と、世間に理解されるような言い訳だ。
ルノーと日産は「立派になった子どもの仕送りで親が元気」という関係だ。
企業規模、生産台数、売り上げ、利益どれも日産がルノーをはるかに上回っている。ルノーの利益の40%超は日産からの配当だ。そこに三菱自動車が加わった。三菱重工の流れをくむ三菱は技術的にも定評がある。
だから経産省は心配でならない。トヨタに次ぐ自動車業界の主軸である日産・三菱を外資にさらわれると、危機感を抱いた。
これが、“経産省お墨付き”の「日産クーデター」の「本音」ではないか。
外資に奪われた
失地回復で共鳴
結局、すべては日産が経営危機に陥った1999年から始まった。
有利子負債2兆円。6800億円の赤字を計上した日産を当時、経産省は救済できなかった。
その頃の日産を表す言葉に「東大・興銀・通産省」という表現があった。
トヨタ、ホンダと違い日産は社長が代々、東大出身者がなり、エリート意識の強い日本興業銀行(現みずほ銀行)と仲良しで、通産省(現経産省)といい関係にある。
役所や銀行と親しいことは高度成長期には追い風だったが、貿易摩擦や成熟経済では向かい風になった。
無借金で頑張るトヨタを相手に日産は借金を重ねて無理な競争に明け暮れ体力を消耗した。トヨタ、ホンダは役所になんと言われようと自社の利益を優先したが、日産は役所の意向に沿って業界をまとめる損な役割を演じてきた。
だが瀕死の日産を救う企業は現れなかった。業界をまとめて救済する、という経産省の伝統的な手法はとれなかった。
当初はダイムラー・ベンツを頼りにしたが、交渉に時間がかかるなか、途中で見切りをつけ、ルノーなら怖くない、と甘く見た。
熾烈な競争を続けてきたアメリカやドイツの自動車企業の管理下に置かれる事態は避けたかったなかで、手を挙げたのがルノーだったから、経産省はホッとした。産業の弱いフランスならまし、と考えたのだろう。
その後の展開はご承知の通りだ。
ゴーン会長は日産の業績をV字回復させた上、三菱自動車まで傘下に収めた。
日産と三菱は軽自動車を共同開発し、生産は三菱の工場がやっていた。三菱による検査データの改ざんはその現場で起きた。なぜか情報が国土交通省に漏れ、三菱車のブランドは地に落ち、販売はガタ落ちになった。
救済に乗り出したのがゴーン氏だった。2000億円を気前よく出資し、日産の配下に組み込んだ。
ルノーが日産の43.4%の株式を押さえ、その日産が三菱の30%を握る。3社のトップにゴーン氏が座る「ゴーン独裁」のもとで「ルノー支配」が貫徹した。この時も経産省は何もできず、ゴーンに頼るしかなかった。
資本の論理に従うなら、リスクを取って支配権を取ったものが勝ち。日産も三菱もゴーンのもとで危機を脱したのだから、経営者の手柄である。
「ゴーン独裁」は、結局、ルノーに救済された副作用である。だが元気になるにしたがい日産内部にはゴーン氏への反発が広がり、ルノーに利益や技術を吸い取られるのはおかしい、という空気が充満するようになった。
1999年のふがいなさをかみしめる話がもう1つある。みずほ銀行グループの誕生である。
当時の興銀の頭取だった西村正雄氏に「なぜ『みずほ』という名を選んだんですか」と聞いたことがある。
「日本の金融界は日産を支えられず、外資にさらわれた。瑞穂の国・日本を表す名前は外資に負けない銀行にしたいからだ」という答えだった。
同じ思いは当時、経産省にもあった。そして今回の「不平等条約の改正」を掲げたクーデターは、外資から失地回復を目指す“ナショナリズム”と共鳴する。
「経産省内閣」の
官邸が考える着地点は?
だからといって「検察を動かしゴーンを追い詰めた」と結論付けるのは早急だろう。事実の解明はこれからだ。
しかし、「官邸発」の政策を眺めていると、陰に陽に経産省の動きが見える。
直近でも、消費増税対策の景気浮揚策は、経産省が省内の案をとりまとめて官邸に持ち込んだペーパーのホチキス止めのようだ。
ポイント還元はクレジットカードの利用者が有利になる。クレジット業界は経産省の所管だ。キャッシュレス化は端末機器を作るメーカーの追い風だ。増税の見返りに自動車に対する減税が検討されている。
にわかに動き出した感のある北方領土返還交渉も、日本とロシアの共同開発事業がキモだが、シベリア開発も通産省のころから描かれていた構想である。
出入国管理法を改正して外国人労働者を増やすのは、人手不足対策を求める産業界の働きかけに合わせようというものだ。受け入れを拡大する外国人労働者のあっせんは民間を窓口にする。「ヒト入れ稼業」も拡大するらしい。
経産省内閣といわれる安倍政権だが、官邸は、「ゴーン氏逮捕」や「クーデター」が、“国策”だという疑いをどう晴らし、日仏摩擦の着地点をどう考えているのだろうか。
(デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員 山田厚史)
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— ishigaki (@WretchedCat) 2018年12月10日
「トヨタに次ぐ自動車業界の主軸である日産・三菱を外資にさらわれると、危機感を抱いた。これが、“経産省お墨付き”の「日産クーデター」の「本音」ではないか」
「日産クーデター」の陰で囁かれる経産省の失地回復の思惑 | 山田厚史の「世界かわら版」 https://t.co/dg5QUj7Vag 経産省内閣といわれる安倍政権だが、官邸は、「ゴーン氏逮捕」や「クーデター」が、“国策”だという疑いをどう晴らし、日仏摩擦の着地点をどう考えているのだろうかとのこと・・・
— 黒ピカ広 (@black_pikahiro) 2018年12月11日
経産省にも骨のある方がいたわけだ。クーデター結構、国ぐるみで中国みたいなことをやってきたのはマクロン政権の方だ。世界は自国利益の為に動いている
— hiro (@hiroforjapan) 2018年12月10日
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「組織ぐるみで不正な経理処理を行い「粉飾決算」の罪に問われた東芝で、経営者は逮捕されていない。」
— TOM@あん摩屋 (@tommst) 2018年12月11日
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「日産クーデター」の陰で囁かれる経産省の失地回復の思惑(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース https://t.co/82UNKETzBn @YahooNewsTopics やはりというか、情報屋はもう裏で情報掴んでるな。言葉は濁してるけど国策逮捕だってのは公然の秘密なわけね。
— アリーナ (@arena_port) 2018年12月11日
「日産クーデター」の陰で囁かれる経産省の失地回復の思惑 | https://t.co/WasLxXXj0X 「ゴーン逮捕は経産省の深謀遠慮」がこのレポートのストーリー。「ゴーンは、コストカットで日産を再生させただけの強欲の愚物」をチヤホヤした反省ならば、この「深謀遠慮」は正しい!
— 怪傑ハリマオ (@harimaoto) 2018年12月10日
ゴーン氏逮捕は結局、国産車メーカーを外資にされてたまるかというナショナリズムなのか?そんな裏事情で逮捕されたらたまらないよね。
— アラーキー (@arakey3) 2018年12月11日
「日産クーデター」の陰で囁かれる経産省の失地回復の思惑 | 山田厚史の「世界かわら版」 | ダイヤモンド・オンライン https://t.co/jWyYBkXA5o
最近まわりで「国策」という言葉がよく聞かれる。安倍政権が動いているのか官僚の勝手な判断なのかわからないが、日本は悪い方向に向かっている感じがするし、米国の意図であればHuaweiもこれも納得できる。
— Prasite (@Prasite1) 2018年12月11日
「日産クーデター」の陰で囁かれる経産省の失地回復の思惑 https://t.co/oytLYz3LMu
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