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武田薬品の世界10指入り確定、今後は「事業売却」「リストラ」に注目
https://diamond.jp/articles/-/187817
2018.12.7 週刊ダイヤモンド編集部 土本匡孝
武田薬品工業の臨時株主総会。「買収完了で完全に外資系製薬会社となる」と買収反対派の株主はぼやいた Photo by Masataka Tsuchimoto
「絶対に反対だ。武田薬品の破滅をもたらす」
5日大阪市で開かれた国内製薬トップ、武田薬品工業の臨時株主総会。巨額買収に最後まで反対した「武田薬品の将来を考える会」(持ち株比率約1%)メンバーで、創業家筋の原雄次郎氏が力説するも、株主からの拍手はまばらだった。6月の定時株主総会では原氏の会社糾弾発言に、万雷の拍手が起きたのとは大きな違い。買収に必要な新株発行議案の行方は既に決した雰囲気が漂った。
武田薬品は5日、3分の2以上の賛成が必要だった新株発行議案の決議で約90%の賛成を集めてハードルをクリアした。買収される側であるアイルランドのバイオ医薬大手、シャイアーでも同日、臨時株主総会が開かれ、買収自体に100%近い支持を得てハードルをクリアした。
これで武田薬品はシャイアーを約6.8兆円で買収してのメガファーマ(巨大製薬会社)入りが確定した。買収資金のうち、約4兆円分を新株発行で、残りは借り入れや社債発行でまかなわれる。買収は2019年1月8日に完了する。
注目の新株発行反対票に「上積み」伸びず
企業規模では武田薬品とほぼ同じ、時価総額では武田薬品を超える「大が大を飲む」買収案件。かつ日本企業で過去最大規模の海外企業買収案件とあって、業界内外から注目された。
買収後の純有利子負債は5.4兆円、のれん代は4兆円〜4.4兆円、無形資産は6.3兆〜6.7兆円。武田薬品のクリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)は「大幅な利益増加でキャッシュフロー強化」「中期的に財務レバレッジを2倍以下に抑える」などと強気の説明をするものの、財務悪化や減配を不安視する株主は一定数おり、株価は買収検討が発覚する前より20%以上下がったまま、臨時株総を迎えた。
創業家筋の武田和久氏やOBら約130人でつくる「考える会」は、買収検討が判明した今年3月以降、一貫して買収に反対した。10月以降は国内、海外の機関投資家に直接財務リスクを説明して回り、「武田薬品最後の創業家社長だった武田國男氏も反対している」と発表。臨時株総2日前には、武田氏が外国特派員協会で記者会見して、反対活動を締めくくった。
シャイアー買収が発表されていた今年6月、「考える会」は定時株主総会で定款の一部変更を提案し、取締役会の買収権限に制限を付けようと画策した。いわばシャイアー買収反対の前哨戦だ。議案は9.44%の支持を得て否決された。
この日の臨時株総ではこの数字からどれだけ上積みするかに注目が集まったが、新株発行に反対したのは約10%と、ほぼ伸びはなかった。「考える会」のある幹部は「半年間の活動が徒労に終わった」と呆然とした様子。武田氏も「残念」と肩を落とし、「買収が成立する以上、誤った方向に行かないように、今後も折に触れて経営陣へ提言していく。株価、業績も落ちるとなれば、経営責任を追及していく」と話した。
臨時株総後、「何とか買収を食い止めたかった」と肩を落とす武田和久氏(写真右)と原雄次郎氏 Photo by Masataka Tsuchimoto
終わってみれば、武田薬品は「考える会」の買収反対意見に対して決算会見の場などでうまく反論することで株主の理解を広げ、巨額買収騒動を難なく乗り切った。この日も「考える会」から公開質問状として受けていた、財務リスクなど8つの質問に沿って、武田薬品幹部が負債比率低下の見通しなどを、時間を掛けて説明した。
ある競合他社の幹部は「考える会」の買収反対活動について、「武田薬品にすれば所詮、ガス抜きに過ぎなかった」と総括した。
1兆円規模の非コア資産売却やリストラは
買収完了へ、残すは事務手続きのみとなり、市場関係者の関心は、新武田薬品の動向に移っている。
武田薬品は買収完了後、最大100億ドル(約1兆1000億円)の非コア資産を売却して財務レバレッジを下げる方針を示しており、両社の一部製品(シャイアーの眼科領域など)や武田薬品の国内不動産が対象とみられる。他に対象となるかもしれないのが、大衆薬子会社の武田コンシューマーヘルスケア。同社は国内大衆薬売上高2位であり、仮に国内競合他社に売却されれば業界勢力図が大きく塗り替えられそうだ。
人員削減は買収完了後、全従業員の6〜7%実施すると予告されている。公表されている両社の連結従業員は計約5万人のため、3000人余りをリストラする計算だ。シャイアー本社の管理部門など両社で重複する機能に携わる従業員や、売却事業に付随する従業員が主な対象とみられる。だが既に2度のリストラが敢行された武田薬品湘南ヘルスイノベーションパーク(神奈川)の研究員たちは「またリストラがあるかもしれない」と、戦々恐々としている。
孤高の武田薬品は結果で批判を封じるのみ
振り返れば、主に国内同士で業界再編が起こった2000年代に、武田薬品は国内に目を向けず、海外製薬会社の大型買収に着手した。08年の米ミレニアム(7200億円)、11年のスイス・ナイコメッド(1兆1000億円)、17年の米アリアド(6200億円)と大型買収のステップを踏み、シャイアー買収で遂に世界トップ10入りを果たす。
新武田薬品の売上高は3兆円超、研究開発費は年4000億円超になる見通し。国内2位のアステラス製薬(売上高1兆3000億円、研究開発費2200億円)以下を大きく引き離し、国内製薬業界で別次元の会社となる。
ただ新武田薬品には将来の業績をけん引するような、大型化が期待できる後期開発パイプラインがない。新薬創出には一般的に10〜15年かかるため、14年からトップのウェバー社長CEOの責任ではないにしてもだ。数年以内に自社創薬でパイプラインが充実してこないようであれば、再び大型買収に走らざるを得ないだろう。
業界内の買収評価は今も二分している。「日本人社員はたまったものじゃないだろうが、リスクをとった大胆な決断」と評価する声がある一方、「研究開発力が伴わないのに、規模だけ大きくなってどうするのか」と懐疑的な声もある。
ただ、国内製薬会社で前人未到のステージに入る武田薬品からすれば、競合他社の声は、所詮犬の遠吠えだ。孤高の武田薬品はグローバル競争で勝ち組となるのか。業界中が注視している。
(週刊ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
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