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消費税ポイント還元の真の意義は景気対策ではなくキャッシュレス決済普及(ダイヤモンド・オンライン)
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/659.html
投稿者 赤かぶ 日時 2018 年 11 月 29 日 10:28:25: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

消費税ポイント還元の真の意義は景気対策ではなくキャッシュレス決済普及
https://diamond.jp/articles/-/186761
2018.11.29 野口悠紀雄:早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問  ダイヤモンド・オンライン


Photo:PIXTA


 政府が検討している消費税ポイント還元は、キャッシュレス化のきっかけになるかもしれない。

 キャッシュレスに関して日本が直面する問題は、中国のアリペイの進出を防げるかどうかだ。現在、日本に存在するキャッシュレスの手段は、いずれも長期的には問題がある。

 本当に必要なのは、仮想通貨を決済手段として導入することだ。今回のポイント還元をそのための契機にできないだろうか。

2つの目標のうち重要なのは
キャッシュレス化の促進


 政府は、2019年10月の消費税の税率引き上げに際して、キャッシュレス決済した消費者へのポイント還元を検討している。ポイントを発行するカード会社などを通じて還元し、会社負担分を国が補助する。

 対象とされる店舗は、中小の零細商店であり、大手スーパーや大手百貨店等は対象とされない。

 還元率として2%が考えられていたが、安倍晋三首相は、11月22日、消費税増税から9ヵ月間、2020年の東京五輪前までは、5%のポイント還元を検討すると表明した。

 これは、消費の落ち込み防止とキャッシュレス促進という、2つの目標を追う政策である。

 消費については、効果があるとしても、ポイント還元が行なわれている間だけのことだろう。しかも、消費はポイント還元の対象になる店舗へ移行するだけで、全体の消費には影響が及ばない可能性が高い。だから景気対策としては意味がない。

 それに対して、キャッシュレス化の促進は、やりようによっては効果があるかもしれない。
 ポイント還元が限定的な期間だけのことであっても、キャッシュレス化への糸口がつかめるかもしれないからだ。

 キャッシュレス化が成功すれば、日本経済の長期的パフォーマンスにも望ましい効果をもたらす。以下では、この問題について検討する。

クレジットカードでは意味がない
店舗の負担が大きい


 問題は、どのような手段でのキャッシュレスを想定するかである。キャッシュレスなら何でもいいというわけではない。

 政府が考えているのは、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済だ。

 これらのうち、クレジットカードには疑問がある。

 なぜなら、店舗の負担が大きいからだ。

 特別の読み取り機が必要、操作が面倒、手数料が高い、審査が必要、などの問題がある。

 小売店が決済端末を導入する費用は、政府が補助する方向とされる。しかし、手数料については、期間中は補助してくれるかもしれないが、それが終われば、元に戻ってしまう。そして、クレジットカード会社は、手数料の引き下げには消極的だ。

 そうなると、9ヵ月間だけのために店舗側がクレジットカードシステムを導入するとは考えにくい。

 クレジットカードは確かにキャッシュレスの1つの手段ではあるが、古くからあるシステムであり、これをいまの日本に広げることが、将来の日本にとって意味があるとは思えない。

 とくに問題は、手数料だ。経済産業省が2016年に実施した調査によると、クレジットカード支払いを導入しない理由で最も多いのは「決済手数料が高い」ことだ(観光地におけるキャッシュレス決済の普及状況に関する実態調査、2017年2月)。

 仮に、今回の措置によって利用が増えたとしても、海外のクレジットカード会社の収入を増やすだけのことになるのではないだろうか。

 第2に考えられるのは、電子マネーである。

 日本には、交通系のSUICAやPASMOなどがある。また、楽天Edyがある。

 これもクレジットカードと同じ問題がある。すなわち、特別な読取り機が必要であるし、コストが高い。

 第3に考えられるのは、nanacoなど、コンビニエンスストアのポイントカードだ。

 フランチャイズのコンビニエンスストアは、今回のポイント還元策の対象となるので、ここでの購入を増やす効果はあるだろう。ただし一時的な移動であって、利用者を増やす効果があるかどうかは分からない。

急増するQRコード決済
ただ手数料引き下げには限度


 第4に、スマートフォンを使ったQRコード決済がある。

 すでにLINE Pay、楽天ペイ、Origami Payがある。アマゾンが今年の夏からAmazon Payのサービスを始めた。10月からサービスを開始したPayPay(ペイペイ)は、今年6月に設立されたヤフーとソフトバンクの合弁会社によるスマホ決済サービスだ。

 さらに、2019年2月には、ゆうちょ銀行が「ゆうちょPay」のサービスを開始する。また、銀行連合がQRコード決済で連携する。

 このように、QRコード決済は、このところ急増している。

 クレジットカードや従来の電子マネーに比べての利点は、特別の読み取り装置が必要ないことだ。

 また、手数料も低い。LINE PayとPayPayは、期間限定で手数料をゼロにしている。銀行連合は1%台に抑える予定だ(なお、楽天ペイは3.24%、Origami Payは3.25%)。

 ただし、これにも問題がある。

 まず、銀行連合のQRコード決済は、20年4月に本格的に稼働とされているので、来年10月には間に合わない。

 第2に、手数料は、従来の手段より低いとはいえ、引き下げには限度がある(LINE PayとPayPayは手数料ゼロだが、期間限定だ)。

 これらのシステムは、銀行振込やクレジットカードの上に乗っている仕組みなので、平均的な手数料をそれらのシステムより低くするのは、原理的に不可能なのである。

 中小企業は、採算点ギリギリのところで運営している場合が多いので、1%台の手数料であっても導入できるかどうかは、疑問だ。

アリペイの進出を防げるか?
導入する店舗が増えそう


 QRコード決済の電子マネーとしては、中国のアリペイがある。これはすでに日本にも進出している。導入店は、著しい勢いで増加している。

 2017年夏時点では、約2万5000店だったが、18年1月には4万店を超えた。コンビニエンスストアや家電量販店などで利用が広がっている。

 20年の東京オリンピックに向けて中国人観光客の来日が増えると予想されることから、導入する店舗はさらに増えるだろう。

 アリペイ躍進の大きな理由は、手数料が安いことだ。個人間では無料。業務用では、企業が負担する決済手数料は最大0.6%だが、実際にはコストがほぼゼロのケースが多いとされる(場合によっては払い戻しがある)。

 これは主として中国人が用いるシステムなので、今回は対象とならないが、ポイント還元策がなくとも、日本における受け入れ店舗は増加するだろう。

 実は、そのことが日本のキャッシュレス化における最大の問題なのだ。

 なぜなら、受け入れ店舗が増えれば、日本の銀行を利用して、日本人客にもアリペイを使えるようにしてほしいとの要請が店舗側から出てくると考えられるからだ。

 現在、日本に存在するQRコード決済より手数料が安いので、これは、当然、起こり得る要求だ。

 しかし、ここには、さまざまな問題がある。中国の電子マネーが日本を制することになり、日本の決済システムの基幹的な部分を外国の企業に握られることになるからだ。

 この問題については、すでに論じた(18年3月8日付「中国アリペイに征服されそうな日本が、出遅れを逆転する方法」。それが現実の問題になる可能性がある。

キャッシュレス化の本命は
仮想通貨


 キャッシュレス化の手段として最も優れているのは、仮想通貨だ。

 まず、導入にあたって、店舗の側で特別の読み取り機器は必要ない。仮想通貨は転々流通するため、受け取った仮想通貨を支払いに用いることができる。また、インターネットで用いることが可能だ。



 仮想通貨による決済が日本で広がれば、アリペイなどの進出を防ぐことにもなる。

 仮想通貨には、いくつかの種類のものがある。

 第1は、メガバンクが開発中の仮想通貨だ。これは、現在、実証実験を行なっていると報道されている。来年10月までに間に合うかどうか分からないが、実際に利用に供されれば、日本におけるキャッシュレス化の本命になる可能性がある。

 第2は、ビットコイン型の仮想通貨である。ビットコインでの決済は、すでにビックカメラが導入している。ヤマダ電機も2018年1月からビットコインでの支払いを受け付けている。

 これは、銀行システムに依存しない仕組みなので、今後、技術進歩によって、決済手段として大きく発展することが期待される。手数料をゼロにすることも可能だ。

 ただし、問題はいくつかある。

 第1は、ビットコインの保有者がそれほど多くはないことだ。

 第2は、ビットコインの価格が高くなると、送金コストが高くなってしまうことである。実際、去年の秋には、そうした事態が発生した。しかし、現在では下がっている。

 第3は、店舗が仮想通貨を取り扱えるだけの技術を持っているかどうかという問題だ。

 そこで、これに関して取引所が手助けをするサービスが考えられる(ビックカメラやヤマダ電機は、bitFlyerと提携している)。ブロックチェーンを介さない同一取引所内の取引であれば、手数料がゼロのサービスがすでに存在する。

 したがって、利用者としては、ほとんどコストを負担せずに利用することができるだろう。

 すでに述べたように、今回のポイント還元策は、消費落ち込み対策としての効果には疑問がある。しかし、この機会に仮想通貨での取引を増加させることができれば、大きな意味がある。

 取引所の対応が期待される。

(早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 野口悠紀雄)





















 

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