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ライザップ、なにがヤバイのか?凄腕会計士とキーマンに見解を尋ねた 革命と綱渡り、それが難しい
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58478
2018.11.19 週刊現代 :現代ビジネス
創業時から買収で成長
腹回りに貫禄のついた著名人が、たった数ヵ月で見違えるように引き締まったボディーを手に入れる。パーソナルジム「ライザップ」のインパクトあるCMがお茶の間に流れるようになったのは'14年のことだ。
それから4年、ライザップはM&Aで大量に企業を買収し、計75社に広がる巨大なグループを形成するに至っている。
その「爆買い」っぷりはすさまじく、衣料小売りの「ジーンズメイト」や体型補整用婦人下着を手掛ける「マルコ」、『漫画ゴラク』で有名な出版社「日本文芸社」など、まったく業種を問わない。
もちろん、グループの基幹事業はいまでもフィットネスクラブの運営だ。「結果にコミットする」のキャッチコピーのもと、「1キロ痩せるのに4万円かかる」と言われるほど高額な料金を設定。それでもトレーナーによる徹底的な食事管理で「痩せられる」と評判が高い。
「フィットネス業界は競合がひしめいて、急拡大はむずかしい。ですが『結果にコミットする』とまで宣言していた企業はほかになかった。
多額の費用をかけてCMを大量に流し、効果がなかったら返金するからやめてもらって構わない、と勝負に出たのが功を奏しました」(百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏)
高価だが徹底したサービスで、顧客に付加価値を感じてもらうのがライザップ流のビジネスだ。
これを応用し、ゴルフや英会話など、さまざまな事業に着手。ライザップの実質的な前身「健康コーポレーション」の創業は2003年、それから15年で総従業員数は7000人を超えた。
冒頭で触れたとおり、ライザップにはもうひとつの「顔」がある。数々の企業を買収して拡大を続けるM&A企業であるという一面だ。
創業者で代表取締役社長の瀬戸健氏(40歳)の略歴に、その片鱗は表れている。健康コーポレーション時代に発売した「豆乳クッキーダイエット」が大ウケし、わずか4年で年商100億円を突破。4年目にして札幌証券取引所アンビシャス市場に上場を果たした。
ところが競合製品が出てくるにつれて経営が悪化。資金がショートしかけたところで、買収したジャパンギャルズが販売する美顔器「エステナード」が大ヒットを記録し、命拾いした。
その後も多角経営が功を奏し、現在のライザップグループの原型を形作っていく。
瀬戸氏の実家は福岡県北九州市でパン店を営んでいる。母の和子さんは、息子の青年時代を次のように話す。
「勉強するのは好きでなかったみたいだけど、とにかく友達が多い子でした。店のパンを学校で売ってお小遣いにしていたみたいで、商売上手でもあったんです。
いまでも友達付き合いを大切にしているみたいですが、『散らかしグセ』も子供のころから変わりませんね。よくお嫁さんに諫められているそうですよ」
キャッシュが少なすぎる
人懐っこく、人間臭い。今時のカリスマ経営者像とはやや異なった印象だ。グループの中枢にはダイソーの元専務・内藤雅義氏や日産の元常務・長谷川亨氏など、各業種から経験豊かな面々が名を連ねる。これも瀬戸氏の求心力に依るところが大きいのだろう。
ライザップグループは'18年3月期決算で売上高は1362億円、純資産は428億円へと急成長。'20年度には売上高3000億円を目指すという。リーマンショック以降、もっとも業績を伸ばした企業のひとつだ。
だが、同社の経営状況について、ハッキリと疑問を呈する人物がいる。細野祐二氏――財務諸表について独自の分析を行い、上場企業1000社以上の財務危険度を精査してきた凄腕の会計士だ。
「まず懸念すべきは、ライザップの当期利益に対して営業キャッシュフロー(CF)が少なすぎることです。'18年3月期の純利益は92億5000万円なのに対し、営業CFはわずか8800万円にとどまっている」
営業CFは、商品の販売やサービスの提供など、企業が営業活動から得たキャッシュ量を示す。その会社が1年間にいくらのおカネを生み出せるかがわかる、重要な指標だ。
「そして利益を営業CFで割った数値を『会計利益先行率』と言いますが、ライザップの場合これが1万511%になります。日経平均株価が採用する企業の平均は45%程度なので、いかに突出した数字かということがわかると思います」(細野氏)
要するに、ライザップの手元にはほとんどおカネが入ってきていないのに、その100倍もの利益が帳簿上には書かれているということだ。
会計利益先行率の高さは成長している証でもあるが、一方で滞留在庫や不良債権の増加を示す「危険信号」のひとつでもある。
ではなぜこのような「キャッシュなき利益」が積み上がっているのか。それは企業を買収したときに生まれる「負ののれん」と呼ばれるものに起因する。
負ののれんとは、ある企業を、その企業の純資産額を下回る金額で買収した場合、その差額が当期純利益として即時計上されるものだ。
割安購入益ともよばれるが、たとえば純資産100億円の企業を80億円で買うと、差額の20億円は収益としてカウントされる。言葉の響きはネガティブだが、「企業をおトクに買えた」という意味でのれん代は純利益に乗っかってくるのだ。
ライザップがここ5年間のM&Aで積み上げた「負ののれん」は155億円にのぼる。こののれん代が、同グループが近年たたき出している驚異的な利益のカラクリだ。
単年でみてみると、たとえばライザップグループの'18年3月期の当期純利益は前述のように約93億円だが、このうち負ののれんは88億円にもおよぶ。純利益の95%が、現金流入を伴わない帳簿上のおカネというわけだ。
「純資産よりも安く買える企業は当然、買収後も事業改善の見込みが薄い。ここで問題なのは、将来の営業損失を見込んで組み込まれるはずの『事業損失引当金』に関しては、簿外債務となっている可能性が高いことです。
企業を格安で買い叩いたことはポジティブな要素として純利益に反映される一方で、それに対する潜在的なリスクは帳簿上に表れない。ここが経営の健全性を疑うポイントになります」(細野氏)
「当社はリスクを取る」
負ののれんは翌年以降の会計には計上されないので、企業買収をやめればいきなり赤字に転落する可能性がある。単独では存続が難しいクズ会社を買い続けることがライザップの本質なのか。
「本丸」であるフィットネス事業も、市場規模はそれほど大きくない。安価で同じサービスを提供する競合ジムが増えてくれば、ライザップ本体の経営もシュリンクする可能性はある。
無茶なM&Aで、見かけ上の業績を吊り上げているのではないか。こうした疑問に対し、ライザップ広報担当者は次のように説明する。
――不採算企業の買収が目立つが、どのような狙いがあるのか。
「当社がM&Aの対象にする企業は、常時100件以上持ち込まれる買収提案がもとになっています。そこから厳選し、実際に買収するのは月1社あるかないかです。
その基準は、決して割安購入益を目的としているわけでなく、現状赤字だったとしてもグループのなかで成長を実現できるかどうかということです。
また、正ののれんが発生する割高な企業を買収すれば、利益成長できなかったときに多額ののれんの減損リスクを負うことになります。
たとえれば、人気でまだ高い中古車を買うよりも、作りはいいが故障している安い中古車を買って、修理したほうがいいということです」
――負ののれんで利益を計上しても、買収企業の赤字が解消されるわけではないが、どうするのか。
「買収した企業は、2〜3年以内での営業利益の黒字化を目標にしています。そして'13年に買収したイデアインターナショナル(雑貨販売)、'15年の夢展望(女性向け衣料)など、実際にどの企業でも目標期間内での黒字化を達成しています。
企業買収を続けているのは、これらの実績、そして今後とも企業を再生していくという強い意志があってのものです。何も手を打たなければ赤字がさらに増加することが多く、当社はこの点においてリスクを取った経営を行っています」
松本会長は「やりすぎかも」
端的にまとめると、「ライザップのノウハウを活かして、どの企業も2〜3年で立て直してみせます!」ということなのだが、これもライザップ本体の調子が上向きであってこそのもの。財務面での裏付けが万全とは言いがたい。
何万人ものダイエットを成功させてきたライザップが、企業を買い込みすぎてぶくぶく膨れ上がっているのは皮肉な話だ。だが今年6月、最強の「トレーナー」が代表取締役としてやってきた。
その男とは、松本晃氏のことだ。松本氏はジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の社長を務めたあと、カルビーの会長兼CEOとして経営再建を達成。まさに再建のプロである松本氏の加入は、ライザップにとって頼もしいかぎりだろう。
今後の明暗を分けるキーマンとなった松本氏は本誌の取材に対し、次のように答えた。
――瀬戸社長をどのように評価しているか。
「瀬戸社長はほんとうにかわいいやつだよ。礼儀正しくて聞き上手で、言ってみれば『人たらし』。はじめて会うまではライザップについてよく知らなかったけど、一緒に仕事をしてみようと思ったのは彼のキャラクターに惹かれたところはあるね」
――ライザップにおける松本さんの役割とは。
「どんな事業も、危機感を持って新しいモデルを考えないといつか立ち行かなくなる。
これはライザップのフィットネス事業も同じ。だから新しいモデルを構築するために、僕はライザップに呼ばれたと思っていて、それができれば僕の役割は終わり。カルビーのときもそうだったからね」
――いまのライザップのM&A戦略についてどう思うか。
「いまのM&Aに関しては、ちょっとやりすぎかもしれない。というのも、いくら瀬戸くんが優秀とはいえ、会社を再建するのはそんなに簡単なことじゃないんです。
ひとつやふたつならどうにかなるけど、いまライザップはたくさんの赤字企業を抱えている。次の企業を買う前に、すでに買収した企業を立て直したほうがいいと僕は言っています」
――負ののれんについてはどう思うか。
「僕は『キャッシュイズキング』だと思っています。古い考え方かもしれないけど、買った会社自体がきちんとキャッシュを生める計画づくりを先にしないとダメ。
銀行から借り入れるにしても、投資家にお願いするにしても、きちんとおカネを作ることは大切だと思う」
ライザップがダイエット業界に革命を起こしたのは間違いない。だがグループ全体で見ると、綱渡りの経営で成長を遂げていることもまた事実なのだ。
「週刊現代」2018年11月10日号より
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