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日本人「海外口座」55万件を入手した国税庁 「摘発第1号」は…
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/11141658/?all=1
11/14(水) 16:58配信 デイリー新潮 週刊新潮 2018年11月22日号掲載
国税庁 ある日、税務署から突然封書が届いた。開けてみると、慇懃な文章が目に飛び込んでくる。 〈あなたの申告所得について、調査の事前通知を行いますので、お忙しいところ誠に恐れ入りますが、下記の担当者宛までご連絡くださいますようお願いいたします〉 慌てて電話をしてみると、担当者が、おもむろに聞いてくるではないか。 「海外に送金して金融商品を買っていますよね?」 家族にも内緒で運用しているタックスヘイブンの口座のことを知っているようだ。結局、修正申告をして、多額の追徴課税も払うことになってしまった――こんなことが、来年から急増するかもしれない。 国税庁が日本人の海外口座(日本居住者)の情報55万件を入手したと発表したのは、10月31日のこと。口座情報は64カ国・地域にまたがっているというが、それにしてもずいぶんな数である。 国税庁担当記者が言う。 「今回、国税庁が大量の口座情報を得られるようになったのは、OECDが作った『CRS』(共通報告基準)に基づいて、各国の税務当局が自動的に情報交換する仕組みに参加したからです。情報はすべてデータ化されており、CRSに参加すると情報提供が義務化されることになります」 口座情報は氏名、住所、そして金融機関名や残高なども分かるようになっており、CRSの参加国には香港やシンガポールなどのタックスヘイブンも入っている。だから、日本からこっそり送金する隠し口座を作ったつもりでも国税庁には筒抜けになるのだ。 仮想通貨取引は これまでにも国税庁は、海外での税金逃れに目を光らせてきた。 6年前には「国外財産調書制度」を作り、海外に5000万円超の財産がある場合、報告を義務付けている。また租税条約によって、海外の税務当局から年間10万件以上の情報も得ている。 「しかし、『国外財産調書』の提出は、9102件(平成28年分)にとどまっています。国税庁は、調書を提出していない人が、まだ相当数いると見ています」(同) それだけに、口座情報は国税庁にとって“宝の山”といえるが、これで、海外での資産隠しがガラス張りになるのかというと、 「いいえ、複数のプライベートバンカーの話を総合すると“55万件は意外に少ない”というのが、正直な印象です」 とは、ノンフィクション作家の清武英利氏だ。中には、「海外の日本人口座はその10倍はあるはずですが……」と首をかしげるバンカーもいたという。 清武氏は、シンガポールに集う富裕層とプライベートバンカー、それを追跡する国税調査官の実態を描いた『プライベートバンカー』(講談社+α文庫)の著者である。 「CRSに基づく情報交換で資産フライトに対する包囲網が狭まったことは間違いありません。しかし、抜け穴はまだ残っている。たとえば、シンガポールに移住した日本人の富裕層が現地で口座を作っても、国税庁には情報が入りません。CRSで提供されるのは、あくまで日本在住で海外に口座を持っている人なのです。55万件の中には、仮想通貨取引に関する情報もない。新手の仮想通貨節税にはまだ対応できていないのです」(同) また、今回の口座情報に米国から提供されたものはない。同国はFATCAという厳格な情報収集制度を持っており、CRSに参加していないからだ。 とまれ、国税庁によると口座情報の分析はこれから。課税から逃れたい富裕層に対する追跡は始まったばかりである。
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