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ユーロの不人気はいつまで続くか 中央銀行の独立性は守られるべきか アップルショック、目新しくない悪材料が嫌気された理由
http://www.asyura2.com/18/hasan129/msg/418.html
投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 13 日 21:03:27: ufjzQf6660gRM gqSC3IKr
 

(回答先: 米国株式と景気「陰うつのループ」に陥るリスク 中国新規元建て融資、10月は予想大幅に下回る 景気減速を示唆 アジア株下落 投稿者 うまき 日時 2018 年 11 月 13 日 20:56:42)


外為フォーラムコラム2018年11月13日 / 16:15 / 2時間前更新

ユーロの不人気はいつまで続くか

植野大作 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
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[東京 13日] - ユーロ/ドルは当面調整含みで推移しそうだ。欧州中央銀行(ECB)は、来年の夏まで現行のマイナス金利継続を約束しており、内憂外患の政治リスクを抱え込む低金利通貨のユーロを、あえて買い進む理由は見当たらない。

とはいえ、来年のどこかでユーロ/ドル相場は底打ちし、失地回復に向かうと筆者はみている。

為替市場ではユーロが対ドルで軟調に推移している。12日には一時1ユーロ=1.1216ドルと、昨年6月27日以来となる約1年5カ月ぶりの安値をつけた。

米連邦準備理事会(FRB)の利上げによって欧米金利差のマイナス幅が拡大する中、イタリア財政問題やブレグジット交渉を巡る欧州連合(EU)内の軋轢(あつれき)や、メルケル首相の党首引退宣言によるドイツ政局不安の台頭などが嫌気され、ユーロ安・ドル高が進んでいる。

為替需給に目を転じても、毎年11月下旬の米感謝祭から12月下旬のクリスマスにかけては、米国内外でドル資金への需要が高まりやすいほか、米系グローバル企業が海外で稼いだ利益の本国送金(リパトリエーション)が活発化する時期にさしかかる。

米多国籍企業の海外利益は、欧州のシェアが高い。特に今年はトランプ政権の法人減税によって、1月以降に稼いだ海外利益の本国還流が非課税になってから初めてのクリスマス越えになるだけに、例年以上のリパトリによってドル高・ユーロ安圧力が高まる可能性もある。

テクニカル的にみると、足元のユーロドル相場は2017年1月安値の1.03ドル台から18年2月高値の1.25ドル台まで上昇分の半値押しに当たる1.14ドル台をいったん明確に下抜けしている。

この先、何かの拍子で一段のユーロ安が進んだなら、次の下値メドはマイナス61.8%押しの1.11ドル台になる。そこで止まらずさらに下落に勢いがついた場合、心理的節目の1.10ドル前後の攻防になる可能性もあるだろう。

<ユーロが失地回復へ向かう2つの理由>

だからと言って、そのままユーロ/ドルの下落に歯止めがからなくなり、かつてのように1ユーロ=1ドルの「パリティ(等価)割れ」寸前にまで追い込まれるとは考えていない。時期や水準までぴたりと当てる自信はないが、来年のどこかでユーロ/ドル相場は底打ちし、失地回復に向かうとみている。

以下、2つの理由を挙げておく。

第1に、「政治ネタ」をテーマにした通貨安には限界がある。当該通貨圏の景気・物価情勢や中銀の金融政策などのファンダメンタルズに決定的な影響を及ぼさない限り、政治・政局の混乱による通貨安圧力は、時の経過とともに減衰するのが市場の常だ。

例えば2016年6月の英国民投票でEU離脱が決まった後、ポンドは同年10月まで激しく売り込まれたが、英中銀(BOE)が利上げに動くと自律反発が加速。EU離脱協議が難航する中でも、最近のポンド/ドルは国民投票後の安値より高い水準で推移している。

昨今のユーロ安進行の一因となっているイタリア財政問題を、かつての「欧州債務危機の再来」と警戒する向きもあるが、恐らく言い過ぎだ。現在、イタリアの長期金利は上昇しても3%台までであり、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルを経由してイタリアにも市場からの退出警告が波及した当時の7%前後とは明らかにレベルが違う。

イタリア政府がユーロ圏に残留する方針を維持する限り、EUが定める財政ルールを逸脱した放漫財政を継続することは出来ない。EUに違反金を預けて財政協議を続けた場合でも、いずれ市場からの警告も受け、妥協の道を選ぶことになるだろう。

英国のEU離脱協議も難航しているが、双方が強烈な経済的打撃を受ける合意なき無秩序な離脱は誰の利益にもならない。最悪の事態は恐らく回避され、協議の時間が足りない場合も、交渉するために必要な善後策が採用される可能性が高い。

もちろん、来年3月末に「無秩序な離脱シナリオ」が炸裂する可能性はゼロではない。ただ、仮にそうなっても当初はポンドとユーロがドルや円に対して無差別に売られそうだが、経済への打撃がより大きいのは英国だ。ユーロ/ポンドはユーロ高に振れるだろう。ポンド売りが続いたとしても、ユーロ安にはどこかで歯止めがかかるのではなかろうか。

<ECB政策正常化でユーロ選好に>

第2に、来年はECBによる金融政策の正常化が、一段と進む可能性がある。現行のフォワードガイダンスでは、ユーロ圏の量的緩和は今年の年末で打ち切られる予定であり、マイナス0.4%の下限政策金利の継続を約束しているのは来年夏までだ。その後、ドラギECB総裁は10月末に任期満了を迎える。

もちろん、ECBのフォワードガイダンスは、この先の経済次第で如何様(いかよう)にも変化する。だが、ドラギ総裁が導入したマイナス金利は、金融危機に対応した「異例」の政策だ。来年秋の任期満了の目前に景気が極端に悪くなっていなければ、金融危機の克服宣言を行い、金融政策「正常化」の名目でマイナス金利の圧縮に動く可能性は高いだろう。

そこで改めて近年のユーロ/ドルのチャートをみると、ドラギ総裁がユーロを守るためなら「何でもやる」と宣言して前代未聞のマイナス金利を導入したのは2014年6月だった。それ以来、3回にわたってマイナス金利が深堀りされた局面で、ユーロは激しく下落した。しかし、17年6月にドラギ総裁が「今やデフレの脅威は消え、リフレの力が働きつつある」と述べた「シントラ発言」で利上げの可能性が意識されて反発し、今年2月には一時1.25ドルまで上昇した。

その後、利上げ期待がしぼむにつれてユーロ/ドルは反落したが、ECBがマイナス金利の解除に動いた場合の「予行演習」は、今年2月までのユーロ高局面で既に実施済みだ。「将来起きる変化」を早めに織り込む為替市場の性質を勘案すると、もしも来年の秋にECBのマイナス金利の解消が見込まれるのなら、遅くとも夏ごろまでのどこかでは、ユーロドル市場での織り込みが始まるかもしれない。

また、その頃になれば、恐らくドラギ総裁の後任も決まっている。これまでECBの総裁はオランダ人、フランス人、イタリア人の順番となっているが、次の総裁がドイツや北欧から選ばれた場合、来年秋以降、ユーロ圏の金融政策正常化観測は人事面からも強まるだろう。

ECBによる金利正常化を市場が意識してユーロ/ドル相場の水準訂正が起きる場合、米国で利上げ打ち止め感が台頭するタイミングにもよるが、いずれユーロ/ドルはマイナス金利導入前の水準だった1.40ドル前後を目指した失地回復に向かうのではないだろうか。

政治が混乱していて金利の低いユーロは、現在非常に不人気で保有が減っている。値上がりが始まっても利益確定売りや戻り売りが出にくいため、意外にスッキリ上がる可能性がある。

現在、「金融政策の正常化」をテーマにした通貨選好は、先進国の利上げレースで先頭を走るドルに向かっている。ただ、主要国で一番早く利上げを始めた分だけ、打ち止めになる順番も米国が早くなる可能性を意識すべきだ。

来年どこかで「ECBが政策金利の正常化に動き始める」との期待が現実味を帯びてきたあかつきには、市場の通貨選好の重心が利上げ「先発組」の米ドルから「後発組」のユーロに移ってくることが想定される。ドラギECB総裁の顔色を注視しつつ、そのタイミングを見極めたい。

植野大作氏  三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト(写真は筆者提供)
*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

*本稿は、「外国為替フォーラム」に掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisaku-ueno-idJPKCN1NI0OD


 

ビジネス2018年11月13日 / 18:10 / 1時間前更新
ユーロ圏の長期金利、上昇へ=ECB専務理事
1 分で読む

[ロンドン 13日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のプラート専務理事は13日、ユーロ圏の長期金利が今後上昇するとの見通しを示した。ECBの買い入れプログラムの下で購入した債券の残存期間が縮小し、同プログラムの市場への影響度が低下するとしている。

債券買い入れプログラムの終了に伴う長期金利の上昇を歓迎する意向を示したものとみられる。

専務理事はロンドンでの講演で、「ある時点で、こうしたデュレーションの受動的な喪失が、タームプレミアムに一段と上昇圧力をかけるだろう」と指摘。

「こうした緩やかなプロセスは、傾向として、徐々にイールドカーブのスティープ化を促すはずだ。短期ゾーンは、政策金利のフォワードガイダンスにより、しっかりとアンカーされる」と述べた。

専務理事は、ECBが2019年後半に利上げするというアナリスト予想を支持するとも表明。ただ、ECBの政策は今後も引き続き予見可能であり、引き締めは緩やかなペースでしか進めないとも発言した。

専務理事は、利回りは金融政策だけではなく、発行体の財務の健全性にも左右されるとも指摘した。予算案の問題を巡り国債利回りが上昇しているイタリアに言及したとみられる。

専務理事は「市場参加者から見た経済ファンダメンタルズや発行体の信用力といった他の要素も、引き続き債券利回りの水準とスプレッドを決める主要な要素となる」と述べた。

またプラート専務理事は、イタリアの財政問題を巡る緊張が他の高債務国に波及することを阻止するため、ユーロ圏の政策当局者が救済基金「欧州安定メカニズム(ESM)」を活用することを議論していると明らかにした。

専務理事は「(他の)諸国への波及が起こった場合にとり得る予防的な措置について、政治的なレベルで議論している」とした上で、「中央銀行の措置ではなく、ESMに関連したものだ」と説明した。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/praet-ecb-idJPKCN1NI0XJ


 


プラート理事:ユーロ圏には引き続き「大規模な」ECBの支え必要
Piotr Skolimowski、Xiaoqing Pi
2018年11月13日 19:20 JST
債券購入終了は金融緩和の解除と同義ではない
購入済み資産とその再投資と利上げ期待の抑制によって支援続ける
欧州中央銀行(ECB)は資産購入の終了後も引き続きユーロ圏経済を支え続けると、チーフエコノミストのプラート理事が最近の成長減速を認めた上で述べた。

  同理事は13日にロンドンで、今年末に債券購入を終了する計画は「金融緩和の解除と同義ではない」とし、インフレを支えるために引き続き「大規模な」刺激が必要だと語った。インフレ率が2%弱という中銀の目標水準に収れんすることへの自信を、経済の基調的強さが支えていると付け加えた。

  プラート理事は、「大量の購入済み資産とその再投資、さらに強化されたフォワードガイダンスによる利上げ期待の強力な抑制によって、必要な金融政策の刺激を引き続き提供する」と述べた。「いずれにせよ、全ての政策手段はインフレ率が目標に向けて持続的に進展していくことを確実にするよう調整できる」と説明した。


  同理事は、最近の景気減速は「世界的な政策の不確実性と金融環境のタイト化」の中でのグローバルな勢い低下を反映しているとの考えを示した。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iuxlVARgjcs8/v2/-1x-1.png

原題:Praet Says Euro Area Still Needs ECB Support Amid Slowdown Signs(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-13/PI4KW66KLVR501?srnd=cojp-v2

 

 

外為フォーラムコラム2018年11月12日 / 12:57 / 3時間前更新
中央銀行の独立性は守られるべきか
Edward Hadas
3 分で読む

[ロンドン 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 政治家がまた、中央銀行を振り回そうとしている。トランプ米大統領だけではない。インドやトルコ、ロシアや南アフリカの指導者も、中銀が国民の意思に反した行動を取っていると不満を口にしている。

そうした圧力は大いに正当化されているが、完全に間違っている。

トランプ大統領のように選挙で選ばれた指導者は通常、中銀に対し、金利を低く保ち、緩い融資基準について過度な心配はしないよう望んでいる。しかし時には、複雑な場合もある。

インドのモディ政権は2016年、インド準備銀行(中央銀行)に通貨切り下げを命じた。一方、ユーロ圏では、欧州中央銀行(ECB)の債券買い入れプログラムが、財政的に苦しい加盟国へ隠れた補助金を与えるものだという厳しい批判を浴びている。

こうした緊張には、基本的なコンセンサスが隠れていることがある。ジンバブエやベネズエラといった、ほんのわずかな国々の独裁者だけが、支持者や、敵になり得る人にカネを握らせるために財政的破滅へと向かっている。

他のほとんどの国々では、政治家や中銀当局はどちらも、低インフレ率、安定した経済成長、そして害のない金融システムを求めている。

そのようなゴールに達する最善の方法を誰が決めるのかについては、今でも真剣な議論が交わされている。

中銀は政策を決定する上で、どの程度自由であるべきなのか──。この議論を翻弄(ほんろう)しているのは2つの「神話」だ。

1つ目の神話は、金融テクノクラシー(専門家による支配)が現実的な解決の可能性であると、中銀当局者が信じたがっていること。2つ目は、一部の政治家が自身による介入について「呪術的思考」にふけっていることだ。

まずは、中銀の独立性という問題において、従来の擁護派の主張から見てみよう。2008年の世界金融危機はこうした大義を守ろうという熱意をくじいてしまったが、多くの専門家は今でも、金融政策と金融規制が本質的に、例えば交通安全よりも、政治的ではないと考えている。

彼らのような純粋主義者は、中銀当局者は通常、英経済学者のジョン・メイナード・ケインズが提唱した控えめな理想に従ってやっていけると主張する。つまりそれは、歯科医のように技術的スキルを使うことである。政治家は中銀に大まかな目標と広範な基準を示すべきで、あとは専門家に任せろ、と言うのだ。

だが中銀の独立性を強硬に支持する人たちでさえ、異例の事態においては政治的になり得ると認めている。2008年と09年に先進国全体に急速に広がった緊急措置と、その後10年に及ぶ超金融緩和策は、非常に大規模かつ長期にわたる「例外」だったのかもしれない。

だが、そのような大規模な例外でさえも、戦争下での公民権はく奪が、民主国家が隠れた独裁国家であることを意味しないのと同じように、政治的中立性の原則は損なわれない、と彼らは主張する。

だが、それは幻想にすぎない。

中銀には政治が組み込まれている。金利は、一般的に恵まれている貸し手と、普通は比較的貧しい借り手の所得格差に多大な影響を及ぼしている。銀行規制に関する決定は、さまざまな社会経済的な階層や産業を手助けすることになる。金融政策の選択は、戦争や社会福祉政策ほど政治的対立を生まないかもしれないが、かつてないほど論争を呼んでいるため、純粋に専門家が解決できる問題とは言えなくなっている。

金融危機後、中銀が行った選択の政治的影響を考えてみよう。中銀は新たに創造した資金で金融資産を購入して、経済に資金を注入した。量的緩和はそうした資産価格を上昇させ、大半がすでに裕福な保有者の資産を膨らませた。異なる政策、例えば、個人の銀行口座に新たな資金を貸し付けるという選択をした場合、消費力と富の分配に与える影響はまったく異なっていただろう。

基本的に政治問題であれば、政治家がより大きな発言力を求めることは法に反することではない。しかしながら、何について求めるかについては注意すべきだ。中銀当局者は不意を突かれることも多いが、政治家の方がうまく対処できると考える根拠もない。

実際、金融政策に関わりたがる政治家は、主に自身のイリュージョンを追い求めている。短期的な追加刺激策は効果的で安全だと彼らは主張する。短期的に見れば、正しいことかもしれない。緩和策によって、1、2四半期は成長が持続することはある。あるいは、選挙が終わるまで金融危機を回避することすら可能かもしれない。

だが長期的には、低過ぎる金利で過度な融資を行うことは、既存の経済問題や金融問題を悪化させるだけだ。政治家は、こうした短期的な衝動に抵抗できるという信頼性に欠ける。

過剰なまでに防衛的な中銀当局者と愚かしいほどアグレッシブな政治家の対立は残念なことである。協力し合った方がお互いに楽になるからだ。例を挙げると、強力な政治的後押しがなければ、近年ほとんどの景気低迷の裏に存在する「過剰金融の呪い」を解くことはできない。また、金融政策と財政政策はより緊密に連携した方が賢明だろう。

政治的な日和見主義者も思い上がった中銀当局者もいない世界なら、有益な協力は自然なことだろう。そのような世界では、中銀の独立性という神話を声高に叫ぶ必要もない。

だが現実は、このような理想の世界とは程遠い。

トランプ氏と仲間の各国指導者たちが反抗的な中銀当局者について文句を言う場合、彼らが与える圧力は有害無益である可能性の方がはるかに高い。そうした不幸な状況において、中銀の独立性を擁護する価値はある。不安な現状を続けることは、恐らく最後に残る間違った選択肢だろう。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
https://jp.reuters.com/article/column-hadas-central-banks-idJPKCN1NE0OX


 


 


イエレン前FRB議長:米貿易赤字拡大は中国ではなく米利上げが原因
Bloomberg News
2018年11月13日 18:00 JST
米貿易赤字につながる不公正な貿易慣行は中国で見られない
今後1年で3、4回の米利上げと予想−北京の会議で発言
イエレン前米連邦準備制度理事会(FRB)議長は13日、米国の貿易赤字を膨らませているのは財政刺激策に対応した連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げであり、中国の不公正な貿易慣行ではないとの認識を示した。

  イエレン氏は北京での会議で、他国・地域と比べ高めの米金利がドル相場を押し上げる影響を及ぼしており、「これがわれわれの貿易赤字が拡大しているかもしれない理由の1つだ」と述べた。ドル高は米国の輸入増と輸出減を招く傾向があり、貿易収支を悪化させる。


イエレン前FRB議長写真家:Justin Chin / Bloomberg
  同氏は外国製品に対する米国の需要が貿易赤字を生み出す一因となっていると説明し、「米国の貿易赤字につながる不公正な貿易慣行は中国あるいは世界のどこにも見られない」と語った。「米貿易赤字は米国人が生産する以上に消費している事実を反映している。われわれは需要を満たすため国外から過剰な製品とサービスを輸入している」と話した。

  イエレン氏はFOMCが今後1年、「失業率を安定させるため」に3回もしくは4回の利上げを行うと予想。「最近の減税が実施される前にすでにほぼ完全雇用での経済運営となっていたところに、追加的な支出が拡張的な財政政策に拍車を掛けた。それで、経済が恐らく過熱の地点まで追いやられた」との見方を示した。FOMCは「すでに利上げの軌道上にあったが、そうしたことが高めの金利引き上げ、多めの利上げにつながっている。刺激を打ち消すためだ」と語った。

原題:Yellen Says Fed More to Blame for Wider Trade Deficit Than China(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-13/PI4G8T6S972901?srnd=cojp-v2


 

英国:7−9月の賃金上昇率は3.2%、2008年以来のハイペース
David Goodman
2018年11月13日 19:33 JST
英国では7−9月の賃金上昇率がほぼ10年ぶりの高水準となった。労働市場にもはや余剰能力はないというイングランド銀行(英中央銀行)の見方を裏付けた。

  英政府統計局(ONS)が13日発表した7−9月の賞与を除く平均賃金の上昇率は前年同期比で3.2%と、2008年12月以来の高い伸び。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の3.1%を上回った。失業率は43年ぶりの低水準だった4−6月からやや上昇して4.1%。予想は横ばいだった。

原題:U.K. Wages Rise Most Since 2008 Amid Tight Labor Market(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-11-13/PI4LFT6KLVR401?srnd=cojp-v2


 

 


ビジネス2018年11月13日 / 16:10 / 5時間前更新
「アップルショック」、目新しくない悪材料が嫌気された理由
3 分で読む

[東京 13日 ロイター] - 世界的な株安が、再び広がった。今回のきっかけは米アップル(AAPL.O)のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の販売不振に伴うハイテク部品の需要減退懸念だ。しかし、アイフォーンの売り上げ低迷は、目新しい材料というわけではない。にもかかわらず株安が広がったのは、関連企業の業績悪化が表面化し、ファンダメンタルズを重視する「裁量系投資家」が売りに転じたためと指摘されている。市場心理が悪化しており、日本株の下げが最もきつい。

<大きい業績悪化のマグニチュード>

12日の米株急落は、アイフォーン最新モデル向けの部品を製造する米レーザーセンサーメーカーのルメンタム(LITE.O)が、大口顧客から供給の大幅削減を要請されたとして業績見通しを下方修正したことが大きな材料として意識された。顧客名は明らかにされなかったが、市場はアップルだと「断定」。影響を懸念する売りが広がった。

アイフォーンの販売不振は、全く新しい材料というわけではない。日本経済新聞は5日、スマートフォンの生産を委託している鴻海(ホンハイ)精密工業(フォックスコン)(2317.TW)と和碩聯合科技(ペガトロン)(4938.TW)に対し、アップルが10月に発売した「アイフォーンXR」の生産ライン増設計画を中止するよう要請したと報道。関連株も売られていた。

市場が驚いたのは、その業績悪化の度合いだ。ルメンタムは、四半期の純売上高予想を4億0500万─4億3000万ドルから3億3500万─3億5500万ドルに、1株利益予想を1.60─1.75ドルから1.15─1.34ドルに下方修正。利益は23─28%と3割近い引き下げとなった。

「業績下方修正のマグニチュードの大きさに、市場にくすぶっていた来年の業績悪化懸念が一気に強まった」(ピクテ投信投資顧問・ストラテジストの田中純平氏)という。

足元の米企業の業績は悪くない。リフィニティブのプロプライエタリー・リサーチによると、米S&P500企業の2018年第3・四半期決算は、前年同期比27.8%の増益となる見通しだ。しかし、市場の視線はもはや来年に向いており、貿易戦争の影響など先行きの業績に対する警戒感が株価を押し下げている。

<裁量系プレーヤーが売り転換>

株安が進んだもう1つの理由は、直近のマーケットを主導していたプレーヤーの特徴にある。

CTA(商品投資顧問業者)やリスク・パリティ系ヘッジファンドなど「機械系プレーヤー」ではなく、グローバルマクロやロング・ショートなど「裁量系プレーヤー」が押し目買いを入れていたと、野村証券クロスアセット・ストラテジストの高田将成氏は指摘する。

相場のトレンドを重視する機械系プレーヤーに対し、裁量系プレーヤーはファンダメンタルズの材料を瞬時に分析、判断してトレードを行う。機械系プレーヤーが相場を主導している場合は、ネガティブな材料が多少出ても、相場の勢いが勝ることが多いが、裁量系プレーヤーは材料に敏感に反応し、相場の方向も変わりやすい。

「米中間選挙でねじれ議会が発生。財政拡大策が通りにくくなり、金利も上がりにくくなるとみた裁量系プレーヤーが、手探りながらもハイテク株やグロース株の押し目買いを見せていた。だが、アップルの材料が出て、一気に警戒感を強め、売りに転じたようだ」と高田氏は分析する。

また、原油価格が下げ止まらず、米WTI先物CLc1は12日時点で初の11日連続安を記録した。13日の市場でも軟調な展開だ。「今年前半、活発だった株式ロングと原油ロングを組み合わせたトレードが、巻き戻されているようだ」(欧州系証券)との指摘もある。

<日本株が一番反応した理由>

アップル関連株やハイテク株売りは、日本だけではなく、アジア全体に広がっている。台湾ではタッチディスプレーを手掛ける英特盛(GIS)(6456.TW)やケーシングの可成科技(2474.TW)、韓国ではサムスン電子(005930.KS)、SKハイニックス(000660.KS)などが売られている。

しかし、その中でも日本株は相変わらず下げがきつい。日経平均.N225の下げ幅は一時700円を超え、下落率では3.21%に達した。前場時点(日本時間13日11時30分)でアジア断トツの下落率であり、「震源地」である米国のダウの2.32%、ナスダックの2.78%も上回っている。

Apple Inc
194.17
AAPL.ONASDAQ
+0.00(+0.00%)
AAPL.OLITE.O2317.TW4938.TW6456.TW
日本株は流動性が高く、市場でリスクオン・オフが起きた際に売買しやすい株式という認識がグローバル投資家の間でも浸透している。このため「投資家のセンチメントが回復すれば、日本株の戻りも大きくなる」(欧州系投信)と楽観的にみることもできる。

ただ、日銀のETF(上場投資信託)購入などインデックスの買いによって、バリュエーションが歪められている懸念が、日本株にはつきまとう。「ファンダメンタルズ分析を重視する投資家にとっては、扱いにくい株式だ。そのせいか分からないが、海外からの決算発表後のリアクションが悪くなってきた印象がある」とクレディ・スイス証券・株式本部長の牧野淳氏は指摘する。

外国人投資家の日本株売り(現物と先物合計)は10月だけで4.2兆円、年初来の累計は約11兆円となった。割安と言われ続けながら、リーマン・ショック以来の規模に達した海外勢の売りの背景には、単なるリスクオフとは異なる構造的な弱さも垣間見える。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)
https://jp.reuters.com/article/falling-stock-prices-apple-idJPKCN1NI0NB


 

 
ワールド2018年11月13日 / 09:20 / 1時間前更新
米財務長官が中国の劉鶴副首相と協議再開、9日に電話会談=WSJ
1 分で読む

[12日 ロイター] - 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によると、ムニューシン米財務長官と中国の劉鶴副首相は9日に電話会談し、協議を再開した。複数の関係者の話として報じた。ただ、会談で大きな進展はなかったという。ロイターは報道について米財務省報道官に問い合わせているが、現時点で返答は得られていない。

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は、11月末─12月初めにアルゼンチンで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の合間に会談を予定している。

トランプ大統領は今月、習主席と電話で会談している。トランプ大統領は会談後、米国は通商について中国との合意が可能と表明する一方、前進がなければ中国製品に追加関税をかける用意があると述べた。

中国商務省の李成鋼次官補は、ムニューシン財務長官と劉鶴副首相の電話会談についてのWSJ報道に関する記者団からの質問に対して、トランプ大統領と習主席の電話電話では通商問題について多くのコンセンサスに達したと応じた。

次官補は「両国の経済チームは、両国首脳のコンセンサスを実行に移すべくコンタクトを取り合っている。こうした努力が前向きな前進につながるよう期待する」と述べた。これ以上の詳細には触れなかった。

*内容を追加しました。
https://jp.reuters.com/article/mnuchin-liu-idJPKCN1NI010?il=0
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
1. 2018年11月13日 23:26:02 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[1532] 報告
 <394号:抜粋:米国中間選挙と、これからのトランプ政策>

           2018年11月12日
    テーマ領域:世界政治の盟主、米国の政策
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・
 HP: http://www.cool-knowledge.com/

          感想/連絡:yoshida@cool-knowledge.com 
        Systems Research Ltd.吉田繁治 40480部 
おはようございます。 今日は、新聞の休刊日でもあるので、本稿
を送ります。世界から注目を浴びていた米国中間選挙は、上院では
与党である共和党の多数を占め、下院では民主党が勝ち、「ねじれ
国会」という結果でした。

日本で、米国の中間選挙がこれほど大量に報じられたのは歴史上初
めてです。何を行うか、予測が難しく、ラディカルな大統領令を多
発しているトランプの政策が、今後どうなっていくかに関心があっ
たからでしょう。

【大統領制の中の、米国の議会制度】
日本と同じ2院制とはいっても、米国の議会制度は、国民が直接の
選挙で選ぶ大統領であることもあって、相当に違っています。

(1)参議院にあたる上院の議決の権限が、下院より強いこと。
上院は議員定数が100人で任期は6年、2年ごとの中間選挙で1/3が改
選されます。下院は435名で、任期は2年、中間選挙で全員が改選さ
れます。大統領選はいうまでもなく4年ごとです。今回の中間選挙
では、権限の強い上院で共和党が多数派を維持したので、「大成功
だ」とトランプは言ったのです。

(2)首相を議会が選ぶ、議院内閣制の日本では、内閣の政策は、
法案や予算案としてすべて国会での議決を経て有効になります。

しかし、直接選挙の大統領は、議会の承認を経ないでも有効になる
大統領令を出すことができます。ただし、この命令は、連邦政府機
関の行政に対するものであり、国民に対する法ではありません。

たとえば不法移民防止のための「メキシコ国境の壁を作る」という
大統領令は、就労が目的と疑われる入国の禁止は、移民局で実行に
移されていますが、壁を作る予算には、議会の承認が必要です。こ
のあたりが、首相令がなく、選挙による信任もない官僚が多くの政
策を作っているわれわれには分かりにくいことなので、本稿の具体
例で、示していきます。

(3)初代のジョージ・ワシントン(2期:1789〜1797)から、歴史
上出された大統領令は、1万3000件とされます。トランプは、「保
守(共和党)とリベラル(民主党)の分断が強くなった現代の米
国」で、激しい政策の大統領令を頻発することから、世界の注目を
浴びています。

指された大統領令が無効になるのは、
・裁判所が、違法または違憲という判決を出したとき(米国の裁判
所は法令に強く関与しています)、
・議会が、大統領令を修正(または無効に)する対抗法案を通した
とき、です。これが、議会からのチェックです。

他方、大統領は、議会が通した法案の拒否権をもっています。大統
領が拒否権を発動した場合、議会は、改めて2/3以上の多数で再可
決しなればなりません。2/3の議決を経ると、有効になります。

この意味で米国の大統領は、「議会の2/3の議決に相当する行政の
権限を1人でもっている」と言えます。この点が、日本の二院制と
違う点です。

               *

今回送るのは、11月8日の開票日に、選挙速報を見ながら有料版の
増刊(後編)として書いたものです(若干の修正・加筆がありま
す)。

11月7日に送ったものの続編です。トランプ大統領はセッションズ
司法長官を解任しました(相当に重大な事件です)。わが国の法務
大臣にあたり、検察官と裁判官を指揮する立場です。

【ロシアゲート】
2年前の大統領選挙での、ロシアとの「不透明な関係」の捜査に対
して反トランプの動きも見せ、それに対して不満をもっていたから
です。トランプに有利になるよう、ロシアがサイバー攻撃やSNSを
使って、プロパガンダを発し、米国の世論操作をしていた疑惑です。
「ロシアゲート」と言われます。

トランプの悩みのタネがこれです。告発されれば、世界の盟主、米
国大統領の職を失うことに至るからです。

例えれば、安倍首相が、自らの「モリカケ疑惑」を払拭するため、
検察への指揮権(告発を停止する権限)をもつ法務大臣を更迭した
ことと同じです。共和党のニクソン大統領が、民主党の本部に盗聴
器をしかけたウォーターゲート事件(1972年)が明らかになって、
世論の反発を招き辞任に追い込まれたことと似ています。

他にはマティス国防長官の更迭も言われています。北朝鮮への軍事
的なデモンストレーションになる米韓の合同軍事演習、そしてアフ
ガニスタンとシリアへの米軍駐留をめぐって、判断の隔たりがあり、
不快感を表明していたからです。

トランプ内閣の閣僚は二年で「総更迭」に近い(極めて異例)。こ
れができるのは、大統領が直接選挙で選ばれているからです(ただ
し総得票数ではクリントンに負けていまいた)。

【下院での弾劾決議】
中間選挙で、民主党が多数派になり、大統領の弾劾決議をする可能
性が高まっています。ロシアゲートだけではなく脱税、セックスな
ど多数のスキャンダルの疑惑があります。クリントン大統領の、モ
ニカ・ルインスキーとの「大統領室での不適切な関係の偽証」から
弾劾を受けたことが小さく見えるくらいです。

米国の二院制度では、下院で弾劾決議が成立しても、共和党が、微
差の多数派を維持した上院の2/3の賛成での、弾劾裁判が必要です。
上院でその弾劾が評決されると、亡くなったときと同じように、副
大統領のマイク・ペンスが大統領になって残りの任期を務めます。

大統領が起案する予算案と法案でも上院の3/5の賛成が必要です。
単に、国民からの支持率ではなく、任期6年の、上院のエリート議
員が動かす仕組みが、米国の制度です。

●2年ごとの中間選挙で435人の全員が改選された下院(任期2年)
では、事前の世論調査での反トランプが55%くらいと多かったので、
共和党は多数派を失うと予想されていました。

事前予想の通り、民主党223、共和党199、未定13で、民主党が多数
派を奪回しています。

定数100の上院(任期6年)の改選数は35人でした。共和党の改選が
8人、6年前に勝った民主党は、27人と多かった。米国の国会議員で
は、現職の当選率が約90%と高いため、共和党の51:49の多数派は
維持できると見られていました。この結果も、予想通り共和党51、
民主党46、未定3で、共和党が多数派を維持しました。

下院の弾劾決議と、上院の弾劾裁判をもっとも恐れていたトランプ
は、「上院で多数派を維持すること」に精力を注いだ遊説日程を組
んでいました。このため、上院での多数獲得を「大きな勝利」とし
ています。トランプが、形容詞が多く、興奮した言葉を使うときは、
都合が悪いことがあるときです。感情的に、単純な反応が特徴です。

(注)この点では、国会で激高して否定することが多い安倍首相も
似ています。財務省を筆頭とする官僚組織は、首相答弁の辻褄(つ
じつま)合わせのため、文書やデータの改竄をしたのです。

民主党が多数派の予想だった下院では、弾劾決議が予定されていた
ので、上院の35人の改選は、2年目の大統領選挙になっていました。
これが、中間選挙が、大統領選挙の並みに、世界と日本のメディア
から注目を浴びた理由です。

【日本の議会制度とは異なる上院との関係】
予算案や法案は、上院の3/5の賛成がないと、通りません(弾劾裁
判の有効化に必要な2/3の賛成よりは少ない)。大統領の強い権限
を制限するために設けられた、米国の制度です。

●国際経済で、2018年から2019年の最大の懸案になっているトラン
プ関税(貿易戦争)の大統領令については、発動の手続きについて、
上院が過半数の賛成で関与しなければ有効にならないという決議が
すでに通っています。

大統領は、関税発動の権限をもちますが(通商法232条)、その命
令権に制限を加えるものです。(賛成88:反対11)

●仮に上院が共和党53、民主党47議席で決定すると、3/5は60名で
すから、民主党から7名の議員を取り込むことができないと、関税
を含む予算案と法案が通りません。米国の政党には、自民党のよう
な「党議拘束」はなく、比較的自由に個人の立場で賛否を示し、法
案も提出します。

それでも民主党には、選挙、脱税、セックスなど、スキャンダルま
みれのトランプへ反対の勢いが増しているので、民主党議員の取り
込みには、困難がともないます。このためトランプは、民主党が多
数派になった下院の議長候補であるペロシ女史には、早速、言葉を
柔らかくして「協調」を呼び掛けているのです。

今回の「政権与党は、上院で微差の多数派、下院では少数派」とい
う選挙結果から、2012年までの日本の「衆参ねじれ国会」のように
「重要な予算案、法案が通らない事態」が多くなることが予想され
ます。世論作りに影響を与える大手メディアは、もともと、反トラ
ンプです。一方でトランプは、CNNはフェイクを流すと応じていま
す。

セッションズ司法長官の解任は、以上のような選挙結果と米国特有
の議会制度を背景に、発令されています。大統領と議会からいった
ん指名されれば、余命がある数十年の終身の身分になる最高裁の判
事も、これと同じです。

文化的な伝統が少なく、移民で作られた人工国家の米国の、最高裁
の判事は、大統領令と政府政策の憲法適合の評定で、わが国よりは
るかに強く、政治や国民生活に関与します。米国では、法の拘束力
がはるかに強い。弁護士が、日本の50倍(100万人)と多い理由で
もあります。(注)伝統がある王国の英国には、成文法として、ま
とまった憲法はなく、その代わりが、慣習法です。成文憲法がない
国もあることを知っておいてください。

【米国の政治的な世論の分断について】
米国では、特にトランプ大統領になったあと、「右派、左派への世
論の分断」または埋めることのできない乖離が、激しくなっていま
す。支持者層で見ると、はっきりします(中間選挙の結果分析:
WSJ紙による)。

以下が示すのは、何を重んじるかという主義(イズム)と価値観で
の、オセロのような国論の分断です。

(1)教育による政党支持率の差:
  高学歴者の支持率は、民主党支持が80%;共和党支持20%
  民主党の支持者には、高卒者と黒人・ヒスパニックの有色人種
  が多い。
(2)共和党内の党派構成(2018年)
  リベラル派5%;穏健派20%;(急進的な)保守派70%
(3)米国にとっての移民政策
  ・米国の助けになる=民主党支持者のうち72%
  ・米国に悪影響を及ぼす=共和党支持者のうち77%
(4)米国内のもっとも重要な政策課題の、医療保険の提供
  ・政府が行うべきこと=民主党支持者の75%
  ・政府の責任ではない=共和党支持者の81%
(5)米国社会は、白人・黒人のどちらに有利か
  ・白人が得をしている=民主堂支持者の82%
  ・黒人が得をしている=共和党支持の80%
(6)銃の規制について
  ・規制を厳しくすべき=民主党支持の72%
  ・もっと緩和すべきである=共和党支持の77%

自民と共産党の、真逆の政策の違いを強くしたものであり、二つの
国家にも見えるこの世論の分断には、改めて、驚きます。

トランプのアメリカ・ファースト(内容は白人至上主義)が、極端
な右翼的政策である理由には、この「世論の分断」があります。
(注)欧州では、同じポピュリズムでも、ここまで激しい分断はな
い。欧州の基本路線は、社会民主主義です。

【知事選では敗北色】
全米50州のうち改選があった36州の選挙前の知事は、共和党26州、
民主党9州、無所属が1州でした。知事は下院の選挙区の区割りをす
る権限をもつので、国政に影響を与えます。

共和党と民主党の支持率が、およそ50:50で拮抗する米国では、支
持者の居住地の区割りによって、1%差くらいで決まることが多い
議員の当落が左右されます(日本ではこの報道が少ない)。

歴代の大統領も元知事が多い。非改選を含む結果は、共和党が33州
から8州も後退して25州、民主が22州、未定が3州です。ただし共和
党は、大票田のフロリダとオハイオを奪回し、明暗は交錯していま
す。

●大票田の2州を、共和党がとった知事選の結果は、民主党にス
ターが誕生しない限り、2020年の大統領選でも「トランプ再選」が
有利になったことを示します。トランプの、2018年の国内そして外
交政策の目的としていたものは、今回の中間選挙での勝利でした。
2019年からは、2020年の大統領選での再選を目的にした国内・外交
の大統領令が、強く打ち出されることになるでしょう(ほぼ確定)。

【政策変化の可能性】
大切なことは、トランプ政策の変化の可能性です。彼は、次回大統
領選での勝利を目指しています

トランプ固有の性格からして、「与野党ねじれ国会と弾劾決議の中
で、国際的な政策が先鋭化する」可能性が高いと見ています。

米国民が好む、人格面で強い印象を与えるためです。
たとえば、米国では、戦争が大統領の支持率を上げます。

窮地に陥ると普通の人のように大人しくなるのではなく、今回の選
挙結果を受けての記者会見に見るように、「大成功といきり立つキ
ャラクター」です。CNNの記者とは、お互いが罵倒の応酬でした。

今後の米国政治を予想するとき、感情的な性格は重要です。感情は、
知性を経由しない直接的な反射です。「いい/悪い、好き/嫌い」と
いうような、瞬間の全体反応です。

【比較生産費の学説】
本稿では、20世紀後半からの、「産業のグローバリズム」を促進し、
関税が低くした自由貿易が、どう向かうかを予想します。通貨と株
価も関係する、わが国経済にとって重要なことだからです。

トランプ以前の世界の潮流は、農産物を除外品目としながら、工業
品での関税ゼロを目指すTPPでした(環太平洋パートナーシップ協
定)。

トランプは、17年1月にはTPP離脱を宣言しましたが、その後、「復
帰を検討」に転換しています。

■1.世界貿易を推進させた、リカードの比較生産費の原理

【古典派経済学】
リカードは、アダム・スミスの『国富論』の流れを引く古典派の経
済学者です。各国の商品を生むのに必要な労働投入量を数値化する
ことによって、自由貿易は両方の国の経済を成長させることを導き
ました。

経済学が含む原理的な正しさの中で、最高ランクに位置されるもの
と思っています。

古典派経済学は、現代では、ワルラスの、一般均衡論の流れまでの
新古典派として展開されています。イデオロギー(経済思潮)では、
「規制のない自由な市場と経済活動の擁護論」になっているのです。

【経済のイデオロギーとわれわれの考え】
経済イデオロギーは、われわれの意識しない底にあるもので、その
イデオロギーから、われわれの政治的、経済的、経営的な考えがで
きています。われわれの考えは、実証科学とされている医学に至る
までも、いろんなイデオロギーの混合でできているのでしょう。

個人で違う、混合やかけ合わせの度合いが、創造と言われるもので
しょう。AIに論文を読ませると(AIは言葉の意味は理解しません。
記号のつらなりの規則を発見して理解するのです)、これが明らか
になります。AIも、新薬を創造する論文を書くからです。しかし
AIは、実は創造していない。過去の論文の成功部分を、複雑につな
ぎ合わせているだけです。

(注)AIはリンゴを理解することなく、柿や桃とは違うリンゴだと
認識します。強化学習を進めるとリンゴの種類、品質、味も区分し
ます。

ここでは、単純化したモデルで、比較生産費説(比較優位説とも言
う)を振り返ってみます。米国10%から25%という高いトランプ関
税によって、自由貿易が阻害されようとしているからです。

【比較生産費の計算】
日米で自動車と牛肉を生産し、貿易はしていないと仮定します。

〔生産費〕
・日本では、自動車が国内の比較生産費が低く、10人の労働で車を
10台生産できると仮定します。比較生産費の高い牛肉では20人の労
働で10トンを生産できるとします。
・米国では、10台の日本と同質の車の生産に20人の労働がかかり、
国内の比較生産費が優位な牛肉では、15人の労働で10トンを生産で
きるとします。

貿易をしてないときの日本と米国の合計生産は以下になります。

       日本   米国   合計
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
自動車生産  10台   10台   20台
必要労働   10人   20人   30人
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
牛肉生産   10トン  10トン  20トン
必要労働   20人   15人   35人
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計労働   30人   35人   65人     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

日米合計で、自動車は20台生産され、30人の労働量を必要としてい
ます。牛肉の生産では、20トンで35人の労働を使っています。これ
が自由貿易をしないときの、両国合計の生産量です。この生産量を
金額で言うと、GDPになります。GDPは、実質生産金額であり、企業
と世帯の総所得であり、商品の需要額と投資です。

ここで両国が、比較生産費の低い(=生産性の高い)商品の生産に
特化し、比較生産費の高い商品は100%を輸入するとします。

(注)実際の貿易は100%ではありませんが、モデル化(単純化)
のため100%とします。50%でも類似の結果が出ます。モデル化は
学問の方法です。現実は複雑ですから単純化して理論化します。

●両国の生産は、以下のように変化するでしょう。
       日本   米国   合計
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
自動車生産  30台   0台   30台
必要労働   30人   0人   30人
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
牛肉生産   0トン  23.3トン 23.3トン
必要労働   0人   35人   35人
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
合計労働   30人   35人   65人     
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

貿易をしていないときの合計生産量は車が20台でしたが、30台に増
えています。10人で10台を生産する比較生産費の低い日本が作った
からです。これによって車のGDPは1.5倍に増えました。

同様に、牛肉は米国生産に特化することで20トンが23.3トンと、
16.5%増えています。牛肉のGDPも16.5%増えたのです。数量の実
質GDPは実質所得なので、企業と世帯の実質所得も、同じ額、増え
ます。

【結果は経済成長】
このように、各国が国内の比較生産費(労働投入量の少なさ:生産
性の高さ)で優位にある産業に特化して、必要なものは輸入するこ
とにより、両国のGDPが高まることを、数学的に証明したのがリ
カードの比較生産費でした。経済学の初級で学ぶことです。高校で
も教えています。トランプは知っているでしょうか。

空洞化したラスト産業の、労働者の票を得ることが目的です。票を
得るのは、第二期も大統領を続けるためです。自分の目的のため、
経済成長を犠牲にしたのです。

●大切なことを言えば、生産費(1単位の商品を生産するのに、必
要な労働コスト)の比較優位は、国内でのものであることです。他
国との比較優位で劣っていても、国内での比較生産費が優位であれ
ば、その生産に特化し劣位の商品は輸入すればいい。

この原理が、戦後の20世紀後半からの思潮である「自由貿易と産業
のグローバル化(グロ−バル・サプライチェーン)」を生んだもの
です。

【必要な労働の移転】
ただし自由貿易でのGDPの成長には、労働の移転の調整期間が必要
です。古典派経済学は、他のいろんなところでも、調整の時間とい
う要素を無視しています。

米国は、現在、約50兆円分の商品を中国から輸入しています。いす
れも、人件費の低い中国が、比較生産費で優位にあるものです。

【中国輸入への課税】
トランプは、2017年9月から、約50%の品目に、10%の関税を課す
という大統領令を発令し実行しています。2018年からは10%を25%
に上げるとしています。50兆円の全品目にも拡大する方針があると
も言う。

【日本企業にとって】
米中両国のGDPの成長率(=所得の増加率)を鈍化させる愚策です。
中国の輸出のうち、50%から70%は日本、台湾、香港、アメリカ、
ドイツの外資企業です。

中国からの対米輸出が減るとなると、日本の中国企業の輸出額も減
ります。GDPは国内総生産なので、日本企業への国内から中国への
部品などの輸出分が減ったようになります。中国への関税は、外資
である日本企業も対象にしています。

中国に進出している日本企業は、早速、ベトナムや東南アジアへの
移転を検討して実行しています。しかし、ベトナムや東南アジアか
らの対米輸出が増えると、どうなるかという不透明さは残っていま
す。トランプはどこの国からであれ、「輸入の超過」を問題にして
いるからです。

世界の生産は、基軸通貨国の米国が海外にドルを散布して輸入超過
を続けることができるという前提から、過剰な生産力をもってしま
ったのです。

■2.トランプ政策の激化の予想

ロシアゲートなどを理由にして下院の弾劾決議があると、大統領を
続けることを目的にしているトランプは、一層、激しく、ポピュリ
ズム受けがする過激な政策を打ち出すと予想します。弾劾決議で、
政権がレーム・ダックになるのを、ぼかして避けるためです。

日本の安倍首相も、総選挙も含んで、「スキャンダルのぼかし回
避」の政策と国会運営をとり続けています。迷惑なことですが、
「モリカケ問題」は、今も、安倍政権の政策と対策の動機になって
います。このため、議会の開催中には、安倍政権の支持率が低下し
ています。

分断国家になっている米国の政策では、「2020年の再選を目指し
て」、何が出てくるか分かりにくくなっています。強い支持率に、
もっとも効果のあるものは、戦争です。イランと敵対するアラブへ
の介入の強化でしょうか。貿易黒字が約11兆円の、日本からの輸入
への関税は、強化される方向です。一般論では輸出を増やして輸入
を減らす円安への、政府介入への非難も行っているのです。

【選挙結果を写す株式相場】
選挙がない年の、米国株式市場(もっとも広範囲な指数のS&P500
社)は、1942年以来、年末にかけて2桁の上昇を見せています。と
ころが、中間選挙があった年は、平均6%でした。年間の平均上昇
の9.1%を3ポイント下回っています。過去の中間選挙では、与党が
負けるケースが多く、政治不安を理由に、売りが増えていたからで
す。

今回は、開票結果が明らかになる前の11月6日から11月8日は、
2735ポイントから2781ポイントへと、1.7%(1日平均0.55%)上が
っています(S&P500)。ところが、結果が明らかになった11月9日
(金曜日)には7ポイント(0.25%)下げて、10日には26ポイント
(0.92%)下げています。開票前の上昇を帳消しにした下落です。
週明けはどうなるか。

米国FRBは12月の利上げ(0.25%)を予定していることを発表して
います。レバレッジのかかった過剰流動性相場にとっては、利上げ
はレバレッジの解消を意味し、株価を下げる要素になります。

今回の中間選挙の結果を見た米国株価の動きからは、投資家心理が、
高すぎるPER(17倍台の水準)から、高所恐怖症に傾斜しているこ
とも伺えます。

政策が通りにくいねじれ国会になった政治を見て、年末に向かった
例年の、株価の上げはないかもしれません。トランプが就任して以
来の株式市場は、10年で1.5兆ドル(165兆円:1年16兆円)の大幅
な減税策、北朝鮮との首脳会談、関税政策を歓迎して、40%も上げ
てきたのです。

2016年10月には2085ポイントだったS&P500は、18年9月末には2913
ポイントまで40%の上昇であり平均年率で20%の高騰です。
現在は2781ポイントで、9月末からは、132ポイント(4.5%)下げ
ています。

ちょうど2年間、株価を上げたもっと大きな要因は、大幅減税でし
た。減税は、企業の税後純利益を増やし(PERを下げ)、投資家が
投資に回す税後所得を増やすからです・・・

・・・無料版は、ここまでにさせていただきます。続きの有料版の
全体は、以下のページで申し込めば購読ができます(↓)。
       https://www.mag2.com/m/P0000018.html

有料版のバックナンバー(以下に過去の全部があります↓)
        https://www.mag2.com/archives/P0000018/


2018年11月13日 週刊ダイヤモンド編集部 ,柳澤里佳
物流費高騰でも銀行の「警備輸送」だけが値下げされる理由
警備輸送
大手銀行以外からも警備輸送のニーズが拡大中。訪日外国人が急増する地域では、ATMの現金補充や障害対応の依頼が増えている
 物流各社の2018年上期決算が軒並み好調だ。ヤマトホールディングスやSGホールディングスは、宅配便の平均単価を前年同期に比べて20%弱も改善。自然災害多発によるマイナス影響をも吸収する「値上げ効果」が表れた。

 業界最大手の日本通運も増収増益を確保。値上げ効果を通期で80億円とみていたが、上期で55億円を達成したため120億円に引き上げたほどだ。

 ところが同社の警備輸送事業だけは事情が異なる。警備輸送は現金などの貴重品を運ぶ業務で、防護ベストを着たガードマンが銀行の店舗間や駅、コンビニエンスストアのATMから現金を運んだりするものだ。今上期に同事業の売上高は350億円強と前年並みを維持したが、営業利益は3億円弱と前年同期比で7割も減った。

 大幅減益の理由は「主要顧客である銀行がゼロ金利政策の影響で業績が厳しく、値下げ要請が来ているからだ」と関係者は明かす。他の業界からは値上げに理解を得られたのに、銀行だけは「逆」だ。

 警備輸送は現場業務を下請けに出しておらず、自社戦力。人件費を含む固定費が他事業に比べて高いのも利益を押し下げる要因となっている。日通は警備業法の有資格者を含む警備員を約7000人抱えており、自社戦力による「高品質重視」は今後も継続する方針。値下げに応じてでも売り上げを確保し、人件費に充てるわけだ。

コンビニATMは稼げる
 もっとも、競合の状況は日通と異なる。警備輸送分野で日通に続く2番手の綜合警備保障(ALSOK)は「一部の銀行から値下げ要請はあるものの、他の新規客を開拓したため、増収増益で利益率は伸びている」という。

 同社が請け負うセブン銀行のATM業務では、現金を運ぶだけではなく、ATMの管理・運用、障害対応などをトータルでサポート。どのタイミングで幾ら現金を補充するか、紙幣の種類はどれが適切かなど、機械1台ごとに緻密に予測して補充、回収を行う。最新の予測機能によりセブン銀行のATMは99.9%の稼働率を誇る。

 この実績が評価されてALSOKは競合の契約をひっくり返すなど、ATM警備でトップに躍り出た(全国で約7万台)。

 3番手のセコムは、小売業や外食など金融機関以外の顧客に強い現金輸送専業のアサヒセキュリティを15年に買収。「人手不足により釣り銭準備や売上金回収などを専門業者にアウトソースする流れはますます高まっている」と事業成長性に期待を寄せる。

 日通はメガバンクなど古くから取引のある銀行の業務が競合より多く、値下げ圧力をもろに受けた。が、最近は訪日外国人の外貨両替も急増するなど警備輸送ビジネスの需要は拡大している。商機を狙い各社の競争は激しさを増していきそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)
https://diamond.jp/articles/-/185172

 

2018年11月13日 吉田陽介 :フリーライター
安倍訪中を歓迎し日本批判を抑える中国の思惑

北京大学で学生と交流する安倍首相 写真:首相官邸HPより
安倍訪中を歓迎
日本批判も和らぐ
 10月25〜27日にかけて行なわれた安倍晋三首相の訪中は、“友好のバロメーター”といわれる両国首脳の相互訪問が再開したこともあり、両国関係の改善をさらに印象づけられた。中国の識者は、「中日関係は正常な軌道に戻った」と評価している。

 これまでは、安倍首相を「右翼政治家」とみていた中国メディアも、そのような批判を展開せず、日中関係の改善を歓迎していた。

 例えば、日頃は日本に厳しい論調で知られる『環球時報』の10月25日付けの評論は、「中国社会は、日本の軍国主義が復活するのではないかと想像するのを自制すべきで、日本が核大国となって中国を再び侵略するというリスクがあると叫ぶ必要はない。中日は潜在の可能性を現実のリスクとしてとらえ、それを両国の主な戦略的視点としてはならない」とし、中国社会に「日本=潜在的敵」として見ることを慎むべきだと説いている。

 今回、安倍首相は、習近平国家主席や李克強総理と会談した。その中で、「競争から協調へ」「隣国同士として互いに脅威にならない」「自由で公正な貿易体制を発展させる」という3原則が提起された。

 こうした原則の話が出てきたことは、両国関係が「新時代」に入ったことを示すものといえる。長年、中国メディアで日本問題を扱ってきた中国人記者は、「この3原則で中日関係改善に弾みがつくだろう」と高く評価した。

 安倍首相の評価についても、中国包囲を狙う外交政策が失敗したと言うかと思いきや、「安倍氏は2006年に総理になってから初めの訪問先に、米国ではなくて中国を選び、関係改善の突破口を作った。その功績は忘れてならない」と述べ、一定の評価をしている。

 今回の安倍首相の訪中は、ただ相手国の首脳に会うというだけの儀礼的なものではなく、第三国市場での協力の覚書などに調印するなど、両国にとって成果のあるものだった。それは、「米中経済戦争」による中国経済のダメージを極力抑えたいということ、そして改革開放をさらに深め、「社会主義現代化強国」をつくるという目標を達成したいという中国の思惑がある。

対日関係が改善した
3つの要因
 日中関係は、2012年に釣魚島の「国有化」問題で悪化し、「開戦前夜か」と思うくらいのとげとげしいムードだったが、その後、徐々に和らいでいき、メディアの日本批判もトーンダウンしていった。

 背景には、習国家主席が党内で「核心」の地位を得て別格になったことで、自分の意見を反映しやすくなったこと、そして中国外交が「国家主義」から「国際主義」への色合いを強めていったということがある。また、対日関係の改善には、次のような要因もある。

 第1に、日本への感情の改善だ。筆者が中国留学を始めたばかりの2001年頃は、中国人学生に靖国参拝問題についてよく質問されたが、今は周りの中国人に「日本に旅行したら、どこに行くといいか」とか「化粧品はどこが安いか」といったことをよく聞かれるようになった。10月に言論NPOが発表した日中共同世論調査でも、約4割の人々が日本に対してよい印象を持っていると答えている。

 日中関係が悪いと言われていたここ数年も、中国のスーパーには日本製品が売っていたし、地下鉄やバスでスマホを使って日本のアニメやバライティー番組も見るなど、日中関係が悪いということを感じさせるようなムードはなかった。

 中国人は、「歴史問題で譲ることはできないが、日本のものは好き」と合理的に考えている。最近は、筆者の中国人の友人で、日本語ができなくても日本に旅行しに行く人が少なくなく、旅行した後は「日本は本当によかった」と言っている。こうしたことが、中国の国民感情の改善に役立っている。中国の対日政策には「以民促官(民が官を動かす)」という考え方があり、一般の人々の対日感情の改善が政府を動かしたといえる。

 中国共産党は、インターネットの管理などで人々の声を封じているイメージがあるが、実は民意を意識している。今年の全国人民代表会議(全人代)で民生重視の政策を掲げたのもそのためだ。日中関係についていうと、歴史問題などの“原則問題”で両国関係が悪化しているときに対日改善に乗り出すと、「清朝末期の政府のようだ」と揶揄されるため、習政権は慎重に対日関係を処理していたのである。

 第2に、中国外交の“持久戦”が一応の成果をあげたということだ。習政権成立当時の日中関係は最悪で、日本が尖閣国有化で中国の「底線(最低ライン)」を超えてしまったために中国側が断固とした態度をとり、文化交流などがストップしてしまった。逆に中国も日本の「底線」を越えてしまい日本の国民感情も悪化、両国関係の改善は難しい状況にあった。

 中国は事実上「一党支配」の国なので政権が安定しており、長いスパンで日中関係の改善に取り組むことができる。習政権は発足以来、活発な外交活動を展開してきたが、日本との関係改善にはかなり慎重で、国内の反応を見ながら進めてきたといえる。そのためか、「習国家主席は日本に興味がないのではないか」という見方さえあった。ただ、習政権がその後、日本との関係改善に乗り出したところを見ると、日本に全く関心がなかったとはいえず、機が熟すのを待っていたと解釈できる。

 第3に、中国と日本の“共通の目的”が出てきたことだ。かつて日中両国はソ連の脅威にともに対処するという共通の目的があったため、中国はこれまで反対していた日米安保や“原則問題”などについて細かいことは言わなかった。だが、ソ連が崩壊してからは、共通の目的がなくなった。その後、日本は政治大国の道を歩み、中国は世界の大国への道を歩むようになってぶつかることが多くなり、“原則問題”での意見の不一致が目立つようになった。

 しかし、ここにきて日中両国には「保護貿易主義に反対し、自由貿易を推し進める」という共通の目的ができ、関係改善に大きな一歩を踏み出せる環境が整ったわけで、中国の改革開放が新たな段階にきていることも大きな要因だといえる。

「改革開放には終わりがない」
次なる段階に進む中国の改革開放
 安倍首相が訪中する前の今年10月22日から25日にかけて、習国家主席は6年ぶりに広東省を視察し、珠海、清遠、深セン、広州などを訪れた。その中で、習国家主席は「第18回党大会後に初めて訪れたのが深センと広州だった。第19回党大会後、特に改革開放40周年の今年、私は再び深センと広州を訪れた。われわれは中国の改革に終わりはないと世界に向けて宣言できる」と語り、今後も改革路線を貫くものの、それは中国が保護主義に陥ることなく開放政策を放棄しないという姿勢をとり続けることを宣言したものといえる。

 今回の広東省視察で、習国家主席が発したシグナルは、中国が改革開放を継続するほかに、次の3つのシグナルがある。

 1つ目は、自主イノベーションの重視だ。習国家主席は22日に格力電器公司を訪れた際に「製造業の核心はイノベーションであり、カギとなる核心技術を掌握することである。自力更生で奮闘し、自らの力で革新を行なわなければならない」と述べている。改革開放の初期は、外国の技術を学ぶことに重点が置かれたが、今後は中国独自の技術開発を重視するということだ。

 2つ目は、実体経済と中小企業の重視だ。視察期間中、習国家主席は政府が提唱している「起業・革新は中小企業と切り離すことはできず、これらの企業がイノベーション分野などで成果をあげ、中国経済の質の高い発展に貢献すべき」と述べた。改革開放は民間の力を大いに生かすための政策だが、民間企業、特に中小企業と大規模国有企業との経営環境の格差は小さくなく、今後は中小企業も優遇するということだ。また、視察の際、実体経済の発展を重視させなければならないとも述べた。

 3つ目は、都市と農村の格差の是正だ。習国家主席は今回の視察で農村も訪ね、生活状況や収入などについて尋ねた。その上で、「農村振興戦略に真剣に取り組み、貧困脱却・富裕化を基礎とした農村の全面的振興を加速し、農村の現代化を実現させる」と述べた。中国共産党が目指す農村振興は所得の増大だけでなく、農業技術の現代化なども含んでいることを示している。

 こうした習国家主席の広東視察は、今後の中国の改革開放の方向性を示すものといっていいだろう。それは今後の日中関係にもプラスとなる。“新たな段階の改革開放”で、日中両国はデジタル経済、電気自動車、省エネ分野や介護分野などでの交流が進むだろう。

友好ムード持続のカギは
政経分離にあり
 日中関係は経済面で前進したが、歴史問題や領土問題など「構造的問題」はまだ解決しておらず、対立の火種は残っている。歴史問題など、中国の“原則問題”は長年にわたって両国が抱えてきた問題であり、短期間での解決は難しい。

 日中関係の歴史を紐解くと、国交正常化前の1950〜60年代、日本は冷戦の影響を受け、政治体制の異なる中国と本格的に関係改善に乗り出すことは難しかった。そのため交流ルートは、自民党の親中派議員や社会党、共産党、共産党と関わりのある友好団体や友好商社に限られていた。

 中国は国内の経済建設を進める必要から、日本との経済交流を望んでいた。そのため、両国は「政経分離」の形を取って経済交流を進めた。だが、政治と経済は容易に分離できるものではなく、政治関係の悪化は経済関係にも影響を及ぼす。

 例えば、1958年に長崎の浜屋デパートで開かれていた日中友好協会長崎県支部主催の「中国切手・切り絵展覧会」の会場に掲げられていた中国国旗が、右翼団体に所属する日本人青年に引きずり降ろされるという「長崎国旗事件」が起こり、それに怒った中国側が日本との貿易をストップさせると宣言し、両国の経済関係に大きく影響した。

 こうした事態を避け、本格的な関係改善を図るには、友好ムードを維持することが必要だ。今後の日中関係も、「政経分離」的な方法で友好的ムードをつくり維持していけば、徐々に「構造的問題」について話し合う機運も生まれてくるだろう。

 現在は、「新時代」の日中関係のスタートラインに立ったに過ぎず、今後の展開を見守る必要がある。前出の中国人記者は、「政治は政治だ。状況の変化でどうなるか分からない。米国がどう出るかなど、不確実な要素もある」と語る。

 確かにこうした問題はあるが、日中関係発展の方向性を示せたという意味では、今回の訪中の成果は大きかったと考える。中国は、まずは政策を実行して、それから問題点を修正していくという手法を取る。対日政策も同じように、実践の中で修正し、発展させていくのではないかと思う。

(フリーライター 吉田陽介)
https://diamond.jp/articles/-/185201

2. 2018年11月14日 04:54:13 : qexn4OQlGs : o2YFxpNksRQ[1] 報告
アマゾン時価総額28兆円減 競争激化や追加関税論議懸念 - SankeiBiz
www.sankeibiz.jp/macro/news/181113/mcb1811130605007-n1.htm

22 時間前 ... ネット小売り最大手、米アマゾン・コムの時価総額が9月のピークから大きく下げている。

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