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単位はどう変わる? もうすぐやってくる国際単位系の大改定 「kg」「秒」はこうやって決める
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/58361
2018.11.12 ブルーバックス編集部 現代ビジネス
2019年5月、国際的に決められている「単位」の定義が変更されることになります。 この国際単位系(SI)の改定という科学のビッグイベントに向けて発売された2冊の本、ブルーバックス『新しい1キログラムの測り方』(講談社ブルーバックス)と『単位は進化する』(化学同人)の刊行を記念して、著者のお二人によるトークイベントが行われました。 来年、単位はどのように変わるのか、さらに今後はどう進化していくのでしょうか。 |
単位はなぜ必要なのか
まずは、産業技術総合研究所計量標準総合センター長の臼田孝さんから、単位の起源と新しい「キログラム」の定義についてお話しいただきました。臼田さんは世界に18人しかいない国際度量衡委員の一人です。
BOOK LAB TOKYO にて開催されたトークショーに登壇した、臼田孝先生(右)と安田正美先生(左)
みなさんは、今日何を測りましたか?
健康のために体温を計った。料理に使う砂糖や塩の重さを量った。というように、私たちは日々いろいろなものを計測しています。
こうしたものを測ったとき、それを他の人に伝えたり、基準となる値と比べたりできるのは、じつは「単位」があるからです。
たとえば、体温計の「36.5」という数字、砂糖を載せたはかりの「20」という数字だけでは、なんのことかわかりません。「36.5℃」や「20グラム」というように、数値と単位が合わさって初めて、その量を共有することができるのです。
測定結果は単位の何倍に相当するかで示される
現在、世界的に使われている国際単位系という体系は、「長さ:メートル(m)」「質量:キログラム(kg)」「時間:秒(s)」「電流:アンペア(A)」「温度:ケルビン(K)」「光度:カンデラ(cd)」「物質量:モル(mol)」という7つの単位が基本となっています。
私たちが使っているさまざまな単位は、原則としてこの基本7単位の組み合わせですべて表現することができるのです。
7つの基本単位の現在の定義
このような国際的な決まりが生まれたのは、ちょうどフランス革命の頃でした。
最初に決められたのは長さの基準となる「メートル」です。このとき、パリ科学学士院は「北極から赤道までの子午線の長さの1万分の1」を1メートルの基準とすることにしました。
地球の大きさを測るということは当時は非常に困難なことで、測量には6年もの年月がかかりました。途中で測量隊が拘禁されるなどの憂き目にも遭ったそうです。革命という政治的な混乱のなかで、このような大事業を行ったということ自体が、当時のフランスが単位をいかに重要視していたかを表しているともいえます。
ちなみに、フランスでは統一的な単位を社会に普及させるために、パリ市内の12ヵ所に1メートルを表すモニュメントを作成しました。現在でもヴォージラール通りとヴァンドーム広場に、その実物が残っています。
啓蒙のためにパリ市内に設置された大理石製のメートル基準器。ウォージラール通り(左)とヴァンドーム広場(右)のもの
長さの基準が決まれば、それを基にして重さの単位も決められます。具体的には10センチメートル立方の水の重さが1キログラムの基準となりました。
ただし、蒸発や、温度によって体積が変わってしまう水を正確に量ることは困難だったため、同じ重さの分銅(確定キログラム原器)を作り、それを1キログラムの定義としました。
その後、科学が発展し、計測技術が進むにつれて、より精度の高い基準が必要となるたびに、この定義は改定されつづけていました。そのようにして完成したのが、冒頭に挙げた7つの基本単位の定義なのです。
そしていま、キログラムを含む4つの単位の定義が変わろうとしています。
「キログラム」はどう変わるのか?
まず、質量を測る基本的な原理は「天秤」です。天秤は、左右の皿に載せたものの重さを比べることによって同じ質量をつくりだすことができます。
現在の最高精度の天秤は、100億分の1の質量の差を検出できます。これは、地球の人口をすべて載せた天秤から、平均的な体重の1人が乗ったり降りたりしてもその違いがわかる、というレベルのものです。
「天秤」は非常に精度の高い装置ですが、その宿命として、絶対的な質量を計測するのではなく、相対的に重いか軽いかを調べることしかできません。
つまり、比較対象となる「キログラム原器」が損なわれてしまうと、二度とその重さを再現することができないのです。
実際、130年前に作られた1キログラムの定義である「国際キログラム原器」と、同じ時期に作られたそのコピーを比較すると、わずかですが重さに差が出てしまっています。
製造から長い時を経て国際キログラム原器が軽くなってしまったのか、ほかのコピーが重くなっているのか、あるいはその両方なのか、それは誰にもわかりません。
国際キログラム原器(K)とそのコピーの質量の比較
しかし、このような不安定性があると、私たちは安心してものの量を測ることができなくなってしまいます。そのような不安を払拭するため、原器に依らない基準が求められるようになったのです。
今回の定義改定を簡単に言えば、
・重さのわかっている原子をたくさん集めて、1キログラムをつくる
・そこに含まれている原子の数を数える
・数えた値を使って「1キログラムは原子○○個分の重さ」と定義する
ということになります。
原子の数を正確に数えるために作られた1キログラムのシリコンの球のレプリカ
より正確な定義としては、
「キログラムはプランク定数の値を正確に6.62607015×10-34ジュール・秒と定めることによって設定される」
と表現されます。
「プランク定数」は量子力学で登場するエネルギーの最小単位に関係する物理定数です。このプランク定数が、エネルギーと質量を結びつける「E=mc2」の式を通して質量へと換算できるのです。
定義がわかりにくい表現になってしまったことは今回の改定の難点ですが、詳しい説明については『新しい1キログラムの測り方』をお読みいただければと思います。
先に説明した「原子○○個分の重さ」という説明と、「プランク定数の値を〜〜」という定義がどうつながるのかと疑問に思うかもしれませんが、実はこの二つの表現は理論式によって正確に変換することができるのです。
このように、キログラムの定義が複数の方法で表現できるようになった、ということも今回の改定の重要な結果です。
なお、今回の定義改定では「質量:キログラム(kg)」のほか、「電流:アンペア(A)」「温度:ケルビン(K)」「物質量:モル(mol)」の3つの単位の定義も変更されることになっています。
これから単位はどうなるのか?
今回の改定では7つの基本単位のうち、4つの単位が新しく生まれ変ります。それでは残りの3つの単位はどうなるのでしょうか?
トークセッションの後半は、今後10年以内にさらなる改定が予想される「時間」の単位について、産業技術総合研究所計量標準総合センター時間標準研究グループ長の安田正美先生のお話です。
時間は基本となる7つの単位のうちのひとつですが、他の単位に比べて桁違いに高い精度で測られているという特徴があります。たとえば質量の場合は天秤の精度に限っても100億分の1程度ですが、時計は18桁の精度、つまり100京分の1の精度で測ることができています。
時計を測る方法は大きく分けて2つに分類されます。
ひとつは何かの崩壊を利用するものです。たとえば砂時計は、容器の上に入っている砂が「なくなる」ということを利用して時間を計ります。線香が燃え尽きるまでの長さを利用して時間を測るのも同じ原理です。
あるいは、腹時計も同じ原理と言えます。朝食べたものが、お腹の中で消化されるまでの時間を利用しているのです。
これらの時計は「一定のものがなくなるのにかかる時間は一定である」ということに基づいています。
もうひとつの方法は、周期現象を利用するものです。日時計、振り子、脈拍などがこれにあたります。この種類の時計は「一定時間を経過すると元に戻るもの」を利用しています。
時間の基準はもともと太陽の見かけの動きを基にして測られていました。太陽が真上に登ってから、次に真上に位置するまでを1日として、それを24分割すると1時間になります。
時計の歴史をたどってみると、紀元前1600年ごろにエジプトで水時計が登場し、ガラス細工が作れるようになった11世紀以降になると砂時計が広まります。さらに12世紀に入ると、機械式時計が発明されました。
20世紀になると、水晶の振動を利用したクオーツ時計が誕生しました。そして、1955年には、現在の時間の単位の基準となるセシウム原子時計が開発されました。
イギリス国立物理学研究所で開発された世界初のセシウム原子時計 Photo by Getty Images
振り子が触れる回数をカウントすると時間が測れるように、振動の数(周波数)を数えることでも時間が測れます。このとき、振動速度が速く周波数が細かい物ほど、時間を正確に測れることになります。
たとえば、クオーツ時計の振動数は1秒間に約3万回(32,768回)ですが、セシウム原子時計では1秒間に約92億回(9,192,631,770回)の振動が利用されています。これが、高精度の理由なのです。
2001年、東京大学の香取秀俊教授が提案した光格子時計は、光領域の振動を利用した原子時計です。産総研のイッテルビウム光格子時計の周波数は、セシウム原子時計よりも桁違いに高い、約518兆回(518,295,836,590,863.1回)というものです。この時計は、宇宙の年齢と同じ138億年に1秒ズレるかズレないかという精度を実現しています。
光格子時計は、一般相対性理論による時間の遅れを検証できるレベルなので、東京スカイツリーの展望台と地上で時間の進み方の違いを計測する実験にも使われようとしています。
産総研のイッテルビウム光格子時計は、2012年国際度量衡局で開催された「メートル条約関連会議」で、あたらしい秒の定義の「候補」に採択されました。同様に新たな秒の定義の候補に挙がっている時計は世界で9種類あり、10年以内には再定義されると考えられています。
もちろん、他の単位についても同じように、より高精度で安定的なものを目指した挑戦が続けられています。これから先も、単位の進化は続いていくのです。
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