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トヨタはマイカー所有者が80%減少する未来をどう生き抜くのか 〜『モビリティ 2.0 』(深尾 三四郎 著)を読む
https://diamond.jp/articles/-/184892
2018.11.10 情報工場 ダイヤモンド・オンライン
トヨタは「モビリティ2.0」への対応を急いでいます Photo:PIXTA
視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
「クルマ会社」からの脱皮を狙うトヨタ
今年1月、トヨタ自動車・豊田章男社長の発言が注目を集めた。米国ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES 2018」でのことだ。
プレスカンファレンスのスピーチで豊田社長は「クルマ会社を超え、人々のさまざまな移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革する」と宣言。「自動運転車やさまざまなコネクティッドサービスに必要なモビリティサービスプラットフォームをつくる会社になる」と、自社の展望を語ったのだ。
そして早速その具体的な施策の1つが8月28日に発表された。ライドシェアサービス大手の米Uberに約550億円を投資し、自動運転車を共同開発するというものだった。
具体的には、Uberとトヨタがそれぞれの自動運転技術を統合し、ライドシェアサービス向け車両を開発する。2021年までにはトヨタのミニバン「シエナ」の自動運転モデルを試験導入する構想だ。
さらに10月4日の発表は記憶に新しいのではないだろうか。ソフトバンクグループと共同で新会社「MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)」を設立するとの発表だ。
『モビリティ 2.0〜「スマホ化する自動車」の未来を読み解く』
深尾 三四郎 著
日本経済新聞出版社
1600円(税別)
トヨタには、インターネットにつながった自動運転車を最適制御する技術がある。一方ソフトバンクは、スマホやセンサーなどからデータを収集・分析し利用者の需要を予測するテクノロジーを有している。新会社MONETでは、この両者を組み合わせようとしている。
それにより、利用者が必要とするクルマをジャスト・イン・タイムで配車するサービスが可能になるからだ。
世界の自動車産業のガリバーであるトヨタ自動車は、どうやら本気でクルマ会社からの脱皮を狙っているらしい。
本書『モビリティ 2.0』では、EV(電気自動車)や自動運転、ライドシェアなど、近年の自動車業界の新たな取り組みを「モビリティ 2.0」と名づけている。そしてモビリティ 2.0によって社会全体がどう変わろうとしているのかを、各国の事例などを紹介しながら、わかりやすく解き明かす。
著者の深尾三四郎氏は1981年生まれ。2003年にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを卒業。野村證券金融研究所、英HSBCの自動車部品アナリストを経て、米国および香港のヘッジファンドで日本・韓国・台湾株のシニアアナリストを務め、スマートフォン、液晶テレビ、太陽電池の進化を目の当たりにしてきた人物だ。
深尾氏はその後2014年に浜銀総合研究所に入社。現在は同研究所調査部産業調査グループ主任研究員を務める。国内外で自動車産業とイノベーションに関する講演、企業マネジメント向けセミナーを多数行うなど精力的に活動を続けている。
それにしても、業界トップのトヨタが、創業以来のアイデンティティである「クルマ会社」からの脱皮を目指すとは、いったい何が起きているのだろうか。
2030年までに全米から2億台の自動車が消える!?
アメリカのシンクタンクRethinkXの共同創業者で、スタンフォード大学の講師でもあるトニー・セバ氏らが2017年に発表した報告書に興味深い予測がある。「ライドシェア企業が保有する自動運転の電気自動車による公共ネットワークが、未来の都市交通を担う。その結果、2030年までに、アメリカのマイカー所有者は80%減少する」というものだ。
さらに同報告書には、コストの試算もある。上記のような公共ネットワークによるライドシェアを利用すれば、その1マイル(約1.6km)移動ごとのコストが、自己所有の新車を購入して使用する場合の約4分の1〜約10分の1になるという。
これほどの移動コストの削減が、2021年までには実現するというのだ。それならば、自家用車の所有からライドシェアサービスの利用へと、大多数の人が切り替えたとしても不思議ではない。
マイカー所有者の80%減少は、今後10年あまりで全米を走る乗用車が約2億台いなくなることを意味している。そうなれば、自動車会社がクルマを生産、販売して収益を上げるビジネスモデルが成り立たなくなる可能性がある。
実は、こうした変化こそが、深尾氏のいう「モビリティ 2.0」に至る重要なステップなのだ。
自動運転によるライドシェアサービスを円滑に運用するために、それを支える精緻な情報システムの構築が不可欠であるのは言うまでもない。
乗車を希望する人が、どこに、何人ぐらいいて、その時点で利用可能なクルマがどこに、何台ぐらいあるかを、瞬時に正確に把握し、最適なマッチングによる配車を行わなければならないからだ。
これはアマゾンをはじめとするネットショップが、利用者と商品をマッチングするのとよく似ている。
さらに自動運転のシステムでは、地図情報や道路状況、渋滞情報、周辺のイベントなどの必要なあらゆるデータを処理しながら、最適なコースを選択し、かつ安全に配慮しながら運行制御をしなければならない。
さすれば、マッチングと自動運転車の安全運行を担える高機能な「プラットフォーム」が必要になってくるのだ。そうしたプラットフォームこそが、「モビリティ 2.0」を推進する“エンジン”となる。
「モビリティ 2.0」のプラットフォームが
イノベーションのチャンスに
現在まで、私が物品の購入やサービスを受ける場合に「人やモノが必要に応じて移動すること」が前提となっている。例えば、物品の購入は「人」がコンビニなどの商店に移動して行われる。医療サービスも「人」が病院に移動することではじめて受けられる。訪問診療などで患者が動かなくていい場合もあるが、その場合でも医師という「人」が移動している。
深尾氏の論に従えば、こうした「人やモノの移動」は「モビリティ 1.0」に当たるのだろう。しかし、「モビリティ 2.0」で主に動くのは「人やモノ」ではない。「データ」だ。
すべてのクルマがインターネットに接続し、自動運転で好きな場所に動かすことができるようになれば、「人」は動かずに、サービス利用者のニーズなどの「データ」が動く。そして、そのデータに基づく無人のサービスが利用者のもとにやってくる。
冒頭に紹介したように、トヨタとソフトバンクによる新会社「MONET」は、両社の持つ優れたプラットフォームを組み合わせ、高度な配車システムを実現する新たなプラットフォームを構築しようとしている。
すなわち、ソフトバンクのプラットフォームで利用者の嗜好や行動を予測して、トヨタのプラットフォームでそれにマッチするクルマを自動配車する。
さらにトヨタは、e-Paletteというモビリティサービス専用の次世代電気自動車を計画中だ。これが提供されると、面白いことが起こる。
マイクロバスのような形状のe-Paletteは、スマホのようにサービスに合わせて内装をカスタマイズできる。
そうすると、例えば新しい靴をネットで購入したい人のところには、自動的に「靴屋e-Palette」がやってくる。そこで実際にはき心地を確認した上で商品を選び、購入できる。
体調が悪くて病院に行きたい時には、検査機器を積んだe-Paletteが迎えにきてくれる。そして、病院に向かう車中で簡単な検査や診察を済ませられる。
このように、e-Paletteというプラットフォームを使って、さまざまなアイデアが実現できるのだ。
「モビリティ 2.0」では、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルといったIT巨人がプラットフォームを駆使して覇者となったような争いが、これから激しくなっていくだろう。
体調が悪くて病院に行きたい時には、検査機器を積んだe-Paletteが迎えにきてくれる。そして、病院に向かう車中で簡単な検査や診察を済ませられる。
このように、e-Paletteというプラットフォームを使って、さまざまなアイデアが実現できるのだ。
「モビリティ 2.0」では、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルといったIT巨人がプラットフォームを駆使して覇者となったような争いが、これから激しくなっていくだろう。
トヨタとソフトバンクの提携は、「モビリティ 2.0」によるグローバルなプラットフォーム競争に、日本勢として名乗りをあげたとも捉えられる。
すでに数歩先を行くドイツでは、ダイムラーが、2016年夏のパリモーターショーでCASE(ケース)という中長期の経営ビジョンを発表し、「モビリティプロバイダになる」と宣言している。
CASEは、デジタルでつながること(Connectivity)、自動運転(Autonomous driving)、共有・シェアリング(Sharing)、電動化(Electric drive systems)の頭文字を組み合わせた造語だ。
また、本書によると、すでに中国やインドも新たなプラットフォームでの覇権を目指し、国をあげて取り組んでいる。
こうした各国企業のプラットフォームは、いずれ日本にも進出してくるだろう。MONETによる計画が順調に進めば、競合することになる。
だが、トヨタやソフトバンクの関係企業でもない限り、海外勢を含む林立するプラットフォームから自社に適したものを選んで活用するのが得策だろう。
現状のモビリティに関わるビジネスを展開している企業にとっても、そうでない企業にとっても、イノベーションのチャンスとなるはずだ。
本書には「モビリティ 2.0」に関する海外の先進事例が数多く紹介されている。今のうちに、世界で何が起こっているのか、これからどういうことが起きるのかを、しっかりと把握しておきたい。
(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)
情報工場
2005年創業。厳選した書籍のハイライトを3000字にまとめて配信する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を提供。国内の書籍だけではなく、まだ日本で出版されていない、欧米・アジアなどの海外で話題の書籍もいち早く日本語のダイジェストにして配信。上場企業の経営層・管理職を中心に約8万人のビジネスパーソンが利用中。 http://www.serendip.site
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